滿足まんぞく)” の例文
新字:満足
財貨ざいくわによつて物質的ぶつしつてき滿足まんぞく自分じぶんあたゝかなふところかんじたときすべてはれをうしなふまいとする恐怖きようふからえずそのこゝろさわがせつゝあるやうに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たッた一をでも宣言おほせられたならば、小生それがし滿足まんぞくいたす。たゞ嗚呼あゝ」とだけさけばっしゃい、たッた一言ひとことラヴとか、ダヴとか宣言おほせられい。
くるしみかろんずるとか、なんにでも滿足まんぞくしてゐるとか、甚麼事どんなことにもおどろかんとふやうになるのには、あれです、那云あゝい状態ざまになつてしまはんければ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
東京とうきやうてから、自分じぶんおもひつゝもみづかかなくなり、たゞ都會とくわい大家たいか名作めいさくて、わづか自分じぶん畫心ゑごころ滿足まんぞくさしてたのである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『だつてあなたは、わたしがやつぱし、ちゝのいふ意味いみ幸福かうふく結婚けつこんもとめ、さうしてまた、それに滿足まんぞくしてきてられるをんなだとしかおもつてない……』
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
しかり、海底潜行艇かいていせんかうてい一種いつしゆには相違さうゐないが、しかわたくしたんこの軍艇ぐんていをば潜行艇せんかうていぶのみをもつては滿足まんぞくしない、なにとなれば現今げんこん歐米諸國をうべいしよこく發明家等はつめいから
其位そのくらゐぢや滿足まんぞく出來できないわ』といたましげなこゑあはれなあいちやんがつぶやいて、さておもふやう、『うかして芋蟲いもむしおこりッぽくしない工夫くふうはないものかしら』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
たとへばわれ/\の時代じだいには、ゆふづくならば、ほんとうに夕方ゆふがたのおつきさまがてゐるとかんじるだけで滿足まんぞくするのに、このひとうたでは、むかし習慣しゆうかんしたがつて
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
わたしかくあのかたはこれからの御出世前ごしゆつせまへ一生いつしやう暗黒くらやみにさせましてそれでわたし滿足まんぞくおもはれやうか、おゝいやことおそろしい、なんおもふてわたしひにたか
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
列席れつせき各員かくいん著者ちよしや簡單かんたん演述えんじゆつした大地震だいぢしん前徴ぜんちようにつきさら詳細しようさい説明せつめいもとめられ、すこぶ滿足まんぞくてい見受みうけた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
宗助そうすけんなあたらしい刺戟しげきもとに、しばらくは慾求よくきう滿足まんぞくた。けれどもとほふるみやこにほひいであるくうちに、すべてがやがて、平板へいばんえだしてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
終りにのぞんで讀者諸君に一言す。余は以上の風俗考を以て自ら滿足まんぞくする者に非ず、尚ほ多くの事實を蒐集總括して更に精しき風俗考をあらはさんとはの平常ののぞみなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
なんぢこゝろしとおもはばそれにてし、」と幼君えうくん滿足まんぞくしてたまへば、「しからば國中こくちう鳥屋とりや申附まをしつけあらゆる小鳥ことり才覺さいかくいたしてはや御慰おなぐさみそなたてまつらむ、」と勇立いさみたてば
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「けれども……、」と友はすこかんがへて、「僕等はとても勞働者をもつ滿足まんぞくすることは出來できない。 ...
