トップ
>
儘
>
まゝ
ふりがな文庫
“
儘
(
まゝ
)” の例文
暖い日で額が汗ばむ程なので、基督は外套を脱いで、そこらの楊の木に
引掛
(
ひつか
)
けた
儘
(
まゝ
)
、岡を
上
(
のぼ
)
つて多くの群衆にお説教をしに出掛けた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
未
(
ま
)
だ東京で三年前に買つた
儘
(
まゝ
)
のを
被
(
かぶ
)
つて居る僕の帽も
此
(
この
)
連中
(
れんぢゆう
)
の
垢
(
あか
)
染
(
じ
)
みた鳥打帽や
亀
(
ひゞ
)
裂
(
わ
)
れた
山高帽
(
やまだかばう
)
に比べれば謙遜する必要は無かつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
土
(
つち
)
の
上
(
うへ
)
に
散
(
ち
)
らばつてゐる
書類
(
しよるゐ
)
を
一纏
(
ひとまとめ
)
にして、
文庫
(
ぶんこ
)
の
中
(
なか
)
へ
入
(
い
)
れて、
霜
(
しも
)
と
泥
(
どろ
)
に
汚
(
よご
)
れた
儘
(
まゝ
)
宗助
(
そうすけ
)
は
勝手口
(
かつてぐち
)
迄
(
まで
)
持
(
も
)
つて
來
(
き
)
た。
腰障子
(
こししやうじ
)
を
開
(
あ
)
けて、
清
(
きよ
)
に
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
此
(
この
)
遊歩
(
いうほ
)
の
間
(
あひだ
)
、
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
の
命
(
めい
)
ずる
儘
(
まゝ
)
に、
始終
(
しじゆう
)
吾等
(
われら
)
の
前
(
まへ
)
になり、
後
(
うしろ
)
になつて、
豫
(
あらかじ
)
め
猛獸
(
まうじう
)
毒蛇
(
どくじや
)
の
危害
(
きがい
)
を
防
(
ふせ
)
いで
呉
(
く
)
れた、
一頭
(
いつとう
)
の
猛犬
(
まうけん
)
があつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
さも
以
(
に
)
たり。
近
(
ちか
)
づく
儘
(
まゝ
)
に。
馨
(
にほ
)
ふ
香
(
か
)
は。そも
時
(
かう
)
款貨舖
(
ぐや
)
の。
娘
(
むすめ
)
かも。
指
(
ゆび
)
に
挾
(
はさ
)
める。
香盆
(
かうばこ
)
の。
何爲
(
なにこと
)
なりや。
時々
(
とき/\
)
に。
鼻
(
はな
)
に
翳
(
かさ
)
して。
嚊
(
か
)
くめるは。
「西周哲学著作集」序
(旧字旧仮名)
/
井上哲次郎
(著)
▼ もっと見る
「え、あの時は怒つて貰はないと言つたとかで、その
儘
(
まゝ
)
になつてゐるやうですよ。今度はもつと大きく吹きかけてゐるらしいんです。」
花が咲く
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
聞書は話の
殆
(
ほとんど
)
其
儘
(
まゝ
)
である。君は私に書き直させようとしたが、私は君の
肺腑
(
はいふ
)
から流れ出た語の権威を尊重して、殆其儘これを公にする。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
もう三十分も早かったら間に合ったろうに、惜しい事をしたと
己
(
おれ
)
は思った。しかし決して、己は其の
儘
(
まゝ
)
あきらめる気にはなれなかった。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ハヾトフは
其間
(
そのあひだ
)
何故
(
なにゆゑ
)
か
默
(
もく
)
した
儘
(
まゝ
)
、さツさと六
號室
(
がうしつ
)
へ
這入
(
はひ
)
つて
行
(
い
)
つたが、ニキタは
例
(
れい
)
の
通
(
とほ
)
り
雜具
(
がらくた
)
の
塚
(
つか
)
の
上
(
うへ
)
から
起上
(
おきあが
)
つて、
彼等
(
かれら
)
に
