用事ようじ)” の例文
ちょうどそのとき、中津なかつからくろがね惣兵衛そうべえという商人しょうにん長崎ながさきにきていて、用事ようじがすんだので、中津なかつへかえることになっていました。
その用事ようじがあって床屋とこやのおじいさんがつえをついてそこをとおりかかりましたときに、くろいしつけてひろげました。
てかてか頭の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これはもうし上げられませぬ。てまえのかってな用事ようじをたしにでかけたのです。どうもほかの時刻じこくでは、つごうがわるいものですから。」
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
物言ものいふは用事ようじのあるとき慳貪けんどんまをしつけられるばかり、朝起あさおきまして機嫌きげんをきけば不圖ふとわきひてには草花くさばなわざとらしきことば
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいちやんはほか別段べつだん用事ようじもなかつたので、大方おほかたしまひにはなにことはなしてれるだらうとおもつて悠然ゆつくりつてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その日曜にちえうかれまた安井やすゐふた。それは二人ふたり關係くわんけいしてゐるあるくわいつい用事ようじおこつたためで、をんなとはまつた縁故えんこのない動機どうきから淡泊たんぱく訪問はうもんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ところがある日、和尚おしょうさんは、用事ようじがあってそとへ出て行きました。出て行きがけに、和尚おしょうさんは小僧こぞうにいいつけて
和尚さんと小僧 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
或時あるときがつすえ、ドクトル、ハバトフは、院長いんちょう用事ようじがあって、そのへやったところ、おらぬのでにわへとさがしにた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「きっと、またあそびにむちゅうになって、用事ようじをわすれちまったんだな。しょうのないやつらめ。」
だって、格別かくべつ用事ようじもないのに、折角せっかく私達わたくしたちかしたはなえだごとったり、なにかするのですもの……。
坪井博士つぼゐはかせは、正午過しやうごすぎ、用事ようじため歸京ききやうされたので、あと大野助手おほのぢよしゆ主任しゆにん監督かんとくしてると、午後ごご時頃じごろいたつて、船町倉次郎ふなまちくらじらう受持うけもち山麓さんろくから、多數たすう圓石まるいし發見はつけんした。
なん用事ようじがあつて國清寺こくせいじくかとふと、それには因縁いんねんがある。りよ長安ちやうあん主簿しゆぼ任命にんめいけて、これから任地にんち旅立たびだたうとしたとき生憎あいにくこらへられぬほど頭痛づつうおこつた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「おこのがまた、白壁町しろかべちょうさんへ、どのような用事ようじったのじゃ。はよかせ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
或年雲飛うんぴ用事ようじありて外出したひまに、小偸人こぬすびとはひつて石をぬすんでしまつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
證據となしかたきねらふは必定なりと思ひ日頃より用心堅固けんごにして身を戒愼つゝしみ居たりしが此日重四郎に用事ようじあつ隣家となり來掛きかゝりし所重四郎がたくにて囂々がや/\と人聲なすゆゑ何事やらんとひそかに身をひそめ内の樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
用事ようじなんです。」
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おじいさんは、自分じぶん用事ようじのことをおもしました。そして、また自分じぶんのゆくところをたずねて、まちなかをうろついていました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
其夜そのよとこりしかども、さりとは肝癪かんしやくのやるなく、よしや如何いかなる用事ようじありとても、れなき留守るす無斷むだん外出ぐわいしつ殊更ことさら家内かないあけはなしにして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さいわいなことに、にいさんが、役所やくしょ用事ようじ長崎ながさきへでかけることになったので、諭吉ゆきちもいっしょにいくことになりました。
或時あるときぐわつすゑ、ドクトル、ハヾトフは、院長ゐんちやう用事ようじつて、其室そのへやつたところらぬのでにはへとさがしにた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
今迄いままでもよく法螺ほらいてわたくしだましたもんです。それに今度こんど東京とうきやう用事ようじふのがぽどめうです。なんとか蒙古王もうこわうのために、かねを二萬圓まんゑんばかりりたい。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ある日和尚おしょうさんは用事ようじがあってまちへ行ったかえりに、一けん道具屋どうぐやで、ったかたちちゃがまをつけました。和尚おしょうさんはさっそくそれをってかえって、自分じぶんのお部屋へやかざって
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
堪忍かんにんしておくんなさい。あたしゃ内所ないしょ用事ようじでござんすから。……」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
脾腹ひばら突込つゝこみぐつと一ゑぐりゑぐりし時重四郎は荼比所だびしよ火影ひかげかほ見逢みあはせヤア三五郎か重四郎殿好機しつくり參つて重疊々々ちようでふ/\扨此樣子は先刻さつき用事ようじあつて貴殿の宅へ參りし所何か人聲がする故樣子有んとうかゞへば金兵衞が子分共こぶんども我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
東京とうきょうは、ゆきは、あまりないが、ふゆかぜさむいといている。そと用事ようじかけるのにも、えりきがなくてはならないだろう。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
でも、おかあさんに、ほんとうのことをはなしたら心配しんぱいするので、きゅうな用事ようじができたことにして、見物けんぶつをやめ、いそいで東京とうきょうにかえりました。
