おこ)” の例文
わたくしは因縁こそ実にとうとくそれを飽迄あくまでも大切にすべきものだと信じてります。其処そこに優しい深切しんせつな愛情が当然おこるのであります。
僕はおかあさんをおこそうかとちょっと思いましたが、おかあさんが「お前さんお寝ぼけね、ここにちゃあんとあるじゃありませんか」
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そこでまあ十一月二十五日が来るまでは構うまいという横着な料簡りょうけんおこして、ずるずるべったりにその日その日を送っていたのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あるときは、隣室りんしつてゐるKの夫人ふじんゆすおこされてましたが、彼女かのぢよにはそれがたんゆめとばかり、すことができなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
津浪つなみとはなみすなはみなとあらはれる大津浪おほつなみであつて、暴風ぼうふうなど氣象上きしようじよう變調へんちようからおこることもあるが、もつとおそろしいのは地震津浪ぢしんつなみである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
内儀かみさんは什麽どんなにしてもすくつてりたいとおもしたら其處そこ障害しやうがいおこればかへつてそれをやぶらうと種々しゆじゆ工夫くふうこらしてるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おこし我等は今宵こよひよんどころなく用事あれば泊る事はならざれどもあつさり遊んで歸らんと夫より新宿しんじゆくの相摸屋へあがりしが其夜九ツ時分品川を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
或る工学者が水道鉄管の腐蝕ふしょくの現象を研究されているが、その人の話でも、実験室内で腐蝕をおこさすまでは大変な苦労であったが
「霜柱の研究」について (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
(雷と夕立はをんさいのからくり也)雲は地中ちちゆう温気をんきよりしやうずる物ゆゑに其おこかたち湯気ゆげのごとし、水をわかし湯気ゆげたつと同じ事也。
日本人にほんじん固有こゆう風習ふうしふてゝ外國ぐわいこく慣習くわんしふにならうは如何いかにも外國ぐわいこくたいして柔順過じうじゆんすぎるといふ怪訝けげんかんおこさしむるにぎぬとおもふ。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
私が幾人も残してく子供を育てヽ下さるであらうと依頼心をあのかたおこすやうになつたのもおつやさんの言葉がいんになつて居るのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
首領かしらも金の猫も、縛つたまゝ船にもちこんで出帆してしまはう。こんなふしぎがおこるところにぐづ/\してると、とんだことになるぜ。
金の猫の鬼 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
顏色かほいろ蒼白あをじろく、姿すがたせて、初中終しよつちゆう風邪かぜやすい、少食せうしよく落々おち/\ねむられぬたち、一ぱいさけにもまはり、往々まゝヒステリーがおこるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その容疑ようぎのもとは、中内工学士なかうちこうがくし場合ばあいていて、金魚屋きんぎょや老人ろうじんとのあいだ貸借関係たいしゃくかんけいがあり、裁判沙汰さいばんざたまでおこしたという事実じじつからである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
わたしときよりまぐれをおこすはひとのするのではくてみなこゝろがらのあさましいわけがござんす、わたし此樣こんいやしいうへ貴君あなた立派りつぱなお方樣かたさま
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おぬし堪忍かんにんならん! はれやれ、おぬし來賓中らいひんちゅう大鬪爭おほげんくわおこさせうぞよ! 大騷動おほさうどう爲出來しでかさうわい! えゝ、おぬしのやうなのが、その!
はや四方より闇を逐ひ、闇とともにわが睡りを逐へり、我即ち身をおこせば、ふたりの大いなる師この時既に起きゐたり 一一二—一一四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
裏切うらぎり者と聞いて竹童ちくどうも、スワ一大事がおこったなと思った。林のなかでは使いにくい火独楽ひごま、めんどうとふところへ飛びこませて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ずぶぬれの、一所いつしよつゝんだくさに、弱々よわ/\つて、のまゝ縋着すがりついたのもあつたから、手巾ハンケチそれなりに土手どててておこした。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このやくもたつといふ言葉ことばが、うたうへでいふ枕詞まくらことばなのです。すなはちこの場合ばあひは、いづもといふ言葉ことばおこすための、ゑことばなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
牡丹という花は、夏の日盛りの光の下で、壮麗な色彩を強く照りかえすので、雄大でグロテスクな幻想を呼びおこさせる。蕪村の詩としては
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
歴史は常に疾病によつて幸福が毀損され、不幸がひきおこされたことを記して、其の全紙を埋めて居る、と云つても宜しい程である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
最初さいしょ彼女かのじょおこった現象げんしょうしゅとして霊視れいしで、それはほとんど申分もうしぶんなきまでに的確てきかく明瞭めいりょう、よく顕幽けんゆう突破とっぱし、また遠近えんきん突破とっぱしました。
いま彼女かのぢよかほをごりと得意とくいかげえて、ある不快ふくわいおものために苦々にが/\しくひだりほゝ痙攣けいれんおこしてゐる。彼女かのぢよつてく。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
