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襦袢
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じゆばん
ふりがな文庫
“
襦袢
(
じゆばん
)” の例文
船頭は
竿
(
さを
)
を弓のやうに張つて、長い
船縁
(
ふなべり
)
を往つたり来たりした。
竿
(
さを
)
を当てる
襦袢
(
じゆばん
)
が
処々
(
ところどころ
)
破れて居た。
一竿
(
ひとさを
)
毎に船は段々と
下
(
くだ
)
つて行つた。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
膝から兎もすれば
襦袢
(
じゆばん
)
がハミ出しますが、
酣醉
(
かんすゐ
)
が水をブツかけられたやうに
醒
(
さ
)
めて、後から/\引つきりなしに身顫ひが襲ひます。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
おつぎは
浴衣
(
ゆかた
)
をとつて
襦袢
(
じゆばん
)
一
(
ひと
)
つに
成
(
な
)
つて、
笊
(
ざる
)
に
水
(
みづ
)
を
切
(
き
)
つて
置
(
お
)
いた
糯米
(
もちごめ
)
を
竈
(
かまど
)
で
蒸
(
む
)
し
始
(
はじ
)
めた。
勘次
(
かんじ
)
は
裸
(
はだか
)
で
臼
(
うす
)
や
杵
(
きね
)
を
洗
(
あら
)
うて
檐端
(
のきば
)
に
据
(
す
)
ゑた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
赤い
襦袢
(
じゆばん
)
の上に
紫繻子
(
むらさきじゆす
)
の幅広い
襟
(
えり
)
をつけた
座敷着
(
ざしきぎ
)
の遊女が、
冠
(
かぶ
)
る
手拭
(
てぬぐひ
)
に顔をかくして、
前
(
まへ
)
かゞまりに
花道
(
はなみち
)
から
駈出
(
かけだ
)
したのである。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
『あゝ。』と細君は
襦袢
(
じゆばん
)
の袖口で
眶
(
まぶち
)
を押拭ふやうに見えた。『父さんのことを考へると、働く気もなにも失くなつて了ふ——』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
連れて来られた時は木綿縞の
袷
(
あはせ
)
だつた。八月の炎天の下をそれでは歩けないだらう。考へて
襦袢
(
じゆばん
)
一枚になつた。履きものには三銭の藁草履を買つた。
反逆の呂律
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
襦袢
(
じゆばん
)
や何かを縫つたり又は
引釈
(
ひきと
)
きものなどをして単調な重苦しい時間を消すのであつたが、然うしてゐると牢獄のやうな
檻
(
をり
)
のなかにゐる
遣瀬
(
やるせ
)
なさを忘れて
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
落葉
(
おちば
)
掃
(
は
)
く
樣子
(
やうす
)
をして、
箒
(
はうき
)
を
持
(
も
)
つて
技折戸
(
しをりど
)
から。
一寸
(
ちよつと
)
言添
(
いひそ
)
へる
事
(
こと
)
がある、
此
(
こ
)
の
節
(
せつ
)
、
千助
(
せんすけ
)
は
柔
(
やはら
)
かな
下帶
(
したおび
)
などを
心掛
(
こゝろが
)
け、
淺葱
(
あさぎ
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
をたしなんで
薄化粧
(
うすげしやう
)
などをする。
片しぐれ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼女の貧しい村の郷里で、孤独に暮してゐる娘の
許
(
もと
)
へ、秋の
袷
(
あわせ
)
や
襦袢
(
じゆばん
)
やを、小包で送つたといふ通知である。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
御米
(
およね
)
は十
時過
(
じすぎ
)
に
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
た。
何時
(
いつ
)
もより
光澤
(
つや
)
の
好
(
い
)
い
頬
(
ほゝ
)
を
灯
(
ひ
)
に
照
(
て
)
らして、
湯
(
ゆ
)
の
温
(
ぬくもり
)
のまだ
拔
(
ぬ
)
けない
襟
(
えり
)
を
少
(
すこ
)
し
開
(
あ
)
ける
樣
(
やう
)
に
襦袢
(
じゆばん
)
を
重
(
かさ
)
ねてゐた。
長
(
なが
)
い
襟首
(
えりくび
)
が
能
(
よ
)
く
見
(
み
)
えた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ああ可愛さうな事をと声たてても泣きたきを、さしも
両親
(
ふたおや
)
の機嫌よげなるに言ひ
出
(
いで
)
かねて、
烟
(
けむり
)
にまぎらす
烟草
(
たばこ
)
二三服、
空咳
(
からせき
)
こんこんとして涙を
襦袢
(
じゆばん
)
の
袖
(
そで
)
にかくしぬ。
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
夫
(
それ
)
が
宜
(
よ
)
からう、ソコでお
前
(
まへ
)
さんは
施主
(
せしゆ
)
の
事
(
こと
)
だから
袴
(
はかま
)
でも
着
(
つ
)
けるかい。金「ナニ
夜分
(
よる
)
の
事
(
こと
)
でげすから
襦袢
(
じゆばん
)
をひつくり返して
穿
(
は
)
きます。「デモ
編笠
(
あみがさ
)
は
被
(
かぶ
)
らなければなるまい。 ...
