いぬ)” の例文
どこかとおくのほうで、いぬのないているこえこえたのであります。ようやく、まちはいろうとしました。するとそこにおてらがありました。
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ときかね校庭かうていやしなはれて、嚮導きやうだうつたいぬの、ぢてみづかころしたともひ、しからずとふのが——こゝにあらはれたのでありました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おそろしくおほきないぬころが、おほきなまるをしてあいちやんを見下みおろしてました、あいちやんにさわらうとして前足まへあしを一ぽんおそる/\ばして。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
主人しゆじん書生しよせいかれいぬ病氣びやうき病院びやうゐん這入はいる一ヶげつまへとかに、徴兵檢査ちようへいけんさ合格がふかくして入營にふえいしたぎりいまでは一人ひとりもゐないのださうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぽんの大きな木の、うつろになった中にはいって、いぬどもを木のまわりにあつめて、たくさんたきをして、そのばんねむることにしました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
可哀かわいそうな子家鴨こあひるがどれだけびっくりしたか! かれはねしたあたまかくそうとしたとき、一ぴきおおきな、おそろしいいぬがすぐそばとおりました。
いぬかわをかぶって、おせんのはだかおも存分ぞんぶんうえうつってるなんざ、素人しろうとにゃ、鯱鉾立しゃちほこだちをしても、かんがえられるげいじゃねえッてのよ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
……畜生ちくしゃう兩方りゃうはう奴等やつらめ!……うぬ! いぬねずみ鼷鼠はつかねずみ猫股ねこまた人間にんげん引掻ひっかいてころしをる! 一二三ひふうみいけん使つか駄法螺吹家だぼらふきめ! 破落戸ごろつき
かねのありそうないえたら、そこのいえのどのまどがやぶれそうか、そこのいえいぬがいるかどうか、よっくしらべるのだぞ。いいか釜右ヱ門かまえもん
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
むまつのなく鹿しかたてがみなくいぬにやんいてじやれずねこはワンとえてまもらず、しかれどもおのづかむまなり鹿しかなりいぬなりねこなるをさまたけず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
そのとき、フィアレンサイドがつれてきていたいぬが、とつぜん、かれの姿すがたをみて、毛をさかだて、ものすごいうなり声をあげた。
ほかの子たちがみんなでからかって、石をぶつけたり、まよいぬを追って遊ぶように追い回したりした。迷い犬にだれも加勢かせいする者がないのだ。
稻妻いなづま! おまへ何處どこつたの、さあ、これから競走かけつくらだよ。』と、わたくしひざからをどつて、いぬ首輪くびわをかけて、一散いつさんいそなみかたはしした。
原住民のほかに、喪家そうかいぬもいる、わが家の灯一つを見て、近所の犬が、朝晩台所へクンクン飢えた鼻をならして来る。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんてまあ、いいだらう」と、それをだい一につけたねこうらやましさうに、まづめました。いぬきつね野鼠のねづみも、みな
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
きみきらひだつたいぬ寢室しんしつにはれないでくから。いぬへばきみは、犬好いぬずきのぼつちやんの名前なまへぼく使つかつたね。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
ある時、裏の方ではげしい犬の噛み合う声がするので、て見ると、黒と白とが彼天狗てんぐいぬ散々さんざん咬んで居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まるで いぬころの ように はだしで にわに かけだしたり、ゆきを なげつけたり、まどを やぶくやら、ろうかを ゆきだらけに するやら おおあばれです。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
白粉おしろいべつたりとつけてくちびる人喰ひとくいぬごとく、かくてはべにやらしきものなり、おりきばれたるは中肉ちうにく背恰好せいかつかうすらりつとしてあらがみ大嶋田おほしまだしんわらのさわやかさ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
えらい人になるためにうたをつくりたいんだね。そして、歌をつくるために偉い人になりたいんだね。それじゃあ、尻尾しっぽっかけてぐるぐるまわってるいぬみたいだ。」
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
ローズ・ブノワさんには、自分じぶんの家の大きないぬのトムとちいさなカナリヤのキュイップの言葉ことばがちゃんとわかるのです。実際じっさい、それはローズ・ブノワさんのおもっている通りです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
畜生ちくしやうひとしと云己等如き恩もなさけも知らぬいぬおとりし者はわすれしやも知れず某しはもと相摸さがみの國御殿場ごてんば村の百姓條七がなれのはてなり抑其方は勘當かんだううけし身にて一宿しゆくとまる家さへなきを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自分は王侯わうこう寵愛ちようあいに依ツて馬車に乗ツてゐるちんよりも、むしろ自由に野をのさばツて歩くむくいぬになりたい。自分は自分の力によツて自分の存立を保證する。自體自分には親が無い。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
