こた)” の例文
かみさま、どうぞ、わたしをおたすけくださいまし。」と、かれは、こたえるかわりに、くらい、御堂おどううちかってわせておがんだのです。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
道翹だうげうこたへた。「豐干ぶかんおつしやいますか。それは先頃さきころまで、本堂ほんだう背後うしろ僧院そうゐんにをられましたが、行脚あんぎやられたきりかへられませぬ。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
らうこゝろをつけて物事ものごとるに、さながらこひこゝろをうばゝれて空虚うつろなりひとごとく、お美尾みを美尾みをべばなにえとこたゆることばちからなさ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「さうだ、まつたすね。わるくすると、明日あしたあめだぜ‥‥」と、わたしざまこたへた。河野かうのねむさうなやみなかにチラリとひかつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「ああ!」とおかみさんがこたえた。「うち後方うしろにわにラプンツェルがつくってあるのよ、あれをべないと、あたしんじまうわ!」
蝙蝠かうもりねこべるかしら?』なんてひました、それであいちやんは、どつちがうとも其質問そのしつもんこたへることが出來できませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
指折ゆびをかゞめて勘定かんじようして、今晩こんばんは、よるまをせば、九晩こゝのばんひるまをせば、十日とをか經過けいかいたしましたことよ。かういふおこたへをしたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
猟人かりうど鸚鵡あうむがゐないので「おまへはどこへいつた」とひますと、鸚鵡あうむ子供こどものポツケツトのなかで「わたしはこ〻にゐる」とこたへました。
「そんなことはない。」わたしわらひながら否定ひていした。するとまたS、H訂正ていせいでもするやうに、「いや、わたしほうが……。」とこたへた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それで、多くの学者がくしゃたちが集って、いろんな面白おもしろあそびごとを考えだしては王子にすすめました。すると王子はこうこたえました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
左樣さやう殘念ざんねんながら、西班牙イスパニヤや、亞弗利加アフリカはう今度こんど斷念だんねんしました。』と、わたくしがキツパリとこたへると、かれはポンとひざたゝいて
それにはこたえずに、藤吉とうきちから羽織はおりを、ひったくるように受取うけとった春信はるのぶあしは、はやくも敷居しきいをまたいで、縁先えんさきへおりていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ございませぬが子供等が夫婦ふうふに成ました故憑司と私しも夫婦ふうふに成ましたとのこたへに白洲の一どうフツとき出せしが大岡殿わらひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うかしたかとたづねると、たゞすこ心持こゝろもちわるいとこたへるだけであつた。醫者いしやもらへとすゝめると、それにはおよばないとつてはなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すると金魚屋きんぎょやは、そのころ時刻じこくだつたら、パチンコにいたとこたえたから、井口警部いぐちけいぶはその実否じっぴを、平松刑事ひらまつけいじめいじてたしかめさせることにした。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
んなことをするのも、矢張やは修行しゅぎょうひとつじゃ。かみとして無理むりにはすすめぬから、りのままにこたえるがよい。うじゃってはないか?
と、利助りすけさんがこたえました。ここのみずをのんだあとでは、だれでもそんなことを挨拶あいさつのようにいいあうのがつねでした。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
幼君えうくんこれを見給みたまひて、「さても恰好かつかうかな」とちてのたまへば「なるほどよろしくさふらふ」とかごなかにてこたへたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれどもその日は、林太郎のうちでは仕事が休みでもなかったし、林太郎は学校がお休みでもなかったので、ふたりともなんともこたえませんでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
其後そのあと自轉車隊じてんしやたいて、居合ゐあはせた農夫のうふに、二人連ふたりづれの、人相にんさうわる男子をとこが、此邊このへんをうろ/\してなかつたかとうてると、農夫のうふすこぶふるつたこたへをした。
クリストフはくのに夢中むちゅうになっていて、何をいてるのやらさっぱりわからなかったので、知らないとこたえた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
『えゝ。』と、まちわらひながらこたえたが、彼女かれ自分じぶん昔淋むかしさびしい少女時代せうぢよじだいのことははなさなかつた。そしてがついたやうに、またまどそとをのぞいた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
れでわたくし反應はんおうしてゐます。すなはち疼痛とうつうたいしては、絶※ぜつけうと、なんだとをもつこたへ、虚僞きよぎたいしては憤懣ふんまんもつて、陋劣ろうれつたいしては厭惡えんをじやうもつこたへてゐるです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのとき、もう一人ひとりひとかきかはつて、『ります、ります』とこたへますね。あのぼうつよたれゝばたれるほど、かきあまくなるとかききました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ラランはかうこたへるやいなや、もう、はねをひろげた。ほかのからすたちはペンペを馬鹿ばかなやつだとおもひながらもヱヴェレストの頂上てうじやう目指めざしてびだす元気げんきたれた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
