)” の例文
四国しこくしまわたって、うみばたのむら托鉢たくはつしてあるいているうちに、ある日いつどこでみち間違まちがえたか、山の中へまよんでしまいました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ながされるのは、たしかにやせたひばりの子供こどもです。ホモイはいきなり水の中にんで、前あしでしっかりそれをつかまえました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そとで、たこのうなりごえがする。まどけると、あかるくむ。絹糸きぬいとよりもほそいくものいとが、へやのなかにかかってひかっている。
ある少年の正月の日記 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ばんごと喧嘩けんくわをしてめてやるのだが隨分ずゐぶんおもしろいよとはなしながら、鐵網かなあみうへもちをのせて、おゝ熱々あつ/\指先ゆびさきいてかゝりぬ。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と、息切いきぎれのするまぶたさつと、めたちからはひつて、鸚鵡あうむむねしたとおもふ、くちばしもがいてけて、カツキとんだ小指こゆび一節ひとふし
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と山袴に蔓巻の刀をんだ、八、九人の荒くれ男が、五ツ抱えもある杉の大樹を取り巻いてさっきから二度も三度も叫んでいた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたつかんで、ぐいとった。そので、かおさかさにでた八五ろうは、もう一おびって、藤吉とうきち枝折戸しおりどうちきずりんだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その時、そこのプラットホオムに四十五六の紳士しんしがいて、僕のいる車室へ乗りんで来た。その後から赤帽あかぼうが大きなかばんを持ち込む。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
「ふん、坊主ばうずか」とつてりよしばらかんがへたが、「かくつてるから、こゝへとほせ」とけた。そして女房にようばうおくませた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
そういいながら、その若い男は、ぼくを穴の中へんだ。私はこの意外な出来事に、夢かとばかりおどろき、そして胸を躍らせた。
もくねじ (新字新仮名) / 海野十三(著)
苦情くじようみましたので、まやかしものといふことがわかつて、これもたちまかへされ、皇子みこ大恥おほはぢをかいてきさがりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
すなおでまじめで同情心どうじょうしんの深い新吉は、やがてこういう人たちに見まれて、幸福こうふくな生活をするようになったにちがいありません。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
自分じぶん蒲團ふとんそばまでさそされたやうに、雨戸あまど閾際しきゐぎはまで與吉よきちいてはたふしてたり、くすぐつてたりしてさわがした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
世界大地震せかいだいぢしん記事きじおいて、人畜じんちくむほどの地割ぢわれの開閉現象かいへいげんしようおこつたのは、著者ちよしや鋭意えいい調しらべた結果けつか以上いじよう三回さんかいのみである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
これが石油を襤褸ぼろまして、火を着けて、下からほうげたところですと、市川君はわざわざくずれた土饅頭どまんじゅうの上まで降りて来た。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うっかりしたら、お守役もりやくわたくしまでが、あの昂奮こうふんうずなかまれて、いたずらにいたり、うらんだりすることになったかもれませぬ。
あゝ、これ一生いつしやうわかれとなるかもわからぬ。櫻木大佐さくらぎたいさも、日出雄少年ひでをせうねんも、だまつて吾等われら兩人りやうにんかほながめ、ちからめて吾等われらにぎつた。
すると大井子は夜にまぎれて表のひろさ六、七尺もある大石を、水口によこさまに置いて、水を自分の田に流れむようにした。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これがこれから咲き乱れて、いいにおいをさせて、それからそれが散るころ、やっと避暑客ひしょきゃくたちが入りんでくることでしょう。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そしてそれが水上すいじょうわたってむこうへえたとおもうと、幾匹いくひきかの猟犬りょうけん水草みずくさの中にんでて、くさすすんできました。
しもに焼けたつつじのみが幾重いくえにも波形に重なって、向こうの赤松あかまつの森につづいている。空は青々とんでおり、風もない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ふと麥藁むぎわらにはかなら一方いつぱうふしのあるのがります。それが出來できましたら、ほそはう麥藁むぎわらふと麥藁むぎわらけたところへむやうになさい。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これはたいてい赤貝あかがひるい貝殼かひがらゑぐき、その周圍しゆういばかりをのこして前腕まへうでにはめむでのでありまして、石器時代せつきじだい墓場はかばから人骨じんこつ
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
早々そうそう蚊帳かやむと、夜半よなかに雨が降り出して、あたまの上にって来るので、あわてゝとこうつすなど、わびしい旅の第一夜であった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新秋しんしうもちいゝかぜすだれとほしてく、それが呼吸氣管こきうきくわんまれて、酸素さんそになり、動脈どうみやく調子てうしよくつ………そのあぢはへない。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
