うた)” の例文
だから平常へいじょううたをおうたいになり、ものらしておいでなさるときは、けっして、さびしいということはなかったのであります。
町のお姫さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
このみつつのかたちうたを、のちには、片歌かたうたといつてゐます。これは、うた半分はんぶんといふことでなく、完全かんぜんでないうたといふことであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
Kさんのその時分じぶんうたに、わがはしやぎし心は晩秋ばんしう蔓草つるくさごとくから/\と空鳴からなりするといふやうなこゝろがあつたやうにおぼえてゐます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「いやいや、」ととりった。「ただじゃア、二は、うたいません。それとも、その石臼いしうすくださるなら、もう一うたいましょう。」
國許くにもとにござります、はなしにつきまして、それ饒舌しやべりますのに、まことにこまりますことには、事柄ことがらつゞきなかに、うたひとつござります。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
といって、何遍なんべん何遍なんべん藤太とうだにおれいをいいました。そしてたくさんごちそうをして、おんなたちにうたうたわせたりまいわせたりしました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いのきちは、山でまれた。みずうみの上をながれるきりをおっぱいとしてのみ、谷をわたるカッコウの声を、もりうたにきいて、大きくなった。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
今度こんどはこんなときうたふこんなうたつくつてほしいとか、そうつたことをドシ/\手紙てがみかハガキかで、つてよこしてもらひたい。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
それで、時々とき/″\お手がみやおうたをおおくりになると、それにはいち/\お返事へんじをさしげますので、やう/\おこゝろなぐさめておいでになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
それは、お日様ひさまあたたかっているのをたり、雲雀ひばりうたいたりして、もうあたりがすっかりきれいなはるになっているのをりました。
法師はひじょうによろこびました。そして、しずかな夜などは、とくいのだんうら合戦かっせんうたっては坊さんをなぐさめていました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「いえ、沙門の身と、うたむことさえ、ゆるしていただけたら他に何も欲しくはありません。……のう、友には、そなたという者がおるし」
宗助そうすけとかうたとかいふものには、もとからあま興味きようみたないをとこであつたが、どうわけこのんだとき大變たいへん感心かんしんした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これはたゞあの埴輪はにわいへや、そのほかの品物しなものあらはれてゐるいへかたちと、歴史れきしうた書物しよもついてあるところで想像そう/″\するほかには
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しゅうたおのずとわたくしくちいてたのもそのときでございます。真嶺さねし、相摸さがむ小野おのに、ゆるの、火中ほなかちて、いしきみはも……。
ふゆ夜長よながに、粉挽こなひうたの一つもうたつてやつて御覽ごらんなさい。うたきな石臼いしうす夢中むちうになつて、いくらいても草臥くたぶれるといふことをりません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これは三年の前、小畑とゆうなるうたしるさんとくわだててつづりたるが、その白きままにて今日まで捨てられたるを取り出でて、今年の日記書きて行く。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
『どれ、第一だいいち歩調ほてうをやつてよう!』と海龜うみがめがグリフォンにひました。『えびがなくても出來できるだらう、何方どつちうたはう?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
のちにうたはまにおいてその同じ桂の余木よぼくをもちいてらせられたのが、くだんの薬師やくし尊像そんぞうじゃとうけたまわっておる。ハイ、まことに古今ここん妙作みょうさく
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
もう姫君ひめぎみんだのだ、んでしまへば、もうこのはなも、とりも、うたも、ふたヽびきくこともみることもできないのだ。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ローラなどはロミオが愛姫ひめくらべては山出やまだしの下婢はしためぢゃ、もっとも、うただけはローラがはるかに上等じゃうとうのをつくってもらうた。
突然とつぜんくらいなかで、ゴットフリートがうたいだした。むねの中でひびくようなおぼろなよわこえだった。少しはなれてたら、きとれなかったかも知れない。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
うたむ人の方便とのみ思ひ居し戀に惱みしと言ふさへあるに、木のはしとのみ嘲りし世捨人よすてびとが現在我子の願ならんとは、左衞門如何いかでか驚かざるを得べき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
イヤ寝るにも毛布けっとも蒲団も無いので、一同は焚火を取囲み、付元気つけげんきに詩吟するもあり、ズボンボうたうたうもあり。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
唱歌しやうかうたふて朝寐坊あさねばうする人物じんぶつ學校がくかうからるやうになりてはなんやくにもつまじく、其邊そのへん御賢慮ごけんりよ願上候ねがひあげさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
北海道から林檎りんごやらうたやら送って来た。病院長の生活は淋しいものらしかった。家庭の模様もようを聞いてやっても、其れだけは何時いつもお茶を濁して来た。余は