黄金餅
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「僕は仕立屋に三年も弟子奉公したんですよお爺さん、
襦袢
(
じゆばん
)
でも洋服でも作つて見せませうか。」
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
葡萄茶
(
えびちや
)
の
細格子
(
ほそごうし
)
の
縞御召
(
しまおめし
)
に
勝色裏
(
かついろうら
)
の
袷
(
あはせ
)
を着て、羽織は
小紋縮緬
(
こもんちりめん
)
の
一紋
(
ひとつもん
)
、
阿蘭陀
(
オランダ
)
模様の
七糸
(
しつちん
)
の
袱紗帯
(
ふくさおび
)
に
金鎖子
(
きんぐさり
)
の
繊
(
ほそ
)
きを引入れて、
嬌
(
なまめかし
)
き友禅染の
襦袢
(
じゆばん
)
の
袖
(
そで
)
して口元を
拭
(
ぬぐ
)
ひつつ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
先
(
さき
)
に立せて栗橋
宿
(
じゆく
)
の名主
代
(
だい
)
右衞門方へ
到
(
いた
)
り
無常院
(
むじやうゐん
)
なる
隱亡
(
をんばう
)
の彌十を呼び出せしに彌十は庭の
莚
(
むしろ
)
の
上
(
うへ
)
に
襦袢
(
じゆばん
)
一枚にて
控
(
ひか
)
へ居たりしを役人共コリヤ彌十
爾
(
なん
)
ぢは是なる林藏へ
脇差
(
わきざし
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
と、ひどい
厭味
(
いやみ
)
を
言
(
い
)
つた
時
(
とき
)
は、
與力
(
よりき
)
どもが
皆
(
み
)
な
冷汗
(
ひやあせ
)
に
仕立
(
した
)
ておろしの
襦袢
(
じゆばん
)
の
胴
(
どう
)
を
濡
(
ぬ
)
らした。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
それも藤岡の祖父に
当
(
あた
)
る人は川ばたに
蹲
(
うづく
)
まれる
乞食
(
こじき
)
を見、さぞ寒からうと思ひし余り、自分も
襦袢
(
じゆばん
)
一枚になりて厳冬の縁側に坐り込みし為、とうとう風を引いて死にたりと言へば
学校友だち
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
風呂に入りますと、
浴槽
(
ゆぶね
)
の湯が温泉でも下に湧き出して居るやうに、
地車
(
だんじり
)
の響で波立ちます。大鳥さんの日の着物は、大抵紺地か黒地の
透綾上布
(
すきやじやうふ
)
です。
襦袢
(
じゆばん
)
の袖は桃色の
練絹
(
ねりぎぬ
)
です。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
日本
(
にほん
)
娼婦は
浴衣
(
ゆかた
)
に細帯、又は半
襦袢
(
じゆばん
)
一枚の下に
馬来
(
マレイ
)
人のする
印度更紗
(
インドさらさ
)
の赤い
腰巻
(
サロン
)
をして、同じ卓に
凭
(
よ
)
つて
花牌
(
はなふだ
)
を
弄
(
もてあそ
)
んで居る者、編物をして居る者、大阪版の一休諸国物語を読んで居る者
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
仕事場に出る時の身支度を見ても、
厳
(
いかめ
)
しさと云ったらない。
晒布
(
さらし
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
だけは毎日洗ったものを着せてくれとお珠へ云ったのでも分る。——出る朝をいつも死ぬ日と心に決めているらしい。
鬼
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わが寢室に入りしとき、隣室なるジエンナロは上衣を脱ぎ
襦袢
(
じゆばん
)
一つとなりて進み來り、いとさかしげに笑ひつゝ、
掌
(
たなぞこ
)
を我肩上に置きて、晝見つる美人の爲めに思を勞すること
莫
(
なか
)
れといふ。われ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
言ひつゝ
彼女
(
かれ
)
は
襦袢
(
じゆばん
)
の袖もて
窃
(
そ
)
と眼を
拭
(
ぬぐ
)
ひつ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
あかき
襦袢
(
じゆばん
)
着かへし、少女の肌の如く
かの日の歌【五】
(新字旧仮名)
/
漢那浪笛
(著)
三日に
亙
(
わた
)
つて、家中に張り渡した綱に、紅紫
絢爛
(
けんらん
)
たる振袖、小袖、帶やら
襦袢
(
じゆばん
)
やらが、取換へ引換へ掛けられるのです。
