あさ)” の例文
旧字:
沢山たくさんえる、何処どこにもあるからということが価値の標準となるとすれば、きっぽくてあさはかなのは人間それ自身なのではあるまいか。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これらの川魚かわざかなは、そこあさいたらいのなかに、半分はんぶんしろはらせて、呼吸こきゅうをしていました。そのとなりでは、あまぐりをおおなべでっていました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、湖の水を干そうとしてからは、ずっとあさくなって、いまでは二メートル以上の深さのところは、ほとんどありません。
おおうた佐助々々わてはあさましい姿にされたぞわての顔を見んとおいてと春琴もまた苦しい息の下から云い身悶みもだえしつつ夢中で両手を動かし顔を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「いや、ただいまが初耳、それと知っておりましたら、もとのご縁故えんこあさからぬこと、ぜひおひきとめ申すのであったに」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くたまさかに取出とりいづるにもゆびさきこわきやうにて、はか/″\しうはひがたきを、ひとあらば如何いかばかり甲斐がひなくあさましとおもふらん
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
愛情あいじょうともなわぬつめたい夫婦ふうふ間柄あいだがら……他人ひとさまのことはぞんじませぬが、わたくしにとりて、それは、にもあさましい、つまらないものでございました……。
それはあるいは今から五、六十万年あるいは百万年を数えるかも知れません、その頃今の北上の平原にあたるところは、細長い入海か鹹湖かんこで、その水は割合わりあいあさ
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「気がきかないお楽だな。お前のところには、おあさとかいう娘があったはずではないか。しゃくも大事なおもてなしだ、平常着ふだんぎのままで構わぬ、出せ出せ」
窮理きゆうりけつしてなるにあらず実践じつせんなんあさしと云はんや。魚肴さかな生臭なまぐさきがゆゑやすからず蔬菜やさい土臭つちくさしといへどもたふとし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
越後の地勢は、西北は大海にたいして陽気也。東南は高山かうざんつらなりて陰気也。ゆゑに西北の郡村ぐんそんは雪あさく、東南の諸邑しよいふは雪ふかし。是阴阳いんやう前後ぜんごしたるにたり。
……とびらあさうして、しかくらおくに、一人面蛇体にんめんじやたいかみの、からだを三うねり、ともに一ふりつるぎまとうたのが陰影いんえいつて、おもてつるぎとゝもに真青まつあをなのをときよ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丁度ちょうどそのときにわはいってたのは、いましもまちあさって猶太人ジウのモイセイカ、ぼうかぶらず、跣足はだしあさ上靴うわぐつ突掛つッかけたまま、にはほどこしちいさいふくろげて。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そこは人間のあさはかさ! 火焔と見せて汝を偽むき、その間に大地を掘り返し、床板をねて廊下に出でしは、火竜土竜局地秘法! これより寝所にかり通り
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あがり口のあさ土間どまにあるげたばこが、門外もんがい往来おうらいから見えてる。家はずいぶん古いけれど、根継ねつぎをしたばかりであるから、ともかくも敷居しきい鴨居かもいくるいはなさそうだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
剣術の巧拙こうせつを争わん、上士の内に剣客はなはだ多くしてごうも下士のあなどりを取らず。漢学の深浅しんせんを論ぜん、下士の勤学きんがくあさくして、もとより上士の文雅に及ぶべからず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
其時第一に馳けけたものは祖父ぢゞであつた。左の手に提灯をかざして、右の手に抜身ぬきみを持つて、其抜身ぬきみ死骸しがいを叩きながら、軍平ぐんぺいしつかりしろ、きづあさいぞと云つたさうである。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
火星くわせいにはみづすくない。もしうみがあるとすれば、はるゆきどけのときだけできるあさい海うみだ。)
紫式部のことも、以前、あれこれと考えたことはあったが、すべてがあさ々しかったと思うので、古いことは思い出さないことにして、さて、何を、この中でまとめられるものではない。
先生、諭吉に序文じょぶんめいず。諭吉は年来ねんらい他人の書にじょするをこのまずして一切そのもとめ謝絶しゃぜつするの例なれども、諭吉の先生における一身上しんじょう関係かんけいあさからずして旧恩きゅうおんの忘るべからざるものあり。
家の娘おあさの小花さんが待つておいでなれば帰にはおよりでせうねといふをうしろに聞きて、朝倉にしは点燈頃ひともしごろなり、こちらは一中を二段まで聞かせられ、夕飯もそのまま済ました処、本人の兼吉のみか
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
楊子江中水雖浅 楊子江中ようすこうちゅうみずあさしといえど
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
辰夫たつおくんとおねえさんは、あかるい金魚屋きんぎょやまえちました。たくさんのいろとりどりの金魚きんぎょあさいおけのなかおよいでいました。
草を分けて (新字新仮名) / 小川未明(著)
私達わたくしたちあいだをつなぐ霊的れいてき因縁いんねんべついたしましても、不思議ふしぎ在世中ざいせちゅうからわたくし弟橘姫様おとたちばなひめさまあさからぬ関係かんけいってりました。