禮
(
れい
)
をする。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
みね「私ゃア縛られて首を切られてもいゝよ、そうするとお前も其の
儘
(
まゝ
)
じゃア置かないよ、百両おくれ、私ゃア別に成りましょう」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
女中のお安さんは、多い髪のハイカラな巻きかたに、黄色い厚い留櫛を見せて、向うのテイブルに
俯
(
うつ
)
ぶした
儘
(
まゝ
)
、正体もなく居眠をしてゐる。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
突ツ立てる
儘
(
まゝ
)
鋭き眼に見廻はし居たり、
漆黒
(
しつこく
)
なる五分刈の頭髪燈火に映じて針かとも見ゆ、彼は一座
怪訝
(
くわいが
)
の
面
(
おもて
)
をギロリとばかり
睨
(
にら
)
み返へせり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
と、誰か向ふの
畔
(
あぜ
)
を走りながら、叫ぶ者がある。山県はちらと見たが、「あ、僕の家らしい!」と叫んで、そして
跣足
(
はだし
)
の
儘
(
まゝ
)
、
慌
(
あわ
)
てて飛出した。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
一人の農夫が
草鞋穿
(
わらぢばき
)
の
儘
(
まゝ
)
、ぐいと『てツぱ』(こつぷ酒)を引掛けて居たが、
軈
(
やが
)
て其男の姿も見えなくなつて、
炉辺
(
ろばた
)
は唯二人の
専有
(
もの
)
となつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
何でも女房は仆れた
儘
(
まゝ
)
気絶した様子でしたが其暇に検査官は亭主を引立て
直様
(
すぐさま
)
戸表
(
とおもて
)
に待せある馬車へと
舁
(
かつ
)
いで行きました
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
醜男面
(
ひょっとこづら
)
に
假面
(
めん
)
は
無用
(
むよう
)
ぢゃ!(と假面を
抛出
(
なげだ
)
しながら)
誰
(
た
)
れが
皿眼
(
さらまなこ
)
で、
此
(
この
)
見
(
み
)
ともない
面
(
つら
)
を
見
(
み
)
やがらうと
儘
(
まゝ
)
ぢゃ!
出額
(
でこすけ
)
が
赧
(
あか
)
うなるばかりぢゃわい。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
此
(
こ
)
の
頃
(
ごろ
)
では
綿
(
わた
)
がすつかり
採
(
と
)
れなくなつたので、まるめ
箱
(
ばこ
)
も
煤
(
すゝ
)
けた
儘
(
まゝ
)
稀
(
まれ
)
に
保存
(
ほぞん
)
されて
居
(
ゐ
)
るのも
絲屑
(
いとくづ
)
や
布
(
ぬの
)
の
切端
(
きれはし
)
が
入
(
い
)
れてある
位
(
くらゐ
)
に
過
(
す
)
ぎないのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
觸
(
ふれ
)
ぬ此度は相摸守殿には
玄關
(
げんくわん
)
式臺迄
(
しきだいまで
)
御見送
(
おんみおく
)
り町奉行は下座敷へ
罷出
(
まかりい
)
で
表門
(
おもてもん
)
を一文字に
推開
(
おしひら
)
けば天一坊は
悠然
(
いうぜん
)
と乘物の
儘
(
まゝ
)
門
(
もん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
が、さういふ間も、生徒が不精してスリッパの
儘
(
まゝ
)
庭に降りて来ようとすると、「こら/\。靴をはいて、靴をはいて」と一々丹念に注意してゐた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
人
(
ひと
)
は
打石斧
(
だせきふ
)
かと
云
(
い
)
つて、
奇形
(
きけい
)
で
無
(
な
