はひ)” の例文
往返わうへんし旅人の懷中ふところねら護摩ごまはひの頭なり因て半四郎が所持の金に目をかけ樣々さま/″\にして終に道連となりしかば此夜このよ何卒なにとぞして半四郎の胴卷どうまき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
からははひにあともとゞめずけぶりはそら棚引たなびゆるを、うれしやわが執着しふちやくのこらざりけるよと打眺うちながむれば、つきやもりくるのきばにかぜのおときよし。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
蒼白あをじろう、はひのやうに蒼白あをじろうなって、みどろになって、どこもどこもこごりついて。ると其儘そのまゝ、わしゃうしなうてしまひましたわいの。
失禮しつれい唯今たゞいま。」とかべなかに、さわやかわかこゑして、くゞもんがキイとくと、てふのやうに飜然ひらりて、ポンと卷莨まきたばこはひおとす。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なまはちよっとえにくいようにおもへますが、一度いちど火勢かせいがつけば、こんもりとしげつたうつくしい森林しんりんもまたゝくまにはひになつてしまふのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
たくはへたる菓子くわしをかの三人の娘にもとらせければ、三人こしかけて箕居ふみはだかりあしはひのなかへふみ入れめづらしがりてくわしをくらふ。
そのうちに、あつはひなかまつてかきあなからは、ぷう/\しぶ吹出ふきだしまして、けたかきがそこへ出來上できあがりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
われあつえぞ」とおつぎがいへば與吉よきちいてゑぐは土間どまちる。それをまたせてやると與吉よきちはおつぎがするやうにふう/\とはひく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「小判には阿倍川餅ほどはひが附いてゐる、檜物町の師匠の爐の中に隱してあつた小判が無くなつて居るんだぜ——」
そらは、ドンヨリくもツて、南風みなみかぜはひみやこまはり、そしてポカ/\する、いや其所そこらのざわつく日であツた、此様な日には、頭に故障こしやうのない者すら氣が重い。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
寶暦九年ほうれきくねん七月二十八日しちがつにじゆうはちにち弘前ひろさきおい西北方せいほくほうにはかくもはひらしたが、そのなかには獸毛じゆうもうごときものもふくまれてゐたといふ。これは渡島おしま大島おほしま噴火ふんかつたものである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
うしませう」とすゝいた。宗助そうすけ再度さいど打撃だげきをとこらしくけた。つめたいにくはひになつて、其灰そのはひまたくろつちくわするまで一口ひとくち愚癡ぐちらしい言葉ことばさなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かぜはなかつた。空氣くうきみづのやうにおもしづんでゐた。人家じんかも、燈灯ともしびも、はたけも、もりも、かはも、をかも、そしてあるいてゐる我我われわれからだも、はひとかしたやうな夜霧よぎりうみつつまれてゐるのであつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
煙突のくろみよりはひばめるすす湯気ゆげなびきちらぼふ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
燃えてひらくことなきはひの像、胸のぢやう——
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
眺望ながめことごとはひみて
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
つちはひ十日とをかひでりの
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
金棺はひを葬りて
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
燒趾やけあとはひから青銅せいどうのやうにかはつた銅貨どうくわはぽつ/\とけたかはのこしてあざやかな地質ぢしつけてた。かれはそれをちかづけてしばら凝然ぢつ見入みいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
松村まつむら小松こまつかこつて、松賀町まつかちやう淨瑠璃じやうるりをうならうといふ、くらくらとはならんだり、なか白鼠しろねずみ黒鼠くろねずみたはら背負しよつてちよろ/\したのが、みなはひになつたか。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
番町ばんちやう旦那だんなといふは口數くちかずすくなひとえて、ときたまおもしたやうにはた/\と團扇うちはづかひするか、卷煙草まきたばこはひはらつてはまたをつけてもつてゐるくらゐなもの
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