銭形平次捕物控:279 持参千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
細君は
襦袢
(
じゆばん
)
の袖口で
眶
(
まぶち
)
を押拭ひ乍ら、勝手元の方へ行つて
食物
(
くひもの
)
の
準備
(
したく
)
を始める。音作の弟は酒を買つて帰つて来る。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
襦袢
(
じゆばん
)
をも脱棄てた二人の船頭は、毛の深い胸のあたりから、ダクダク汗を出しながら、
竿
(
さを
)
を弓のやうに張つて、頭より尻を高くして
船縁
(
ふなべり
)
を伝つて行つた。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
着物
(
きもの
)
は、
茶
(
ちや
)
の
勝
(
か
)
つた、
同
(
おな
)
じやうな
柄
(
がら
)
なのを
着
(
き
)
て、
阿母
(
おふくろ
)
のおかはりに
持
(
も
)
つた、
老人
(
としより
)
じみた
信玄袋
(
しんげんぶくろ
)
を
提
(
さ
)
げた、
朱鷺色
(
ときいろ
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
の
蹴出
(
けだ
)
しの、
内端
(
うちわ
)
ながら、
媚
(
なま
)
めかしい。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
あゝ
可愛
(
かあひ
)
さうな
事
(
こと
)
をと
聲
(
こゑ
)
たてゝも
泣
(
な
)
きたきを、さしも
兩親
(
ふたおや
)
の
機嫌
(
きげん
)
よげなるに
言
(
い
)
ひ
出
(
いで
)
かねて、
烟
(
けむり
)
にまぎらす
烟草
(
たばこ
)
二三
服
(
ぷく
)
、
空咳
(
からせき
)
こん/\として
涙
(
なみだ
)
を
襦袢
(
じゆばん
)
の
袖
(
そで
)
にかくしぬ。
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
待つやうにして再び「
僕
(
ぼく
)
ア役者だよ。
変
(
かは
)
つたらう。」と
云
(
い
)
ひながら
友禅縮緬
(
いうぜんちりめん
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
の
袖
(
そで
)
を引き出して
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
おつぎはもう十九の
秋
(
あき
)
であつた。おつぎは
其
(
そ
)
の
浴衣地
(
ゆかたぢ
)
を
着
(
き
)
てお
品
(
しな
)
の
墓
(
はか
)
へ
行
(
い
)
つたのである。
髮
(
かみ
)
は
晝
(
ひる
)
の
内
(
うち
)
に
近所
(
きんじよ
)
の
娘同士
(
むすめどうし
)
が
汗染
(
あせじ
)
みた
襦袢
(
じゆばん
)
一
(
ひと
)
つの
姿
(
すがた
)
で
互
(
たがひ
)
に
結
(
ゆ
)
ひ
合
(
あ
)
うたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
赤つぽい髪の毛や、垢ずんだ首の皺や
襦袢
(
じゆばん
)
の襟が近づき——しかし、その時、彼は何か発見したやうな眼つきになり、ぢつと彼女の身体つきを
検
(
しら
)
べ、眺め廻したのである。
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
己
(
おのれ
)
が手に
塗付
(
ぬりつけ
)
て
笈笠
(
おひがさ
)
へ手の跡を
幾許
(
いくつ
)
となく
捺
(
なす
)
り付又餞別に
貰
(
もら
)
ひし
襦袢
(
じゆばん
)
風呂敷
(
ふろしき
)
へも血を塗て
着
(
き
)
たる
衣服
(
いふく
)
の所々を
切裂
(
きりさき
)
これへも血を
夥多
(
したゝか
)
に
塗付
(
ぬりつけ
)
誰
(
たれ
)
が見ても
盜賊
(
たうぞく
)
に切殺れたる
體
(
てい
)
に
拵
(
こしら
)
へ扨犬の
死骸
(
しがい
)
は
壓
(
おもり
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼は
襦袢
(
じゆばん
)
の
袖
(
そで
)
の
端
(
はし
)
に
窃
(
そ
)
と
眶
(
まぶた
)
を
挲
(
す
)
りて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
長い
襦袢
(
じゆばん
)
に戯れる。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
え、
釣瓶
(
つるべ
)
