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懷
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ふところ
ふりがな文庫
“
懷
(
ふところ
)” の例文
新字:
懐
懷
(
ふところ
)
から手紙を出したりしてゐるだらう、雪駄直しの片手間に、使ひ屋にも頼めねえ
文
(
ふみ
)
を預かつて居るんだね、細くねえ商法ぢやないか
銭形平次捕物控:250 母娘巡礼
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
其頃
(
そのころ
)
は
東京
(
とうきやう
)
の
家
(
いへ
)
を
疊
(
たゝ
)
むとき、
懷
(
ふところ
)
にして
出
(
で
)
た
金
(
かね
)
は、
殆
(
ほと
)
んど
使
(
つか
)
ひ
果
(
は
)
たしてゐた。
彼
(
かれ
)
の
福岡
(
ふくをか
)
生活
(
せいくわつ
)
は
前後
(
ぜんご
)
二
年
(
ねん
)
を
通
(
つう
)
じて、
中々
(
なか/\
)
の
苦鬪
(
くとう
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
中でも若い方の一人は
懷
(
ふところ
)
から小さな桃色の書箋紙に書いた手紙を取出して、二人は互の顏を觸れるほど寄せ合つて熱心に讀みはじめた。
実験室
(旧字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
片側なるたゞ一の魂を我等に示していひけるは、彼はターミーチにいまなほ
崇
(
あがめ
)
をうくる
心臟
(
こゝろ
)
を神の
懷
(
ふところ
)
に割きしものなり 一一八—一二〇
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
此處
(
こゝ
)
へ
筒袖
(
つゝそで
)
の
片手
(
かたて
)
ゆつたりと
懷
(
ふところ
)
に、
左手
(
ゆんで
)
に
山牛蒡
(
やまごばう
)
を
提
(
ひつさ
)
げて、
頬被
(
ほゝかぶり
)
したる六十ばかりの
親仁
(
おやぢ
)
、ぶらりと
來懸
(
きかゝ
)
るに
路
(
みち
)
を
問
(
と
)
ふことよろしくあり。
城の石垣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
勘次
(
かんじ
)
は
例令
(
たとひ
)
品物
(
しなもの
)
が
有
(
あ
)
つた
處
(
ところ
)
で、
自分
(
じぶん
)
の
現在
(
いま
)
の
力
(
ちから
)
では
到底
(
たうてい
)
それは
求
(
もと
)
められなかつたかも
知
(
し
)
れぬと
今更
(
いまさら
)
のやうに
喫驚
(
びつくり
)
して
懷
(
ふところ
)
へ
手
(
て
)
を
入
(
い
)
れて
見
(
み
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
仕方なく圭一郎は
懷
(
ふところ
)
から取出して彼女に渡した。彼女は卷紙持つ手をぶる/\顫はし乍ら、息を引くやうにして眼を走らせた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
でも若し喰べ物が無くなると困ると思つたから、牛の鑵詰と福神漬の鑵詰の口の明けたのを
懷
(
ふところ
)
に
捩
(
ね
)
ぢ込んで出たの。
梅龍の話
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
山氣と嵐氣と暮氣とは刻々に
懷
(
ふところ
)
に迫つて、幽奧の境、蒼茫の態、一聲
鳥
(
とり
)
だに啼かず、千古水いたづらに落つる景、丁度人去つて霧卷くこの時に會つて
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
所
(
ところ
)
が
其處
(
そこ
)
へ
來
(
き
)
て
見
(
み
)
ると、
男
(
をとこ
)
は
杉
(
すぎ
)
の
根
(
ね
)
に
縛
(
しば
)
られてゐる、——
女
(
をんな
)
はそれを
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
るなり、
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
に
懷
(
ふところ
)
から
出
(
だ
)
してゐたか、きらりと
小刀