「はい、そうです」こたえながら先方さき此方こちらを向いて来て、二人が近寄ってみると、先刻さっき帰した書生なので、「君は、一躰いったい如何どうしたのだ、僕は盗賊どろぼうだと思ったよ」
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
こういわれて花前は、それにこたうることばなく立った。花前は保証人になる人がないのではないらしい。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
かようないし破片はへんつてて、これが原石器げんせつきであるかどうかといふたしかなことはこたへが出來できないにしても、人間にんげん立派りつぱ石器せつきつく以前いぜんに、それよりも簡單かんたん
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ぼく眞面目まじめこたへたのです。まつたぼく大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんです。故意わざ奇妙きめうこたへをして諸君しよくんおどろかすつもりけつしてもたないので。これまでもぼく出身しゆつしん學校がくかうきかれましたが。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
道子みちこはうむられたものむすめで、東京とうきやう生活せいくわつをしてゐるのだとこたへ、「おはかいのなら、ちやんとしたいしてたいんですが、さうするにはどこへたのんだら、いゝのでせう。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
侍女じぢよつかえたまゝ、いろ淺黒あさぐろ瓜實顏うりざねがほもたげてこたへた。ほゝにもえりにも白粉氣おしろいけはなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「いいお点っていうものはね、なんのやくにもたないんですよ。」と、エムリーヌのおかあさんはおこたえになりました。「それだからかえって、いただいて自慢じまんになるのです。 ...
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
ティウトンのヨハンネスとこたへる其声そのこゑきとほるやうで、いてゐて、心持こゝろもちくなる。
カピ長 くたばりをれ、ろくでなしめが! 不孝千萬ふかうせんばんやつぢゃ! こりゃやい、つぎ木曜日もくえうび教會堂けうくわいだうきをらう。かずば、またこのかほるな。ふな、こたへるな、返答へんたふするな。
といつてなげきましたが、ひめはいよ/\しぶるばかりで、すこしもきいれる樣子ようすがありませんので、おきなのつけようがなくなつて、どうしても宮中きゆうちゆうにはあがらぬといふことをおこたへして
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
しかるに玉はくだきしときゝてかじまやへこたへざりしにやあらん。卞和へんくわが玉も楚王そわうたればこそ世にもいでたれ、右にのせたる夜光のはなし五ツあり、三ツは我が越後にありし事なり。
こたえるだけでした。でもおかあさんは、なんだかむすめ自分じぶんにかくしていることがあるようにうたぐって、だんだんむすめがにくらしくなりました。それであるときおとうさんにそのはなしをしました。
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「お早うございます」シグナレスはふし目になって、声をとしてこたえました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なぜ男装してゐるかに就いて、この婦人のこたへは至極しごくはつきりしてゐる。
かくありふにの二三の事項じこうを以てせり、しかしてこたへぬ。
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
間違まちがったんです。」とシューラはつらそうにこたえた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
と、いかにも平民へいみんらしいこたえかたをしました。
というこたえに一していた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、親家鴨おやあひるこたえました。
かれこたへて
(新字新仮名) / 太宰治(著)
「もう、ちっとがまんをおし、じきわりますからね。そうしたら、はいって、ごはんのしたくをします。」と、母親ははおやは、こたえました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもには、はなしたあとでいろ/\のことはれて、わたくしまたむことをずに、いろ/\なことこたへたが、それをこと/″\くことは出來できない。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
素通すどほりもなるまいとてずつと這入はいるに、たちま廊下らうかにばた/\といふあしおと、ねへさんお銚子てうしこゑをかければ、おさかななにをとこたふ。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こたへられたがあいちやんには愈々いよ/\合點がてんがゆかず、福鼠ふくねずみ饒舌しやべるがまゝにまかせて、少時しばらくあひだあへくちれやうともしませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
甚兵衛はびっくりして、なおいろいろたずねましたが、白髯しろひげのおじいさんはをつぶったきり、もうなんともこたえませんでした。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)