くる)” の例文
「おかあさん、くるしい?」と、勇吉ゆうきちは、母親ははおやのまくらもとにつききりで、をもんでいましたが、なんとおもったか、きゅうがって
一粒の真珠 (新字新仮名) / 小川未明(著)
で、その白鳥はくちょうは、いまとなってみると、いままでかなしみやくるしみにさんざん出遭であったことよろこばしいことだったという気持きもちにもなるのでした。
かれくるしさにむねあたりむしり、病院服びやうゐんふくも、シヤツも、ぴり/\と引裂ひきさくのでつたが、やが其儘そのまゝ氣絶きぜつして寐臺ねだいうへたふれてしまつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
静かな小路こうぢうちに、自分の足音あしおと丈が高くひゞいた。代助はけながら猶恐ろしくなつた。あしゆるめた時は、非常に呼息いきくるしくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
多分たぶん被害者ひがいしゃは、くるしみもがき、金魚鉢きんぎょばちのところまでいよつてきて、くちをゆすぐか、または、はちなかみずもうとしたのだろう。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
いいえ、」とおかあさんがった。「わたしはむねくるしくって、がガチガチする。それでみゃくなかでは、えているようですわ。」
おつぎもおしなんでからくるしい生活せいくわつあひだに二たびはるむかへた。おつぎは餘儀よぎなくされつゝ生活せいくわつ壓迫あつぱくたいする抵抗力ていかうりよく促進そくしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あいつはぼくたちをさんざんくるしめたけど、あそこで、しょんぼりしているところを見たら、ほんとにかわいそうになりましたよ。
父も家庭に対するくるしみ、妻子に対するくるしみ、社会に対するくるしみ——所謂いはゆる中年の苦痛くるしみいだいて、そのの狭い汚い町をとほつたに相違さうゐない。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
それより一同いちどう種々いろ/\まをしてかれ御前ごぜんにわびたりければ、幼君えうくんふたゝび御出座ごしゆつざありて、籠中かごのなかひとむかはせられ、「其方そのはうさほどまでにくるしきか」
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
下等船客かとうせんきやくいち支那人シナじんはまだ伊太利イタリー領海りやうかいはなれぬ、ころよりくるしきやまひおかされてつひにカンデイアじまとセリゴじまとのあひだ死亡しぼうしたため
彼女かのじよはその苦痛くつうたへられさうもない。けれどもくろかげかざしてたゞよつて不安ふあんは、それにもして彼女かのぢよくるしめるであらう。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ガバ、ガバ、と二つ三つくるしげないきをしているうちに、波紋にまかれ、竹童のかげは、青ぐろいいけのそこへ見えなくなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
〔評〕南洲壯時さうじ角觝かくていを好み、つねに壯士と角す。人之をくるしむ。其守庭吏しゆていりと爲るや、てい中に土豚どとんまうけて、掃除さうぢよこととせず。
といって、あのうまそうなおかしだの、にしめだののならべてある店の前に立つと、ただくるしくなってくるばかりです。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
おに大将たいしょうは、桃太郎ももたろう大力だいりきくびをしめられて、もうくるしくってたまりませんから、おおつぶのなみだをぼろぼろこぼしながら
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
海蔵かいぞうさんはくるしそうにわらって、そとてゆきました。そして、みぞのふちで、かやつりぐさって、かえるをつっていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
こりゃ、しっかりとおやらう! つい最前いまがたまでこひしさにぬるくるしみをてござったその戀人こひゞとのヂュリエットはつゝがない。すれば、それが幸福しあはせ
それから、小さいニールスは、家も食べ物も何もない、野のき物たちと生活をともにして、小さな生き物たちのくるしみやかなしみをつぶさに知ります。
人知ひとしれずしのんできた同じようなくるしみとおたがいあわれみの気持きもちとが、悲しいやさしみをもって二人をむすびつけていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
博士は親切しんせつにすすめた。ところが透明人間とうめいにんげんは、くるしそうにうなり声をたてながら、どうしてもねむろうとしなかった。
かくくるしめる事是皆露顯ろけんの小口となりかの道十郎の後家お光がはからずうつたへ出る樣に成けるは天命てんめいの然らしめたる所なり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それですから人民が榮えて、勞役に出るのにくるしみませんでした。それでこの御世を稱えてひじりの御世と申します。
四邊あたり其香そのにほひで大變たいへんでした。公爵夫人こうしやくふじんでさへも、ッちやんとほとんどかはる/″\くさめをして、せるくるしさにたがひ頻切しツきりなしにいたりわめいたりしてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
で、新婚生活しんこんせいくわつは七十円らずの月きふはじめられたが、もなく女の子が生れた上に、世間的せけんてきな物價騰貴ぶつかとうきで、そのくらしはだん/\くるしくなるばかりだつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ではみんなよ、はやおおきくなつて、きみたちも勇敢ゆうかんなプロレタリアの鬪士とうしとなつて、きみたちやきみたちのおとうさんおかあさんをくるしめてゐるやつらをたゝきのめしてくれ!