(
さすが
)
を
引
(
ひ
)
き
拔
(
ぬ
)
きました。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
頭髮
(
あたま
)
の中を這つて、額や
頬邊
(
ほつぺた
)
を傳ふ酒の雫は、襟頸や
懷
(
ふところ
)
に流れ込んだ。怒るだらうと思つた三田が默つて坐つてゐるので、蟒は張合がぬけてしまつた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
誰の手にも誰れの
懷
(
ふところ
)
にも行かなかつた。そして母親の
懷
(
ふところ
)
に抱かれないならば、一
夜
(
や
)
でも泣きあかさうとした。そして、決して眠るまいと決心してゐるやうであつた。
珠
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
半四郎は振拂ひ
行
(
ゆか
)
んとすれば雲助共は
追取卷
(
おつとりまき
)
どつこい
遁
(
にが
)
して成ものか
此小童
(
このこわつぱ
)
めどうするか見ろ
命
(
いのち
)
惜
(
をし
)
くば
酒代
(
さかて
)
を置て行と
懷
(
ふところ
)
へ手を入れければ
最
(
もう
)
勘忍
(
かんにん
)
はならずと半四郎は其腕を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
女子
(
をなご
)
の
太息
(
といき
)
に
胸
(
むね
)
の
雲
(
くも
)
を
消
(
け
)
して、
月
(
つき
)
もる
窓
(
まど
)
を
引
(
ひき
)
たつれば、
音
(
おと
)
に
目
(
め
)
ざめて
泣出
(
なきい
)
づる
稚兒
(
をさなご
)
を、あはれ
可愛
(
かはゆ
)
しいかなる
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
つる
乳
(
ちゝ
)
まゐらせんと
懷
(
ふところ
)
あくれば
笑
(
ゑ
)
みてさぐるも
憎
(
にく
)
からず
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
疾風の如く棺に取り縋つたお夏が、蹴られて摚と倒れた時、
懷
(
ふところ
)
の赤兒が『ギャッ』と許り烈しい悲鳴を上げた。そして其悲鳴が唯一聲であつた。自分は飛び上る程
吃驚
(
びつくり
)
した。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「こちらの腕には、手も爪もありはしない。」と彼は
懷
(
ふところ
)
から不具になつた方の手を出して私に見せ乍ら云つた。「たゞの切株で——恐ろしい恰好! さうぢやない、ジエィン?」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
落しなさるには及ばないぢやありませんか、それは嘘ですよ、
笑談
(
ぜうだん
)
ですよ、御覽なさい、赤んぼはあなたの
懷
(
ふところ
)
の中で笑つてるぢやありませんか! あなた、今日は四月一日ですよ!
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
時は夏五月、日盛りは過ぎたが、
葭簾
(
よしず
)
の蔭で、地はそんなに焼けてもいなかったのに
打水
(
うちみず
)
が充分に
沁
(
し
)
みて、お山から吹き下ろす神風が
懷
(
ふところ
)
に入る時は春先とも思うほどの
心地
(
ここち
)
がします。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
千代松は火鉢に
翳
(
かざ
)
してゐた兩手を
懷
(
ふところ
)
に收めて、首を傾けつゝ、
傍
(
かたはら
)
の
俎板
(
まないた
)
の上に澤庵漬けの黄色い
大根
(
だいこ
)
が半分だけ切り殘されて、庖丁とともに置きツ放しにしてあるのを見詰めてゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
所
(
ところ
)
が、
何
(
なん
)
でも
久米正雄夫人
(
くめまさをふじん
)
自身
(
じしん
)
の
懷姙中
(
くわいにんちう
)
の
運勢
(
うんせい
)
の
素晴
(
すばら
)
しかつたことは
今
(
いま
)
でも
鎌倉猛者連
(
かまくらもされん
)
の
語
(
かた
)
り
草
(
ぐさ
)
になつてゐるくらゐださうだが、
懷
(
ふところ
)
に
入
(
はい
)
つてふとるといふ
八卦
(
はつけ
)
でもあらうか?
