みちび)” の例文
たゞならぬ樣子を見て、平次は女をみちびき入れました。奧の一間——といつても狹い家、行燈あんどんを一つ點けると、家中の用が足りさうです。
御夢想ごむさうくすりぢやに……なん病疾やまひすみやかになほるで、ひないな……ちやうど、來合きあはせたは、あなたさまみちびきぢや……あだにはおもはれますな。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
は一こく友人ゆうじん送別会席上そうべつかいせきぜう見知みしりになつたR国人こくじんであつたので、わたしはいさゝか心強こゝろつよかんじて、みちびかるゝまゝにおくとほつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それからまたはこころがしたやうな、へだての障子しやうじさへちひさないへをんなをとこみちびくとて、如何どうしても父母ちゝはゝ枕元まくらもとぎねばらぬとき
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
不束ふつつかむすめでございますが、うぞ今後こんごともよろしうおみちびきくださいますよう……。さぞなにかとお世話せわけることでございましょう……。』
その心持こころもちは今、私をだん/\と宗教的しうけうてき方面はうめんみちびかうとし、反動はんどうのやうに起つて來た道徳的だうとくてきな心は、日光につくわうとなつて私の胸に平和へいわの芽をそだてます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そして、先生せんせいた、一心不亂いつしんふらん此精神このせいしんもつ兒童じどうみちびき、何時いつたのしげにえ、何時いつ其顏そのかほ希望きばうかゞやいてました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
またわたくしの子どもの多くの神はコトシロヌシの神をみちびきとしてお仕え申しましたなら、そむく神はございますまい
余等はみちびかれて紅葉館のはたともに立てた小舟に乗った。宿引は一礼いちれいして去り、船頭はぎい櫓声ろせいを立てゝぎ出す。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
植物の研究が進むと、ために人間社会を幸福にみちびき人生を厚くする。植物を資源とする工業の勃興ぼっこうは国のとみやし、したがって国民の生活をゆたかにする。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
みちびかるゝまゝに入込いりこんだのは、階上にかい南端なんたん一室ひとまで、十じやうぐらいの部室へや中央ちうわうゆかには圓形えんけいのテーブルがへられ、卓上たくじやうには、地球儀ちきゆうぎ磁石じしやくるゐ配置はいちされ
〔譯〕誘掖いうえきして之をみちびくは、教の常なり。警戒けいかいして之をさとすは、教の時なり。に行うて之をきゐるは、教の本なり。言はずして之を化するは、教のしんなり。
ある日、私は、私達わたしたちをこの家へみちびき入れたをかの上へ行つてみた。私は二人でやすんだくさの中へすわつてみた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
此方こつちへ御とほし申しませうか」と門野から催促された時、代助はうんと云つて、座敷へ這入つた。あとからせきみちびかれた平岡を見ると、もう夏の洋服をてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぢやお孃さん、こゝに『子供のみちびき』と云ふ本があります。お祈りをして、よくお讀みなさい。
小使は名刺と視学からの手紙とを受け取って引っ込んだが、やがて清三は応接室にみちびかれた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
これは清一色めいたものにも利用が出来るし、それにまた普通十三枚の配り牌に対し、自分だけは十五枚も持っているのだから、手をかえ、聴牌にみちびくのは、極めて容易である。
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこでたま/\地震ぢしんでもおこると兒童じどうまどひ、そこらにある立木たちきあるひ石燈籠いしどうろうにしがみつく。これはおそらくかういふ場合ばあひ保護者ほごしやひざにしがみつく習慣しゆうかんからみちびかれるものであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
と、この禁猟区きんりょうくに、はじめてみんなをみちびいた、りこうながんがいいました。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分じぶんむかしひとらんとかううたがつてゐるので、そのうたがひのおこみちびきとして
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
自尊じそん自知じち自治じちの三は、一しょうみちびいて王者の位に達せしむるなり)
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ずっとしまいのほうをんでいるガンたちは、ガチョウがもうこれ以上いじょうついていけそうもないのを見てとりますと、クサビがた先頭せんとうになって、みんなをみちびいているガンにむかって呼びかけました。
み冬つき来むかふ春にこころこそゆらぎてやまねみちびきたまふなさけしぬびて
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼等が一日も早く母校に戻って、生徒の本分を尽しますようおみちびきあらんことを願い上げます。尚お今日は在学生が出て参りません。彼等は私達と一緒に新しき兄弟を歓び迎える筈でありました。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かれはかたっぽの長ぐつを切って、しじゅうなめし皮のきれをかんでいた。空腹くうふくがどんなどんぞこのやみにまでわたしたちをみちびくかということを見て、正直の話、わたしははげしい恐怖きょうふを感じだした。
