心地こゝち)” の例文
それで他國たこく立派りつぱ堂々だう/\たる小學校せうがくかうきふ其樣そんなすぼらしい學校がくかうぼく子供心こどもごころにもけつして愉快ゆくわい心地こゝちなかつたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ながめやればはるか向ふに燈火ともしびの光のちら/\と見えしに吉兵衞やうやくいきたる心地こゝちし是ぞまがひなき人家ならんと又も彼火かのひひかり目當めあてゆき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二間ふたま三間みま段々だん/\次第しだいおくふかると……燈火ともしびしろかげほのかにさして、まへへ、さつくれなゐすだれなびく、はなかすみ心地こゝち
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何んだか生温なまぬるい湯にでも入ツてゐるやうな心地こゝち……、うつゝから幻へと幻がはてしなく續いて、種々さま/\な影が眼前を過ぎる、……ると、自分は
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
私は彼にも同じやうに心地こゝちのいゝ食事を調へた。私の心は、浮き立つて、樂しく、氣も樂に食事の間中、そしてその後も長い間彼に話しかけた。
印度洋インドやうちう氣※きかうほど變化へんくわはげしいものはない、いまは五ぐわつ中旬ちうじゆんすゞしいときじつ心地こゝちよきほどすゞしいが、あつとき日本につぽん暑中しよちうよりも一そうあついのである。
みがきてにはかげも心地こゝちよげなるを籠居たれこめてのみ居給ゐたまふは御躰おからだにもどくなるものをとお八重やへさま/″\にいざなひてほとりちかき景色けしき田面たのもいほわびたるもまた
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
嗚呼、いかにしてか此恨をせうせむ。ほかの恨なりせば、詩に詠じ歌によめる後は心地こゝちすが/\しくもなりなむ。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
これは/\とばかりなぐりつけられし貞室翁の風流もありがたく、一目千本の霞をくゞりぬけて、藏王權現仁王門前にいたるころは、早や花に醉ふたる心地こゝち
山家ものがたり (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
どうして美しく見える物心地こゝちよく感じられる事が、今日に限つて、直ちに悲しく淋しく思はれるのであらう。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
己はなんだか、自分の周囲を包んで居た暗澹あんたんたる雲の隙間から、遥かに天日てんじつの光を仰いだような心地こゝちがした。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この人は——運命はこの人にだけ何時も心地こゝちよい微風そよかぜを送つてゐるやうであつた——その後間もなく互ひに思ひ合ふ人が出来、やがて願ひがかなつて結婚の式をあげ
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
其れではどうやら物足らない心地こゝちしましてネ——今日も少こし他に用事があつたんですけれども、多分、貴嬢が御来会おいでになると思ひましたからネ、差繰つて参りましたの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
其年九月のはじめ安産あんざんしてしかも男子なりければ、掌中てのうちたまたる心地こゝちにて家内かないよろこびいさみ、産婦さんふすこやか肥立ひだち乳汁ちゝも一子にあまるほどなれば小児せうに肥太こえふと可賀名めでたきなをつけて千歳ちとせ寿ことぶきけり。
此日このひ此地このち此有様このありさまなが描写べうしやとゞまりて、後年こうねんいかなる大業たいげふ種子たねとやならん、つどへる人を見て一種いつしゆたのもしき心地こゝちおこりたり、此一行このいつかう此後こののち消息せうそく社員しやゐん横川氏よこかはしが通信にくはしければ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
アンドレイ、エヒミチはアツとつたまゝ、緑色みどりいろ大浪おほなみあたまから打被うちかぶさつたやうにかんじて、寐臺ねだいうへいてかれたやうな心地こゝちくちうちには鹽氣しほけおぼえた、大方おほかたからの出血しゆつけつであらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
な天民の作の観音と薬師如来の利益りやくであろうと、親子三人夢に夢を見たような心地こゝちで、其の悦び一方ひとかたならず、おいさを表向おもてむきに重二郎の嫁に致し、江戸屋の清次とは親類のえんを結ぶため
と、こつな殿樣とのさままへをもわすれて、心地こゝちよげにわらつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
らむ心地こゝちして、此時このときなりとこゝろばかりは
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そと手をほどき靄のうちさぐる心地こゝち
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まさしくうまかはつた心地こゝちである。
ヂュリ 心地こゝちがわるうござります。
心地こゝち、いまの憂身うきみ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ゆびむなしき心地こゝちせむ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
あづかなほ追々おひ/\に門弟ふえければ殊の外に繁昌はんじやうなし居たるに此程半四郎の實父半左衞門は不計ふとかぜ心地こゝちにてわづらひ付しかば種々醫療いれうに手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わか血潮ちしほみなぎりに、私は微醺びくんでもびた時のやうにノンビリした心地こゝちになツた。友はそんなことは氣がかぬといふふう