が一つハネ上がつて居るから不思議に思つて井戸を覗くと、水肌に赤い
襦袢
(
じゆばん
)
が見えるぢやありませんか。
銭形平次捕物控:208 青銭と鍵
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それにヂリヂリと上から照り附けられる
苫
(
とま
)
の中も暑かつた。
盲目
(
めくら
)
の婆さんは、
襦袢
(
じゆばん
)
一つになつて、
濡
(
ぬら
)
して
絞
(
しぼ
)
つて貰つた手拭を、
皺
(
しわ
)
の深い胸の処に当てゝ居た。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
此處
(
こヽ
)
一つに
美人
(
びじん
)
の
價値
(
ねうち
)
定
(
さだ
)
まるといふ
天然
(
てんねん
)
の
衣襟
(
えもん
)
つき、
襦袢
(
じゆばん
)
の
襟
(
えり
)
の
紫
(
むらさき
)
なる
時
(
とき
)
は
顏色
(
いろ
)
こと
更
(
さら
)
に
白
(
しろ
)
くみえ、
態
(
わざ
)
と
質素
(
じみ
)
なる
黒
(
くろ
)
ちりめんに
赤糸
(
あかいと
)
のこぼれ
梅
(
うめ
)
など
品
(
ひん
)
一層
(
いつそう
)
も
二層
(
にそう
)
もよし
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
暑
(
あつ
)
いので
紺
(
こん
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
も
腰
(
こし
)
のあたりへだらりとこかして、
焦
(
こげ
)
たやうな
肌膚
(
はだ
)
をさらけ
出
(
だ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
雖然
(
けれども
)
、
襦袢
(
じゆばん
)
ばかりに
羽織
(
はおり
)
を
掛
(
か
)
けて
旅
(
たび
)
をすべき
所説
(
いはれ
)
はない。……
駈落
(
かけおち
)
と
思
(
おも
)
ふ、が、
頭巾
(
づきん
)
も
被
(
かぶ
)
らぬ。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
『尤も——』と奥様は
襦袢
(
じゆばん
)
の袖口で
眶
(
まぶた
)
を押拭ひ乍ら言つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
初
(
はじ
)
め村中も
倶々
(
とも/″\
)
勸
(
すゝ
)
めて止ざりけり
偖
(
さて
)
も寶澤は願ひの如き身となり
旅
(
たび
)
の
用意
(
ようい
)
もそこ/\に
營
(
いと
)
なみければ村中より
餞別
(
せんべつ
)
として百文二百文分に
應
(
おう
)
じて
贈
(
おく
)
られしに
塵
(
ちり
)
も
積
(
つも
)
りて山の
譬
(
たと
)
へ集りし金は都合八兩貳
歩
(
ぶ
)
とぞ成にける其外には
濱村
(
はまむら
)
ざしの
風呂敷
(
ふろしき
)
或は
柳庫裏
(
やなぎごり
)
笈笠
(
おひがさ
)
蜘
(
くも
)
の
巣
(
す
)
絞
(
しぼり
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
など思々の
餞別
(
せんべつ
)
に支度は十分なれば寶澤は
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「さう言ひますね。
煮〆
(
にし
)
めたやうな汚ない
襦袢
(
じゆばん
)
に、腐つたやうな
褌
(
ふんどし
)
ぢや、
華魁
(
おいらん
)
買の恰好はつきませんからね」
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
白木綿
(
しろもめん
)
の
布子
(
ぬのこ
)
、
襟
(
えり
)
が
黄色
(
きいろ
)
にヤケたのに、
單衣
(
ひとへ
)
らしい、
同
(
おな
)
じ
白
(
しろ
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
を
襲
(
かさ
)
ね、
石持
(
こくもち
)
で、やうかん
色
(
いろ
)
の
黒木綿
(
くろもめん
)
の
羽織
(
はおり
)
を
幅廣
(
はゞびろ
)
に、ぶわりと
被
(
はお
)
つて、
胸
(
むね
)
へ
頭陀袋
(
づだぶくろ
)
を
掛
(
か
)
けた、
鼻
(
はな
)
の
隆
(
たか
)
い、
赭
(
あか
)
ら
顏
(
がほ
)
で
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
白粉
(
をしろい
)
かんざし
桜香
(
さくらか
)
の油、縁類広ければとりどりに香水、
石鹸
(
