すく)” の例文
南洋なんようのあまり世界せかいひとたちにはられていないしまんでいる二人ふたり土人どじんが、難船なんせんからすくわれて、あるみなといたときでありました。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
でもこれがもしほんとうだったとすれば、はなのきむら人々ひとびとがみなこころ人々ひとびとだったので、地蔵じぞうさんが盗人ぬすびとからすくってくれたのです。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
内儀かみさんは什麽どんなにしてもすくつてりたいとおもしたら其處そこ障害しやうがいおこればかへつてそれをやぶらうと種々しゆじゆ工夫くふうこらしてるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ほとんあやふかつたその時、私達は自らすくふために、十ぶんにそのちからうたがひをのこしながらも、愛とその結婚にかくを求めようとしました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
すくはん爲に故意わざつみおちいりしならん何ぞ是を知らずして殺さんや其方は井筒屋茂兵衞ゐづつやもへゑ惣領そうりやうならんと申されければ雲源うんげんおどろき感じ今は何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
吾等われ/\この危難きなんからすくいだことは、大佐たいさ智惠ちゑでもとておよばぬのであらうと、わたくしふかこゝろけつしたが、いま塲合ばあひだからなにはない。
さうして、もしこの冒險ばうけん成功せいこうすれば、いま不安ふあん不定ふてい弱々よわ/\しい自分じぶんすくこと出來できはしまいかと、果敢はかないのぞみいだいたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
火事かじときには防火樹ぼうかじゆとして非常ひじようやくいへかずにみ、ときにはひといのちすらすくはれることがあることもわすれてはなりません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
いまにもクマにわれそうになりながら、そのクマが人間にねらわれていることを教えてやって、あぶないところをすくってやったり
るにはるがあづけてある。いきほへいわかたねばらない。くれから人質ひとじちはひつてゐる外套ぐわいたう羽織はおりすくひだすのに、もなく八九枚はつくまい討取うちとられた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またなんじらのためにすべてのひとにくまれん。されどおわりまでしのぶものはすくわるべし。このまちにて、めらるるときは、かのまちのがれよ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
このため兩少年りようしようねん各自かくじ家屋かおくのみならず、重幸少年しげゆきしようねんごときは隣接りんせつした小學校しようがつこう二十戸にじゆつこ民家みんかとを危急ききゆうからすくたのであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
さきにドノバンがひょうにおそわれたとき、富士男は身をていしてドノバンを救うた、いまドノバンは、みずからきずついて富士男をすくうた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「よくは目的もくてきがわかりませぬが、ことによると、源氏閣げんじかく監禁かんきんしておく女を、すくいだしにきたいのち知らずであるやも知れませぬ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん何かの張合はりあいだれかがおぼれそうになったとき間違まちがいなくそれをすくえるというくらいのものは一人もありませんでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしは目つきで母さんにすくいをもとめてみた。かの女もご亭主ていしゅに気がつかないようにして、いっしょに行けと目くばせした。わたしはしたがった。
主人しゅじんのためにはいのちをすてて主人の危険きけんすくう犬がよくありますが、しろ公もまたそういう忠実ちゅうじつな犬にちがいありません。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
御扶手おんたすけて此世このよすくたまうてより、今年ことしまで一千二百十二年いつせんにひやくじふにねんになるが、このあたしにはおたすけい。しゆ貫通つきとほした血染ちぞめやりがこのさはらないのである。
……ね、相談敵手さうだんあひてにした其方そちぢゃが、其方そちわしとはいまからはこゝろ別々べつ/\。……御坊ごばうところすくひをはう。ことみなやぶれても、ぬるちから此身このみる。
その上に為朝ためとも悪口わるくちることいことたくさんにならべて、どうか一にちはや為朝ためともをつかまえて、九州きゅうしゅう人民じんみん難儀なんぎをおすくくださいともうげました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
B それで其女そのをんなはね。わたしの一しんさゝげるひとはあなたよりほかにはないとかなんとかつてね。是非ぜひこのあはれなるもだえのすくつてくださいとかなんとかいたものだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
權藏ごんざう最早もう彼是かれこれ六十です。けれどもづるまへきてぼつするまではたらくことはいまむかしかはりません。そして大島老人おほしまらうじんかれすくふたときいはうえつて
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
押しよせてくる不安に、あたしはもうえられなくなった。なにかすくいの手をべてくれるものは無いか。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それならば財政ざいせい整理緊縮せいりきんしゆくをし、國民こくみん消費節約せうひせつやくをして海外かいぐわいからものへらし、海外かいぐわい支拂しはら資金しきん必要ひつえうへらしてもつてこの難局なんきよくすくふよりほかみちはないのである
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
