)” の例文
これでは、まるで冬にとざされたれはてた国に来ているようです。ニールスはたまらなくなって、大声で泣きだしたくなりました。
それがこのごろになって、このみずうみ時々ときどきらしにまいりまして、そのたんびにわたくしどもの子供こども一人ひとりずつさらって行くのです。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「すこしとおいけど、ひとんでいないれた屋敷やしきで、おおきなくりのがあるの。学校がっこうかえりに、松野まつのさんがつれていってくれたのよ。」
夕雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、王子がみじめな思いをして、二年、三年とさまよいまわったあげく、とうとう、あののなかへまよいこみました。
やがて、とことはのやみとなり、くもすみうへうるしかさね、つきほしつゝてて、時々とき/″\かぜつても、一片いつぺんうごくともえず。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「印度洋の方では、何とかいふ軍艦がたつた一隻でばれまはつてゐるんだつてね。それがちつともつかまらないと云ふから面白いねえ」
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
卯平うへいはそれととも乾燥かんさうした肌膚はだ餘計よけいれて寒冷かんれいほねてつしたかとおもふとにはか自由じいううしなつてたやうに自覺じかくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「敵空軍の目をのがれるため、外観は出来るだけてたままにしておいた。しかし、あの煙突だけは、仕方なく建てた」
美濃みの揖斐いび郡の山村では、十一月の三日が、氏神の出雲から還りたまう日であって、お神楽かぐられと称して天気がよく荒れる。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「ははあ、少しれたね。」セロ弾きは云いながらいきなりマッチを舌でシュッとすってじぶんのたばこへつけました。
セロ弾きのゴーシュ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
もう、お姫さまは、花の手入れもしてやりません。ですから、草花は、まるでのように、道の上までぼうぼうとおいしげってしまいました。
それさえあるに、やがておとずれていた一堂の玄関もまたひどくびていて、いくど呼んでみてもいらえはなかった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はっきりわかります。私達わたくしたちらい、むご人間にんげん大嫌だいきらいでございます。そんな人間にんげんだと私達わたくしたちけっして姿すがたせませぬ。
それを考えると、この村をるのが残念ざんねんでたまりませんでした。わたしは打穀場だこくばのうらてをぬけてたにへくだり、れ地のほうへのぼって行きました。
不意に飛び出したこの六尺豊かの壮漢が、痛快というよりは乱暴極まるれ方をして、あっというまもなく、賭場とばを根柢からくつがえしてしまいました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大空の神のお子よ、ここからおくへはけっしてはいってはいけませんよ。この向こうにはらくれた神たちがどっさりいます。今これから私が八咫烏やたがらす
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
私自身はもうそんなものは見たくもなかったのだけれど、そのれ果てたヴェランダから夕暮ゆうぐれの眺めがいかにも美しかったのを思い出して、夕食後
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
洛中らくちうがその始末であるから、羅生門の修理しゆりなどは、元より誰も捨てゝかへりみる者がなかつた。するとそのてたのをよい事にして、狐狸こりが棲む。盗人ぬすびとが棲む。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
子羔。しかし、もう無駄ですよ。かえって難に遭うこともないとは限らぬし。子路が声をらげて言う。孔家のろくむ身ではないか。何のために難を避ける?
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
空は暗くくもって、囂々ごうごうと風がいていた。水の上には菱波ひしなみが立っていた。いつもは、もやの立ちこめているようなあししげみも、からりとかわいて風に吹きれていた。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ニキタはぱツとけるより、阿修羅王あしゆらわうれたるごとく、兩手りやうてひざでアンドレイ、エヒミチを突飛つきとばし、ほねくだけよと其鐵拳そのてつけん眞向まつかうに、したゝかれかほたゝゑた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それから一直線いつちよくせんりて、丁度ちやうど自分じぶんつてゐる縁鼻えんばなつちが、霜柱しもばしらくだいたやうれてゐた。宗助そうすけおほきないぬでもうへからころがりちたのぢやなからうかとおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
以前いぜんねこつて、不潔ふけつなものをかれてこまつたばかりか、臺所だいどころらしたといふので近所きんじよから抗議かうぎまうまれて、ために面倒めんどう外交關係がいかうかんけいおこしたことがあつてから
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
そのくせ、心のなかには、うしおのように、温かいなにかが、ふツふツとき、くるってくるのでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
へどもてどもてき強者さるものふたゝする七隻しちせき堅艦けんかん怒濤どたう逆卷さかまき、かぜれて、血汐ちしほみたる海賊かいぞく旗風はたかぜいよ/\するどく、たけく、このたゝかひ何時いつしともおぼえざりしとき
