世話せわ)” の例文
「おかあさんをてたのはやはりわたくしがわるうございました。こんどはどんなにしてもおそばについてお世話せわをいたしますから。」
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
られる都合つがふならばまたいままでのやうにお世話せわりにまする、るべくは鳥渡ちよつとたちかへりにぐも出京しゆつけうしたきものとかるくいへば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
呼寄よびよせ相談に及びしは其方は幼年えうねんなれども感應院の手許てもとにて教導けうだうを受し事なれば可なりに修驗しゆけん眞似まねは出來べし我々始め村中より世話せわ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
同伴者つれ親類しんるゐ義母おつかさんであつた。此人このひと途中とちゆう萬事ばんじ自分じぶん世話せわいて、病人びやうにんなる自分じぶんはらまでおくとゞけるやくもつたのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おばあさんには、べつに身内みうちのものというほどのものもなかった。病気びょうきになるとむらひとたちが、しんせつに世話せわをしてやりました。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
自分は十だいから花前と懇意こんいであって、花前にはひとかたならず世話せわにもなったが、自分も花前のためにはそうとう以上いじょうにつくした。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おまえにもいろいろ世話せわになりました……。』こころなかでそうおもっただけでしたが、それはかならずうまにもつうじたことであろうとかんがえられます。
顔を洗っているとき、彼は下女にくるまを二台云いつけるお延の声を、あたかも自分がてられでもするように世話せわしなく聞いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
祖父殿おんぢいどんはの、山伏やまぶし姿すがたしたたび修業者しゆげふじやが、道陸神だうろくじんそば病倒やみたふれたのを世話せわして、死水しにみづらしつけ……修業者しゆげふじやならつたひます。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
になつて其様そんなことがさせられるかさせられねえか考へて見ねえ、とてもそれなりに世話せわつてもゐられねえからかへつてたのよ。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
さうしてほどなく或人あるひと世話せわ郡立學校ぐんりつがくかう教師けうしとなつたが、れも暫時ざんじ同僚どうれうとは折合をりあはず、生徒せいととは親眤なじまず、こゝをもまたしてしまふ。其中そのうち母親はゝおやぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
と来たでしょう。バキチのほうでももう大抵たいてい巡査じゅんさがあきていたんです。へえ、そうですか、やめましょう。永々ながなが世話せわになりましたってうんです。
バキチの仕事 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あたしは天使てんしです。あなたと、あなたのお子さまのお世話せわをするように、かみさまからつかわされたのです。」
「なあにたえしたこつちやねえが、盲目めくら野郎やらうよめ世話せわされるもんだからどうしたもんだんべかとおもつてよ」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
余は肺の臓の破るゝと思うほど呼吸いき世話せわしきにも構わず其まねをして続いて上れば三階なる取附の右の室は入口の戸も開放せしまゝなるゆえ、之を潜りて客室、食堂
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
こゝも生活くらしにはこまつてゐたので、はゝ食料しよくれうをかせぐため、丁度ちやうど十八になつてゐたのをさいはひ、周旋屋しうせんや世話せわで、そのころあらたにできた小岩こいは売笑窟ばいせうくつ身売みうりをしたのである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
代目だいめ時代じだい鷄屋とりや番人ばんにん老人らうじんて、いろ/\世話せわをしてちやなどれてれてたが、其老人そのろうじんもなくんだので、んとなく寂寞せきばくかんじたのであつた。
さいはつまあに本國ほんこく相當さうたう軍人ぐんじんであれば、其人そのひと手許てもとおくつて、教育けういく萬端ばんたん世話せわたのまうと、餘程よほど以前いぜんからかんがへてつたのですが、どうもしか機會きくわいなかつた。
「きみのからだをもらいたいのだ。わしは仲間のひとりに、きみのからだを世話せわしたいと思うのだ」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「いろいろお世話せわになりました、だがぼくはもうだめです。どうか少年たちにお礼をいってください。ぼくは死んでも少年たちをまもって、ぶじ本国に帰るようにします」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
おかあさんは、よけいな世話せわをやきすぎる、と少年は心の中で思っていました。なぜって、少年としては、一ページか二ページぐらいしか読むつもりはなかったのですから。
そして猿爺さんの病気は、猿の介抱かいほうと村人達との世話せわとで、間もなくなおってしまいました。
キンショキショキ (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
やう/\のこと、くに役人やくにん世話せわ手輿てごしせられていへきました。そこへ家來けらいどもがけつけて、お見舞みまひをまをげると、大納言だいなごんすもゝのようにあかくなつたひらいて
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
「いやらしいこと、おつしやらないでください。刈谷かりやさんはつています。むかしからの知合しりあいです。でも、あんなケチンボでへんくつなおとこに、どうして世話せわになんかなるものですか」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
「宿をお求めではござらぬかな、もし宿をお求めなら、よい宿をお世話せわいたしましょう」
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
