其中そのうち)” の例文
みなまた少時しばしもくしてしまふ。其中そのうちちやる。ドクトル、ハヾトフはみなとの一ぱんはなしうちも、院長ゐんちやうことば注意ちゆういをしていてゐたが突然だしぬけに。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其中そのうちにお腹もくちくなり、親の肌で身体もあたたまって、とろけそうない心持になり、不覚つい昏々うとうととなると、くくんだ乳首が抜けそうになる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
其中そのうちで事件の当初から最も自分の興味をいたもの、又現に惹きつゝあるものは、軍国主義の未来といふ問題に外ならなかつた。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たづね出さんと又々諸國しよこくへ手をまはされけれ共靱負の在家ありか少しも知ず其中そのうち西國へ差出さしいだされたる探索たんさくの者より靱負は泉州せんしうさかひにて入水じゆすゐせしと云事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其中そのうちに北の方の雲が一度綺麗に剥げて、三宝山が全容を曝露すると南に面して屹立した巨岩の塊が目に入ったので、心が漸く落ち着いて来た。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
到頭とう/\其中そのうちでも權勢家けんせいか一人ひとりらしくえたねずみが、『すわたま諸君しよくん、まァたまへ、ぼくきにそれのかわくやうにしてせる!』と呶鳴どなりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此間このあひだロミオは道外假面だうけめんかぶったるまゝひとはなれててゐる。其中そのうちヂュリエットと一武官ナイトりあうて舞踏をどりはじむる。
かぬ小供こどもすくないとして其中そのうちにも自分じぶん小供こどもときなによりもきであつた。(と岡本某をかもとぼうかたりだした)。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
其中そのうちまた拍子木ひやうしぎを、二ツ打ち三ツ打ち四ツ打つやうになつて来ると、四ツつじ楽隊がくたい喇叭らつぱれて段々だん/\近くきこえまする。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
B うゝ、それはマア双方さうはうあひだにキナくさにほひぐらゐしてゐたのだらう。其中そのうちをんなくにかへつて、しばらくしてから手紙てがみをよこしたんだ、さうだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
さうして辛抱して居りや、また其中そのうちに何ぞ好い仕事も見附かるだらう。さあ、一円るから、正可まさかの時の用意にしろ。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
若し犯罪が二十有るとすれば其中そのうちの左様さ十五までは大抵女の心から出て居ます、それは私しの所天おっとに聞ても分ります
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
其中そのうちたれ云ふと無く桑盗人ぬすびとはお玉の母親に違ひ無いと云ふ事が評判になりまして可愛想かあいさうその娘のお玉までも憎まれてこの村を追ひ出されてしまひました。
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
幸福しやわせならぬことおのづから其中そのうちにもあり、おさくといふむすめ桂次けいじよりは六つの年少とししたにて十七ばかりになる無地むぢ田舍娘いなかものをば、うでもつまにもたねばおさまらず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
其中そのうちに將軍家の長州進發といふ事になつた。それが則ち昭徳院せうとくゐんといふ紀州きしう公方くぼう——慶喜けいき公の前代の御人ごじんである。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
しかし前日の母の教へを記臆きおくして居りましたから、まんざら吾儘わがまま慾張よくばつた様なことだけ其中そのうちありませんかつた。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
關東大地震かんとうだいぢしん場合ばあひおいては、各所かくしよ山津浪やまつなみおこつたが、其中そのうち根府川ねぶがは一村いつそんさらつたものがもつと有名ゆうめいであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其中そのうちに、叔父が不図ふと見ると、田をへだてたる左手ゆんでの丘に一匹の狐がゐて、さながまねくが如くに手をげてゐる。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