それでも、お雪ちゃんにしても、久助さんにしても、おすくまいを貰いに行く気にはなれないのです。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんなふうに、彼はすっかりあまやかされてだめになるところだった。しかしさいわいなことに、彼はまれつきかしこ性質せいしつだったので、ある一人の男のよい影響えいきょうをうけてすくわれた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
めたか?——そう言葉ことばをかけられたときのうれしさ! わしはてっきり自分じぶんすくってくれた恩人おんじんであろうとおもって、お名前なまえは? とたずねると、おじいさんはにっこりして
さも横柄おうへいな言葉付きも、二人を怒らせはしなかった。時にとってのすくぬし、感情を害しては大変であると、数馬も武兵衛もうやうやしく彼の言葉に従った。三人は足早に歩き出した。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(三三)雜亂紛糾ざつらんふんきうもの(三四)控捲こうけんせず、たたかひをすくもの(三五)搏撠はくげきせず。
七つのとしより實家じつかひんすくはれて、うまれしまゝなれば素跣足すはだししりきり半纒ばんてん田圃たんぼ辨當べんたうもちはこびなど、まつのひでを燈火ともしびにかへて草鞋わらんじうちながら馬士歌まごうたでもうたふべかりし
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私の今することがたとえ間違っていようとも、なにとぞゆるしてくださいませ。あゝ主人の来世をおすくいくださいませ。主人の霊を地獄じごくより救い出してとこしえの平和を恵みたまえ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
〔ああ、ヱヴェレストはまだとほいらしい。〕ペンペはかなしいこえをあげてきだしたが、自分じぶんこえいてすくひにるものもいのかとおもふと、はらつて、あたまなかぼうッとしてた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
彼等は、今まで軽蔑し切っていた宵越しの銭をためる連中と一所いっしょに、往来に並んでおすくまいを貰わなければならなかった。焼けたトタンを以って乞食小屋を作らなければならなかった。
ものぐるひはかなしきかなとおもふときさびしきこころ君にこそ寄れすくひたまはな
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
……まあ、お聞き、お前えらい考え違いしてるで。お前みたいな意味でどんなに愛情ささげたかってちょっとも難儀すくてやることになれへんで。僕はお前のことばっかり心配してるのやあれへんで。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
勝っていた味方に軽傷を与えて、敵の危急を完全にすくってしまった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかし、わたしは、このなかなさけあるひとさまのすくいにすがらなければ、このでどうしてらしてゆくことができましょう……。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
轉ばうと思つたのはほんの些細なことで、それが、自分をそれ程の大事からすくつてくれようとは思ひ設けなかつた。さう金太郎はかんがへた。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
じつ非常ひじやう手段しゆだんではあるが、※日くわじつ自動鐵車じどうてつしやすなすべりのたに陷落かんらくしたとき君等きみらすくはんがため製作せいさくした大輕氣球だいけいきゝゆうが、いまのこつてる。
くはへ候由私しは數年の出入屋敷やしきの事故先一旦の難儀なんぎすくふ心に候へどもかく御尋ねの上はつゝまず申上るにより御役人樣方の御慈悲おじひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おまけにあの瀬の処では、早くにもおぼれた人もあり、下流の救助区域でさえ、今年になってから二人もすくったというのです。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すくふには、天守てんしゆ主人あるじ満足まんぞくする、自分じぶん身代みがはりにるほどな、木彫きぼりざうを、をつときざんでつくなことで。ほかたすかるすべはない……とあつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すくってやれると、きみは思っていたんだね。だけど、きみの思うように、うまくいかなくって、ほんとうにざんねんだよ。
『だんだんよくなるよ。三月みつきまえも医者がまたさじを投げた。だが母親がまたすくった。いや、あれはふしぎな母親だよ。ミリガン夫人ふじんという女は』
もしこの家扶かふ下座敷したざしきにゐたまゝであつたならば無論むろん壓死あつししたであらうが、主人しゆじんおもひの徳行とくこうのために主人夫妻しゆじんふうふとも無難ぶなんすくされたのであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「今のうち沢山たんと勉強してもらつて置いて、いま此方こつちが貧乏したら、すくつてもらふ方がいぢやないか」と云つた。梅子は
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勘次かんじえた隙間すきまからしろゆきひかりあざむかれておつぎを水汲みづくみにした。さうして卯平うへいすくはれたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「なんの手段しゅだんをめぐらす時間もない。ただ、群集ぐんしゅうのなかにまぎれて、せつなに、矢来やらいのなかへりこみ、若君わかぎみをはじめふたりの盟友めいゆうすくいだすばかり」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたのようなとうといお上人しょうにんさまにおにかかったのは、わたしのしあわせでした。どうかあなたのあらたかな法力ほうりきで、わたしをおすくいなすってくださいませんか。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ひめすくいださんため、たゞ一人ひとりにてまゐりしは、ひそか庵室いほりにかくまひおき、後日ごじつをりて、ロミオへおくとゞけん存念ぞんねんしかるにまゐれば、ひめ目覺めざむるすこしき前方まへかた