うめ)” の例文
七「まことに宜くお出でなすった、帝釈様たいしゃくさまへおまいりに行こうと思って、帰りがけにお寄り申そうとおうめとも話をして居たが……お梅」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ればそこらじゅうが、きれいな草地くさちで、そして恰好かっこういさまざまの樹草じゅそう……まつうめたけ、そのがあちこちに点綴てんせつしてるのでした。
けれど小太郎こたろうは、こんなときにでも、はたけなかっているうめあいだから、あおい、あおうめがのぞいているのを見逃みのがしませんでした。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夢心地ゆめごこちをドンとひとたれたやうに、そも/\人口じんこう……まん戸數こすう……まんなる、日本につぽん第二だいに大都だいと大木戸おほきどに、色香いろかうめ梅田うめだく。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
松はつらいとな、人ごとに、みないは根の松よ。おおまだ歳若な、ああひめ小松こまつ。なんぼ花ある、うめもも、桜。一木ざかりの八重一重……。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
葉末はずゑにおくつゆほどもらずわらふてらすはるもまだかぜさむき二月なかうめんと夕暮ゆふぐれ摩利支天まりしてん縁日ゑんにちつらぬるそであたゝかげに。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
どうぞお上がり——御案内——うめの四番などとのべつにしゃべられたので、やむをえず無言のまま二人とも梅の四番へ通されてしまった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うめ手洗鉢ちょうずばちじゃあるまいし、乃公を叩いたって森川さんが帰って来るものか。けれども此は一のかなしき過失に外ならない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
かけたりけるかくて七すけとおうめは家主へあづ粂之進くめのしん揚屋あがりやいり喜八伊兵衞いへゑらうもどされけりさて翌日よくじつ大岡殿登城とじやうありて月番の御老中ごらうぢう松平右近將監殿まつだひらうこんしやうげんどの御逢おあひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お秀の父は東京府とうきょうふに勤めて三十五円ばかり取って居て夫婦の間にお秀を長女かしらとしておうめ源三郎げんざぶろうの三人の児をもって、左まで不自由なく暮らしていた。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「大阪にうめすけと云ふ役者があるの、綺麗な顔ですよ。このあひだね、お小姓こしやうになつたの、桃色のお振袖ふりそでを着てましたよ。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さてうめはなをはりとなり、日毎ひごとかぜあたゝかになりますと、もゝ節句せつくもゝはな油菜あぶらなはながさきます。はたにはたんぽゝが黄色きいろくかゞやいてきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
うめはなはなののどかな村むらを、粟毛くりげ額白ぬかじろの馬をのりまわした糟谷は、当時とうじわかい男女の注視ちゅうし焦点しょうてんであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
うめの木のわけが、ようやくふたりにもわかりました。両親は家のためを思って、万一の時の用意に、そこにたくさんの財産を埋めておいてくれたのです。
長彦と丸彦 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「へへへへへ、あの家もよかんべい。うめたにみたいなあまも二人いるだで——」と妙に笑う。形勢はなはだ穏かならん。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
仙梅日記せんばいにっき』には駿州うめしませんまたの旅行において、一人の案内者が山中さんに話した。雪の後に山男の足跡を見ることがある。二尺ほどの大足である。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うめなんぞじつて、おとつゝあはらゑぐいてやつからつてろ」勘次かんじとうからしぶつてしたでいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
伊藤喜兵衛いとうきへえは孫娘のおうめれて、浅草あさくさ観音の額堂がくどうそばを歩いていた。其の一行にはお梅の乳母のおまき医師坊主いしゃぼうず尾扇びせんが加わっていた。喜兵衛はお梅を見た。
南北の東海道四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
朝熊山あさまやまの眺望、ことに全渓ぜんけいみなうめで白いという月ヶ瀬の話などが清三のあくがれやすい心をひいた。それから京都奈良の話もその心をひき寄せるに十分であった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
四十年来の閲歴えつれき聞人達もんじんたち気風きふう呑込のみこみたれば、たゞ諸名家しよめいか御休息所ごきうそくじよを作り、御褒美ごほうびにはうめぽんづゝうゑくだされと、かね卑劣ひれついでざる名案めいあんうめぽん寄附主きふぬし
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
少年時代に、うめたに常陸山ひたちやまの角力を見た切り、さつぱり角力を見たことのない彼は、つまらなそうに土俵を見ていたけれど、幕内の土俵入りの時早くも彼は天竜を見て
殺人鬼 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
お冬坊、手がすいているなら、お前も乗んな、そっちのおばさん、いや失敬失敬、おうめさんも、乗んなさい。ヤア、楽隊屋さん。一つラッパ抜きで、やっつけて貰おうかね
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
山へ登って、はぎの株のかげへ寝ころんでいたら、体操の先生のように髪を長くした男が、おうめさんと云う米屋の娘と遊んでいた。ずかしい事だと思ったのか私は山を降りた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