過日御示おしめし被下くだされそうろう貴著瘠我慢中やせがまんちゅう事実じじつ相違之廉そういのかどならぴ小生之しょうせいの所見しょけんもあらば云々との御意ぎょい致拝承はいしょういたしそうろう。昨今別而べっして多忙たぼうつきいずれ其中そのうち愚見ぐけん可申述もうしのぶべくそうろうまず不取敢とりあえず回音かいおん如此かくのごとくに候也。
しかうして諸矦しよこうせいてうす。せい威王ゐわう大夫たいふをして古者いにしへ司馬しば兵法へいはふ(三五)追論つゐろんせしめ、しかうして穰苴じやうしよ((ノ兵法))を其中そのうちけ、つてがうして司馬穰苴しばじやうしよ兵法へいはふふ。
其中そのうちに首がコックリと下った。其拍子に頭の毛が一寸ばかり辷った。乃公は喫驚びっくりして逃げて来た。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
打製石斧は最初先づけ物の重し石の如き物をり、之を他の石とち合はせ數個の破片を作り、其中そのうちより石斧とするにてきしたる形のものをえらみ出し、臺石だいいしの上に
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
不図ふと其中そのうちの一軒から、なまめかしい女が、白いはぎを見せて、今時分いまじぶんガラガラと雨戸をだした。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
はじめあひだ矢張やはり昨日きのふおなじく、數百頭すうひやくとう猛獸まうじうたいをなして、鐵車てつしや前後ぜんごしたがつて追撃ついげきしてたが、其中そのうちには疲勞つかれのために逃去にげさつたのもあらう、また吾等われらえず發射はつしやする彈丸だんぐわんのために
しかして其中そのうちにも學海先生ガクカイセンセイ國民こくみんともかゝげられし評文ひようぶんこと見目立みめたちてえぬ。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
其中そのうちに、河野は雄吉などの連中とは、全く違った遊び友達を、作って居た。
神の如く弱し (新字新仮名) / 菊池寛(著)
其中そのうちの親切なる人が提灯を持って、七曲りの尽きる所まで迎いに来て居た。
武甲山に登る (新字新仮名) / 河井酔茗(著)
それからは不平の事は日をうて加はつても、準備のはかどつて行くのを顧みて、慰藉ゐしや其中そのうちに求めてゐた。其間に半年立つた。さてけふになつて見れば、心に逡巡しゆんじゆんするおくれもないが、又踊躍ようやくするきほひもない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
一枚二枚は余所目よそめを振らず一心に筆を運ぶが、其中そのうち曖昧あやふやな処に出会でっくわしてグッと詰ると、まず一服と旧式の烟管きせるを取上げる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかすで監獄かんごくだとか、瘋癲病院ふうてんびやうゐんだとかの存在そんざいする以上いじやうは、たれ其中そのうちはひつてゐねばなりません、貴方あなたでなければ、わたくし、でなければ、ほかものが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
霧に隠れた奥の方にもまだ五、六頭は居るらしい。牡鹿は三頭であった、其中そのうち一頭は群を抜いて大きく、後で蹄の痕を見たら牛のもの程あった。
鹿の印象 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
身に着けて方々歩いてりましたが其中そのうちにこれ位立派な着物を着てるのに馬車が無くてはきまりが悪いから
金剛石 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
いえなにもありませぬよ、何卒どうぞみなさん此方こちらへおいでなすつてナニ本堂ほんだうたばこんだつてかまやアしませぬ。其中そのうち和尚をしやうが出てる。和「ハイうも御愁傷ごしうしやうな事で。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
余は其中そのうちから子規が余に宛てゝ寄こした最後のものと、それから年月の分らない短いものとを選び出して、其中間に例の畫を挾んで、三を一纒ひとまとめに表裝させた。
子規の画 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其中そのうちにも赤坂はさみしい処で、下町、則ち京橋や日本橋に住んで居る者は、狐や狸の居る処と心得て居る位。実際又た狐狸の居さうな処がいくらもあるのです。