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
持出て次右衞門に向ひ越前守より申こされし段上樣へ申上候處御滿足まんぞく思召おぼしめし明日の刻に越前役宅へ參るべしとの上意じやういなり是は余が所持しよぢの品如何敷いかゞはしく候へども其方へつかはすとて一かたな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みち出合であ老幼らうえうは、みな輿けてひざまづく。輿なかではりよがひどく心持こゝろもちになつてゐる。牧民ぼくみんしよくにゐて賢者けんしやれいするとふのが、手柄てがらのやうにおもはれて、りよ滿足まんぞくあたへるのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
水谷氏みづたにしかほ見合みあはせて『なにないでもいです。大森おほもり貝塚かひづか一鍬ひとくわでもつたといふことが、すでほこるにるのですから』など負惜まけをしみをつてたが、如何どうもそれではじつところ滿足まんぞく出來できぬ。
なぜならば、少しもそれらの運動うんどう宣言せんこく共鳴きようめいを感ずることが出來ませんでしたから。ひそかに自分達じぶんたちの考へはもうふるいのだろうとうなづきました。さうしてその舊さに滿足まんぞくを感じ、光榮くわうえいを感じました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
おつぎはけつして卯平うへい滿足まんぞくさせることとはおもはなかつたが、かれべてようといへばかゆにでもいてやらうとおもつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
じつわたくし貴方あなたとの談話だんわおいて、此上このうへ滿足まんぞくましたのです。で、わたくし貴方あなたのおはなし不殘のこらずうかゞひましたから、此度こんど何卒どうぞわたくしはなしをもおください。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たゞそれだけで滿足まんぞくせずに、新月しんげつころから注意ちゆういしてゐたのが、こんなにおほきく立派りつぱいたといふようなおもしろみをけたのは、ほんとうはよくないのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
親子おやこ三人くちおも滿足まんぞくにはまれぬなかさけへとはくおまへ無茶助むちやすけになりなさんした、おぼんだといふに昨日きのふらも小僧こぞうには白玉しらたま一つこしらへてもべさせず
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宗助そうすけ同僚どうれう高木たかぎとかをとこが、細君さいくん小袖こそでとかを強請ねだられたとき、おれは細君さいくん虚榮心きよえいしん滿足まんぞくさせるためかせいでるんぢやないとつてけたら、細君さいくんがそりや非道ひど
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
松島大佐まつしまたいさにぎれる軍刀ぐんたうつかくだくるをもおぼえぬまで、滿足まんぞく熱心ねつしんとのいろをもつて、きつおもて
子供こどもこのはなしには滿足まんぞくしなかつた。大人おとな讀者どくしやおそらくは一そう滿足まんぞくしないだらう。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
し、諸君しよくんにして中江兆民なかえてうみん先生せんせいどうしゆであつて、十八零圍氣れいゐき振舞ふりまはして滿足まんぞくしてるならば、諸君しよくんなん權威けんゐあつて、『はるみじかなに不滅ふめついのちぞと』云々うん/\うたひと自由じいう干渉かんせふるぞ。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こゝろつうずる、驛員えきゐんも、滿足まんぞくしたらしい微笑びせううかべて
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『おまへそれで滿足まんぞくかい?』と芋蟲いもむし
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
つくせし段かみにも定めて御滿足まんぞくに思召ならん依て御褒美はうびとして銀五枚取せつかはすと申渡され諏訪町家主組合長屋の者一同に下られ又彌吉粂事は現在げんざい母姑女の續き合に在ながら其身のしはきより困窮こんきう難儀なんぎの場所も見返らずあまつさへ老母自害致し候證據しようこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しか勘次かんじ自身じしんには如何どん種類しゆるゐものでも現在げんざいかれこゝろあた滿足まんぞく程度ていどは、うしなうたおしな追憶つゐおくすることからける哀愁あいしうの十ぶんの一にもおよばない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いく丁斑魚めだかでも滿足まんぞくられんなら、哲學てつがくずにはられんでせう。いやしく智慧ちゑある、教育けういくある、自尊じそんある、自由じいうあいする、すなはかみざうたる人間にんげんが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これはわざといひつくさなかつたといふより、いひつくしたゞけでは滿足まんぞく出來できなかつたので、かういふ尻切しりきれとんぼのようになつてゐるのですが、かへってひとこゝろ
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
かほどころか普通あたりまへあつさむいも滿足まんぞくにはおつしやらず、必竟ひつきようあのかたなればこそおはらもたてずにもけず可愛かわいがつてくださるものヽ、だい天道てんたうさまのばちあたらずにはりませぬ
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それをこと/″\理解りかいたとこゝろ餘裕よゆうが、宗助そうすけにはすくなからぬ滿足まんぞくあたへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何事なにごと天命てんめいです、しか吾等われらこの急難きふなんのぞんでも、わが日本につぽんほまれきづゝけなかつたのがせめてもの滿足まんぞくです。』とかたると、夫人ふじんかすかにうち點頭うなづき、俯伏ひれふして愛兒あいじくれないなるほう最後さいご接吻せつぷんあた
し、なんぢこゝろにさへしとおもはば滿足まんぞくせり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手桶てをけをも其處そこ投出なげいだして一つは滿足まんぞくなりしが一つはそこぬけにりけり、此桶これあたゑなにほどからねど、身代しんだいこれがためにつぶれるかのやう御新造ごしんぞ額際ひたへぎは青筋あをすぢおそろしく、朝飯あさはんのお給仕きうじよりにらまれて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)