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
こんなくるしい道中どうちゅうのことでございますから、御服装おみなりなどもそれはそれは質素しっそなもので、あしには藁沓わらぐつには筒袖つつそで、さして男子だんし旅装束たびしょうぞく相違そういしていないのでした。
が、くるしみはすこしもない。ただむねつめたくなると、一そうあたりがしんとしてしまつた。ああ、なんしづかさだらう。この山陰やまかげやぶそらには、小鳥ことりさえづりにない。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それはねこのため、兒猫こねこのため、五すんにたらぬちひさなねこぴきで、五しやくちかからだてあます。くるしい。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
カムパネルラは、なぜかそういながら、少し顔いろが青ざめて、どこかくるしいというふうでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
旦那だんなさまへたいして何事なにごとうらみもい、あのやうにくるしませてくださつたゆゑ今日けふたのしみがたのしいので、わたしがいくらかものわかるやうにつたもあゝいふなかゆゑであらう
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あるときも無聊ぶれうくるしんでゐたおりたれかを訪問ほうもんしようかとつてゐるときS、Hた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
平常よのつねくはくるしき喚子鳥よぶこどりこゑなつかしきときにはなりぬ 〔巻八・一四四七〕 大伴坂上郎女
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
熱の出たと云う事よりもくるしい事である。父は、あんまりの心配から、腹立たしい様に
(新字新仮名) / 宮本百合子(著)
私はもくしてたゞあゆみを運んだ。實際じつさいなんと云ツて可いやら、些と返答へんたうくるしんだからである。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
剣林立けんりんりつのあいだといえども吾れいかんという、なに、そんなかたくるしいことは言わないが、とにかく、こわいという感情を生れる時に忘れて来た、意地と張りとで固まっている美女
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
強盜がうとう間違まちがへられた憤慨ふんがいまぎれに、二人ふたりはウン/\あせしぼりながら、一みちさかい停車場ていしやばで、其夜そのよ汽車きしやつて、品川しながはまでかへつたが、新宿しんじゆく乘替のりかへで、陸橋ブリツチ上下じやうげしたときくるしさ。
著者ちよしや大正十二年たいしようじゆうにねん關東大地震かんとうだいぢしんさい東京帝國大學内とうきようていこくだいがくない地震學教室ぢしんがくきようしつにあつて、水無みづなしに消防しようぼう從事じゆうじしたくるしい經驗けいけんゆうしてゐるが、みづ用意よういがあつての消防しようぼう比較ひかくしてその難易なんいくことは
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
江戸の児曹こどもが春の遊は、女繍毬てまり羽子擢はごつき、男紙鴟たこあげざるはなし。我国のこどもは春になりても前にいへるごとく地として雪ならざる処なければ、歩行ほかうくるしく路上みちなかに遊をなす事すくなし。
わらはこそは中宮の曹司横笛と申すもの、隨意まゝならぬ世の義理に隔てられ、世にも厚き御情おんなさけに心にもなきつれなき事の數々かず/\、只今の御身の上と聞きはべりては、悲しさくるしさ、女子をなごの狹き胸一つには納め得ず
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
いっせいに悲しげなくるしげな声が上がりました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
おれたちのむね凱歌がいかげるにはくるぎる
自分のくるしさを思ひ出してみることです。
春の詩集 (新字旧仮名) / 河井酔茗(著)
くるしい刹那せつな」のごとく、ばみかけて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あな、あはれ、あすゆゑに、夕暮くる
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
解けぬ思ひのくるしくもあるかな
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
くるしみとはなにか。」
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
くるしむも
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
かあさんは、おかあさんで、まだとしのいかない、だいじな、かわいいもとからはなすのはかれるようなくるしみでありました。
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
新年しんねん停滯もたれてゐるのはじつくるしいですよ。それ今日けふひるから、とう/\塵世ぢんせいとほざけて、病氣びやうきになつてぐつと寐込ねこんぢまいました。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)