夜の赤坂 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たて其中そのうちには近所で目を醒すとか巡査が聞附るとかするに極って居る(大)夫では野原か(谷)サア野原と云う考えも起る併し差当り野原と云えば日比野ひゞやか海軍原だ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
其中そのうち祖父ぢいさまがすりものの上へ筆の先で一寸ちよつと蚯蚓みみずよぢれたやうなものをおかきなすつたが見えましたから、不思議で/\、黙つて居ようと思つても、らへ切れませんで、ツイ
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
色々と調べられたが、乃公はんだとも潰れたとも言わなかった。其中そのうちに校長はくしゃみを始めた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
其中そのうちひめ目覺めざめしゆゑ、てんせるわざ是非ぜひおよばず、ともかくてござれ、とすゝむるうちに、ちかづく人聲ひとごゑわれらおどろ逃出にげいでましたが、絶望ぜつばうあまりにや、ひめつゞいてまゐりもせず
無實むじつに殺させん事不便ふびんなりとて我と名乘なのり奉行所ぶぎやうしよいで火付ひつけ十三ヶしよ人殺ひとごろしにん夜盜かずれず其中そのうち麻布あさぶ原町はらまち質屋しちや這入はい金子きんす八十りやう代物しろもの二十五しなぬすみよし白状はくじやうに及びしかば大岡殿おほをかどの八を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其中そのうち活火山かつかざんはストロムボリ(たか九百二十六米くひやくにじゆうろくめーとる)とヴルカーノ(たか四百九十九米しひやくくじゆうくめーとる)との二箇にこであるが、前者ぜんしや有史以來ゆうしいらい一日いちにち活動かつどう休止きゆうししたことがないといふので有名ゆうめいであり
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
三十有餘名いうよめいの、日頃ひごろおにともまん水兵等すいへいらも、いままつた無言むごんに、此處こゝ一團いちだん彼處かしこ一團いちだんたがひかほ見合みあはすばかりで、其中そのうちに二三めいは、萬一まんいちにも十二のたるうち一つでも、二つでも
總勢すぐツて百四五十人ばかり。毎日いくさごツこのやうな眞似ばかりして居たが、そのうち世は漸次しだいに文化に向つて、さういふ物騷ぶつさうな學校の立ち行かう筈もないので、其中そのうちに潰れて了つた。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
上と下とて遥かに呼び合っていたが、何を云うにも屏風びょうぶのような峭立きったて懸崖けんがい幾丈いくじょう、下では徒爾いたずら瞰上みあげるばかりで、攀登よじのぼるべき足代あししろも無いには困った。其中そのうちに、上では気がいたらしい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は翌日早速錦町にしきちょうの某私立法律学校へ入学の手続を済ませて、其処の生徒になって、珍らしいうちは熱心に勉強もしたが、其中そのうちに段々怠り勝になった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さうしてほどなく或人あるひと世話せわ郡立學校ぐんりつがくかう教師けうしとなつたが、れも暫時ざんじ同僚どうれうとは折合をりあはず、生徒せいととは親眤なじまず、こゝをもまたしてしまふ。其中そのうち母親はゝおやぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其中そのうちあつらへた御飯ごはん出来できましたから、御飯ごはんべて、過去帳くわこちやうみなうつしてしまつた。過去帳くわこちやううちに「塩原多助しほばらたすけ養父やうふ塩原覚右衛門しほばらかくゑもん実父じつぷ塩原覚右衛門しほばらかくゑもん
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
其中そのうちには、さすが御大名丈おだいみやうだけあつて、惜氣をしげもなく使つかふのがこの畫家ぐわか特色とくしよくだから、いろ如何いかにも美事みごとであるとやうな、宗助そうすけにはみゝあたらしいけれども
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其中そのうちに蠶はずん/\大きくなつて最早もはや二三日ばかりすると繭をかけると云ふ一番大切な時になりました
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
私は始めてホツト息をつき、下駄げたはいづれ其中そのうちに買はうと自分ながら気安めなかんがへをして居り升た。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)