なげ)” の例文
贅肉いぼあるもの此神をいのり、小石をもつていぼをなで、社のえんの下の𥴩子かうしの内へなげいれおくに、日あらずしていぼのおつる事奇妙なり。
ドクトルは其後そのあとにらめてゐたが、匆卒ゆきなりブローミウム加里カリびんるよりはやく、發矢はつしばか其處そこなげつける、びん微塵みぢん粉碎ふんさいしてしまふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
人畜にんちくの道ことにして。その欲を得遂げざれども。耳に妙法のたときをきゝて。…………おなじ流に身をなげて。共に彼岸かのきしに到れかし。
つかこみ父の勘當をけ身をなげんとせし時に是なる五八にたすけられ今は五八方に居て初瀬留に見繼みつぎを受け不自由なくは消光くらし居れど何卒なにとぞ勘當かんだうわび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
りたけむかうからはずみをつけてけててポンとつかりたまへ、いか。」すとんと、呼吸こきふで、もなくなげられる。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「なあ、二度と浮氣したらあかんぜ。惡い奴にだまされたら、又身をなげるやうな事になる。うゝい、死んではなみが咲くものかいふ事知つたるか。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
しかれども爾はナザレの一平民にしてたれも爾の才力と真価直しんかちょくとを知るものなし、ゆえに爾ず己が身を下になげよさらば衆人爾の技倆に驚き爾に注目するに至らん
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
えいえいともみあっているうちに、兵曹長は得意のなげの手をかける隙をみつけました。ここぞとばかり
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「よき、つてろ、そら」と財布さいふから面倒めんだうに五りん銅貨どうくわひろしてなげてやる。與吉よきちかげては忸怩もぢ/\して容易よういらないでしかさうむしろうへ銅貨どうくわる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
泣くにも人目を恥れば二階座敷の床の間に身をなげふして忍びの憂き涕、これをば友朋輩にもらさじと包むに根生こんぜうのしつかりした、気のつよい子といふ者はあれど
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
最前から持っていたような一種のなげやりな気持ちや、彼女の運命に対する好奇心なぞいうものは
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
小鳥たちは右の翼を大きな壺に、左の翼を小さな壺へ、めいめい躯から引き抜てなげいれました。
トシオの見たもの (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
お島はのろくさいその居眠姿がしゃくにさわって来ると、そこにあった大きな型定規のような木片きぎれを取って、縮毛ちぢれげのいじいじした小野田の頭顱あたまなげつけないではいられなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
鏡の前へ一寸ちよつと嘘坐うそずわりして中をのぞくと、今の紫の襟が黒くなつた顔の傍に、見得みえを切つた役者のやうに光つて居た。良人をつとが居ないのだからと鏡子は不快ななげやりごゝろおこして立つた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ほかの商家ではすっかり戸を締切って、軒燈けんとうの外には何の光も漏れていないのに、このみすぼらしいショーウインドウだけが、戸もないのか、路上に夢の様な光の縞をなげているのが
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この男木作りかとそしる者は肉団にくだん奴才どさい御釈迦様おしゃかさまが女房すて山籠やまごもりせられしは、耆婆きばさじなげ癩病らいびょう接吻くちづけくちびるポロリとおちしに愛想あいそつかしてならんなど疑う儕輩やからなるべし、あゝら尊し、尊し
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
女の鏡台多くゑ並べありて、数人の歌妓かぎ思ひ思ひになまめかしき身のなげざまを示したり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
飛び付くのを、一人二人を犬ころなげに投げ出しましたが、相手は得物得物を持って競いかかるのに悲しいことに清作は、世を忍ぶ役目柄、身に寸鉄も帯びることを許されなかったのです。
天保の飛行術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
森はひょろひょろと蹌踉よろめきながら後ずさりし、膿盆のうぼんのような海は時々ねたまし気な視線をギラリとなげかける。やがて、けちくさいまだらなあくたと化した地球は、だんだんに遠ざかって行く——。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
悄々しおしおと敵将の前へ身をなげ出すヴァンナの、あの幽雅なものごしと可憐さを、自分の生れた国の女性に現せないのだろう、異国の女性に扮するときはあれほど自信のある演出するのにと思った。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いきなりとびかゝって、娘の上に乗し掛っている奴のふんどしの結び目と領首えりくび取捕とッつかまえてうしろの方へなげると、松の打附ぶッつけられ、脊筋せすじが痛いからくの字なりになって尻餅をき、腰をさすって居りまする。
はく銅の持合もちあはせが無いので一人が十銭銀貨をなげ入れると、彼は黒い大きなたいなゝめに海中に跳らせて銀貨がだ波の間を舞つて居る瞬間に其れを捉へてあがつて来る。ベツクリンの絵の中の怪物の心地がした。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
未婚婦人が来るべき世界になげかけて
未婚婦人 (新字新仮名) / 今野大力(著)
贅肉いぼあるもの此神をいのり、小石をもつていぼをなで、社のえんの下の𥴩子かうしの内へなげいれおくに、日あらずしていぼのおつる事奇妙なり。
ドクトルはそのあとにらめていたが、ゆきなりブローミウム加里カリびんるよりはやく、発矢はっしとばかりそこになげつける、びん微塵みじん粉砕ふんさいしてしまう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
