此上このうへ)” の例文
さいはひ非常ひじやうなる同情どうじやう好意かういもつて一億圓おくゑんのクレデイツトの設定せつていをすることが出來できたことは、日本にほん財界ざいかいつて此上このうへもなき次第しだいである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
此上このうへにおたのみは萬々ばん/″\見送みおくりなどしてくださるな、さらでだにおとこ朋友ともだち手前てまへもあるになにかをかしくられてもおたがひつまらず
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヘイ、色々いろ/\介抱かいはういたしましたがきませぬ、此上このうへ如何いかゞいたしませう。殿「イヤ、まつた生体しやうたいなければさひはひぢやて、今度こんど解剖ふわけぢや。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
思へば内府の思顧の侍、其數を知らざる内に、世を捨てし瀧口の此期このごに及びて君の御役に立たん事、生前しやうぜん面目めんぼく此上このうへや候べき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
はなしそれからまへうちはなれて、家主やぬしはううつつた。これは、本多ほんだとはまる反對はんたいで、夫婦ふうふからると、此上このうへもないにぎやかさうな家庭かていおもはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
死神しにがみ吾等われら婿むこ死神しにがみ吾等われら嗣子あとつぎ此上このうへ吾等われらんでなにもかも彼奴あいつれう、いのち財産しんだいなにもかも死神しにがみめにれませうわい。
「おほせまでもさふらはず、江戸表えどおもてにて將軍しやうぐん御手飼おてがひ鳥籠とりかごたりとも此上このうへなんとかつかまつらむ、日本一につぽんいちにてさふらふ。」と餘念よねんていなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
じつわたくし貴方あなたとの談話だんわおいて、此上このうへ滿足まんぞくましたのです。で、わたくし貴方あなたのおはなし不殘のこらずうかゞひましたから、此度こんど何卒どうぞわたくしはなしをもおください。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すくひしなり或時あるとき彼の四人打寄うちよつ耳語さゝやくやう又七こと是迄これまで種々しゆ/″\非道ひだうになすと雖も此家を出行いでゆく景色なし此上このうへは如何せんと相談さうだんしけるにおつねひざすゝめ是は毒藥どくやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其所そこ發掘はつくつ機會きくわいた。千載せんさいの一ぐう。それに參豫さんよしたは、じつ採集家さいしふかとしての名譽めいよ此上このうへい。
お前に此上このうへ心配や労働をさせて成るものか、其れはおれから云ふ事だ。
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
むなしく波上はじやうたゞよつてるのは無謀むぼう此上このうへもないことです。
モン長 なう、なさけなや、我君わがきみ! 我子わがこ追放つゐはう歎悲なげきあまりにおとろへて、つま昨夜やぜん相果あひはてました。なほ此上このうへにも老人らうじんをさいなむは如何いかなる不幸ふかうぢゃ。
幼君えうくん其時そのとき「これにてよきか」とものたづねたまへり。「天晴あつぱれ此上このうへさふらふ」と只管ひたすらたゝへつ。幼君えうくんかさねて、「いかになんじこゝろかなへるか、」
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
先刻さつき、運動会はつまらないから、此所こゝにゐると、おかの上で答へた時に、美禰子は真面目な顔をして、此上このうへには何か面白いものがありますかと聞いた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
取つて親子が活計たつきとなすも今茲ことし丁度ちやうど三年越し他に樂みもあらざれど娘もいと孝行かうかうにして呉る故それのみが此上このうへもなき身のよろこび是も今茲ことしはモウ十七婿むこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
卑賤ひせんにそだちたる我身わがみなればはじめより此上このうへらで、世間せけん裏屋うらやかぎれるものとさだめ、我家わがやのほかに天地てんちのなしとおもはゞ、はかなきおもひにむねえじを
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
同時どうじ爲替相場かはせさうば調節てうせつ國際貸借こくさいたいしやく改善かいぜん此上このうへもない次第しだいかんがへる。まへべたごとく、金解禁きんかいきん日本内地にほんないちからてもさうであるが、海外かいぐわいかられば一そう大問題だいもんだいである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
昔の人で了簡れうけんせまいから、途方とはうれてすご/\とうちかへり、女房にようばう一伍一什いちぶしじうを話し、此上このうへ夫婦別ふうふわかれをして、七歳なゝつばかりになる女の子を女房にようばうあづけて、くにかへるより仕方しかたがない。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
マーキュ おゝ、柔弱てぬるい、不面目ふめんもくな、卑劣ひれつ降參かうさん! 此上このうへけんあるのみぢゃ。(劍を拔く)。チッバルト、いやさ、猫王ねこまたどの、おきゃらうか?