しやぼん
)
の気取りたるも買ふめり、おぬひは桂次が未来の妻にと贈りものの中へ薄藤色の
襦袢
(
じゆばん
)
の
襟
(
ゑり
)
に白ぬきの
牡丹花
(
ぼたんくわ
)
の
形
(
かた
)
あるをやりけるに
ゆく雲
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
十八娘の美しさが、
恐怖
(
きようふ
)
と激情に
薫蒸
(
くんじよう
)
して、店中に匂ふやうな艶めかしさ。鹿の子絞り帶も、
緋縮緬
(
ひちりめん
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
も亂れて、中年男のセピア色の腕にムズと抱へられます。
銭形平次捕物控:065 結納の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
片手
(
かたて
)
を
服
(
きもの
)
の
中
(
なか
)
へ
入
(
い
)
れて、
其
(
そ
)
れでも
肌薄
(
はだうす
)
な、
襦袢
(
じゆばん
)
の
襟
(
えり
)
のきちんとして、
赤
(
あか
)
い
細
(
ほそ
)
いのも、あはれに
寒
(
さむ
)
さうに
見
(
み
)
えたのが、
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つたか、
左手
(
ゆんで
)
を
添
(
そ
)
へて、
結
(
むす
)
び
目
(
め
)
を
解
(
と
)
いて、
竹
(
たけ
)
の
皮
(
かは
)
から
燒團子
(
やきだんご
)
、まだ
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ありしは
何時
(
いつ
)
の七
夕
(
せき
)
の
夜
(
よ
)
、なにと
盟
(
ちか
)
ひて
比翼
(
ひよく
)
の
鳥
(
とり
)
の
片羽
(
かたは
)
をうらみ、
無常
(
むじよう
)
の
風
(
かぜ
)
を
連理
(
れんり
)
の
枝
(
ゑだ
)
に
憤
(
いきどほ
)
りつ、
此處
(
こヽ
)
閑窓
(
かんさう
)
のうち
机上
(
きじやう
)
の
香爐
(
かうろ
)
に
絶
(
た
)
えぬ
烟
(
けふ
)
りの
主
(
ぬし
)
はと
問
(
と
)
へば、
答
(
こた
)
へはぽろり
襦袢
(
じゆばん
)
の
袖
(
そで
)
に
露
(
つゆ
)
を
置
(
お
)
きて
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「
襦袢
(
じゆばん
)
二枚と、薄綿入を着て居る人間を、後ろからたつた一と突きで殺せる女があるだらうか」
銭形平次捕物控:037 人形の誘惑
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
照
(
て
)
り
曇
(
くも
)
り
雨
(
あめ
)
もものかは。
辻々
(
つじ/\
)
の
祭
(
まつり
)
の
太鼓
(
たいこ
)
、わつしよい/\の
諸勢
(
もろぎほひ
)
、
山車
(
だし
)
は
宛然
(
さながら
)
藥玉
(
くすだま
)
の
纒
(
まとひ
)
を
振
(
ふ
)
る。
棧敷
(
さじき
)
の
欄干
(
らんかん
)
連
(
つらな
)
るや、
咲
(
さき
)
掛
(
かゝ
)
る
凌霄
(
のうぜん
)
の
紅
(
くれなゐ
)
は、
瀧夜叉姫
(
たきやしやひめ
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
を
欺
(
あざむ
)
き、
紫陽花
(
あぢさゐ
)
の
淺葱
(
あさぎ
)
は
光圀
(
みつくに
)
の
襟
(
えり
)
に
擬
(
まが
)
ふ。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
わたし
)
はこれから
内職
(
ないしよく
)
なり
何
(
なん
)
なりして
亥之助
(
いのすけ
)
が
片腕
(
かたうで
)
にもなられるやう
心
(
こゝろ
)
がけますほどに、
一生
(
いつしやう
)
一人
(
ひとり
)
で
置
(
お
)
いて
下
(
くだ
)
さりませとわつと
聲
(
こゑ
)
たてるを
噛
(
かみ
)
しめる
襦袢
(
じゆばん
)
の
袖
(
そで
)
、
墨繪
(
すみゑ
)
の
竹
(
たけ
)
も
紫竹
(
しちく
)
の
色
(
いろ
)
にや
出
(
いづ
)
ると
哀
(
あは
)
れなり。
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
“襦袢”の解説
襦袢(じゅばん、じゅはん、ジバン)は、和服用の下着の一つ。
(出典:Wikipedia)
襦
漢検1級
部首:⾐
19画
袢
漢検1級
部首:⾐
10画
“襦袢”で始まる語句
襦袢肌抜
襦袢胴着
襦袢袴下