)” の例文
カピはまた主人のかくしをさぐって一本のつなを出し、軽くゼルビノに合図をすると、ゼルビノはすぐにかれの真向まむかいにをしめた。
ここの軒から彼方に見えた一の高山を、独龍山どくりゅうざんといい、その中腹に、この地方を統治している祝朝奉しゅくちょうほうという豪族が代々よよ住んでいる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
煙草盆たばこぼんかうかをりのみして、にいまだ人影ひとかげなきとき瀧君たきくん光景くわうけいは、眞田さなだ六文錢ろくもんせん伏勢ふせぜいごとく、諸葛亮しよかつりやう八門遁甲はちもんとんかふそなへる。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「どこへいくものか。もうさむいからやすんだがいい。」と、父親ちちおやさきたれました。つづいて兄弟きょうだいもへやへはいって、とこはいりました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
下品げひんの縮の事は姑舎しばらくおいろんぜず。中品ちゆうひん以上に用ふるをうむにはうむところをさだめおき、たいを正しくなし呼吸こきふにつれてはたらかせて為作わざをなす。
主人は目で細君をせいす。勝手かってで子どもがきたったので細君はった。花前もつづいて立ちかけたのをふたたびになおって
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ほしなほり、ほしひめつむり宿やどったら、なんとあらう! ひめほゝうつくしさにはほし羞耻はにかまうぞ、日光にっくわうまへランプのやうに。
そのあぶ羽音はおとを、くともなしにきながら、菊之丞きくのじょう枕頭ちんとうして、じっと寝顔ねがお見入みいっていたのは、お七の着付きつけもあでやかなおせんだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
代助は誠太郎をつらまえて、いつもの様に調戯からかした。誠太郎は此間このあひだ代助が歌舞伎でした欠伸あくびかずを知つてゐた。さうして
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
川の中には白い帆艇はんていをいっぱいに張って、埠頭ふとうを目がけて走って来ましたが、かじにはだれもおりませんでした。
こゝろざすは何物なにもの葛籠つゞらそこをさめたりける一二枚いちにまいきぬ打返うちかへして淺黄縮緬あさぎちりめん帶揚おびあげのうちより、五通ごつう六通ろくつうかぞふれば十二通じふにつうふみいだしてもともどれば
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
然し帰って来ると、爺さんは四の五の云わずに依然かみさんのすわらした。太公望たいこうぼうの如く意地悪ではなかった。夫婦に娘が出来て、年頃になった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
何しに役者が来たのだろうと思った。いや、三役者衆やくしゃしゅうにも、あんなのはちょっとあるまい——そう思った。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
机の上に、小さいぶとんがのせてある。そのぶとんの上を見るとまん中がひっこんでいた。そして、ゴムのテープと、赤青のまだらのひもが結ばれたままあった。
透明猫 (新字新仮名) / 海野十三(著)
權勢家けんせいかなにがしといふが居てこの靈妙れいめうつたき、一けんもとめた、雲飛うんぴ大得意だいとくいでこれをとほして石を見せると、なにがしも大に感服かんぷくしてながめて居たがきふぼくめいじて石をかつがせ
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
彼等かれらはそれをいとんでるけれども、はたつてはなした最後さいごいとはしなはのやうにつたつなである。ばあさんまるつくつて銘々めい/\まへへ二せんづつのぜにいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一草ごとに三、四寸ばかりの札を立て添へたり。正面に亀野座かめのざといふ札あるはすみれごとき草なり。こはほとけとあるべきを縁喜物えんぎものなれば仏の字を忌みたる植木師のわざなるべし。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「そんなら御苦勞ごくらうながら、そこへ御案内ごあんないねがひませう。」かうつて、りよつた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
やがて先生ふくされ、予、近日の飲食いんしょく御起居ごききょ如何いかんと問えば、先生、左右さゆうの手をりょうそでのうちに入れ、御覧ごらんの通りきものはこの通り何んでもかまいませぬ、食物はさかなならび肉類にくるいは一切用いず
何ともはやおのさめる殺風景ではあるが、単なる一つの風説でなく、また或る一部の幻覚でもなくて、かねてこの種の奇怪な感動を必要とするような伝統があったものと思われる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
まねき相談に及ぶうち若松屋わかまつやきん竹本君太夫たけもときみたいふならびに瀬川の母も駈來かけきた皆々みな/\樣子やうすを聞て天晴あつぱれ手柄てがらなりとよろこびしがつれの二人をにがしたること口惜くちをしと云に半左衞門はんざゑもん否々いや/\事故わけもなくころさばつれの二人が一
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私は鼠色の彼女が繪ハガキへ書いてよこしたパリ・オペラのやうに、どつしりしてゐるが、ふるびた鼠色で彼女があつてくれないことを、友達の名譽恢復のために祈つて、扉の外で待つた。
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
するとこれはまた意外いがいのことに、法師がただひとり、安徳天皇あんとくてんのうのみささぎの前にたんして、われを忘れたように、一心いっしんふらんに、びわをだんじ、だんうら合戦かっせんきょくぎんじているのでありました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