すゝまれもせず、引返ひきかへせばふたゝ石臼いしうすだの、まつだの、屋根やねにもひさしにもにらまれる、あの、此上このうへもないいやおもひをしなければならぬのと、それもならず。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
既に平岡にとついだ三千代に対して、こんな関係が起り得るならば、此上このうへ自分に既婚者の資格を与へたからと云つて、同様の関係がつゞかない訳には行かない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此方は増々ます/\聲ふるはせもう此上このうへは爭ふより今にをつとが歸りなば直樣すぐさま分る事柄なり金の出所は市之丞より受取たるに相違さうゐなしと終には互に大音だいおんあげ云爭いひあらそひて居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ともおもまたみづからはげましては、なんわけもなきこと、大英斷だいえいだん庭男にはをとことさへりしわれ此上このうへ出來できごと覺悟かくごまへなり、たゞあやふきは令孃ひめこヽろにて、首尾しゆびよくふみとヾきたりとも
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
また折々をり/\のおかたのおともをいたして、大坂おほさか有名いうめい藤田様ふぢたさま御別荘ごべつさうまゐりまして、お座敷ざしき拝見はいけんしたり、御懐石ごくわいせき頂戴ちやうだいしたあと薄茶うすちやいたゞいたりして、誠に此上このうへもない結構けつこうな事でございます。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
消費者せうひしやかられば此上このうへもない福音ふくいんである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
もとより些細ささいのことながら萬事ばんじしてくのごとけむ、向後かうご我身わがみつゝしみのため、此上このうへ記念きねんとして、鳥籠とりかごとこゑ、なぐさみとなすべきぞ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
堪忍かんにんをし、なんおもつても先方さき大勢おほぜい此方こつちみなよわいものばかり、大人おとなでさへしかねたにかなはぬはれてる、れでも怪我けがのないは仕合しあはせ此上このうへ途中とちうまちぶせがあぶない
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしいくら退屈たいくつだつて、此上このうへ御目出おめでたいものを、たりいたりしちやほねれますし、また御正月おしやうぐわつらしいものをんだりつたりするのもおそれますから、それで、御正月おしやうぐわつらしくない
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いゝ塩梅あんばい今日けふみづがふへてりますから、なかはいりませんでも此上このうへうございます。)とかうひたして爪先つまさきかゞめながら、ゆきのやうな素足すあしいしばんうへつてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此上このうへには石があつて、がけがあるばかりである。面白いものがあり様筈がない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
別亭はなれ洒落しやれたるがありて、名物めいぶつまつがありてと父君ちヽぎみ自慢じまんにすがり、わたく年來としごろまヽくらして、此上このうへのおねがひはまうしがたけれど、とてもの其處そこおくらしてはたまはらぬか、甚之助樣じんのすけさま成長おうきうならば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いはゞわし福人ふくじん一人ひとり、いづれも柔順おとなしい子供こどもつてそだてるにかゝらずひとにはめられる、分外ぶんぐわいよくさへかわかねば此上このうへのぞみもなし、やれ/\有難ありがたことものがたられる、あの相手あいてさだめし母樣はゝさん
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いで、此上このうへは、茄子なすびいんむすんでけ、いろはにほへとといのるならば、などか奇特きどくのなかるべき、などか、ちりぬるをわかンなれ。」といのときかさはんびらきにした、なかにも毒々どく/\しい魔形まぎやうなのが
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此上このうへには何か面白いものがつて?」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
月給げつきうの八ゑんはまだ昇給しようきう沙汰さたし、此上このうへ小兒ちいさいうまれて物入ものいりがかさんで、人手ひとでるやうにつたら、おまへがたがなんとする、美尾みを虚弱きよじやく身體からだなり、良人おつとたすけて手内職てないしよくといふも六ツかしかるべく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此上このうへ何事なにごとおこつたら、三人さんにんとも團子だんごつてしまつたらう。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
如何どうも申されねどおまへさまのおさしさはにしみてわすれませぬ勿躰もつたいなけれどお主樣しゆうさまといふ遠慮ゑんりよもなく新參しんざんのほどもわすれてひたいまゝの我儘わがまゝばかり兩親ふたおやそばなればとて此上このうへ御座ございませぬりながらくやしきは生來せいらいにぶきゆゑ到底とて御相談ごさうだん相手あいてには
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)