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笈笠
己が手に
塗付て
笈笠へ手の跡を
幾許となく
捺り付又餞別に
貰ひし
襦袢風呂敷へも血を塗て
着たる
衣服の所々を
切裂これへも血を
夥多に
塗付誰が見ても
盜賊に切殺れたる
體に
拵へ扨犬の
死骸は
壓を
初め村中も
倶々勸めて止ざりけり
偖も寶澤は願ひの如き身となり
旅の
用意もそこ/\に
營なみければ村中より
餞別として百文二百文分に
應じて
贈られしに
塵も
積りて山の
譬へ集りし金は都合八兩貳
歩とぞ成にける其外には
濱村ざしの
風呂敷或は
柳庫裏笈笠蜘の
巣絞の
襦袢など思々の
餞別に支度は十分なれば寶澤は