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
はや谷川たにかはおとくと我身わがみ持余もてあまひる吸殻すひがら真逆まツさかさま投込なげこんで、みづひたしたらさぞいゝ心地こゝちであらうと思ふくらゐなんわたりかけてこはれたらそれなりけり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
非常ひじやうへん心地こゝちがしたので、むしこの立去たちさらんと、春枝夫人はるえふじん見返みかへると、夫人ふじんいま有樣ありさま古風こふうなる英國人エイこくじん獨言ひとりごとには幾分いくぶん不快ふくわいかんじたと
私は心地こゝちよくくつろいでゐるやうに見えても、心の中は一向靜かではなかつた。馬車が、此處へ止まつた時、私は、誰か迎へに來てゐることだと思つた。
など打返うちかへそのむかしのこひしうて無端そゞろそでもぬれそふ心地こゝちす、とほくよりおとしてあゆるやうなるあめちか板戸いたどうちつけのさわがしさ、いづれもさびしからぬかは。
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
立ちどまつて、其人の名を思出してさへ、丑松はもう胸の踊るやうな心地こゝちがしたのである。見れば二三の青年が店頭みせさきに立つて、何か新しい雑誌でもあさつて居るらしい。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これにれるひとみづから睡眠ねむりもよふすほどの、だらりとした心地こゝち土地柄とちがらせいでもあらう。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
嵐の如くいよ/\たけなはにしていよ/\急激に、聞く人見る人、目もくらみ心もくつがへがくまひ、忽然として止む時はさながら美しき宝石の、砕け、飛び、散つたのを見る時の心地こゝちに等しく
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ささやく心地こゝち、さびしさの
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
つきヤレ/\有難き仰せ畏まり奉つると蘇生よみがへりたる心地こゝちにて直樣すぐさま馳歸はせかへり多くのかぎを持參なし種々いろ/\あはせ見て具足櫃ぐそくびつ錠前ぢやうまへあけけるとなり此事錠前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゝずめば、あたゝかみづいだかれた心地こゝちがして、も、水草みづくさもとろ/\とゆめとろけさうにすそなびく。おゝ、澤山たくさん金魚藻きんぎよもだ。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そしてもう一度、心地こゝちよい秋のある暮方、私はロートンへの路を歩いてゐた。途中は小川のへりに沿ひ、谷の美しい曲折カアヴの間を縫ふ畫のやうな路であつた。
是に反しては、各自てんでんに體面を傷ツけるやうなものだ。でいづれもほてツた頭へ水を打決ぶツかけられたやうな心地こゝちで、一人去り二人去り、一と先づ其處を解散とした。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
武村兵曹たけむらへいそうわたくしとは、じつ双肩さうけん重荷おもにおろしたやう心地こゝちがしたのである。じつに、うれしい、うれしい、うれしい。
旦那だんなさまわらつて、あまこゝろつかぎた結果けつくわであらう、さへおちつければなほはづおつしやるに、いなそれでもわたしふにはれぬさびしい心地こゝちがするので御座ござります
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぼく溪流けいりう沿ふてこのさびしい往來わうらいあてもなくるいた。ながれくだつてくも二三ちやうのぼれば一ちやう其中そのなかにペンキで塗つたはしがある、其間そのあひだを、如何どん心地こゝちぼくはぶらついたらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
行手も定めず歩み度き心地こゝちに相成り候。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
昨日きのふには心地こゝちや。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
夢の心地こゝちも甘かりし
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なぐさみにとのたまふにぞ、くるしき御伽おんとぎつとむるとおもひつも、いしみ、すなむる心地こゝちして、珍菜ちんさい佳肴かかうあぢはひく、やう/\に伴食しやうばんすれば、幼君えうくんいたきようたま
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雖然けれども其等の物の一つとして、風早學士の心に何んの刺戟も與へなかツた。風に搖れるフラフ、または空を飛ぶ鳥を見るやうな心地こゝちで、冷々として看過した。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
大路おほぢゆく辻占つぢうらうりのこゑ、汽車のふえの遠くひゞきたるも、なにとはなしにたましひあくがるゝ心地こゝちす。
月の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
住居すまゐ其処等そこら散歩さんぽをする、……ほこらいへにはおうら留主るすをして、がために燈火ともしびのもとで針仕事はりしごとでもるやうな、つひしたたのしい心地こゝちがする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此處こゝ大黒屋だいこくやのとおもときより信如しんによものおそろしく、左右さゆうずしてひたあゆみにしなれども、生憎あやにくあめ、あやにくのかぜ鼻緒はなををさへに踏切ふみきりて、せんなき門下もんした紙縷こより心地こゝち
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
由三は何がなし冷い手で胸を撫でられるやうな心地こゝちがした。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)