)
いのは
踏付
(
ふみつ
)
けた
儘
(
まゝ
)
行
(
ゆ
)
くが。
余
(
よ
)
は
其打石斧
(
そのだせきふ
)
だらうが、
石槌
(
せきつゐ
)
だらうが、
何
(
な
)
んでも
彼
(
か
)
でも
採集袋
(
さいしふぶくろ
)
に
入
(
い
)
れねば
承知
(
しようち
)
出來
(
でき
)
ぬ。
探検実記 地中の秘密:05 深大寺の打石斧
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
口惜
(
くや
)
しいけれど、何んにも知りやしません、出戻りで肩身を狹く暮してゐるから、お小遣も
儘
(
まゝ
)
ぢやない、氣が付けば、天井裏を煤だらけになつて這ひ回り
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
今までは注射
針
(
しん
)
を以て左の腕の静脈から血を採って居たが、今回だけは、僕の左の
橈骨
(
とうこつ
)
動脈にガラス管をさしこみ、その
儘
(
まゝ
)
ゴム
筒
(
かん
)
でつないで、僕の動脈から
恋愛曲線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
『
耻
(
はづ
)
かしくもなく
能
(
よ
)
くこんな
莫迦
(
ばか
)
げた
事
(
こと
)
が
訊
(
き
)
かれたものだ』とグリフォンが
云
(
い
)
ひ
足
(
た
)
しました。
彼等
(
かれら
)
は
雙方
(
さうはう
)
とも
默
(
だま
)
つた
儘
(
まゝ
)
坐
(
すわ
)
つて
憐
(
あは
)
れな
愛
(
あい
)
ちやんを
見
(
み
)
てゐました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
常には見上る
高枝
(
たかきえだ
)
も
埋
(
うづま
)
りたる雪を
天然
(
てんねん
)
の
足場
(
あしば
)
として心の
儘
(
まゝ
)
に
伐
(
きり
)
とり、大かたは六
把
(
は
)
を一人まへとするなり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
かういふ
構造
(
こうぞう
)
に
於
(
おい
)
ては、
大
(
おほ
)
きな
地震動
(
ぢしんどう
)
に
對
(
たい
)
して
眞先
(
まつさき
)
に
傷
(
いた
)
むのは
最下層
(
さいかそう
)
である。
更
(
さら
)
に
震動
(
しんどう
)
が
強
(
つよ
)
いと
階下
(
かいか
)
の
部分
(
ぶぶん
)
が
潰
(
つぶ
)
れ、
上層
(
じようそう
)
の
多
(
おほ
)
くは
直立
(
ちよくりつ
)
の
位置
(
いち
)
の
儘
(
まゝ
)
に
取殘
(
とりのこ
)
される。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
彼は唯只温情なる多血なる日本国民として日本国民なるが如く見る所を見し
儘
(
まゝ
)
に聞く所を聞きしまゝに写し出せり。而して自然に吾人をして快読に堪へざらしむ。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
と云ふに
筆
(
ふで
)
を止めて置いた。そして
散歩
(
さんぽ
)
にでも出るやうに、ぶらりと勝見家の門を出て了ツた。畫室などはそツくり其の
儘
(
まゝ
)
にして置いて、何一つ持出さなかツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
余は「歌念仏」を愛読するの
余
(
あまり
)
、其女主人公に就きて感じたるところを
有
(
あり
)
の
儘
(
まゝ
)
に筆にせんとするのみ。
「歌念仏」を読みて
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
而
(
しか
)
もアルファベットも習ひ放しで、いろ/\忙がしかつたものだから、教科書は鞄の中へ放り込んだ
儘
(
まゝ
)
ツイ
窺
(
のぞ
)
いてみた事もなかつたが、北京で仏人の手紙が届いた時
エスペラントの話