囲炉裏ゐろりは五尺あまり、ふかさははひまで二尺もあるべし、たきゞおほき所にて大火おほびくゆゑ也。家にかちたるものは木鉢きばちの大なるが三ツ四ツあり、所にて作るゆゑ也。
かれつめたい火鉢ひばちはひなかほそ線香せんかうくゆらして、をしへられたとほ坐蒲團ざぶとんうへ半跏はんかんだ。ひるのうちは左迄さまでとはおもはなかつたへやが、ちてからきふさむくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それでも其の影に映つてゐる間だけ、周三の頭から、びて、陰濕じめ/″\したガスが拔けて、そして其の底にはひの氣にめられながら紅い花のゆらいでゐるのを見るやうな心地になつてゐた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
浪人夫婦は聞て大いに驚き然すれば渠等かれらかねて聞たる護摩ごまはひとか云へる惡漢わるものならん是は如何せんと當惑たうわくの折から一人の駕籠舁は彼浪人かのらうにんに向ひオイ御侍士おさふらひ先刻さつき熊谷の茶屋から四里八丁の丁場ちやうば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ほゝくちびる薔薇ばらせて、蒼白あをじろはひかはる。まどもはたとづる、生活いのちがついれてときのやうに。どこも/\硬固しゃちこばって、つめたうなって、自在じざい活動はたらきをばうしなうて、死切しにきったやうにもえう。
「成程ね。はひも何んにも附いて居ないから、安心しろよ、八」
小蒸汽船こじようきせんはひばめるにぶうなり
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やぶれた草葺くさぶきいへをゆさぶつて西風にしかぜがごうつとちつけてときには火鉢ひばちおきはまだしろはひかはかぶつてあたゝかゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まだ方角はうがくたしかでない。旅馴たびなれた野宿のじゆく覺悟かくごで、かすか黒雲くろくもごとひくやま四方しはうつゝんだ、はひのやうな渺茫べうばうたる荒野あらのあしにまかせて辿たどること二里にりばかり。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
弥左ヱ門は村に火災くわさいありときゝて走皈はせかへりしに、今朝けさいでし家ははひとなりてたゞ妻子つまこ无㕝ぶじをよろこぶのみ。
御寒おさむ御座ございませう」とつて、圍爐裏ゐろりなかふかけてあつたすみはひしたからした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
奧方おくがた火鉢ひばち引寄ひきよせて、のありやとこゝろみるに、よひ小間使こまづかひがまいらせたる、櫻炭さくらなかばはひりて、よくもおこさでけつるはくろきまゝにてえしもあり、烟管きせる取上とりあげて一二ふく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小蒸汽こじやうきはひばみぎし船腹ふなばら
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
弥左ヱ門は村に火災くわさいありときゝて走皈はせかへりしに、今朝けさいでし家ははひとなりてたゞ妻子つまこ无㕝ぶじをよろこぶのみ。
このはにないのと、淺間あさまはひでもつたやうに、その取引とりひきたるや、なか/\むづかしいさうである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はひめる暮雲ぼうんのかなた
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そででかくすやうにしたときなべ饂飩うどんは、しかし、線香せんかうちてたまつた、はひのやうであつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むかしは加州山中かしうさんちう温泉宿をんせんやどに、住居すまひ大圍爐裡おほゐろりに、はひなかから、かさのかこみ一尺いつしやくばかりの眞黒まつくろきのこ三本さんぼんづゝ、つゞけて五日いつかえた、とふのが、手近てぢか三州奇談さんしうきだんる。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彫刻ほりしたふなおよぐもい。面白おもしろうないとははぬが、る、く、あるひなまのまゝにくくらはうとおもふものに、料理りやうりをすれば、すみる、はひる、きれなににせい、と了見れうけんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
死力しりよくめて、起上おきあがらうとすると、うづが、かぜで、ぐわうといて、きながらみだるゝとれば、計知はかりしられぬたかさからさつ大瀧おほだき搖落ゆりおとすやうに、泡沫あわとも、しぶきとも、こなとも、はひとも
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あゝ、裝束しやうぞくかい、みんはひさ——めんだけは近所きんじよのお弟子でしけつけて、のこらずたすけた。ひやくいくつといふんだが、これで寶生流はうしやうりう面目めんぼくちます。裝束しやうぞくは、いづれとしがたてばあたらしくなるんだから。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)