検疫船けんえきせん検疫医けんえきいむ。一とう船客せんかくどう大食堂だいしよくだうあつめられて、事務長じむちやうへんところにアクセントをつけて船客せんかくげる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
地方によって多少作り方も違い、タチツケ、あるいは略してタッケ、猿袴、みなどともいい、庄内辺ではマタシャリとも言うそうな。
春雪の出羽路の三日 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
はえがばいきんをまきちらす、そうしてわれわれは知らずに、年中少しずつそれらのばいきんをみのみんでいるために
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
よくとおる、しかし意地の悪くない高笑いに追われながら、一目散いちもくさんに自分の部屋へんで、ベッドにころがり込むと、両手で顔をかくした。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
れた道を遠泳会の一行は葛西川かさいがわたもとまで歩いた。そこから放水路の水へすべんで、舟にまもられながら海へ下って行くのだ。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
流石さすがに、無暗むやみむ訳にも行かぬので、一同玄関の土間にためらっていると、奥の方から、幽かに誰かの泣きじゃくる声が漏れて来た。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
やゝおもしろさにつりまれて、下品げひんうたもないでもありません。けれども、うたよみとしてはすぐれたひとといふことが出來できます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
みんながもどすだらうとおもつて、あいちやんがあとかへつてると、おとろくまいことか、みんなで急須きふすなか福鼠ふくねずみまうとしてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
飛衛は新入の門人に、まずまたたきせざることを学べと命じた。紀昌は家に帰り、妻の機織台はたおりだいの下にもぐんで、そこに仰向あおむけにひっくり返った。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
地下足袋のうらには、じごくのようながじがじした、いやらしい蛇腹文様じゃばらもようがあって、土にくいみ、土を一どきにきざんでしまうからである。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
戲談じようだんつてはこまります。だから新聞記者しんぶんきしやひとわるい。ひと眞面目まじめくのに。』と高商紳士かうしやうしんしみじかくなつたシガーをストーブにんだ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
食膳にのぼせた海老の赤い殻を、藪の中にほうんだ。湿っぽい、薄暗いようなあたりの空気に対して、赤い海老の殻があざやかに眼に映るのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
んでいたので彼でなければ到底気に入るようには行かなかった佐助はむしろこの意味において春琴に取り欠くべからざる存在であった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
彼の人が来れば仕事の有る時は、一人ほうって置いて仕事をし、暇な時は寄っかかりっこをしながら他愛たあいもない事を云って一日位座りんで居る。
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
けれどもそのときいたうたが、こころそこまでんでたので、それからは、毎日まいにちうたをききに、もりかけてきました。
毎日触れる器具であるから、それは実際にえねばならない。弱きもの華やかなもの、み入りしもの、それらの性質はここに許されていない。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
お代は腹立たしさにおどんで大原にしがみ付かんと思いしがほかに立派なる老人の客あり、若き娘もその席に見ゆるとて心に幾分かはばかる処あり。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
生垣の隅は幾らふさいでも必ずいつのまにか穴になる。百度狙ううちには一度ぐらいは台所のものをくわむことができると思っているのだろう。
黒猫 (新字新仮名) / 島木健作(著)
野兎のうさぎ※麻いちびの茂みの中で、昼にねらわれた青鷹あおたかの夢を見た。そうして、ねると※麻の幹に突きあたりながら、零余子むかご葉叢はむらの中にんだ。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「あの坊主は、氣のふれたいたちみたいに、何處の穴へでももぐりむんだから、人相書を持つても搜しやうはありません」
彼女は自らそれを告白して、良人の気性をすっかりむようになるまでは、一通りでない努力をしたと言ってる。
そしてそこへんでしまふんです。神樣かみさま、どうしてこんなにみたいんでせう。どうかしてみたいさけをやめることは出來できないもんでせうか
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
だまされる人は、招牌かんばん見ないで店に飛びむようなもので、商品が違っていたら、それは自分が悪かったのであります。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あの大きな甲羅こうらを持っている亀のことであるから、素早く逃げることが出来ず、自分の重みでころころと水の中へんでしまったというのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
岡町をかまち中食ちうじきをして、三國みくにから十三じふそわたしにしかゝつたときは、もうなゝごろであつた。渡船とせんつてゐるので、玄竹げんちくみち片脇かたわきつて、つてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)