幸福かうふく)” の例文
其時そのとき貴方あなたひとに、解悟かいごむかひなさいとか、眞正しんせい幸福かうふくむかひなさいとかこと効力かうりよくはたして、何程なにほどふことがわかりませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たゞ同棲後どうせいご彼女かのぢよは、けつして幸福かうふくではなかつた。おそらく彼女かのぢよもさう運命うんめいつかまうとおもつて、かれのところへたのではなかつたであらう。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
『だつてあなたは、わたしがやつぱし、ちゝのいふ意味いみ幸福かうふく結婚けつこんもとめ、さうしてまた、それに滿足まんぞくしてきてられるをんなだとしかおもつてない……』
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
てん恩惠めぐみかさね/″\くだり、幸福かうふく餘所行姿よそゆきすがた言寄いひよりをる。それになんぢゃ、意地いぢくねのまがった少女こめらうのやうに、口先くちさきとがらせて運命うんめいのろひ、こひのろふ。
しきり面目めんもくながるくせに、あは/\得意とくいらしい高笑たかわらひをつた。家内かない無事ぶじ祝福しゆくふくするこゝろでは、自分じぶんせられたのを、かへつて幸福かうふくだとおもつてよろこんだんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくしはこのごろになつて益々ます/\かんずることは、ひと如何どん場合ばあひてもつねたのしいこゝろもつ其仕事そのしごとをすることが出來できれば、すなは其人そのひとまこと幸福かうふくひとといひることだ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さりながら徃日いつぞや御詞おんことばいつはりなりしか、そちさへに見捨みすてずば生涯しやうがい幸福かうふくぞと、かたじけなきおほうけたまはりてよりいとゞくるこゝろとめがたく、くちにするは今日けふはじめてなれど
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうつぶやきながら、わたし部屋へやすみからまくらめぐらして、あかるい障子しやうじはうにそのおもてけた。南向みなみむきといふことなんといふ幸福かうふくことであらう、それはふゆ滋養じやう大半たいはん領有りやういうする。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
どもたちをおもふと、わたしは幸福かうふくかんじます。わたしは希望きばうかんじます。どもたちをとほしてのみ、まこと人間にんげん生活せいくわつは、その意味いみわかるやうに、わたしにはおもはれます。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
今日こんにち建築けんちく根本義こんぽんぎ決定けつていされなくともふかうれふるにおよばない。やすんじてなんじこのところへ、しからばなんじやしなはれん。やすんじてなんじこのいへすまへ、しからばなんじ幸福かうふくならん。(了)
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
わたくしなによりもうれしい。弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつは、日出雄ひでをためには、むし幸福かうふくであつたかもれません。
彼等かれら自然しぜん彼等かれらまへにもたらしたおそるべき復讐ふくしうもとをのゝきながらひざまづいた。同時どうじこの復讐ふくしうけるためにたがひ幸福かうふくたいして、あいかみに一べんかうことわすれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
僕等のの性格がほろぼされない以上、僕等は到底たうてい幸福かうふくな人となることは出來ない。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
國民こくみん幸福かうふくはかることが出來できるものとかたしんじてうたがはぬのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
女性ぢよせいちうる幸福かうふく一人ひとりでもつてゐるひとである。
とんことさ。』と、ミハイル、アウエリヤヌヰチは聽入きゝいれぬ。『ワルシヤワこそきみせにやならん、ぼくが五ねん幸福かうふく生涯しやうがいおくつたところだ。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
貴方あなたがたがさうてゐられるとすれば、大久保おほくぼつても幸福かうふくです。おいもうとさんがじつと我慢がまんしてゐられるのも、なか/\だとおもひますね。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
やがては令孃ひめをも幸福かうふく位置ゐちゑて、不名譽ふめいよへしはわけもなきことなり、さて濱千鳥はまちどりふみかよみちはともすがらふでにぎりしが、もとより蓮葉はすはならぬ令孃ひめ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まうづるひとがあつて神佛しんぶつからさづかつたものとおもへば、きつ病氣びやうきなほりませう。わたし幸福かうふくなんです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なつはじめたびぼくなによりもこれすきで、今日こんにちまで數々しば/\この季節きせつ旅行りよかうした、しかしあゝ何等なんら幸福かうふくぞ、むねたのしい、れしい空想くうさういだきながら、今夜こんやむすめはれるとおもひながら