少少
(
せうせう
)
うがち
過
(
す
)
ぎてゐて
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
言ひつゝ
懷
(
ふところ
)
より取り出す一封の書
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
さう
云
(
い
)
ふ
時
(
とき
)
には
彼
(
かれ
)
は
急
(
きふ
)
に
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
した
樣
(
やう
)
に
町
(
まち
)
へ
出
(
で
)
る。
其上
(
そのうへ
)
懷
(
ふところ
)
に
多少
(
たせう
)
餘裕
(
よゆう
)
でもあると、
是
(
これ
)
で
一
(
ひと
)
つ
豪遊
(
がういう
)
でもして
見樣
(
みやう
)
かと
考
(
かんが
)
へる
事
(
こと
)
もある。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
懷
(
ふところ
)
から白磨きの十手、
袂
(
たもと
)
からはくり出す
捕繩
(
ほじやう
)
。七つ道具をふり
翳
(
かざ
)
した八五郎は、
孫悟空
(
そんごくう
)
のやうにをめき叫んで飛かゝるのです。
銭形平次捕物控:156 八千両異変
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
幸
(
さち
)
なきものよ、岸をめぐりて海の
邊
(
ほとり
)
の地をたづね、後汝の
懷
(
ふところ
)
を見よ、汝のうちに一なりとも平和を樂しむ處ありや 八五—八七
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
然
(
しか
)
し
其
(
そ
)
の
一人
(
ひとり
)
でも
懷
(
ふところ
)
のいゝのが
目
(
め
)
につけば
自分
(
じぶん
)
は
後
(
あと
)
へ
捨
(
す
)
てられたやうな
酷
(
ひど
)
く
切
(
せつ
)
ないやうな
妙
(
めう
)
な
心持
(
こゝろもち
)
になつて、そこに
嫉妬
(
しつと
)
の
念
(
ねん
)
が
起
(
おこ
)
るのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
あたし何だか氣味が惡くなつて來て、「だつて、これは姐さんのでせう。」つて、
懷
(
ふところ
)
から紙入を出して見せたの。すると姐さんは
尚
(
なほ
)
と恐い顏になつてよ。
梅龍の話
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
七日前
(
なぬかぜん
)
に
東京驛
(
とうきやうえき
)
から
箱根越
(
はこねごし
)
の
東海道
(
とうかいだう
)
。——
分
(
わか
)
つた/\——
逗留
(
とうりう
)
した
大阪
(
おほさか
)
を、
今日
(
けふ
)
午頃
(
ひるごろ
)
に
立
(
た
)
つて、あゝ、
祖母
(
おばあ
)
さんの
懷
(
ふところ
)
で
昔話
(
むかしばなし
)
に
聞
(
き
)
いた、
栗
(
くり
)
がもの
言
(
い
)
ふ、たんばの
國
(
くに
)
。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
小娘
(
こむすめ
)
は、
恐
(
おそ
)
らくはこれから
奉公先
(
ほうこうさき
)
へ
赴
(
おもむ
)
かうとしてゐる
小娘
(
こむすめ
)
は、その
懷
(
ふところ
)
に
藏
(
ざう
)
してゐた
幾顆
(
いくくわ
)
の
蜜柑
(
みかん
)
を
窓
(
まど
)
から
投
(
な
)
げて、わざわざ
踏切
(
ふみき
)
りまで
見送
(
みおく
)
りに
來
(
き
)
た
弟
(
をとうと
)
たちの
勞
(
らう
)
に
報
(
むく
)
いたのである。
蜜柑
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
文
(
ふみ
)
を
懷
(
ふところ
)
にして
令孃
(
ひめ
)
の
部屋
(
へや
)
に
來
(
き
)
し
時
(
とき
)
は、
末
(
すゑ
)
の
姉君
(
あねぎみ
)
此處
(
こヽ
)
にありて、お
細工物
(
さいくもの
)
の
最中
(
もなか
)
なるに、
今
(
いま
)
見
(
み
)
せては
惡
(
わ
)
るかるべしと、
情實
(
わけ
)
は
素
(
もと
)
より
知
(
し
)
る
筈
(
はず
)
なけれど、
吾助
(
ごすけ
)
とも
言
(
い
)
はで
遊
(
あそ
)
び
居
(
ゐ
)
けるが
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
『お
出
(
い
)
でやす。えらい遲うおますなア。』と、奧からも女が出て來て、二人を導いた。思ひの外に
懷
(
ふところ
)
の深い家で、長い廊下を過ぎて通されたのは、三味線の
音
(
ね
)
のする直ぐ隣りの八疊であつた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
