あた)” の例文
それ三聲みこゑめにると、くやうな、うらむやうな、呻吟うめくやうな、くるしもがくかとおも意味いみあきらかにこもつてて、あたらしくまたみゝつんざく……
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其日そのひ二人ふたりしてまち買物かひものやうとふので、御米およね不斷着ふだんぎへて、あつところをわざ/\あたらしい白足袋しろたびまで穿いたものとれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すべての女が相当なあたらしいテクニカル・タームを覚え青踏社せいとうしゃ時代の新しさは近代の女性には常識程度に普遍化ふへんかされて来た様です。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
現代いまのよ人達ひとたちから頭脳あたまふるいとおもわれるかぞんじませぬが、ふるいにも、あたらしいにも、それがその時代じだいおんなみちだったのでございます。
すべひとたるものつね物事ものごとこゝろとゞめ、あたらしきことおこることあらば、何故なにゆゑありてかゝこと出來できしやと、よく其本そのもと詮索せんさくせざるべからず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
何故なにゆえ彼は「新生」を書いたか。あたらしい生の発見探求のためであるには余りにも距離がひどすぎる。彼はそれを意識していなかったかも知れぬ。
デカダン文学論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ふるいもあたらしいも、愚老ぐらう洒落しやれなんぞをまをすことはきらひでございます。江戸えどのよくやります、洒落しやれとかいふ言葉ことばあそびは、いやでございます。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
らずひきしかばなどたまるべき微塵みぢんになりてうらみをのこしぬぢやうさま御覽ごらんじつけてどくがりたまこのそこねたるは我身わがみらせよかはりにはあたらしきのを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
老兵士ろうへいしも、みんなといっしょに、このうたみみかたむけていましたが、くせないかなしみが、むねそこから、あたらしくこみげてくるのをおぼえました。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いはゆる文化的都市ぶんくわてきとし發達はつたつすればするほど、災害さいがい慘憺さんたんとなる。したがつて震災しんさいたいしても防備ばうびかんがへがこる。が、これも比較的ひかくてきあたらしい時代じだいぞくする。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
にはとりつめあと其處そこあたらしいつちらしてあつた。おしなつちあつめて草履ざうりそこでそく/\とならした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
第九 食物しよくもつ衣服いふくごと分限ぶんげんによるは勿論もちろんなれど、肉食にくしよくあざらけくあたらしきしな野菜やさいわかやわらかなるしなえらぶべし。よく烹熟にたきして、五穀ごこくまじくらふをよしとすること
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
只此のあたらしい処女地に生え出でんとする文学に対して、多大の希望と喜びを禁じ得ない者である。
第四階級の文学 (新字新仮名) / 中野秀人(著)
が、長袴ながばかまに附いた一片の埃を払い落したほどの関心も持たず、その年の三月には早江戸の桜の下に、奥方の厳しい眼を逃れ乍ら、あたらしい歓楽を追う大膳正だったのです。
そして全くその通り稲光りがまたあたらしく落ちて来たときその気のどくないちばん丈の高い花が、あまりの白い興奮こうふんに、とうとう自分をきずつけて、きらきらふるうしのぶぐさの上に
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「この草原に家が建ったらいやだなア」と云っていたのを裏切るように、あたらしい三拾円見当の家が次々と建っていって、紫色の花をつけた桐の木も、季節の匂いを運んだ栗の木も
落合町山川記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
喬介は直ちに手袋をはめると、比較的あたらしい鉄屑のそばへ腰をかがめて、ごそごそとさばき始めた。暫く一面にき廻していたが、んの変化も見られない。追々おいおい私は倦怠けんたいを覚え始めた。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
あたらしい神さまが必要なようね。どうやら」と、彼女は青年の言葉にうなずきながらいった。「ここの星の人は、みんないつも不安なのね。きっと愛することを忘れちゃっているのね」
メリイ・クリスマス (新字新仮名) / 山川方夫(著)
元来が上方者かみがたもの吝嗇家しまりやだったから、御殿奉公中からちょびちょび小金こがねを溜めて大分持っていたそうだ、しかしもうとしとしなので屋敷もひまを貰って自分は此処ここへ一軒あたらしく家を建てたが
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
ことあたらしく今更に道十郎が後家に告口つげぐちなし此長庵がいのちちゞめさせたるは忝けないともうれしいともれい言盡いひつくされぬ故今はくゝられた身の自由じいうならねばいづ黄泉あのよからおのれも直に取殺し共に冥土めいどつれゆき禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
耶蘇降誕祭クリスマス度毎たんびわたしあたらしい長靴ながぐつを一そくづつつてやらう
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あたらしき紙のられのゆる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その記憶がまあたらしい。
逸見猶吉詩集 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
やなぎみどりかして、障子しやうじかみあたらしくしろいが、あきちかいから、やぶれてすゝけたのを貼替はりかへたので、新規しんき出來できみせではない。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