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しかし、何事なにごと天命てんめいです。けれどきみよ、けつして絶望ぜつぼうたまふな。吾等われら何時いつか、非常ひじやう幸福かうふくて、ふたゝ芙蓉ふようみねのぞこと出來できませう——イヤ確信くわくしんします、いまより三年さんねんのち屹度きつと其時そのときです。
今夜こんやあなたのおとうさんが、ぼく罵倒ばたうしてしたのも、おやとして無理むりなことではありません。まつたぼくといふをとこは、あなたをなにひとつ幸福かうふくにしてあげることなんかできない人間にんげんなんですから……
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
死屍累々ししるゐ/\とはあのことですね。それがみんな夫婦ふうふなんだから實際じつさいどくですよ。つまりあすこを二三ちやうとほるうちに、我々われ/\悲劇ひげきにいくつ出逢であふかわからないんです。それかんがへると御互おたがひじつ幸福かうふくでさあ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其のひとに取ツてはある意味に於てむし幸福かうふくであるかも知れない。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それはほんたうに幸福かうふくことである。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
くうくう」だとか、内部ないぶだとか、外部ぐわいぶだとか、苦痛くつうや、たいする輕蔑けいべつだとか、眞正しんせいなる幸福かうふくだとか、と那麼言草こんないひぐさは、みなロシヤの怠惰者なまけもの適當てきたうしてゐる哲學てつがくです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いま松野まつのてゝ竹村たけむらきみまれれにまれ、开所そこだめなばあはれや雪三せつざうきやうすべし、わが幸福かうふくもとむるとて可惜あたら忠義ちうぎ嗤笑ものわらひにさせるゝことかは
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この四五ぐわつふものは、わたしつてはたゞゆめのやうで、たのしいとへばたのしいが、さりとて、わたし想像さうざうしてゐたほどまたひとふほど、これわたしの一しやうもつと幸福かうふく時期じきだともおもはぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
じつ人間にんげん萬事ばんじ天意てんゐまゝである。めぐりめぐつて何事なにごと幸福かうふくとなるかもわからぬ。
彼等かれらこの抱合はうがふうちに、尋常じんじやう夫婦ふうふ見出みいだがた親和しんわ飽滿はうまんと、それにともなう倦怠けんたいとをそなへてゐた。さうしてその倦怠けんたいものう氣分きぶん支配しはいされながら、自己じこ幸福かうふく評價ひやうかすることだけわすれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『Kのおくさん、わたしはいまなん幸福かうふく——』
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
それとも此様こんなのが実際じつさい幸福かうふくなので、わたしかんがへてゐたことが、ぶんぎたのかもれぬ。が、これで一しやうつゞけばまづ無事ぶじだ。あつくもなくつめたくもなし、此処こゝらが所謂いはゆる平温へいおんなのであらう。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ましてむこむかへんの嫁入よめいりせんのと、ひとめかしきのぞすこしもなし、たゞそなたさへ見捨みすてずは、御身おんみさへいとはせたまはずは、生涯しやうがい幸福かうふくぞかしとて嫣然につことばかりうちめば、松野まつのじり/\とひざすゝめて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたし畢生ひつせい幸福かうふくかげえてしまつたかのやうにむねさはがせ、いそいで引出ひきだしてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
抱持はうぢ不十分ふじふぶん甲斐かひなきうらめしくなりててたしとおもひしは咋日きのふ今日けふならず我々われ/\二人ふたりくとかば流石さすが運平うんぺい邪慳じやけんつのれるこゝろになるはぢやうなりおやとてもとほ一徹いつてつこゝろやはらぎらば兩家りやうけ幸福かうふくこのうへやある我々われ/\二人ふたりにありては如何いか千辛萬苦せんしんばんくするとも運平うんぺい後悔こうくわいねんまじくしてや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鬼子おにことよべどとびんだるおたかとて今年ことし二八にはちのつぼみの花色はないろゆたかにしてにほひこまやかに天晴あつぱ當代たうだい小町こまち衣通そとほりひめと世間せけんさぬも道理だうりあらかぜあたりもせばあの柳腰やなぎごしなにとせんと仇口あだぐちにさへうはされて五十ごとう稻荷いなり縁日えんにち後姿うしろすがたのみもはいたるわかものは榮譽えいよ幸福かうふくうへやあらん卒業そつげふ試驗しけん優等證いうとうしようなんのものかは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)