れはかれふるくから病院びやうゐんにゐるためか、まち子供等こどもらや、いぬかこまれてゐても、けつして何等なんらがいをもくはへぬとことまちひとられてゐるためか、かくかれまち名物男めいぶつをとことして
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうして、この門の上へ持つて來て、いぬのやうにてられてしまふばかりである。えらばないとすれば——下人の考へは、何度なんども同じ道を低徊した揚句あげくに、やつとこの局所へ逢着はうちやくした。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ゆきおほはれたそのくづしの斜面しやめんに、けもの足跡あしあとが、二筋ふたすぢについてゐるのは、いぬなにかゞりたのであらう、それとも、雪崩なだれになつてころりてかたまりのはしつたあとでもあらうかと
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
だからいぬ犬小屋いぬごやはいとき腹這はらばふとおなじく、ひと横穴よこあなときも、餘程よほと窮屈きうくつだ。
去年が「甲戌きのえいぬ」すなわち「いぬの年」であったからことしは「乙亥きのとい」で「の年」になる勘定である。こういう昔ふうな年の数え方は今ではてんで相手にしない人が多い。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
僕の寝小便がなかなか直らぬので、ぎうが好い、が好い、いぬが好いなどと教へて呉れるものがあつたが、父はわざわざ町まで行つて、朝鮮人蔘にんじん二三本買つて来てくれたことをおぼえて居る。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「先生も御承知のとおり、わっしは生得しょうとくいぬねこがすきでごぜえやして……」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
卯平うへい自分じぶんからつくつたつみといふものはほとんどられなかつた。たゞかれ盛年さかりころ傭人等やとひにんらともねこころしてべてた。もつとそのころねこでもいぬでも飼主かひぬしはなれてにはとりねらふのが彷徨うろついた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ガラツ八は何が何やら解らぬ乍ら、忠實ないぬのやうに飛んで行きました。
狂犬やまいぬが、あっちへ行った、人食ひとくらいぬが、あの若い侍に食いついてらあ」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
弥八 手前泳ぎを知らねえのか、いぬきも出来ねえのか。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
しわくちゃばあさんの いぬっころ
いぬ強敵がうてきたり、これくはふるに
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一様いちやうしろいぬみみそそがれる。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
八つ、宿無やどな野良のらいぬ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
いぬ
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いぬこゑ
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あるのことです。わたしは、やはりこうして一人ひとりさびしく往来おうらいうえっていました。けれど、いぬ一ぴきその姿すがたせなかったのです。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
りょうしはつくづくかわいそうなことをしたとおもって、なみだをこぼしながら、んだいぬのために、りっぱなおはかをこしらえてやりました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
彼處あすこ通拔とほりぬけねばならないとおもふと、今度こんど寒氣さむけがした。われながら、自分じぶんあやしむほどであるから、おそろしくいぬはゞかつたものである。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「だけど、もとはって言えば、フィアレンサイドがこんなろくでなしのいぬをかっているのが、大さわぎをおこすもとなんだよ」
あいちやんはいまこそげるにときだとおもつてにはかにし、つひにはつかれていきれ、いぬころの遠吠とほゞえまつたきこえなくなるまではしつゞけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
平常いつもやういぬがゐるとかつたんですがね。生憎あいにく病氣びやうきなので、四五日前にちまへ病院びやうゐんれて仕舞しまつたもんですから」と主人しゆじん殘念ざんねんがつた。宗助そうすけ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つきゆきはなおろいぬんだとては一句いつくつくねこさかなぬすんだとては一杯いつぱいなにかにつけて途方とはうもなくうれしがる事おかめが甘酒あまざけふとおなじ。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
もう一度親方はをふいて、まよいぬを呼びたてた。でもそれに答える声はなかった。わたしは気が気でなかった。
いやもう、浮世うきよのことは、なにをおいてもおんな大事だいじ。おいらも今度こんどにゃァ、いぬになってもおんなうまれてることだ。——はッくしょい。これァいけねえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
此時このとき二名にめい水兵すいへいは、わたくしめいしたがつて、いぬいだいて、鐵階てつかいのぼつた、鐵檻てつおりくるまうへからはまへにもいふやうに、すなすべりのたにそと飛出とびでこと出來できるのである。