大砲おほづつは僕等の小学時代に、——常陸山ひたちやまうめたにの大関だつた時代に横綱を張つた相撲すまふだつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ゆきうへれる月夜つくようめはなりておくらむしきもがも 〔巻十八・四一三四〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
早速さつそくくすり調合てうがふし、土地とち醫者いしや方劑はうざいさづけたが、玄竹げんちくは、塔頭たつちううめばうといふのへ案内あんないされて、精進料理しやうじんれうり饗應きやうおうけ、下男げだんとともに一ぱくして、翌朝よくてうかへることになつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
うめと言って、柳橋芸者、少しとうは立ちましたが、大姐さん株では鳴らした凄い腕です。
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
うめのグラスカスター 冬付録 病人の食物調理法の「第五十四 梅のグラスカスター」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「あんたを、あの外国人が、ぜひうめに連れて来ておくれと言うてなさるが——」
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
つのらせていたところ父親九兵衛が老後の用意に天下茶屋てんがぢゃや閑静かんせいな場所を選び葛家葺くずやぶき隠居所いんきょじょを建て十数株のうめの古木を庭園に取り込んであったがある年の如月きさらぎにここで梅見のうたげもよお
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
幡随院長兵衛ばんずいいんちょうべえ』が芝居喧嘩けんかの場の如き、『うめ由兵衛よしべえ』が長吉殺ちょうきちごろしの場の如き
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うめいて、紫色むらさきいろ雑木林ざふきばやしこずゑが、湿味うるみつたあをそらにスク/\けてえ、やなぎがまだあら初東風はつこちなやまされて時分じぶんは、むやみと三きやく持出もちだして、郊外かうぐわい景色けしきあさつてあるくのであるが
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
チロリでかんをして湯豆腐などで飲ませた。剣菱けんびし、七ツうめなどという酒があった。
無間むけんの鐘や、うめ手水鉢ちょうずばちじゃああるめえし、そんなにおめえの力で——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
むしろそれへ足を乗せた卜斎ぼくさいのほうで、まさか、やわらかい石だとは、ゆめにも思わなかったはずみから、よろよろとツンのめって、あやうく、向こうのうめ老木ろうぼくに頭をぶつけ、ふたたび
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば裏の竹藪たけやぶに蛇が出たとか、ひきが鳴いてるとか、ありの山が見つかったとか、うめの花が一輪いたとか、夕焼が美しく出ているとかいうようなことを、だれか家人の一人が発見すると
「おうめと云って別嬪べっぴんだった」
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
隣り合ふうめの如くありし事
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
うめさくら螺鈿かながひ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
ぼんやりしたうめえだをのばしてつてるやうだ。あたりをみまはすとまつくらで、とほくのはうで、ほう、ほうツて、ぶのはなんだらう。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そこは、人通ひとどおりのない、いえまえはたけなかでありました。うめも、かきのも、すでに二、三じゃくもとのほうはゆきにうずもれていました。
雪だるま (新字新仮名) / 小川未明(著)
先日せんじつ歳暮せいぼまゐつたらまつうめ地紋ぢもんのある蘆屋あしやかま竹自在たけじざいつて、交趾かうちかめ香合かうがふ仁清にんせい宝尽たからづくしの水指みづさしといふので一ぷく頂戴ちやうだいしました。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
で、松竹梅しょうちくばいと三つならべてたら、つよいのとよわいのとの両極端りょうきょくたんまつたけとで、うめはその中間ちゅうかんくらいしてるようでございます。
うめ否々いへ/\いとまは一かう出し申さず候と申に家主平兵衞も進みいで先達さきだつ梅事うめことわたくしへ御預おあづけのあひだ委細ゐさいうけたまはり候ところ粂之進殿くめのしんどのいとま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
せばらく片折戸かたをりど香月かうづきそのと女名をんなヽまへの表札ひようさつかけて折々をり/\もるヽことのしのび軒端のきばうめうぐひすはづかしき美音びおんをばはる月夜つきよのおぼろげにくばかり
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うさなあ。実際なかの事は、なにうなるんだかわからないからな。——うめ今日けふ直木なほきに云ひけて、ヘクターを少し運動させなくつちや不可いけないよ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うめはもと/\土地とちかわいた日當ひあたりのよいところにてきし、陰地かげちには、ふさはないですから、梅林うめばやしつくるには、なるべく南向みなみむきで土地とち傾斜けいしやしたところがよいのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
其夜そのよ詩集ししふなどいだして読みしは、われながら止所とめどころのなき移気うつりぎや、それ其夜そのよの夢だけにて、翌朝よくあさはまた他事ほかのこと心移こゝろうつりて、わすれて年月としつきたりしが、うめの花のくを見ては毎年まいとし
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
黄色きいろじゆくするうめ小枝こえだくるしめて蚜蟲あぶらむし滅亡めつばうしてしまほど霖雨りんうあきれもしないでつゞく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
富佐子は久しく、千穂子に逢う事がないので階川の家の様子もわからなかったけれども、母親のうめは、様子の変って来ている千穂子と与平の関係をそれとなく感じている様子だった。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)