それを石橋いしばしわたしとでしきり掘出ほりだしにかゝつた、すると群雄ぐんいう四方しはうよりおこつて、ひゞきの声におうずるがごとしです、これ硯友社けんいうしや創立さうりつ導火線だうくわせんつたので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すべひとたるものつね物事ものごとこゝろとゞめ、あたらしきことおこることあらば、何故なにゆゑありてかゝこと出來できしやと、よく其本そのもと詮索せんさくせざるべからず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
にいさん、なにが幸福しあわせになり、なにが不幸福ふしあわせになるか、わかったものでありません。あれからわたしは、事業じぎょうおこして失敗しっぱいしました。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いまから數分すうふん以前いぜんにかのふね本船ほんせん右舷うげん後方こうほう海上かいじやうおい不思議ふしぎにも難破信號なんぱしんがうげたこととでかんがあはせるとかゝ配慮しんぱいおこるのも無理むりはあるまい。
う考えると、彼は矢も盾もたまらなくなった。家内の者共を呼びおこすまでもなく、自分一人での虎ヶ窟を探ろうと決心した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と押えた手を放しますと、側に大きな火鉢がありまして、かん/\と火がおこっております。それに掛っている大薬鑵おおやかんを取って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
赤壁せきへきの『清風せいふうおもむろに吹来つて水波すいはおこらず』という一節が書いてございましたから、二人で声を出して読んで居りますと
婦人と文学 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
やま全体ぜんたいうごいたやうだつた。きふ四辺あたり薄暗うすくらくなり、けるやうなつめたかぜうなりがおこつてきたので、おどろいたラランは宙返ちうがへりしてしまつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
あいちやんは其處そこ彼等かれらまはるのをて、偶々たま/\自分じぶん以前まへしうに、數多あまた金魚鉢きんぎよばちくりかへしたときざまおもおこしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わたくし外套ぐわいたうのポケットへぢつと兩手りやうてをつつこんだまま、そこにはひつてゐる夕刊ゆふかんしてようと元氣げんきさへおこらなかつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この竜はあるとき、よいこころをおこして、これからはもうわるいことをしない、すべてのものをなやまさないとちかいました。
手紙 一 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かれには一体いったいどうしていいのかわからなかったのです。ただ、こう幸福こうふく気持きもちでいっぱいで、けれども、高慢こうまんこころなどはちりほどもおこしませんでした。
しかし又自分は、なぜにこれ等娼婦の増加を防止する運動が教育ある仏蘭西フランスの紳士貴婦人の間からおこらないかと怪しんで居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
間もなく相見た時は、君もやゝ心解けて居たが、茶色の眼鋭くまゆけわしく、熬々いらいらした其顔は、一見不安の念を余におこさした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それを一口にいうと、飜訳者は模写だとか原色版だとか何だとかいう身の程知らずな野心をおこさずに、写真屋の役割で満足しろということになる。
翻訳のむずかしさ (新字新仮名) / 神西清(著)
かく申さば一方にて「すらだにも」のごときを許し他の方にて「も」の一字を蛇蝎だかつ視するはいかんとの不審おこ可申もうすべく候。それは左のごとき次第に候。
あきまろに答ふ (新字新仮名) / 正岡子規(著)
とソフアにけてたオックスフオード出身しゆつしん紳士しんしおこしていた。其口元そのくちもとにはなんとなく嘲笑あざけりいろうかべてる。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たいコスモポリタンといふ言葉ことば正確せいかく意義いぎはどういふのだらう。わたしには疑問ぎもんおこつた。そこで『井上ゐのうへ英和辭典えいわじてん』をいてると、うある。
すると突然縁談がおこったというのは、何でも、その娘をある男が外で見染めたとかで、是非というつまり容貌きりょう望みで直接に先方から懇望こんもうして来たのである。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
ただ、この競走を実際に見た動物たちが、そののちまもなくおこった大きな森の火事で、すっかり死んでしまったため、本当のことが伝わらなかったのです。
兎と亀 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
我れ三文字屋さんもんじや金平きんぴらつと救世ぐせい大本願だいほんぐわんおこし、つひ一切いつさい善男ぜんなん善女ぜんによをしてことごと文学者ぶんがくしやたらしめんとほつし、百でツたむまの如くのたり/\として工風くふうこら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
「あれがおこつてゐる間は、余ツ程要心しないと何時怖ろしいやつがやつて来るかも知れないんですからな……」
F村での春 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「その殿様が近ごろ和蘭舶来おらんだはくらいの素晴らしい遠眼鏡を手に入れ、二階の縁側から、あちらこちらと眺めるのを楽しみにしていた——というのがことのおこりで」
清造にはなんのことだかわからないので、やっとからだをおこしながら、あたりをきょろきょろ見まわしました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
(3) 国債ヲおこシ及予算ニ定メタルモノヲ除クほか国庫ノ負担トナルヘキ契約ヲスハ帝国議会ノ協賛ヲヘシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
平時は中下なかしも屋敷附近に火災のおこるごとに、火事装束しょうぞくを着けて馬にり、足軽数十人をしたがえて臨検した。貞固はその帰途には、殆ど必ず渋江の家に立ち寄った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)