無理むり)” の例文
十六ではまだはりたなくつてもいゝといふのはそれは無理むりではない。しか勘次かんじいへでおつぎの一かうはりらぬことは不便ふべんであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それでは魔物まもの不承知ふしようちぢや。前方さきちつとも無理むりはねえ、るもらぬもの……出来でき不出来ふでき最初せえしよから、お前様めえさまたましひにあるでねえか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
無理むりに申させても取上には相成あひならぬぞ其源次郎と申はナ細川の家來けらいにて井戸源次郎と云者新吉原の三浦屋四郎左衞門かゝへの遊女いうぢようつせみを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
このおじいさんが、これほど、ほねをおってげたうおを、だれが、べるのだろうか? そうおもったことに、無理むりはなかったのです。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
これは無理むりなことでありました。そこで人力曳じんりきひきの海蔵かいぞうさんも、まんじゅうがさをぬいで、利助りすけさんのためにあやまってやりました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「何、無理むりにもつかまえようと思えば、一人ひとりぐらいは掴まえられたのです。しかし掴まえて見たところが、それっきりの話ですし、——」
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あゝ貴君あなたのやうにもないおりき無理むりにも商買しようばいしてられるは此力このちからおぼさぬか、わたし酒氣さかけはなれたら坐敷ざしきは三昧堂まいどうのやうにりませう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けだし論者のごとき当時の事情じじょうつまびらかにせず、軽々けいけい他人の言によって事を論断ろんだんしたるがゆえにその論の全く事実にはんするも無理むりならず。
シュリオはニヴェルネ運河うんが水門守すいもんもりをしているのだが、知ってのとおり植木職人しょくにんの世話を水門守にしてもらうのは無理むりだからね。
いまから數分すうふん以前いぜんにかのふね本船ほんせん右舷うげん後方こうほう海上かいじやうおい不思議ふしぎにも難破信號なんぱしんがうげたこととでかんがあはせるとかゝ配慮しんぱいおこるのも無理むりはあるまい。
『それだから今度こんど瀑布たき修行場しゅぎょうばとなったのじゃ。そちとおり、こちらの世界せかいおきてにはめったに無理むりなところはない……。』
「だから、無理むりをしても、もう一二ヶげつところだけあはせるから、其内そのうちうかしてくださいと、やすさんがふんだつて」
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おそろしくのたかい武士。筋骨きんこつも太く、容貌ようぼうがまたなくすごいようにみえたが——オオなるほどこれには蛾次郎が仰天したのも無理むりではない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどもなぜかまたひたいふかしわきざんで、それにたいへんつかれているらしく、無理むりわらいながら男の子をジョバンニのとなりにすわらせました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかしこの手紙が、松江にとってどれほど無理むりな注文であるかを先生は知っていた。赤ん坊のユリエはいなくなっても、松江にはまだ弟妹ていまいが二人あった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ここに於て雲飛うんぴはじめこの老叟らうそうけつし唯物たゞものでないとき、無理むりやりに曳張ひつぱつうちかへり、ひざまづいていしもとめた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
考へて見れば無理むりの無い所で、さうして此間このかんの事は硯友社けんいうしやのヒストリイからふと大いにあぢは一節いつせつですよ
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そして時たま友たちなんかとどこともない球突塲たまつきばいてはみるが、以前ほどおも白くない、持てんも百てんせう無理むりになつてまあ八十てんといふところになつてしまつた。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それと見て、かかりのごけらいは、ながもちのとめがねをはずして、りっぱなきものをとりだし、無理むりむたいに若いものに行水ぎょうずいをつかわせて、それを着せました。
そんな心掛こころがけは、このたちにはそもそも註文ちゅうもんするだけ無理むりなのです。そういうところは、この子たちも大人おとなおなじです。「すすめッ」と、世間せけんつよい人たちはいいます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
りのこつなさへせきとほざけられて、なにかしらつたはなしのありさうなのを、玄竹げんちくがかりにおもひつゝ、かぬこし無理むりからけて、天王寺屋てんわうじや米屋よねや
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
乳母 はれまア、可愛相かはいさうに! 其樣そのやうしからしゃりますは、殿とのさま、それは貴下こなた無理むりでござります。
無理むりやりに、手習てならいッふでにぎらせるようにして、たった二ぎょうふみではあったが、いやおうなしにかされた、ありがたくぞんそうろうかしこの十一文字もじになるままに
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「うん、きみもかわいそうな人だな、なるほど奥さんも無理むりはない。ああ奥さんもかわいそうだ」
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
彼女かのぢよはそのとき自分じぶん境遇きやうぐうをふりかへつて、再婚さいこんこゝろうごくのは無理むりもないことだとみづかさばいた。それを非難ひなんするひとがあつたならば、彼女かのぢよ反對はんたいにそのひとめたかもしれない。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
