身分みぶん)” の例文
ヂュリ そのやうなことをそちしたこそくさりをれ! はぢかしゃる身分みぶんかいの、彼方あのかたひたひにははぢなどははづかしがってすわらぬ。
かれは学校生活の時代から一種の読書家であつた。卒業ののちも、衣食のわづらひなしに、講読の利益を適意に収め得る身分みぶんほこりにしてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
イワン、デミトリチ、グロモフは三十三さいで、かれ此室このしつでの身分みぶんいもの、元來もと裁判所さいばんしよ警吏けいりまた縣廳けんちやう書記しよきをもつとめたので。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それから早速さっそくひとたのんで、だんだん先方せんぽう身元みもとしらべてると、生憎あいにくおとこほう一人ひとり息子むすこで、とても養子ようしにはかれない身分みぶんなのでした。
せい元來ぐわんらい身分みぶん分類ぶんるゐで、たとへばおみむらじ宿禰すくね朝臣あそんなどのるゐであり、うぢ家系かけい分類ぶんるゐで、たとへば藤原ふじはらみなもとたひら菅原すがはらなどのるゐである。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
まあ、おたがいに自分じぶんまれついた身分みぶん満足まんぞくして、けもの獣同士けものどうしとり鳥同士とりどうし人間にんげん人間同士にんげんどうしなかよくらすほどいいことはないのだ。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
幕府ばくふとちがって、すぐれたものはどんどん出世しゅっせもできるし、政府せいふ身分みぶんのたかいひとも、きみにぜひきてほしいといっているのだ。
あるのことでございます。身分みぶんたかいお役人やくにんが、店頭てんとうにおえになりました。お役人やくにん主人しゅじんされて、陶器とうき子細しさいられまして
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや阿關おせきこうふとちゝ無慈悲むじひ汲取くみとつてれぬのとおもふからぬがけつして御前おまへかるではない、身分みぶん釣合つりあはねばおもこと自然しぜんちがふて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれどそちいやしくも魚族ぎよぞくわうの、ちゝをさつたらばそのあとぐべき尊嚴たうと身分みぶんじや。けつして輕々かろ/″\しいことをしてはならない。よいか
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
つとむる身分みぶんとして其儘そのまゝ召仕めしつかおきたるぞや假令たとへ當人たうにんより申出ずとも其方そのはうよりいとまを出すべきはずなり此故に何か樣子やうすあらんと申せしなりさだめ不義ふぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
身分みぶんの高い人もひくい人も、みんなそこへおまいりにやってきて、そのような神聖しんせい場所ばしょのあるこの地方を、ほめたたえることになるでしょう。
(三)だい二の横穴よこあな數人すうにん合葬がつそうしたるは主人しゆじんおよ殉死者じゆんししやれたりと解釋かいしやくせず。身分みぶん格別かくべつ隔絶かくぜつなき武人ぶじんの、同日どうじつ戰死者せんししや合葬がつそうしたるもの考證かうしようす。
みなくらゐたか身分みぶんたふとかたで、一人ひとり石造いしつくりの皇子みこ一人ひとり車持くらもちの皇子みこ一人ひとり右大臣うだいじん阿倍御主人あべのみうし一人ひとり大納言だいなごん大伴御行おほとものみゆき一人ひとり中納言ちゆうなごん石上麻呂いそのかみのまろでありました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
内儀かみさんは成程なるほどさういふ心持こゝろもちるのかと、それから種々いろ/\身分みぶん相應さうおう苦勞くらうまぬことをはなしかせると
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
らばいかなる身分みぶんの者ぞ、衞府附ゑふづきさむらひにてもあるか』。『いや、さるものには候はず、御所の曹司に横笛と申すもの、聞けば御室おむろわたりの郷家の娘なりとの事』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「陛下よ、まったくおっしゃるとおりでございます。わたくしは畜生同然ちくしょうどうぜん身分みぶんでございますが、私のようなものにさえまことの力はこのようにおおきくはたらきます」
手紙 二 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
今度の事件を聞かされて以来、彼女の気がかりになっていたのはやはり篤介の身分みぶんだった。殊に貧しげな彼の身なりはこの世俗的な問題に一層の重みを加えていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その品物をすっかり船につみおえたところで、忠義者ちゅうぎもののヨハネスは商人しょうにんの身なりをしました。王さまも、身分みぶんを知られないようにするため、おなじ身なりをしました。
その中には、高津たかつのお宮のお飲み水を取る役所で働いていた、吉備きびの生まれの、ある身分みぶんの低い仕丁よぼろで、おいとまをいただいておうちへ帰るのが、乗り合わせておりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
花前の友人ゆうじんという人が、とつぜんたずねてきて、花前の身分みぶんがようやく明らかになった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
当時いまばちあたつてういふ身分みぶん零落おちぶれ、俄盲目にはかめくらになりました、可愛想かあいさうなのは此子供このこぞうでございます、んにもぞんじませぬで、おや因果いんぐわが子に𢌞めぐりまして、此雪このゆきなか跣足はだしで歩きまして
だが、のちの大軍師だいぐんし幸村ゆきむらも、この時はまだ才蔵さいぞうよりも大九郎よりも後輩こうはいであったし、上田城うえだじょう城主じょうしゅ昌幸まさゆきの子とはいいながら、質子ちしとしてきている身分みぶんなので、なにかにつけて肩身かたみがせまい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くのごと文学者ぶんがくしや身分みぶん不相応ふさうおう勢力せいりよくいうし且つ身分みぶん不相応ふさうおうにのンきなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
