)” の例文
さりながら嬢と中川は向う側にあり、客の三人此方こなたに並んでせり。結句けっくこの方が嬢の顔を見られて都合好しと大原はあながちにくやまず。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
愕然びつくりし山水をすてて此娘を視るに一揖おじぎしてり、もとの草にしてあしをなげだし、きせるの火をうつしてむすめ三人ひとしく吹烟たばこのむ
支那しな帝使を西班牙スペイン帝使のしもに座せしめ、わがたり友たる西帝せいていの使を、賊たり無頼の徒たる支那帝の使の下にせしむるなかれといしと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しばらくしてあをけむり滿ちたいへうちにはしんらぬランプがるされて、いたには一どうぞろつと胡坐あぐらいてまるかたちづくられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
地質は多分塩瀬しおぜであろう、表は上の方へ紅地に白く八重梅やえうめもんを抜き、下の方にから美人が高楼にして琴をだんじている図がある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
するときひざの高さ三尺ばかりあり。偶〻たまたま足跡を見るに五六尺もありて、一歩に十余間を隔つと云へり(『日東本草図彙』)。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
山科やましなに着きて、東行の列車に乗りぬ。上等室は他に人もなく、浪子は開ける窓のそばに、父はかなたにして新聞を広げつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
はや、幻影まぼろしえつゝ、そのまへに、一ふじつゝじをちりばめた、大巌おほいはに、あいごとみづのぞむで、あしは、めぐらしたさくえたのを見出みいだした。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その後、法にして侯を失い現在の地位におとされて西辺を守っている。年齢からいっても、李陵とは父子ほどに違う。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
して亡ぶをたんよりはと、出でて蜀の活路を求めんとせんか、それは孔明の唱える大義名分と現下の作戦以外には、絶対にほかに道はないのだった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
((孫子))(三二)輜車ししやうちり、して計謀けいぼうす。田忌でんきへいいててうかんとほつす。孫子そんしいは
と言い、薫は縁側から一段高い長押なげしに上半身を寄せかけるようにしてしているのを見て、例の女房たちが
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その折の自分に、好ましく思われた野辺や、一菩薩ぼさつ像の前にして、ただわけもなく、うつらうつらと一日を遊び過していたい——そういう気持になる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
の後方にしながら、侍臣のものに命じて彼らの礼服なるカッパを取り去らせ、起立して全身を見うるようにさせろとあったから、彼らは言われるままにした。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
十貫目の力量なき者もして数百万貫の物を動かすべし、千円の身代なき者も数十万の金を運用すべし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
夫婦はともしびつけんともせず薄暗き中に団扇うちわもてやりつつかたれり、教師を見て、珍らしやとゆずりつ。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
にとりつあさからぬおこゝろかたじけなしとて三らうよろこびしとたへたまほかならぬひと取次とりつぎことさらうれしければ此文このふみたまはりて歸宅きたくすべしとて懷中ふところおしいれつゝまたこそと
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かくて彼はただひとり苦難の曠野にして、この問題の解決をいられたのである。実に彼は生涯の実験——殊に悲痛なる実験——を以て問題を提出せられたのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
さうして自分じぶんあたゝかしづかところして、かねめ、書物しよもつみ、種々しゆ/″\屁理窟へりくつかんがへ、またさけを(かれ院長ゐんちやうあかはなて)んだりして、樂隱居らくいんきよのやうな眞似まねをしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
当日尊者はそのコンボ河畔の大なるいわの上に白装束のまませられて居ります。そこはいわゆる死刑に処する場所でありますので、尊者は静かにお経を読まれて居った。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
門野かどのちやで、胡坐あぐらをかいて新聞を読んでゐたが、かみらして湯殿ゆどのからかへつてる代助を見るや否や、急に坐三昧ゐざんまいなほして、新聞を畳んで蒲団のそばりながら
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、わたくしほうでも近頃ちかごろはいくらかこちらの世界せかい生活せいかつれてまいりましたので、格別かくべつおどろきも、あやしみもせず、ただはは紀念かたみ守刀まもりがたなにつけただけで、心静こころしずかにちました。
前日来の艱酸かんさん辛労しんろうとは茫乎としてうたゆめの如し、一行皆沼岸にしておもむろに風光を賞嘆しやうたんしてまず、とほく対岸を見渡みわたせば無人の一小板屋たちまち双眼鏡裡にえいじ来る、其距離きより凡そ二里
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
今日とりてはしき事をしましたと談次だんじ、先生にわかにたちえんの方にいでらる。
玄機は黙って書斎に入って、暫くして沈思していた。猜疑さいぎは次第に深くなり、忿恨ふんこんは次第に盛んになった。門に迎えた緑翹の顔に、常に無い侮蔑ぶべつの色が見えたようにも思われて来る。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