さて、そこに十分間の休憇があつた——その間、この時にはもうすつかり氣を落ちつけてゐた私は、ブロクルハースト氏の婦人たちが各自
懷
(
ふところ
)
の
手巾
(
はんけち
)
をとり出して、それを眼に當てるのを見た。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
懷
(
ふところ
)
に住馴し京都の我が家を立出て心細くも
東路
(
あづまぢ
)
へ志ざしてぞ下りけり元より
馴
(
なれ
)
ぬ旅と云殊に男の懷ろに當歳の子を抱きての
驛路
(
うまやぢ
)
なれば其
辛
(
つら
)
さは云も更なり漸々にして大津の宿を
辿
(
たど
)
り
過
(
すぎ
)
打出
(
うちで
)
の濱を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
驚いて向直つた三田の
懷
(
ふところ
)
に、全身倒れかゝる勢ひで飛込んでしまつた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
打越は當てが外れた、が、そんな事もあらうかと用意した打越は、毒酒を呑むと見せて、
懷
(
ふところ
)
に忍ばせた手拭に吸はせてしまつた
銭形平次捕物控:267 百草園の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
かくして尊き魂は、かの女の
懷
(
ふところ
)
を離れて己が王國に歸るを願へり、またその肉體の爲に他の
柩
(
ひつぎ
)
を求めざりき 一一五—一一七
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
「
村落
(
むら
)
に
居
(
ゐ
)
あんさ、
何處
(
どこ
)
つちつたつて
行
(
ゆ
)
き
場所
(
ばしよ
)
はねえんですから、なあに
獨
(
ひと
)
りでせえありや
却
(
けえ
)
つて
懷
(
ふところ
)
はえゝんでがすから」
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
御米
(
およね
)
は
善良
(
ぜんりやう
)
な
夫
(
をつと
)
に
調戯
(
からか
)
つたのを、
多少
(
たせう
)
濟
(
す
)
まない
樣
(
やう
)
に
感
(
かん
)
じた。
宗助
(
そうすけ
)
は
其
(
その
)
翌日
(
あくるひ
)
すぐ
貰
(
もら
)
つて
置
(
お
)
いた
紹介状
(
せうかいじやう
)
を
懷
(
ふところ
)
にして、
新橋
(
しんばし
)
から
汽車
(
きしや
)
に
乘
(
の
)
つたのである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
伯母は
懷
(
ふところ
)
から私の書いた一
札
(
さつ
)
を出してそれをお時のに重ねました。そしてそれを又懷に入れながら
反古
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
いかで
見
(
み
)
むとて
寢
(
ね
)
もやらず、
美
(
うつく
)
しき
懷
(
ふところ
)
より、かしこくも
密
(
そ
)
と
見參
(
みまゐ
)
らすれば、
其
(
そ
)
の
上
(
うへ
)
に
尚
(
な
)
ほ
女夫
(
めをと
)
雛
(
びな
)
の
微笑
(
ほゝゑ
)
み
給
(
たま
)
へる。それも
夢
(
ゆめ
)
か、
胡蝶
(
こてふ
)
の
翼
(
つばさ
)
を
櫂
(
かい
)
にして、
桃
(
もゝ
)
と
花菜
(
はなな
)
の
乘合
(
のりあひ
)
船
(
ぶね
)
。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
隣
(
となり
)
の
妻
(
つま
)
の
入來
(
いりく
)
るを
見
(
み
)
るに、
懷
(
ふところ
)
には
町
(
まち
)
を
抱
(
いだ
)
きたり、
與
(
よ
)
四
郎
(
らう
)
胸
(
むな
)
さわぎのして、
美尾
(
みを
)
は
何處
(
どこ
)
へ
參
(
まい
)
りました、
此日暮
(
このひく
)
れに
燈火
(
あかり
)
をつけ
放
(
ぱな
)
しで、
買物
(
かひもの
)
にでも
行
(
ゆ
)
きましたかと
問
(
と
)
へば、
隣
(
となり
)
の
妻
(
つま
)
は
眉
(
まゆ
)
を
寄
(
よ
)
せて
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
彼の
懷
(
ふところ
)
に眠る、娘のやうに大事な牝羊を持つた人が、誤つてそれを
屠殺場
(
とさつぢやう
)
で殺したとしても、その人は、私が今自分のしたことを悔い歎く程には、その血なまぐさい
失錯
(
しつさく
)
を悔いはしないだらう。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
めし
其方
(
そのはう
)
の
妻女
(
さいぢよ
)
近
(
ちか
)
き頃
安産
(
あんざん
)
いたせしと聞及ぶ
然
(
しか
)
るに間もなく
其兒
(
そのこ
)
相果
(
あひはて
)
しよし其方は
男子
(
なんし
)
の事なれば
左程
(
さほど
)
にも思ふまじけれども
妻女
(
さいぢよ
)
は定めて
懷
(
ふところ
