面白おもしろ)” の例文
とその家庭かてい苦痛くつう白状はくじやうし、ついにこのしよ主人公しゆじんこうのち殺人さつじん罪人ざいにんなるカ……イ……をともなひてその僑居けうきよかへるにいた一節いつせつきはめて面白おもしろし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
文化ぶんくわ發達はつたつしてれば、自然しぜん何處どこ漠然ばくぜんとして稚氣ちきびてるやうな面白おもしろ化物思想ばけものしさうなどをれる餘地よちくなつてるのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
今からもう、二人は、そら、しかめっつらだと、面白おもしろがっている。近所の人たちを招待できるものなら招待するところだったに違いない。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
まへ講釈かうしやくのと読較よみくらべると、按摩あんまのちさむらひ取立とりたてられたとはなしより、此天狗このてんぐ化物ばけものらしいはうが、かへつて事実じゝつえるのが面白おもしろい。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すると良人おっとわたくし意見いけんちがいまして、それはあま面白おもしろくない、是非ぜひ若月わかつき』にせよとって、なんもうしてもれないのです。
中途ちゆうとからかほした宗助そうすけには、くもせなかつたけれども、講者かうじや能辯のうべんはうで、だまつていてゐるうちに、大變たいへん面白おもしろところがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かつ面白おもしろ人物じんぶつであるから交際かうさいして見給みたまへとふのでありました、これからわたしまた山田やまだ石橋いしばしとを引合ひきあはせて、桃園とうゑんむすんだかたちです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
これ面白おもしろい、近頃ちかごろ落語らくご大分だいぶ流行はやるから、何所どこかで座料ざれうとつ内職ないしよくにやつたら面白おもしろからう、事によつたら片商売かたしやうばいになるかもしれない。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
三時間目に菊池きくち先生がまたいろいろ話された。行くときまった人はみんな面白おもしろそうにして聞いていた。僕は頭があつくていたくなった。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
められてもうれしくはないぞ。玄竹げんちく、それよりなに面白おもしろはなしでもせんか。』と、但馬守たじまのかみかほには、どうもらぬいろがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
とうさんもたこあげたり、たこはなしいたりして、面白おもしろあそびました。自分じぶんつくつたたこがそんなによくあがつたのをるのもたのしみでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
垣根かきねなかンのめったばっかりに、ゆっくり見物けんぶつ出来できるはずのおせんのはだかがちらッとしきゃのぞけなかったんだ。——面白おもしろくもねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
面白おもしろかつたり、つらかつたり………しかし女にやア不自由しねえよ。」きちさんは鳥渡ちよつと長吉の顔を見て、「ちやうさん、君は遊ぶのかい。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「が、ぼくに言わせると、ユーゴーはバイロンよりもいいですね」と、若い伯爵はくしゃく何気なにげなく口ばしった。——「面白おもしろい点でも上です」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
しか比較的ひかくてき※去くわこの三ねんわたくしためにはしのやすかつたよ、イヤ、其間そのあひだには隨分ずゐぶん諸君しよくんには想像さうざう出來できないほど面白おもしろこと澤山たくさんあつた。
訊問じんもんすると、案外あんがいにも老人ろうじんのことを、借金しゃっきん取立とりたてがきびしくへんくつだが、面白おもしろいところのある人物じんぶつだといつたし、また借金しゃっきんのことで
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
おなじ宿やどに木村篤迚、今新潟始審裁判所の判事つとむる人あり。臼井六郎が事をつまびらかに知れりとて物語す。面白おもしろきふし一ツ二ツかきつくべし。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
B あゝ、あれは駄目だめだよ。葉書はがきまいぐらゐの短文たんぶんで、ちよつといた面白おもしろことやう名士めいしいくらもないからな。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
我々われわれまちはなし面白おもしろい、知識ちしきのある人間にんげん皆無かいむなのは、じつ遺憾いかんなことじゃありませんか。これは我々われわれっておおいなる不幸ふこうです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
上方の遊びもつまらなくなって、こうして江戸へ出て来たが、お前と一緒でないと、どこの遊びも面白おもしろくない。ここでうたが百年目さ。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それで、多くの学者がくしゃたちが集って、いろんな面白おもしろあそびごとを考えだしては王子にすすめました。すると王子はこうこたえました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
もし今後こんご中央公論ちゅうおうこうろん編輯へんしゅうたれかにゆずってひまときるとしたら、それらの追憶録ついおくろくかれると非常ひじょう面白おもしろいとおもっていました。
夏目先生と滝田さん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし、彼女かのじょのものの考え方には、どことなく面白おもしろいところがあったので、うちなかのつまらない仕事しごともそのために活気かっきづき、うるおいがしょうじた。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
○ジャズの麻痺まひ、映画の麻痺、それで大概の興味は平凡なものに思える。始終しじゅう習慣的に考えているのは「何か面白おもしろいものは無いか知らん。」
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