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
パンの破片かけら紙屑かみくづうしほねなど、さうしてさむさふるへながら、猶太語エヴレイごで、早言はやことうたふやうにしやべす、大方おほかた開店かいてんでも氣取きどりなにかを吹聽ふいちやうしてゐるのでらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかるに伯夷はくい叔齊しゆくせいこれぢ、しう(三四)ぞくくらはず、首陽山しゆやうざんかくれ、つてこれくらふ。ゑてまさせんとするにおよんでうたつくる。いは
うた連歌れんがの者、さては田楽でんがく、ばさらの者、入り代り立ち代りに詰め切って、ひたすらその機嫌を取ることに努めているが、彼の病いはいよいよ嵩じるばかりで
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは同時に象徴うたであつて、どんなことにも全力を尽くして当る作者自身の心掛を鴎に見出したのである。
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
これまでの疲れといふのは、比叡山上ひえいさんじやうで連日『うた』の修行をし、心身へとへとになつたのをいふのである。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
それは私に同年おないどしでした。そのねえさんが茂江しげえさんで、そのもう一つ上が幾江いくえさんでした。斜向すぢむかひの角の泉勇いづゆうと云ふ仕立屋の子は、おうたちやんと、名を云ひました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
れはごく大切たいせつうたにてひとすべきではけれど、若樣わかさまをおたせまうしたく、ほかひと内證ないしよにて姉樣ねえさまばかりに御覽ごらんたまへ、はやく、内證ないしよで、姉樣ねえさまにおげなされ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
原始はじめ、自然民族に於て、うたは同時にうたであり、詩と音樂とは同一の言葉で同一の觀念に表象された。
青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
そして、そんなとき何時いつものくせで、Sのうたなんかを小聲こごゑうたした。何分なんぷんかがさうしてぎた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
カラスたちは、スモーランドの上を南西なんせいにむかって飛びつづけました。うららかにれわたった、あたたかい朝でした。地上の鳥たちは、やさしいあいうたをうたっていました。
牝牛めうしさん、いてください。わたし可愛かはいいばうたちはね。きつとうつくしい瑠璃色るりいろをしてゐて、薔薇ばらはなみたいによいにほひがしますよ。そしてすゞをふるやうなよいこゑでちる/\とうたひますよ。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
するとふいに、頭の上で、おかあさんがねんねこうたを、うたっているのが聞えだした。
それをおつとの君は心く思つて、出雲から大和の國にお上りになろうとして、お支度遊ばされました時に、片手は馬の鞍に懸け、片足はそのあぶみに蹈み入れて、おうたい遊ばされた歌は
「え、おぢさん、これがはやいんですつて。わたしはもうひゃくぺんもうたひましたよ。」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
うし角文字つのもじといふのは、かくだいうたに「二ツ文字もじうし角文字つのもじすぐ文字もじゆがみ文字もじとぞきみおぼゆれ」これこひしくといふかくだいの歌で、二ツ文字もじはこの字で、うし角文字つのもじは、いろはのいの字
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
一口にうた手蹟マラというが、公卿どもは、和歌と書道と女色のほか、楽しみがないゆえ、うようよと子供ばかりこしらえおる。知嘉というのは、何十人目の姫か知らぬが、烏丸では相手が悪い。
奥の海 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
友人いうじん松井通昭まつゐつうせうわが七福しちふくえいずるのうたせらる。ろくするものこれなり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
「あしきをはらうて救けたまへ。」の御神楽みかぐらうたと代り、大和の国の総本部に参詣して来てからは、自ら思立つてか、唆かされてか、家屋敷所有地もちち全体すつかり売払つて、工事費総額二千九百何十円といふ
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
随分ずいぶんふるむかしのこと、ヱヴェレストのはるかふもとに、ラランとよぶ一からすんでゐた。ものすごいほどくらい、こんもりとしげつた密林みつりんおくで、毎日まいにちうたつてる小鳥ことりなかのいゝむしなどをころしてべてゐた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
少しわきのほうには、讃美歌さんびか器用きようにこなす子供たちがならんでいて、そのなかの一人はいつもうたす前に、そっといろいろな声でうなるような真似まねをする——これをしょうして、調子ちょうしめるというのだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
天平後期の歌はうたでないまでも一体にこの種の弛緩があった。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
差上しに二條家御感ぎよかんの餘り其まゝ奏聞そうもんなし給へば賤敷いやしき女にもかゝ風流ふうりう有けるよと即座そくざに御うた所へつかはされ歌仙かせんくはへさせられ又北面ほくめん北小路きたこうぢ從五位下東大寺とうだいじ長吏ちやうり若狹守藤原保忠わかさのかみふぢはらやすたゞ 勅使ちよくしとして祇園へいたり 勅使なりと聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
心ままなるうたのエロル夫人もさみしかろ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
緒合をあはせにゆらぐうたぬしこそは
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)