明させ給へかつくすりのみたく何卒湯一ツ賜れと云ども番頭は盜賊たうぞくならんとうたがひて戸を締切しめきり一向に答もせざればそう詮方せんかたなく此表にだいぐるまのありしを幸ひ其蔭そのかげ風呂敷ふろしきを敷て其上に頭陀袋づだぶくろよりくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
虞舜ぐしゆん孳孳じじとして善を爲し、大の日に孜孜せんことを思ひ、成湯せいたうまことに日に新にせる、文王のいとまあきいとまあらざる、しう公のして以てたんつ、孔子のいきどほりを發して食を忘るゝ如きは、皆是なり。
宮殿は人の心であり、その王座にせる王は理性であり、窓はであり、真珠と紅玉とできらめく宮殿のとびらは、あかくちびるしろい歯とを持つ口であり、「こだま」はその口から出る美しい言葉であろうか。
いま一個いつこひとあり、車臺しやだいして、右手ゆんで柄子とりでにぎつて旋廻輪せんくわいりんまわしつゝ、徐々じよ/\足下そくか踏臺ふみだいむとたちまかたはらそなへられたる號鈴器がうれいきはリン/\として、下方かほう軸盤じゆくばんしづかに回轉くわいてんはじむるととも
畢竟ひっきょうするに全く事実を知らざるにするものなり。
かしこに母はしたまふ
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
愕然びつくりし山水をすてて此娘を視るに一揖おじぎしてり、もとの草にしてあしをなげだし、きせるの火をうつしてむすめ三人ひとしく吹烟たばこのむ
また朝夕に部屋の掃除そうじ励行れいこうせしむること厳密を極め、するごとに一々指頭をもって座布団ざぶとんたたみ等の表面をで試み毫釐ごうり塵埃じんあいをもいといたりき。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しばしにぎやかなりし家のうちまた常のさびしきにかえりて、曇りがちなる障子のうち、浪子はひとり床にかけたるき母の写真にむかいてしぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
しつに、玉鳳ぎよくほうすゞふくみ、金龍きんりうかうけり。まどくるもの列錢れつせん青瑣せいさなり。しろきからなしあかきすもゝえだたわゝにしてのきり、妓妾ぎせふ白碧はくへきはなかざつて樓上ろうじやうす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あたう。男は無言で坐り込み、筒湯呑つつゆのみに湯をついで一杯いっぱい飲む。夜食膳やしょくぜんと云いならわしたいやしいかたの膳が出て来る。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まくらに近い所にして薫はものを言うのであったが、声もなくなったようで姫君の返辞を聞くことができない。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
この城の歴史よりも古くからある国柱くにのみはしらの神前にして、彼は拝跪はいきして体じゅうが凍るのもわすれていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
是より少し前鹿島宮かしまぐう参詣さんけいして、老女がむしろの上にしてこの歌をうたうのを聴いたという記事もある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その父は胡人こじんだが、ゆえあって衛律は漢の都で生まれ成長した。武帝に仕えていたのだが、先年協律都尉きょうりつとい李延年りえんねんの事にするのをおそれて、げて匈奴きょうどしたのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そうして自分じぶんあたたかしずかところして、かねめ、書物しょもつみ、種々しゅじゅ屁理窟へりくつかんがえ、またさけを(かれ院長いんちょうあかはなて)んだりして、楽隠居らくいんきょのような真似まねをしている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
十一ぐわつの二十八にち旦那だんなさまお誕生日たんぜうびなりければ、年毎としごと友達ともだち方々かた/″\まねまいらせて、周旋しうせんはそんじよしやうつくしきをりぬき、珍味ちんみ佳肴かこううちとけの大愉快おほゆくわいつくさせたまへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこでオランダの使節も同じように、将軍へ献上する進物を前に置き、将軍に対してし、ひたいを床につけ、一言を発することもなく、あたかもかにのようにそのまま後ろへ引きさがった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
陽炎かげろうのたちのぼる野辺にして、雲雀ひばりの空たかくさえずるのをきいたこともあった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
それは法王とそのチー・リンボチェとである。しかし法王は常に其坐そこに坐れる訳じゃない。チー・リンボチェはガンデンに住んで居れば(〔法式の時は〕)いつもそのに坐られるのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
日夜精神を学問にゆだねて、その状あたかも荊棘けいきょくの上にして刺衝ししょうに堪ゆべからざるのはずなるに、その人の私につきてこれを見ればけっして然らず、眼に経済書を見て一家の産を営むを知らず
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
質朴しつぼくあいするに堪へたり、余炉辺にし一客にふて曰く、是より山奥にいたらば栗樹くりありや否、余等一行探検たんけん中途ちうとにして飢餓きがおちゐることあらん乎、栗等の果実くわじつりて餓死がしのがれんとすと
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
るにして、(一一一)そうたひらげられてせしもの七十餘家よか
「うむ、さうだともよ」といふ老母ばあさんこゑがするとみななほつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わが母のし給ふ見ゆ
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)