如何どうかんがへても聖書バイブルよりは小説せうせつはう面白おもしろいにはちがひなく、教師けうしぬすんでは「よくッてよ」小説せうせつうつゝかすは此頃このごろ女生徒ぢよせいと気質かたぎなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
あいちやんはねんすやうにはれたのを面白おもしろからずおもつて、なにほか話題はなしはじめやうとして、れかれかとかんがへてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
にぎやかで面白おもしろそうな海水浴場のほうは素通りにして、荒涼こうりょうとした砂っ原に降りると、大学生は上原の腕をとって、浪打際なみうちぎわのほうへゆきます。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
他處目よそめうらやましうえて、面白おもしろなりしが、旦那だんなさまころはからひの御積おつもりなるべく、年來としごろらぬことなきいへきをばかり口惜くちをしく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ナニ、永いことがあるものか、手鍋さげても奥山ずまいという本文通りよ、結句けっく、山ん中が面白おもしろ可笑おかしくていいじゃねえか」
いままでまをしました石器せつきは、刃物はものか、それに類似るいじのものでありますが、なほほか刃物以外はものいがいのものもあります。そのなかでも面白おもしろいのは、石棒せきぼうです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「それはだな」と私はうまく説明しようと思った、「つまり、面白おもしろく見せるために、初めからそうするようにちゃんと相談ができているんだ」
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれども、ママはお仕事しごとの手をめようともしないで——一たいあんなにのべつ縫物ぬいものばかりして何が面白おもしろいんだろう!——不足ふそくそうな声でいった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
『あんなことつて、親分おやぶんトボケてるが、面白おもしろ土瓶どびんたやうなものだの、香爐かうろたやうなものだの、澤山たくさん掘出ほりだしてつてるだよ』とをしへてれた。
東京とうきやう仕事しごと如何どうです。新聞しんぶん毎々まい/\難有ありがたう、續々ぞく/\面白おもしろ議論ぎろんますなア』と先生せんせいぼくかほるやくちひらきました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
これをもって方今士君子、唐楽・猿楽にては面白おもしろからず、俗楽は卑俚にえずとして、ほとんど楽の一事を放擲ほうてきするに至る。これまたおしむべきなり。
国楽を振興すべきの説 (新字新仮名) / 神田孝平(著)
「勘太郎が鬼退治をするとよ、ねずみねこりに行くよりひどいや。阿呆あほもあのくらいになると面白おもしろいな。」と言った。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ただ面白おもしろいとかつまらぬとか感ずるだけで、決してそれによって、自分の思想界を占領せらるるごときことはない。
我らの哲学 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
「約束したにはしたけれど、あて面白おもしろくなつて來たのだもの。あんただつて、たまにはつきあつてもいゝだらう。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
ほか家鴨達あひるたちは、こんな、あしすべりそうな土堤どてのぼって、牛蒡ごぼうしたすわって、この親家鴨おやあひるとおしゃべりするより、かわおよまわほうがよっぽど面白おもしろいのです。
面白おもしろげなる顔色がんしよく千番せんばんに一番さがすにも兼合かねあひもうすやらの始末しまつなりしにそろ度々たび/″\実験じつけんなれば理窟りくつまうさず、今もしかなるべくと存候ぞんじそろ愈々いよ/\益々ます/\しかなるべくと存候ぞんじそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
それでも利助りすけさんは、いわのようにだまっていました。どうやら、こんなはなし利助りすけさんには面白おもしろくなさそうでした。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「どうだ、面白おもしろいだろう。あれを見たまえ、こんな平らな鏡が、あすこへ映ると、妙な字ができるだろう」
鏡地獄 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まだその時分は陶工やきものしの名なんぞ一ツだって知っていた訳では無かったが、ただ何となく気に入ったのでしきりとこの猪口を面白おもしろがると、その娘の父がおれにむかって
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今度は高くて容易に手の届きそうもない枝をしきりにぐろうとしては失敗しているのを、私は根気よく、むしろ面白おもしろいものでも見ているように見入っていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「なあおめえ、こんでらもけえときにや面白おもしろえのがんだよなあ」とぢいさんのかたもたかゝるものもあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
器楽曲も幾つか入っているが面白おもしろいのはない。この人の得意のオルガン曲のレコードはまだないようだ。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
けれど、實際じつさいはそれこそ麻雀マージヤン人達ひとたち魅惑みわくする面白おもしろさなので、だれしもすこしそれにしたしんでくるといつとなくそのそのとき縁起えんぎまでかつぐやうになるのも愉快ゆくわいである。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
長高ちょうこう見様けんよう面白おもしろ有一節ひとふしある濃様のうよう鬼拉きらつ幽玄ゆうげん事可然様ことしかるべきよう麗様れいよう有心うしんとしたが、その中で、幽玄・麗様・濃様・長高などにあたる歌をお好みになったらしいので
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
このとりについて面白おもしろいことは、はとやかさゝぎ、栗鼠等りすなどつくつた、ふるにはひつてたまごむことです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ブラ/\と面白おもしろき空想をつれにしてどて北頭きたがしら膝栗毛ひざくりげあゆませながら、見送みおくはててドヤ/\と帰る人々が大尉たいゐとしいくつならんの、何処いづこ出生しゆつしやうならんの、あるひ短艇ボートこと
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)