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丸卓
「
遣つて
来たね」と云つて
烟管を
口から取つて、
小さい
丸卓の
上に置いた。
燐寸と灰皿が
載つてゐる。椅子もある。
「もう一時間ばかり」と美禰子も
小さな声で答へた。三四郎は又
丸卓に帰つた。女はもう
描かるべき姿勢を取つた。原口さんは又
烟管を
点けた。
画筆は又動き
出す。
三四郎は画室へ
導かれた時、
霞の
中へ這入つた様な気がした。
丸卓に
肘を
持たして、此
静かさの
夜に
勝る
境に、
憚りなき
精神を溺れしめた。此
静かさのうちに、美禰子がゐる。