なげ空敷むなしくなりたりけりあんずるに鬼女の如き面體めんていになりしをはぢて死にけるかたゞし亂心にや一人はすゑに名を上一人はすゑに名をけがせりと世に風聞さたせしとなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
墮馬髻だばきつのものたるや、がつくり島田しまだふにおなじ。あんずるに、つぶしひ、藝子げいこなげひ、やつこはた文金ぶんきん島田髷しまだまげのがつくりとるは、非常ひじやうときのみ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くにも人目ひとめはぢれば二かい座敷ざしきとこなげふしてしのなみだ、これをばとも朋輩ほうばいにもらさじとつゝむに根生こんぜうのしつかりした、のつよいといふものはあれど
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さけ其處そこてんじた。にはの四ほん青竹あをだけつたなはあかあをきざんだ注連しめがひら/\とうごきながら老人等としよりらひとつに私語さゝやくやうにえた。陽氣やうきにはへ一ぱいあたゝかなひかりなげた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
きよみやこに携えゆき殿みや頂上いただきに立たせていいけるは爾もし神の子ならばおのが身を下へなげそはなんじがために神その使つかいたちに命ぜん彼ら手にて支え爾が足の石に触れざるようすべしと録されたり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
おかしきばかりかあわれに覚えて初対面からひざをくずして語る炬燵こたつあい宿やどの友もなき珠運しゅうんかすかなる埋火うずみびに脚をあぶり、つくねんとしてやぐらの上に首なげかけ、うつら/\となる所へ此方こなたをさして来る足音
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼女は全身をなげ出して来た人である。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
此滝つぼへ万物をなげこめおくに百日をすぐさずして石に化すとぞ、滝坪の近所にて諸木の枝葉又は木のその外生類しやうるゐまでも石に化たるを得るとぞ。
はおわかしう不了簡ふれうけん死ぬは何時いつでも易い事先々まづ/\此方こなたられよと云ふかほれば吉原の幇間たいこ五八なれば吉之助は尚々なほ/\面目なく又もや身をなげんとせしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なげはうも、なげられるはうも、へと/\になつてすわつたが、つたうへ騷劇さうげきで、がくらんで、もう別嬪べつぴんかほえない。財産家ざいさんか角力すまふひきつけでるものだ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
主人が輕侮の一言に持病むらむらとしておこれば、何かこらへん筆へし折りて硯をなげつけつ、さして行手は東西南北、臥すや野山の當もなき身に高言吐ちらして飛び出せば
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かね博勞ばくらうおびいてはだかつて衣物きものうしろなげた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此滝つぼへ万物をなげこめおくに百日をすぐさずして石に化すとぞ、滝坪の近所にて諸木の枝葉又は木のその外生類しやうるゐまでも石に化たるを得るとぞ。
別にまた武者修行でも来ればし、さもなけりゃ私だって、お前たちにゃ一人にもかなやしない。一堪ひとたまりもなく谷底へなげられるんだ、なあ、おい、そんなもんじゃないか。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さりとて無情つれなくなげかへしもせねど、らきてみしやいなじんすけこたへぶりの果敢はかなさに、此度このたびこそとかきたるは、ながひろにあまりおもふでにあふれて、れながらくまでもまよものかと
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
火燧ひうちをもて発燭つけぎに火をてんこゝろみに池中になげいれしに、池中ちちゆう火をいだせし事庭燎にはびのごとし。水上に火もゆるは妙法寺村の火よりも也として駅中えきちゆうの人々きたりてこれをる。
と小松原はなげに出て、身動きもしないでいれば、次第に寝台の周囲まわりを廻って、ぐるりと一周りして枕許まくらもとを通る、と思うと、ぐらぐらと頭を取って仰向あおむけに引落される——はっとすると
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
流石さすが信如しんによそでふりりてゆきすぎることもならず、さりとてひとおもはくいよ/\らければ、手近てぢかえだ引寄ひきよせて好惡よしあしかまはず申譯まうしわけばかりにりて、なげつけるやうにすたすたと行過ゆきすぎるを
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
或年あるとしの住僧此塔の出たる時天を拝していのる、我法華ほつけ千部読経どくきやうぐわんあり、今一年にしてみてり、何とぞ命を今一年のばし玉へと念じて、かの塔を川中のふちなげこみたり。
泥草鞋どろざうりつかんでなげつければ、ねらひたがはず美登利みどり額際ひたいぎはにむさきものしたゝか、血相けつさうかへてたちあがるを、怪我けがでもしてはときとむる女房にようぼう、ざまをろ、此方こつちには龍華寺りうげじ藤本ふぢもとがついてるぞ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と火箸をポンと灰になげて、仰向いて、頬杖ほおづえついて、片足をとんびになる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なほ其人そのひとこひしきもらく、なみだしづんでおく月日つきひに、らざりしこそをさなけれ、うへきをかさねて、宿やどりしたね五月さつきとは、さてもとばかなげふしてなきけるが、いまひとにもはじものおもはじ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またなげるのを視た。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
書生しよせい千葉ちばさむかるべきをおぼしやり、物縫ものぬひのなかといふに命令いひつけて、おほせければそむくによしく、すこしはなげやりの氣味きみにてりし、飛白かすり綿入わたい羽織はをりときの仕立したてさせ、あくたまふに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)