また重吉の家は村一番の大金持ちでしたが、六兵衛の家は村一番の貧乏びんぼうでした。それでいて二人が兄弟のように仲がいいのですから、村の人々が不思議ふしぎに思ったのも無理むりはありません。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ると、宛然まるで空々そら/″\しい無理むり元氣げんきして、ひて高笑たかわらひをしてたり、今日けふ非常ひじやう顏色かほいろいとか、なんとか、ワルシヤワの借金しやくきんはらはぬので、内心ないしんくるしくるのと、はづかしくところから
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
今夜こんやあなたのおとうさんが、ぼく罵倒ばたうしてしたのも、おやとして無理むりなことではありません。まつたぼくといふをとこは、あなたをなにひとつ幸福かうふくにしてあげることなんかできない人間にんげんなんですから……
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
みくしゃにしている、それを無理むりに引き放そうっていうんで、あたしゃ、汗をかきましたよ。それでいて、このあたしをそんなふうに抱き締めてくれたことなんか、ありゃしないんですからね
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
『けど、もつと分明はつきりへとつたつてそれは無理むりよ』あいちやんはきはめてつゝましやかにこたへて、『でも、わたしはじめッから自分じぶん自分じぶんわからないんですもの、幾度いくどおほきくなつたりちひさくなつたりしたんで、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
無理むりないわ あたしだつてかなしくなつちまつたわ アーン アーン
想像そう/″\なかつたのも無理むりのないことである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
くやしがるのも無理むりはありません。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あさからばんまで無理むりばかり
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
なるほど、いつかないということが、ゆうちゃんにもわかったから、このうえ無理むりにおとうさんにおねがいしても、むだだとさとったのでした。
青い石とメダル (新字新仮名) / 小川未明(著)
きふひくくなりますからをつけて。こりや貴僧あなたには足駄あしだでは無理むりでございましたか不知しらよろしくば草履ざうりとお取交とりかまをしませう。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
目がめると雪がやんでいた。わたしは外をながめた。雪はひじょうに深かった。無理むりに出て行けばひざの上までうずまりそうであった。
致しかく宜敷計らひ候はん初瀬留樣にも此程このほどは日毎に御噂おうはさばかりなりと無理むりに手を取り其邊そのあたりなる茶屋へともなさけさかななどいださせて種々馳走ちそう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それがこの自分じぶんでもひどいやであつたが、冬至とうじるから蒟蒻こんにやく仕入しいれをしなくちやらないといつて無理むりたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
んなことをするのも、矢張やは修行しゅぎょうひとつじゃ。かみとして無理むりにはすすめぬから、りのままにこたえるがよい。うじゃってはないか?
まへさんそのさけへるほどならやとおひなさるを無理むり仕事しごとくだされとはたのみませぬ、わたし内職ないしよくとてあさからにかけて十五せんせきやま
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本目ほんめ無理むりんだ。三本目ぼんめにもへなかつた。宗助そうすけかべたして、つて相手あひてのないひとやうをして、ぼんやり何處どこかを見詰みつめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それからよこからじっとおみちを見るとまだ泣きたいのを無理むりにこらえて口をびくびくしながらぼんやりを赤くしているのがったたぬきのようにでも見えた。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
洋畫やうぐわつててやうといふぼく空想くうさうとしては此處こゝ永住えいぢゆういへちたいといふのも無理むりではなからう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
これを冷静れいせいにみるという伊那丸いなまるのことばは、余人よじんなら知らずこのの多い人たちへは、無理むりないましめ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
らに第二の徳川政府を見るにぎざるべしと一般に予想よそうしたるも無理むりなき次第しだいにして、維新後いしんご変化へんかあるいは当局者においてはみずから意外いがいに思うところならんに
ロレ 人聲ひとごゑがする。……こりゃひめよ、ま、はやてござれ、そこは疫癘えきれい無理むり睡眠すゐみん宿やどぢゃほどに。人間以上にんげんいじゃうちからため折角せっかく計畫はかりごとみなやぶれた、さ、はやうござれ。
おまえの腹立はらだちにすこしも無理むりはないのだから、おまえの胸はおれがよくってるから、となりの家へでもいってな、となりのおかあさんにおまえの胸をよく聞いてもらえよ。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
には古池ふるいけつて、そのほとりおほきな秋田蕗あきたふきしげつてたので、みな無理むりふき本宗匠もとそうせうにしてしまつたのです、前名ぜんめう柳園りうゑんつて、中央新聞ちうわうしんぶん創立そうりつころ処女作しよぢよさくを出した事が有る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
またあのやぶしげつてゐるのをては、さうふのも無理むりはありますまい。わたしはこれもじつへば、おもつぼにはまつたのですから、をんな一人ひとりのこしたままをとこやぶなかへはひりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)