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三聲
其が
三聲めに
成ると、
泣くやうな、
怨むやうな、
呻吟くやうな、
苦み
踠くかと
思ふ
意味が
明かに
籠つて
來て、
新らしく
又耳を
劈く……
三聲を
續けて
鳴いたと
思ふと……
雪をかついだ、
太く
逞しい、しかし
痩せた、
一頭の
和犬、むく
犬の、
耳の
青竹をそいだやうに
立つたのが、
吹雪の
瀧を、
上の
峰から
不斷は、あまり
評判のよくない
獸で、
肩車で
二十疋、
三十疋、
狼立に
突立つて、それが
火柱に
成るの、
三聲續けて、きち/\となくと
火に
祟るの、
道を
切ると
惡いのと
言ふ。