(新字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
借
(
か
)
りしも
二度
(
にど
)
三度
(
さんど
)
車夫
(
しやふ
)
亦
(
また
)
道
(
みち
)
に
委
(
くは
)
しからずやあらん
未
(
いま
)
だ
此職
(
このしよく
)
に
馴
(
な
)
れざるにやあらん
同
(
おな
)
じ
道
(
みち
)
行返
(
ゆきかへ
)
りて
困
(
かう
)
じ
果
(
は
)
てもしたらんに
強
(
つよ
)
くいひても
辭
(
じ
)
しもせず
示
(
しめ
)
すが
儘
(
まゝ
)
の
道
(
みち
)
を
取
(
と
)
りぬ
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
すると彼はそこにしやがんだ
儘
(
まゝ
)
、我にもあらずいつか気が遠くなつてうと/\と眠つて仕舞つた。
夢
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
それを聞くと道助は寝巻の
儘
(
まゝ
)
ふら/\と隣室へ
這入
(
はい
)
つていつた。そして蒼白い笑顔を作りながら
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
側には母上地に
横
(
よこたは
)
り居給ふ。これを圍みたるは、見もしらぬ人々なり。馬は車を引きたる
儘
(
まゝ
)
にて、
仆
(
たふ
)
れたる母上の上を過ぎ、
轍
(
わだち
)
は胸を碎きしなり。母上の口よりは血流れたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
赤いメレンスの帯ばかり
締
(
し
)
めて
居
(
ゐ
)
た
娘姿
(
むすめすがた
)
が、
突然
(
とつぜん
)
たつた一日の
間
(
あひだ
)
に、
丁度
(
ちやうど
)
今
御手洗
(
みたらし
)
で手を洗つてゐる若い芸者その
儘
(
まゝ
)
の
姿
(
すがた
)
になつてしまつたのだ。
薬指
(
くすりゆび
)
にはもう
指環
(
ゆびわ
)
さへ
穿
(
は
)
めてゐた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
暫らく秘して人に知らしむる
勿
(
なか
)
れとの事に、
妾
(
せふ
)
は不快の念に堪へざりしかど、
斯
(
かゝ
)
る不自由の身となりては、今更に
詮方
(
せんかた
)
もなく、彼の言ふが
儘
(
まゝ
)
に従ふに
如
(
し
)
かずと閑静なる処に寓居を
構
(
かま
)
へ
母となる
(新字旧仮名)
/
福田英子
(著)
若
(
も
)
し七
月
(
ぐわつ
)
二
日
(
か
)
以前
(
いぜん
)
のやうな
經濟状態
(
けいざいじやうたい
)
がその
儘
(
まゝ
)
に
持續
(
ぢぞく
)
したならば、あの
不安定
(
ふあんてい
)
なる
状態
(
じやうたい
)
は
進
(
すゝ
)
むに
從
(
したが
)
つて
益々
(
ますます
)
不安定
(
ふあんてい
)
になつて、
經濟界
(
けいざいかい
)
は
破壞
(
はかい
)
されるだらうと
云
(
い
)
ふことは、
確
(
たし
)
かな
事實
(
じじつ
)
と
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
金解禁前後の経済事情
(旧字旧仮名)
/
井上準之助
(著)
私
(
わし
)
は
耐
(
たま
)
らず
真逆
(
まツさかさま
)
に
瀧
(
たき
)
の
中
(
なか
)
へ
飛込
(
とびこ
)
んで、
女瀧
(
めたき
)
を
確
(
しか
)
と
抱
(
だ
)
いたとまで
思
(
おも
)
つた。
気
(
き
)
がつくと
男瀧
(
をたき
)
の
方
(
はう
)
はどう/\と
地響
(
ぢひゞき
)
打
(
う
)
たせて、
山彦
(
やまびこ
)
を
呼
(
よ
)
んで
轟
(
とゞろ
)
いて
流
(
なが
)
れて
居
(
ゐ
)
る、あゝ
其
(
そ
)
の
力
(
ちから
)
を
以
(
もつ
)
て
何故
(
なぜ
)
救
(
すく
)
はぬ、
儘
(
まゝ
)
よ!
