いきほ)” の例文
もうそら何處どこにかいきほひをひそめて躊躇ちうちよしてはずはる先立さきだつて一取返とりかへさうとするものゝごとさわいで/\またさわぐのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
るにはるがあづけてある。いきほへいわかたねばらない。くれから人質ひとじちはひつてゐる外套ぐわいたう羽織はおりすくひだすのに、もなく八九枚はつくまい討取うちとられた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
赤鉢卷隊あかはちまきたい全力ぜんりよく山頂さんてうむかつてそゝぎ、山全體やまぜんたいとりくづすといふいきほひでつてうちに、くはさきにガチリとおとしてなにあたつた。
さあなんとで御座ござんす、とたもとらへてまくしかくるいきほひ、さこそはあたがたうもあるべきを、ものいはず格子かうしのかげに小隱こかくれて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
梅雨後つゆあがりいきほひのよい青草が熱蒸いきれて、眞正面に照りつける日射が、深張の女傘の投影を、鮮かに地に印した。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
かようにアメリカの博物館はくぶつかんはなか/\あなどがたいきほひをもつてゐるばかりでなく、近年きんねん支那しななどから古美術品こびじゆつひん金錢きんせんいとはず購入こうにゆうするといふ状態じようたいですから
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
武村兵曹たけむらへいそう大軍刀おほだちブン/\とまわ海賊船かいぞくせん近寄ちかよらばわれからその甲板かんぱん飛移とびうつらんばかりのいきほひ。
米國經濟界べいこくけいざいかい全般ぜんぱんには何等なんら懸念けねんすべき状態じやうたいみとめざるも、人氣にんき中心ちうしんたる證劵市場しようけんしぢやう大變動だいへんどうきたしたことであるからいきほ生糸相場きいとさうばにも波及はきふして十ぐわつ初旬しよじゆんより低下ていか趨勢すうせいとなり
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
雨戸あまどをさすもなく、いままでとほくのはやしなかきこえてゐたかぜおとは、巨人きよじんの一あふりのやうにわれにもないはやさでかけて、そのいきほひのなかやまゆきを一んでしまつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
賢弟とわかれて国にくだりしが、国人くにびと大かた経久がいきほひにきて、塩冶えんやめぐみかへりみるものなし。従弟いとこなる赤穴あかな丹治、富田の城にあるをとむらひしに、利害を説きて吾を経久にまみえしむ。
これ極端きよくたん誇張こてうする結果けつくわいきほ異形いげうさうていするので、これわたしのばけものゝ定義ていぎである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
和尚なだれに押落おしおとされ池に入るべきを、なだれのいきほひに手鞠てまりのごとく池をもはねこえて掘揚ほりあげたる雪に半身はんしんうづめられ、あとさけびたるこゑに庫裏くりの雪をほりゐたるしもべらはせきたり
にらみ付猶何とか申たならば又私しをも手討てうちに致しさうないきほひなりしと云ば大岡殿夫は何時頃いつごろ手討てうちに成し樣子なるやと有に吉兵衞ハイ何時頃いつごろで御座りますか日も申きけられず大概おほかた海川へでも死骸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夜露よつゆれたくさが、地上ちじやうあふれさうないきほひで、うづめてゐた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
ここにして十時伝右衛門のすゑの子と一夜ひとよいきほひ飲みて寝にける
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いきほまうに、こは如何に
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
はたけ作主さくぬしその損失そんしつ以外いぐわいにそれををしこゝろからかげいきほはげしくおこらうともそれはかへりみるいとまたない。勘次かんじせた茄子畑なすばたけもさうしておそはれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此纎弱このかよわむすめ一人ひとりとりむることかなはで、いきほひにりていだときにはだいをとこ二人ふたりがゝりにてもむつかしきときのありける。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なにない。——ないけれど面白おもしろい。疲勞ひらうしては天幕てんとり、菓物くわぶつひ、サイダをむ。いきほひをてはまたりにかゝるが、はなはだしくなにない。