首領かしらに戻って、腕を組んで、三人の奇術師のようすをながめました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ところで上等社会の婦人は幾分いくぶん綺麗きれいであるとはいうものの、一番おの冷める話は、お便ちょうずに行ってその儘お越しになるという秘密を思い出すと、どんな美人でも一遍に嫌になってしまうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いやわしの魂をつくっている要素、わしそのものが不幸なのだ。わしの魂は鎌首かまくびをもたげていつもうろうろしている。心のが定まらない。わしは失われる人間なのか。地獄じごくにおちる人間なのか。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
私達わたくしたち神床かんどこ前面ぜんめんに、ひだりみぎってめました。
貴女あなた……わたしきにうまれてたやうなもので御います………それもわたし不運ぶうんと存じては居りますが………まだいつしよで居りました時に信太郎と云ふ男の子が一人御座いましたので……丁度今年で六つで御座ございます
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
風流男みやびをや、紅顏孃子あからをとめあひ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
老眼鏡おいめがねここにこそ、はあきぬ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
セリファンの傍にをしめた。
あめ白き光のめぐれる日に
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
まもなく、衣笠山のふもとにたどりついた盲人の列は、順次、本堂での席序せきじょをただし、廻廊のそとにまですきまもないほどについていた。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしまばゆかったろう、下掻したがいを引いてをずらした、かべ中央なかばに柱がもと、肩にびた日をけて、朝顔はらりと咲きかわりぬ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宗助そうすけ障子しやうじけたなり、少時しばらくさかなからつゆあぶらおといてゐたが、無言むごんまゝまた障子しやうじてゝもともどつた。細君さいくんさへさかなからはなさなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかるにひとりの男来り、さもはぢらふさまにて人のうしろ欲言ものいはんとしていはず、かしらたれなみだをおとしけり、人々これをみれば同村おなじむらなにがし次男じなん也けり。
このさるは『権力けんりょくが代表せられる令名れいめい高き閣下かっか』の真後まうしろにをかまえてこっけいなしかめっ面をして見せていた。
巳代吉は本家から願下ねがいさげて、監獄に入れる親分とおかみの計画は徒労になった。然し親分は中々其居馴れた久さんのうちを動こうともしなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あるあさのこと、すこしの油断ゆだんはからって、かれは、一からしました。そして、どこというあてもなく、ただ遠方えんぽうへと、あしまかせてはしったのです。
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
赤蜻蛉あかとんぼう田圃たんぼみだるれば横堀よこぼりうづらなくころちかづきぬ、朝夕あさゆふ秋風あきかぜにしみわたりて上清じやうせいみせ蚊遣香かやりかう懷爐灰くわいろばいをゆづり、石橋いしばし田村たむらやが粉挽こなひうすおとさびしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あらあらしく頭を壁に押しつけてもがいた。ぶとんに顔をうずめてしばらく声をのんでこくした。
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
巫女くちよせしばらあはせてくちなかなにねんじてたが風呂敷包ふろしきづゝみまゝはこ兩肘りやうひぢいて段々だん/\諸國しよこく神々かみ/″\んで、一あつめるといふ意味いみ熟練じゆくれんしたいひかた調子てうしをとつていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その一方を有心うしんというに対して、是をまた無心の座とも申したそうである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
礼子れいこは外からみさまに母に泣きすがった。いっしょけんめいに泣きすがってはなれない。糟谷かすやにつきながら励声れいせいつませいした。隣家りんか夫婦ふうふんできてようやく座はおさまる。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
といって、王さまの前にある、ぶよぶよしたぶとんみたいなものを指した。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
昨日られた子も、一昨日おととい奪られた子も、窓に近いおだった。
きゝ道理もつともの願なりゆるし遣はすへだたれば遲速ちそくあり親子三人一間ひとまに於て切腹せつぷくすべければ此所へ參れとの御言葉に用人はかしこまり此旨このむね奧方おくがたへ申上げれば奧方には早速さつそく白裝束しろしやうぞくあらためられ此方の一間へ來り給ひなみだこぼさず良人をつとそばざして三人時刻を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
(父はにあり。)——
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
明日あす莖葉くきばさん
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
幻師げんしやすゑしえう
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)