)
さびしくも思ふべし
幸
(
さいは
)
ひこの度
出生
(
しゆつしやう
)
せし徳太郎は
予
(
よ
)
が爲には四十二の二ツ子なり
依
(
よつ
)
て
我手元
(
わがてもと
)
にて
養育
(
やういく
)
致し難し
不便
(
ふびん
)
には思へども
捨子
(
すてご
)
にいたさんと思ふなりその
方
(
はう
)
取上
(
とりあ
)
げ妻女の乳を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
お互に
拔
(
ぬ
)
け
驅
(
が
)
けの功名をする氣にならずに、多勢で手を分けて探して見るが宜い。五十も百もある千兩箱を、
懷
(
ふところ
)
へも
袂
(
たもと
)
へも隱せるわけはないから
銭形平次捕物控:110 十万両の行方
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
澄
(
すみ
)
わたれる
望月
(
もちづき
)
の空に、トリヴィアが、天の
懷
(
ふところ
)
をすべて
彩色
(
いろど
)
る
永遠
(
とこしへ
)
のニンフェにまじりてほゝゑむごとく 二五—二七
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
……
實
(
じつ
)
は、
一寸
(
ちよつと
)
下
(
お
)
りて
蕎麥
(
そば
)
にしたい
處
(
ところ
)
だが、かけ
一枚
(
いち
)
なんぞは
刹那主義
(
せつなしゆぎ
)
だ、
泡沫夢幻
(
はうまつむげん
)
、つるりと
消
(
き
)
える。
俥代
(
くるまだい
)
を
差引
(
さしひ
)
くと
其
(
その
)
いづれかを
選
(
えら
)
ばねばならない
懷
(
ふところ
)
だから、
其處
(
そこ
)
で
餡氣
(
あんけ
)
で。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
無
(
な
)
き
餘
(
あま
)
りの
無分別
(
むふんべつ
)
に
人
(
ひと
)
の
懷
(
ふところ
)
でも
覗
(
ねら
)
うやうにならば、
恥
(
はぢ
)
は
我
(
わ
)
が一
代
(
だい
)
にとゞまらず、
重
(
おも
)
しといふとも
身代
(
しんだい
)
は二の
次
(
つぎ
)
、
親兄弟
(
おやけうだい
)
に
恥
(
はぢ
)
を
見
(
み
)
するな、
貴樣
(
きさま
)
にいふとも
甲斐
(
かひ
)
は
無
(
な
)
けれど
尋常
(
なみ/\
)
ならば
山村
(
やまむら
)
の
若旦那
(
わかだんな
)
とて
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
わが語りゐたる間、かの火の生くる
懷
(
ふところ
)
のうちにとある
閃
(
ひらめき
)
、俄にかつ屡〻
顫
(
ふる
)
ひ、そのさま
電光
(
いなづま
)
の如くなりき 七九—八一
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
ガラツ八は自分の
懷
(
ふところ
)
見たいな顏をして、
鷹揚
(
おうやう
)
に勘定をすると、
若干
(
なにがし
)
か心付けを置いて、さて
妻楊枝
(
つまやうじ
)
を取上げました。
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
材木町
(
ざいもくちやう
)
の
陶器屋
(
たうきや
)
の
婦
(
つま
)
、
嬰兒
(
あかご
)
を
懷
(
ふところ
)
に、
六歳
(
ろくさい
)
になる
女兒
(
をんなのこ
)
の
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
いて、
凄
(
すさまじ
)
い
群集
(
ぐんしふ
)
のなかを
逃
(
のが
)
れたが、
大川端
(
おほかはばた
)
へ
出
(
で
)
て、うれしやと
吻
(
ほつ
)
と
呼吸
(
いき
)
をついて、
心
(
こゝろ
)
づくと、
人
(
ひと
)
ごみに
揉立
(
もみた
)
てられたために
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
越
(
こ
)
えて一ト
月
(
つき
)
、
雲黒
(
くもくら
)
く
月
(
つき
)
くらき
夕
(
ゆふ
)
べ、
與
(
よ
)
四
郎
(
らう
)
は
居殘
(
いのこ
)
りの
調
(
しら
)
べ
物
(
もの
)
ありて、
家
(
いゑ
)
に
歸
(
かへ
)
りしは
日
(
ひ
)
くれの八
時
(
じ
)
、
例
(
いつも
)
は
薄
(
うす
)
くらき
洋燈
(
らんぷ
)
のもとに
風車
(
かざぐるま
)
犬張子
(
いぬはりこ
)
取
(
とり
)
ちらして、まだ
母親
(
はゝおや
)
の
名
(
な
)
も
似合
(
にあは
)
ぬ
美尾
(
みを
)
が
懷
(
ふところ
)
おしくつろげ
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
懷
部首:⼼
19画
“懷”を含む語句
可懷
懷胎
懷中
述懷
内懷
追懷
御懷
懷紙
人懷
懷中物
手懷
懷中鏡
懷中電燈
本懷
懷裡
懷提灯
懷手
山懷
懷劍
懷姙
...