反逆の呂律はんぎゃくのろれつ
囚衣を脱ぐ。しかし、着るものがなかつた。連れて来られた時は木綿縞の袷だつた。八月の炎天の下をそれでは歩けないだらう。考へて襦袢一枚になつた。履きものには三銭の藁草履を買つた。 仙吉はかうして午前五時、S監獄の小門から出た。癪なので振りかへら …