緑青ろくしょうがいっぱいついているうえに、いただきほうにはほこりがつもっているので、かなりきたなかった。庵主あんじゅさんと、よく尼寺あまでら世話せわをするおたけばあさんとが、なわをまるめてごしごしとあらった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
お時は宮内の身のまわりのこまかい世話せわを見、宮内はつねにお時の心ぼそい旅をはげまして、どうかしてこの女房にょうぼうのたずねている、まことの子供をさがしあててやりたいといのっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『さうすれば世話せわがなくていけれど、ねえ!』あはれなちひさなものふたゝ歔欷すゝりなきしました(いやうなりましたが、なんつたのだかわかりませんでした)、そこ兩方りやうはうともしばらくのあひだだまつてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
つゝしんでおもんぱかるにかみ御恵みめぐみあまねかりし太古たいこ創造さう/″\時代じだいには人間にんげん無為むゐにして家業かげふといふ七むづかしきものもなければかせぐといふ世話せわもなく面白おもしろおかしくくつ日向ひなたぼこりしてゐられたものゝ如し。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
父の世話せわをしてあげたいとおもいますからといってことわりました。
「そのふゆないうちにありどののお世話せわにならなきやなりますまい」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
それをくと、とうさんは半信半疑はんしんはんぎのままで、むすめそばはなれた。日頃ひごろかあさんのやくまでねて着物きもの世話せわからなにから一切いっさいけているとうさんでも、そのばかりはまったとうさんのはたけにないことであった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
めにいったのは、鳥屋とりやでありました。そこへいっても、彼女かのじょはよくはたらきました。とりをやったり、いろいろとり世話せわをしました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しもあなたのようなさしい御方おかた最初さいしょからお世話せわをしてくださったら、どんなにか心強こころづよいことであったでございましたろう……。
さいはひ御米およね産氣さんけづいたのは、宗助そうすけそとようのない夜中よなかだつたので、そばにゐて世話せわ出來できるとてんからればはなは都合つがふかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
昨日きのふきみ世話せわつたとふから、つてるだらうが、薄暮合うすくれあひ、あの時間じかん旅館りよくわんいたのだから、あとははひつてるばかりさ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見當り次第しだい討取うちとつて夫に手向たむけんと思ひせがれ太七をよび勘兵衞殿は其方のためじつの親には有ねども六ヶ年のあひだ世話せわになりたれば親に違ひなし彌七を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこで保名やすなこころのうちにはどくおもいながら、毎日まいにちあおむけになってたまま、親切しんせつむすめ世話せわからだをまかしておくほかはありませんでした。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
もんれいとほあけぱなしだからたゝ世話せわいらず、二人ふたりはずん/\とうちはひつてたが草木くさき縱横じゆうわうしげつてるのでラクダルの居所ゐどころ一寸ちよつとれなかつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
きとほるやうに蒼白あをじろきがいたましくえて、折柄をりから世話せわやきにたりし差配さはいこゝろに、此人これ先刻さきのそゝくさをとこつまともいもとともうけとられぬとおもひぬ。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうしてほどなく或人あるひと世話せわ郡立学校ぐんりつがっこう教師きょうしとなったが、それも暫時ざんじ同僚どうりょうとは折合おりあわず、生徒せいととは親眤なじまず、ここをもまたしてしまう。そのうち母親ははおやぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
念佛衆ねんぶつしううちにはえらばれて法願ほふぐわんばれて二人ふたりばかりのぢいさんが、むづかしくもない萬事ばんじ世話せわをした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
自分のようなものは、いよいよ働けなくなれば、個人こじん世話せわするよりは国家こっかが世話すべきだと思ってるらしい。それならば考えのすじはたっていると主人は思った。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「とうとう見付かったかな。……猿めがあんたの村でいかいお世話せわになったそうで……」
キンショキショキ (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それをきいて、宿屋やどやの主人はふしぎに思いました。そして、ロバの世話せわをじぶんでしなければならないような男は、どうせいする金もそんなにもっちゃいまい、と考えました。
あとれい快活くわいくわつなる武村兵曹たけむらへいそうがやつてて、武骨ぶこつなる姿すがた親切しんせつに、吾等われら海水かいすいみ、天日てんぴこがされて、ぼろ/\になつた衣服ゐふく取更とりかへやら、洗湯せんたう世話せわやら、日出雄少年ひでをせうねんためには
へびぢやないわ!』とあいちやんは腹立はらだゝしげにつて、『おほきなお世話せわよ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
大九郎は大酒家たいしゅかで、道中もときどき源次郎に世話せわをやかせてテコずらした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
停車場ステイシヨンつたツて切符を買ふ手当てあてもありませんから、いまにかへりませうと待つたが、かへつてねえ、ところで悪い顔もしず、御飯ごはん世話せわからとこ揚下あげおろしまで岩田屋いはたやさん御夫婦ごふうふくださるんだが
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いつもどもがきてはお世話せわになります」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)