見参けんざん見参けんざんなどゝ元気げんきづいて、説明せつめいつまでもない、山深やまふか岩魚いはなのほかは、かねいた姫鱒ひめますにておはすらむ、カバチエツポでがんせうの、と横歩行よこあるきしていきほひ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さしつたりと電光石火でんくわうせきくわいきほひ、げにもや電光でんくわう影裡えいり春風しゆんぷうるごとく、かたちえねど三尖衝角さんせんしやうかく回旋めぐところ敵船てきせん微塵みじんくだけ、新式魚形水雷しんしきぎよけいすいらいはしるところ白龍はくりようてんをどる、のこ賊船ぞくせんや三せき
先き駆くとただにいきほふ軍の犬ひとたび吼えてかへらざりけり
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くだしおかれたり率御着用有りて然るべしとのべければ伊賀亮呵々から/\わら貴僧きそう御芳志ごはうしかたじけなけれど未だ御對面もなき中に時服じふく頂戴ちやうだいするいはれなし又拙者が粗服そふくで御對面なされ難くば夫迄の事なりおして拙者より奉公は願ひ申さずと斷然きつぱり言放いひはなし立上るいきほひに常樂院は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もりこずゑうへはるかのぼらうとして次第しだいいきほひをくはへるほのほを、疾風しつぷうはぐるりとつゝんだ喬木けうぼくこずゑからごうつとしつけしつけちた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此年このとし三のとりまでりてなかにちはつぶれしかど前後ぜんご上天氣じやうてんき大鳥神社おほとりじんじやにぎわひすさまじく、此處こゝかこつけに檢査塲けんさばもんよりみだ若人達わかうどたちいきほひとては
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
英雄えいゆうは、面倒めんだうくさい座席ざせきになどかたづくのでない。自動車じどうしや免許取めんきよとりだから、運転手台うんてんしゆだいへ、ポイとあがると、「いそげ。」——背中せなかを一つ引撲ひつぱたいきほひだから、いや、運転手うんてんしゆばしたこと
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
花落ちてただち萌ゆるか玉蘭はくれん立枝たちえの芽ぶき雷にいきほ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
出るや否や下に/\の制止せいし聲々こゑ/″\とゞこほりなく渡邊橋の旅館りよくわんにこそ歸りける今はたれはゞかる者はなく幕は玄關げんくわんひらめき表札は雲にもとゞくべく恰もあさひのぼるが如きいきほひなれば町役人まちやくにんどもは晝夜相詰あひつめいと嚴重げんぢう欵待あしらひなりさて御城代には御墨附おすみつきうつし并びに御短刀おたんたう寸法すんぱふこしらへ迄委敷くはしくしたゝ委細ゐさい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今川橋いまがはばしきは夜明よあかしの蕎麥掻そばがきをそめころいきほひは千きんおもきをひつさげて大海たいかいをもおどえつべく、かぎりのひとしたいておどろくもあれば、猪武者いのしゝむしやむか
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にんではだい乗溢のりこぼれる。の、あのいきほひでこぼれたには、魔夫人まふじんあふぎもつあふがれたごとく、漂々蕩々へう/\とう/\として、虚空こくうたゞよはねばなるまい。それにおの/\随分ずゐぶんある。くいふわたしにもある。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぐわつ廿日はつか千束神社せんぞくじんじやのまつりとて、山車屋臺だしやたい町々まち/\見得みえをはりて土手どてをのぼりて廓内なかまでも入込いりこまんづいきほひ、若者わかもの氣組きぐおもひやるべし、きゝかぢりに子供こどもとて由斷ゆだんのなりがたきこのあたりのなれば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いきほひよく引入ひきいれしがきやくろしてさておもへばはづかしゝ、記憶きおくのこみせがまへいまには往昔むかしながらひと昨日きのふといふ去年きよねん一昨年をとゝし同商中どうしやうちゆう組合曾議くみあひくわいぎあるひ何某なにがし懇親曾こんしんくわいのぼりなれし梯子はしごなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
づかしや女子をんな不似合ふにあひくだものりも一重ひとへ活計みすぎためのみならず便たよりもがなたづねたやの一しんなりしがゑにしあやしくかたありて不圖ふとれられし黒塗塀くろぬりべい勝手かつてもとにあきなひせしときあとにてけば御稽古おけいこがへりとやじやうさまのしたるくるまいきほひよく御門内ごもんうち引入ひきいるゝとてでんとするわれ行違ゆきちがひしがなにれけんがさしたる櫛車くしくるままへには
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)