うみぢゃ、終始たえずなみだ滿干みちひきがある、身體からだふねその鹽辛しほからなみはしる、溜息ためいきかぜぢゃ、なみだなみとも荒𢌞あれまはり、なみだはまたそれを倍〻ます/\るゝ、はて、なぎきふなんだら
用心口ようじんぐちしてお寢間ねまもどたまひしが再度ふたゝびつてお菓子戸棚くわしとだなのびすけつとのびんとりいだし、お鼻紙はながみうへけておしひねり、雪灯ぼんぼり片手かたてゑんいづれば天井てんぜうねづみがた/\とれて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
常にうぐいすを飼っていてふんぬかぜて使いまた糸瓜へちまの水を珍重ちんちょうし顔や手足がつるつるすべるようでなければ気持を悪がり地肌のれるのを最もんだべて絃楽器を弾く者は絃を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それからは、さるは大きなおにの人形をこしらえ、甚兵衛じんべえれはてたてらたずねて歩きました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
水谷氏みづたにし非常ひじやう兒島家こじまけ好意かういよろこび、一人いちにんもつ此聖跡このせいせきらすべきでいとして、斯道しだうのオーソリチーたる坪井博士つぼゐはかせ、それから華族人類學會くわぞくじんるゐがくくわい牛耳ぎうじらるゝ二絛公爵にでうこうしやく通知つうち
ただ農作のうさくさまたぐるのみにして、米の収穫しゅうかく如何いかんは貿易上に関係なしといえども、東北地方は我国の養蚕地ようさんちにして、もしもその地方が戦争のためにらされて生糸の輸出ゆしゅつ断絶だんぜつする時は
フロツクコオトを着て山高ぼうかぶつた姿は固陋ころうな在所の人を驚かした。再び法衣を着たことは着たが、ながの留守中放題はうだいに荒れた我寺わがてらさまは気にも掛けず格別修繕しようともせぬ。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
これはちょっとると、「くもみだれ」、「れてく」などいふ言葉ことばが、ごた/\してゐるようであるが、わたし解釋かいしやくしたようにれてくから、べつかんがへてると、空模樣そらもようさらくはへて
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しぜん人も馬も重苦しい気持にしずんでしまいそうだったが、しかしふととおが過ぎ去ったあとのようなむなしいあわただしさにせき立てられるのは、こんな日は競走レースれて大穴が出るからだろうか。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
それから四、五年の間、その寺はれるままにまかせて、きつねむじなの住み家となっていたが、それではこまるというので、村の人たちは隣村となりむらの寺から一人のわかぼうさんをんで来てそこの住職とした。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
しかし、この神武天皇じんむてんのう御陵ごりようひさしくれはてゝをつて、じつはそのかたちもよくわかりませんし、場所ばしよについてもいろ/\のせつがありますが、とにかくあまりおほきくないまるつかであつたとおもはれます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しかも人間はそのことにさえいつしかなれてしまって、立ちどまり、ふりかえることを忘れ、心の奥までざらざらにらされたのだ。荒れまいとすれば、それは生きることをこばむことにさえなった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ふとこそ、れし夕庭ゆふには朽木くちきえだ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
れはてたジャングルだとしても
死の淵より (新字新仮名) / 高見順(著)
おお、このれに、どの屋根で
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
れにし野邊も
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのうちに、あおざめたつきそらのぼりました。そして、このれはてた景色けしきと、ぼんやりとかんがんでいるあわれな乞食こじきとをらしたのです。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これで、毎年まいねんむららして、人身御供ひとみごくう荒神あらがみ正体しょうたいが、じつはさるものであったことがかって、むらのものはやっと安心あんしんしました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そういえば、いつだったか、ふたりがあんな小屋や、ヒースのえているひろいれ地のことを話していたことがありました。
物語ものがたりき、此像このざうはいするにそゞろに落涙らくるゐせり。(りやく)かくてたる小堂せうだう雨風あめかぜをだにふせぎかねて、彩色さいしき云々うん/\
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そればかりか、ばあさんはなさけようしゃもなく、かわいそうなラプンツェルを野原のはらいやってしまいました。
そうしてその窓がすっかりくぎづけになっていて、その庭なんぞもすっかりれ果て、いまにもこわれそうな木戸が半ば開かれたままになっているのを認めると
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
で、いよいよ暴風雨あらししますと、みぎ婦人ふじん早速さっそくわたくしはかけつけて一しん不乱ふらん祈願きがんしました。——
一つは屍体の伸ばした右手から一尺ほど前方に、もう一つは、消えている街灯の根っこに、それから最後の一つは、倉庫のようなてた建物の直ぐ傍に……。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ニキタはぱッとけるより、阿修羅王あしゅらおうれたるごとく、両手りょうてひざでアンドレイ、エヒミチを突飛つきとばし、ほねくだけよとその鉄拳てっけん真向まっこうに、したたかれかおたたえた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)