「やれ、おくれた。みづあさいで、飛込とびこめばたすかつたに。——なんまをさうやうもない、旦那だんながおつれかたでがすかの。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あんなあさい処までしか馬を入れさせずそれに舟を二せき用意よういしたのを見てどこか大へん力強い感じもしました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
鳥獣とりけだもの雪中せつちゆうしよくなきをしりて雪あさき国へるもあれど一ぢやうならず。雪中にこもて朝夕をなすものは人と熊と也。
それだになお、きみ民草たみくさ塗炭とたんにお心さえやすまったことがない。なんとあさましい戦乱のすがたではないか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よし匿名かくしななりとも、このに感じは変るまじ。今日まで封じを解かざりしは、我れながら心強しと誇りたるあさはかさよ。胸のなやみに射る矢のおそろしく、思へば卑怯ひきよう振舞ふるまひなりし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
気楽ならいけれども。与次郎のは気楽なのぢやない。気がうつるので——例へばなかを流れてゐる小川の様なものと思つてゐれば間違まちがいはない。あさくてせまい。しかしみづ丈は始終変つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ただ呉々くれぐれも妻は己の職業に慢心まんしんして大切にしてもらう夫にれ、かりにも威張いばったり増長ぞうちょうせぬこと。月並のいましめのようなれど、余程よほどの心がけなくてはいわゆる女性のあさはかより、このへいおちいやすかるべし。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
二郎じろうは、てらまえちいさなはしのわきにって、あさながれのきらきらとひかりらされて、かがやきながらながれているのを、ぼんやりとながめていました。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
所々ところどころには、水増しの時できた小さな壺穴つぼあなあとや、またそれがいくつもつづいたあさみぞ、それから亜炭あたんのかけらだの、れたあしきれだのが、一れつにならんでいて
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あきてゝながめてると、やがてあさところこしあたりふかところちゝうへになる。もつと激流げきりうながす。かはの七分目ぶんめところに、大巌おほいはが一つみづいて龍虎りうこおどらす。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
洞窟どうくつっても、それはよくよくあさいものであかるさはほとんど戸外そとかわりなく、そして其所そこからうみまでの距離きょりがたった五六けん、あたりにはきれいなすなきつめられていて
ことにさむい! まだふもとのもみじはあさいが、このへんの冷気れいきは、身にしみるほどではないか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さきのとし玉山翁が梓行しかうせられし軍物語いくさものがたりの画本の中に、越後の雪中にたゝかひしといふあり。文には深雪みゆきとありて、しかも十二月の事なるに、ゑがきたる軍兵ぐんびやうどもが挙止ふるまひを見るに雪はあさく見ゆ。
ひもせずひねるたゝみちりよりぞやまともつもるおもひの数々かず/\ひたしたしなどあらはにひし昨日きのふこゝろあさかりけるこゝろわれとがむればおとなりともはず良様りやうさまともはずはねばこそくるしけれなみだしなくばとひけんからごろもむねのあたりのゆべくおぼえてよる
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こういえ井戸いどふかくて、容易よういみずきるようなことはありませんでしたけれど、おついえ井戸いどはわりあいにあさくて、もうみずきるのにもありませんでした。
神は弱いものを助けた (新字新仮名) / 小川未明(著)
空濠からぼりふではない、が、天守てんしゆむかつた大手おほてあとの、左右さいうつらなる石垣いしがきこそまだたかいが、きしあさく、段々だん/\うもれて、土堤どてけてみちつゝむまであしもりをなして生茂おひしげる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
土壌どじょうあさくて少しをのばすとすぐ岩石でしょう。下へびようとしても出来ないでしょう。よこに広がるだけでしょう。ところが根とえだ相関現象そうかんげんしょうたような形になるんです。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「なんという、人間にんげんは、あさましいこころをもっているのでしょうか。天国てんごくには、こんなかんがえをもっているようなものや、薄情はくじょうなものは一人ひとりもないのに!」とおもいました。
海からきた使い (新字新仮名) / 小川未明(著)
一ツは好事家かうずか随筆ずゐひつに、物凄ものすごくもまたおそろしくしるされる。あさあんずるに、随筆ずゐひつからつて講釈かうしやく仕組しくんでえんずるのであらうとおもふが、いたはうむと、うそらしいがせられて事実じゞつこえる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぼくたちの、およぎにいくかわは、むらちかくにありました。みずが、いつもたくさんで、きれいでした。あさいところは、そこにうずまる、しろいせとものや、あおいしころまですきとおってえました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「えゝ! 飛込とびこめい、みづあさい。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なつはまだあさく、いろあわ
私は姉さん思い出す (新字新仮名) / 小川未明(著)