「礼をいう、小四郎、ようみちびいてくれた。そうだ、そちを連れては、京都の世間がうるさい。わしひとりで行って来る。子に手を引かれるのは恥かしいが、お味方に参じた節は、お取做とりなしを頼むぞよ」
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妾を奥の奥のずーッと奥の愛妓あいぎ八重やえと差し向かえる魔室にみちびきぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
空は殆ど暮切っている。一道の火光あかりはあきらかに三人をみちびいた。
武甲山に登る (新字新仮名) / 河井酔茗(著)
ば見た事もなしと云しが扨々俗家に云ぬす猛々たけ/″\しとは汝が事なり今更かゝる惡人にかはことばはなけれども釋迦しやかは又三界の森羅しんらしやう捨給すてたまはず汝の如き大惡人ぜん道にみちびき度思ふがゆゑ及ばずながら出家につらなる大源が申處を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのあるじみちびかれ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
深怨の久我之助と、時の氏神の國府彌八郎と、連れ立つて來たのを、主人永左衞門、自ら案内に立つて、設けの席にみちびき入れました。
たゞ、三角測量臺かくそくりやうだい見通みとほしにさはためはらはれた空隙すきがそれをみちびいた。東隣ひがしどなり主人しゆじん屋根やねの一かくにどさりととまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ゆきそのまゝの待女郎まちぢよらうつて、つてみちびくやうで、まんじともゑ中空なかぞらわたはしは、宛然さながらたま棧橋かけはしかとおもはれました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぽうわたくしほうではそれとなく良人おっとこころはたらきかけて、あぶらつぼ断崖がけうえみちびいてやりましたので、二人ふたりはやがてバッタリとかおかおわせました。
うこそ」とつて、叮嚀ていねい會釋ゑしやくしたなり、さきつて宗助そうすけみちびいた。二人ふたり庫裡くり下駄げたいで、障子しやうじあけうち這入はいつた。其所そこにはおほきな圍爐裏ゐろりつてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
牧羊者ひつじかいが羊のむれみちびいて川を渡るに、先ず小羊こひつじいて渡ると親羊おやひつじいて渡ると云う例をひいて、次郎少年の死は神が其父母生存者せいぞんしゃみちびかん為の死である、と牧師は云うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
こと小形こがたの「フランネル」の水兵服すいへいふくを、裁縫係さいほうがゝり水兵すいへいめいずるやら、いろ/\取計とりはからつてれる、其間そのまに、大佐たいさより命令めいれいのあつた吾等われら居室ゐま準備じゆんび出來できたので、其處そこみちびかれ
しめやかなおとあめはなほつゞいてゐる。すこしばかりえとするさむさは、部屋へやなか薄闇うすやみけあつて、そろ/\と彼女かのぢようつゝ心持こゝろもちにみちびいてく。ぱつと部屋へやがあかるくなる。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ソレ来たというので、スイッチかなにかを入れると、地面がパッと二つに割れて、団員の身体を呑んでしまう——といったやり方で、団員を結社本部へみちびいているのじゃないかという話だった。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「またそんなことを云ふ、どうして分るのです。どんな直覺によつて、大膽にも、墮落した地獄の最高天使と永遠の玉座ぎよくざからの使者——みちびくものと迷はすものとの區別を見分ける顏をするのですか。」
兵をみちびき入れた僧は云った。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次とガラツ八は、不安と焦躁せうさうに眼ばかり光らせてゐる雇人の中をお勝手から納戸へ、奧の方へと通ふ廊下をみちびかれます。
とづいとつと、逆屏風さかさびやうぶ——たしかくづかぜみだれたの、——はしいて、だん位牌ゐはい背後うしろを、つぎふすまとのせまあひだを、まくらはうみちびきながら
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
勘次かんじ草刈籠くさかりかご脊負せおつて巡査じゆんさあといて主人しゆじんいへ裏庭うらにはみちびかれた。巡査じゆんさ縁側えんがは坐蒲團ざぶとんこしけたとき勘次かんじかご脊負せおつたまゝくびれてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うぞわたくしつみをおゆるあそばして、もとのとおりこの不束ふつつかおんな可愛かわいがって、行末ゆくすえかけておみちびきくださいますよう……。
三四郎は画室へみちびかれた時、かすみなかへ這入つた様な気がした。丸卓まるテーブルひぢたして、此しづかさのまささかひに、はばかりなき精神こゝろを溺れしめた。此しづかさのうちに、美禰子がゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さら大佐たいさみちびかれて、いますでに二ねん有餘いうよ歳月さいげつつひやして、船體せんたいなか出來上できあがつた海底戰鬪艇かいていせんとうてい内部ないぶり、つぶさ上甲板じやうかんぱん下甲板げかんぱん、「ウオター、ウエー」、「ウ井ング、パツセージ」、二重底にじゆうそこ
それは如何いかにも、あの綺麗きれいゆきけて、つゆたまになつてとひなかまろむのにふさはしいおとである……まろんだつゆはとろ/\とひゞきいざなはれてながれ、ながれるみづはとろ/\とひゞきみちびいてく。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
この調理法は学者アインシュタインのみちびき出したものであった。
お國は障子を押し倒して這ひ出すと、跣足はだしのまゝ格子の外へ、母親の本能のみちびくまゝに、曉闇を縫つてバタバタと伜の後を追つて行くのでした。