懷姙くわいにんこときまつたとき、御米およねこのあたらしい經驗けいけんたいして、おそろしい未來みらいと、うれしい未來みらい一度いちどゆめやう心持こゝろもちいだいてごした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なかで一ばんおおきな彼方むこう巌山いわやますそに、ひとつの洞窟ほらあならしいものがあり、これにあたらしい注連縄しめなわりめぐらしてあるのでした。
し真実の国際語があたらしく必要とすれば、単語の如きも旧来の何物をも模してはならぬ。当然ただ簡明を第一として新らしく組織されねばならない筈だ。
文字と速力と文学 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
おどろいてかへるにあばもの長吉ちようきち、いま廓内なかよりのかへりとおぼしく、浴衣ゆかたかさねし唐棧とうざん着物きもの柿色かきいろの三じやくいつもとほこしさきにして、くろ八のゑりのかゝつたあたらしい半天はんてん
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
江戸えどからあたらしく町奉行まちぶぎやうとして來任らいにんしてから丁度ちやうど五ヶげつるもの、くもの、しやくさはることだらけのなかに、町醫まちい中田玄竹なかだげんちく水道すゐだうみづ産湯うぶゆ使つかはない人間にんげんとして
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
かの女は今、自分の住宅のためにさしてあたらしい欲望を持って居ないのを逸作はよく知って居る。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
若くてあたらしくて、そして夫人に取っては最も思出おもいでの多い少女時代の遊び友達だった、千束守に乗り換えられ、夫の三郎氏は、置き忘れられた秋の扇のように、部屋の片隅にっとして
それが三声みこえめになると、泣くような、怨むような、呻吟うめくような、くるしもがくかと思う意味があきらかにこもって来て、あたらしくまた耳をつんざく……
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれ即座そくざ言葉ことば見出みいだなかつたので、いたづらに、見慣みなれたものゝうへに、さらあたらしくもないゑてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ったかたのほうが、あたらしい帰幽者きゆうしゃ指導しどうするのに、まつわるなん情実じょうじつもなくて、人霊じんれいよりもよほど具合ぐあいよろしいともうすことでございます。
格別の新しがらなくともあたらしい智識ちしきの洗礼を受けたのちの彼女の素直さと女らしい愛らしさと皓潔こうけつ放胆ほうたんがぎすぎすした理窟りくつ気障きざな特別な新らしがりより新らしいのでしょう。
新時代女性問答 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
このほどのことかゝんもくだ/\しや大音寺前だいおんじまへにてめづらしきこと盲目按摩めくらあんまの二十ばかりなるむすめ、かなはぬこひ不自由ふじゆうなるうらみてみづいけ入水じゆすいしたるをあたらしいこととてつたへるくらゐなもの
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かんがへた結果あげく、まあ年長としうへだけに女房かみさん分別ふんべつして、「多分たぶん釜敷かましきことだらう、丁度ちやうどあたらしいのがあるからつておいでよ。」とつたんださうです。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
代助は椅子にこしけた儘、あたらしく二度の世帯しよたいを東京に持つ、夫婦の未来を考へた。平岡は三年前新橋で分れた時とは、もう大分変つてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ことなく高砂たかさごをうたひおさむれば、すなはあたらしき一つい夫婦めをと出來できあがりて、やがてはちゝともはるべきなり、諸縁しよゑんこれよりかれてちがたきほだし次第しだいにふゆれば、一にん野澤桂次のざわけいじならず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
えり白襯衣しろしやつあたらしいうへに、流行の編襟飾あみえりかざりけて、浪人とはだれにも受け取れない位、ハイカラに取りつくろつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わらかしやがらあ。あたらしいくつ穿いたとおもつて、おつおれ他人たにんにしやがる。へん、してくんねえ。」
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
然し彼等はその名前に特別なあたらしい意味をけた。さうして彼の思想をこの大戦争の影響者である如くに言ひ出した。是は誰のにもうつる程しば/\繰りかへされた。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大自然だいしぜんの、悠然いうぜんとして、つちみづあたらしくきよ目覺めざむるにたいして、欠伸あくびをし、はならし、ひげき、よだれつて、うよ/\とたなかひこうごめづる有状ありさまは、わる見窄みすぼらしいものであるが
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しくないとつたつて、是非必要になるんです。是からさき僕が貴方あなたんなあたらしい関係に移つて行くにしても、物質上の供給が半分は解決者ですよ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今度こんどの新聞にもほゞ同様の事が載つてゐる。そこ丈は別段にあたらしい印象をおこしやうもないが、其後そのあとて、三四郎は驚ろかされた。広田先生が大変な不徳義漢の様に書いてある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
最初英吉利イギリスの雑誌にはニーチエといふ名前がしきりに見えた。ニーチエは今度の事件が起る十年も前、既に英語に翻訳されてゐる。英吉利の思想界にあつて別にあたらしい名前でもない。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
只在来の名前に英仏人があたらしい意義を付けた丈である。うから知れてゐる彼等の内容を、一種の刺戟に充ちた異様ので、特別に眺めた丈である。トライチケも復活した名でないかも知れない。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)