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
およそありの
儘
(
まゝ
)
に思う
情
(
こゝろ
)
を
言顕
(
いいあら
)
わし
得
(
う
)
る者は知らず/\いと巧妙なる文を
怪談牡丹灯籠:01 序
(新字新仮名)
/
坪内逍遥
(著)
そこで死ぬと云ふことがない故、天命の
儘
(
まゝ
)
にして、天より授かりしまゝで
復
(
かへ
)
すのぢや、少しもかはることがない。ちやうど、天と人と一體と云ふものにて、天命を
全
(
まつた
)
うし
終
(
を
)
へたと云ふ譯なればなり。
遺教
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
濡
(
ぬ
)
れた足の
儘
(
まゝ
)
廊下で
跳
(
をど
)
り狂ふ子供等は
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
被
(
かぶ
)
つた滿谷は「ゆうべ汲んで置くのを忘れたら、
今朝
(
けさ
)
水道が凍つて水が出ない」と云つて
水瓶
(
みづがめ
)
を手にした
儘
(
まゝ
)
煖炉
(
ストオブ
)
の前に立つて居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
下女
(
げぢよ
)
は「
左樣
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか、どうも」と
簡單
(
かんたん
)
に
禮
(
れい
)
を
述
(
の
)
べて、
文庫
(
ぶんこ
)
を
持
(
も
)
つた
儘
(
まゝ
)
、
板
(
いた
)
の
間
(
ま
)
の
仕切
(
しきり
)
迄
(
まで
)
行
(
い
)
つて、
仲働
(
なかばたらき
)
らしい
女
(
をんな
)
を
呼
(
よ
)
び
出
(
だ
)
した。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
余は答へんとすれど声出でず、膝の
頻
(
しき
)
りに
戦
(
をのゝ
)
かれて立つに堪へねば、椅子を
握
(
つか
)
まんとせしまでは覚えしが、その
儘
(
まゝ
)
に地に倒れぬ。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
この
懶惰
(
なまくら
)
な芸人は
手脚
(
てあし
)
をもじもじさせてゐたが、ぴちと
爆
(
は
)
ぜたやうな音がしたと思ふと、
身体
(
からだ
)
はその
儘
(
まゝ
)
見えなくなつてしまつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
若江に心を懸ける者がお屋敷
内
(
うち
)
にあると見えます、それを
青茎
(
あおじく
)
の
蕾
(
つぼみ
)
の
儘
(
まゝ
)
貴殿の
許
(
もと
)
へ送るというのは若江を
取持
(
とりもち
)
いたす約束をいたした事か
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
燈
(
あかり
)
も
明
(
あか
)
るき
無料
(
むれう
)
の
官宅
(
くわんたく
)
に、
奴婢
(
ぬひ
)
をさへ
使
(
つか
)
つて
住
(
す
)
んで、
其上
(
そのうへ
)
、
仕事
(
しごと
)
は
自分
(
じぶん
)
の
思
(
おも
)
ふ
儘
(
まゝ
)
、
仕
(
し
)
ても
仕
(
し
)
ないでも
濟
(
す
)
んでゐると
云
(
い
)
ふ
位置
(
ゐち
)
。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
重右衛門の
最期
(
さいご
)
もつまりはこれに帰するのではあるまいか。かれは自分の思ふ
儘
(
まゝ
)
、自分の欲する儘、則ち性能の命令通りに一生を渡つて来た。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
そこには炭俵、漬物桶、又は耕作の道具なぞが
雑然
(
ごちや/\
)
置き並べてある。片隅には泥の
儘
(
まゝ
)
の『かびた芋』(馬鈴薯)山のやうに。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
私
(
わたくし
)
は
此時
(
このとき
)
まで
殆
(
ほと
)
んど
喪心
(
そうしん
)
の
有樣
(
ありさま
)
で、
甲板
(
かんぱん
)
の
一端
(
いつたん
)
に
屹立
(
つゝた
)
つた
儘
(
まゝ
)
、
此
(
この
)
慘憺
(
さんたん
)
たる
光景
(
ありさま
)
に
眼
(
まなこ
)
を
注
(
そゝ
)
いで
居
(
を
)
つたが、ハツと
心付
(
こゝろつ
)
いたよ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「おゝ
痛
(
いて
)
えまあ」と
顏
(
かほ
)
を
蹙
(
しか
)
めて
引
(
ひ
)
かれる
儘
(
まゝ
)
に
首
(
くび
)
を
傾
(
かたぶ
)
けていつた。
亂
(
みだ
)
れた
髮
(
かみ
)
の
三筋
(
みすぢ
)
四筋
(
よすぢ
)
が
手拭
(
てぬぐひ
)
と
共
(
とも
)
に
強
(
つよ
)
く
引
(
ひ
)
かれたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
儘
漢検準1級
部首:⼈
16画
“儘”を含む語句
其儘
我儘
此儘
自儘
氣儘
気儘
我儘者
我儘娘
我儘三昧
吾儘
気随気儘
吾儘者
気儘頭巾
勝手気儘
力儘
我儘放埒
我儘育
自由自儘
気儘気随
氣儘少女
...