いいえおはなしいたしませぬ。今頃いまごろましあそばしましては、お身分みぶんかかわりまする。もしまた、たっておましあそばしますなら、一おうわたくしどもから御家老ごかろうへ、そのよしつたえいたしませねば。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いかに息災そくさいでもすでに五十九、あけて六十にならうといふのが、うちでこそはくる/\𢌞まはれ、近頃ちかごろ遠路とほみちえうもなく、父親ちゝおやほんる、炬燵こたつはし拜借はいしやくし、母親はゝおや看經かんきんするうしろから、如來樣によらいさまをが身分みぶん
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と、れい身分みぶんのいい家鴨あひるはもう一繰返くりかえして
イワン、デミトリチ、グロモフは三十三さいで、かれはこのしつでの身分みぶんのいいもの、元来もと裁判所さいばんしょ警吏けいり、また県庁けんちょう書記しょきをもつとめたので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「結構な身分みぶんですね」とひやかした。三千代は自分の荒涼なむねうちを代助に訴へる様子もなかつた。だまつて、つぎつてつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とおきになりました。けれどもはちかつぎは、自分じぶんのほんとうの身分みぶんをいえば、おとうさんのはじになることをおもって、ただ
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いま身分みぶんおもしたところなんとなりまする、さき賣物買物うりものかひものかねさへ出來できたらむかしのやうに可愛かわひがつてもれませう、おもてとほつててもれる
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こうなると、おもしろくないのは、奥平壱岐おくだいらいきでした。壱岐いき身分みぶんのたかい家老かろうのむすこで、諭吉ゆきちより十さいぐらい年上としうえです。
それから、幾日いくにちかたってから、あには、まちにりっぱな商店しょうてんしました。そして、そこの帳場ちょうばにすわって、おおくの奉公人ほうこうにん使つか身分みぶんとなりました。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其方儀そのはうぎ天一坊身分みぶんしか相糺あひたゞさず百姓町人を欺き金銀を掠取かすめとり候段かみないがしろに致し重々不屆につき遠島ゑんたう申付る(八丈島)
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これからは、なんおうが、小桜神社こざくらじんじゃ祭神さいしんとしてしもされもせぬ身分みぶんじゃ……。早速さっそく出掛でかけるといたそう。
れが實際問題じつさいもんだいになると、土地とち状態じやうたい風土ふうど關係くわんけい住者ぢうしや身分みぶん境遇きやうぐう趣味しゆみ性癖せいへき資産しさん家族かぞく職業しよくげふその種々雜多しゆ/″\ざつた素因そいん混亂こんらんしてたがひあい交渉かうせうするので
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
乳母 さいな、あのかたはッしゃるには、行儀ぎゃうぎもよければ深切しんせつでもあり、男振をとこぶりはよし、器量人きりゃうじんでもあり、流石さすが身分みぶんのある殿方とのがたらしう……おかゝさまは何處どこにぢゃ?
おまえがつれてきたのは、いやしい身分みぶんのむすめですよ。かげでは、こっそりどんなわるいことを
はい旦那様だんなさまわたくしも、賓客きやくときには八百膳やほぜん仕出しだし取寄とりよせまして、今日けふ向付肴むかうづけ甘酢あまず加減かげん甘味過あますぎたとか、しる濃過こすぎたとか、溜漬たまりづけ辛過からすぎたとか小言こごとつた身分みぶんでございますが
さすがな家康いえやすも、その身分みぶんを思ってか、衣服いふくけたままの白綸子しろりんず、あきらかに、武田菱たけだびしもんがみえて、前髪まえがみだちのすがたとともに、心なき群集ぐんしゅうの眼にも、あわれに、いたいたしいなみだをもよおさせる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「僕の身分みぶんは是からさきうなるかわからない。すくなくとも当分は一人前いちにんまへぢやない。半人前にもなれない。だから」と云ひよどんだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
このごろでは保名やすなはすっかりもとのさむらい身分みぶんわすれて、あさはやくから日のれるまで、いえのうしろのちいさなはたけてはお百姓ひゃくしょう仕事しごとをしていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
院長いんちょうは、きたときいては、ててもおけなかったのでした。どんな身分みぶん患者かんじゃであって、またどこがわるいのか、それをりたいという職業意識しょくぎょういしきこって
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あはれなるは繼子まゝこ身分みぶんにして、腑甲斐ふがひないものは養子やうしれと、今更いまさらのやうになかのあぢきなきをおもひぬ。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(いやいや、まてよ。いま、ここでけんかをしたところで、身分みぶんがちがうから、こっちがまけるにきまっている。それに、壱岐いきだって、それほど悪人あくにんではないのだ。)
ヂュリ はゝさまは何處どこにぢゃ? 母樣はゝさまうちにぢゃ。何處どこかしゃらうぞ? なにやるぞい!「あのかた被言おッしゃるには、身分みぶんのある殿方とのがたらしう、お母樣かゝさま何處どこにぢゃ?」
わし生涯しょうがい病気びょうきという病気びょうきはなく、丁度ちょうど樹木じゅもく自然しぜん立枯たちがれするように、やすらかに現世げんせにおいとまげました。身分みぶんこそいやしいが、後生ごしょういたってかったほうでござります……。
患者かんじゃすうは五にん、そのうちにて一人ひとりだけは身分みぶんのあるものであるがみないやしい身分みぶんものばかり。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
みぎにん者共ものども天一坊身分みぶんしか相糺あひたゞさず主從しうじう盟約めいやくを致し候だん不屆ふとゞきの致しかたに付中追放申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ところが、気ぐらいの高いおひめさまは、若者がじぶんとおなじ身分みぶんのものでないことをききますと、若者をさげすんで、そのまえに、二ばんめの問題もんだいをとかなければならない、と、注文ちゅうもんしました。