間違まちがひやらなにやら私等わたしらことならねどたゞきやくさまのおほせにはいま車夫しやふ用事ようじがあるあし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あるときおとうさんは、よんどころない用事ようじ出来できて、京都きょうとのぼることになりました。
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
立て奧へ入しがしばらありて出來り兩人にむかひ御口上のおもむき上へうかゞひしに御意ぎよいには町奉行の役宅は非人ひにん科人とがにんの出入致しけがらはしき場所のよし左樣の不淨ふじやうなる屋敷へは予は參る身ならず用事ようじあらば日向守殿に此方へ來られよとの御意ぎよいなれば此段このだん日向守殿へ御達おんたつし下されと言捨いひすてて奧へぞ入たり兩人は手持無沙汰てもちぶさたよんどころなく立歸たちかへり右の次第を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたしは、あそびにまちたのでない。はや用事ようじをすまして、くらくならないうちに、むらまでかえらなければならぬ。」と、おじいさんはおもいました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでさるぎもというものをげなければ、とてもたすかる見込みこみがないというので、わたしがおまえさんをさそしにたのさ。だからかんじんの用事ようじというのはぎもなんですよ。
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
荷物にもつ通運便つううんびんにてさきへたゝせたればのこるは一つに輕〻かる/″\しき桂次けいじ今日けふ明日あすもと友達ともだちのもとをせめぐりてなにやらん用事ようじはあるものなり、わづかなる人目ひとめひまもとめておぬひたもとをひかえ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「なんで、あのいているのだろう。」と、おじいさんはおもいました。けれど、おじいさんは、用事ようじいそいでいました。
雪の上のおじいさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
らちもなく万年青おもとあらひ、さては芝生しばふつてひろ姿すがたわれながらられたていでなく、これを萬一もし學友ともなどにつけられなばと、こヽろ笹原さヽはらをはしりて、門外もんぐわい用事ようじ兎角とかくいとへば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「だってそのぎもがいちばんかんじんな用事ようじなのだから。」
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
まだほかにいろいろめずらしいものや、わたしたちには用事ようじのない、らないようなものがいたるところにあるということです。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちやして大奧おほおくにもたかく、お約束やくそく聟君むこぎみ洋行中やうかうちうにて、寐覺ねざめ寫眞しやしんものがたる總領そうりやう令孃ひめさへ、垣根かきねさくられかし吾助ごすけ、いさヽかの用事ようじにて大層たいそうらしく、御褒美ごはうびたまはる菓子くわし花紅葉はなもみぢ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
場末ばすえまちんでいるのだけれど、用事ようじがあって、こちらのったひとのところへやってきますと、そのひとうちで、展覧会てんらんかいのあるはなしきました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みねしゆう白金しろかね臺町だいまち貸長屋かしながやの百けんちて、あがりものばかりにじやう綺羅きら美々びゝしく、れ一みねへの用事ようじありてかどまできしが、千りやうにては出來できまじき土藏どざう普請ふしんうらやましき富貴ふうきたりし
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「きっと、用事ようじがあってこられなくなったんでしょう。また来年らいねんわれますよ。」と、おかあさんは、おっしゃいました。
海へ帰るおじさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
はなしたふむつゆのあしたならぶるつばさ胡蝶こてふうらやましく用事ようじにかこつけて折々をり/\とひおとづれに餘所よそながらはなおもてわがものながらゆるされぬ一重垣ひとへがきにしみ/″\とはもの言交いひかはすひまもなく兎角とかくうらめしき月日つきひなり隙行ひまゆこまかたちもあらば手綱たづな
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ゆきえて、また来年らいねんともなって、木々きぎのこずえにあたらしいみどりきざし、小鳥ことりのさえずるころにならなければ、ここへがってくる用事ようじもなかったのでした。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ごはんべてからですね。そうすれば、おれも用事ようじわるから、いかれますよ。」と、秀吉ひできちは、こたえました。
さか立ち小僧さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
きっと、むらひとが、なにか用事ようじがあっておそくなり、そして、いまかえるのだろう……と、こうおもって、かれは、って雨戸あまどほそめにあけて、のぞいたのです。
般若の面 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おまえは、まだななかったのか。もうおまえみたいなばかには用事ようじがないから、さっさとていけ。」といって、おとうとは、りつくしまがなかったのです。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どうしたのか、そのボールはつかりませんでした。おとなりいさむちゃんは、用事ようじができてかえってしまったけれど、かれだけは、まだ、おもいきれなかったのでした。
少年と秋の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
うつくしいがさがやぶれると、もうむらむすめたちは、用事ようじがないといわぬばかりに、どこかへってしまいました。
日がさとちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねえさんは、ちょっと用事ようじがあっていってくるところがあるのよ。おまえは、どこへもいかずに、ここにってておくれ、すぐにねえさんはかえってくるから。」
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おまえがそんなにほしければ、用事ようじをしまったらいっておいでなさい。」と、おかあさんはいわれました。
海ほおずき (新字新仮名) / 小川未明(著)