おく)” の例文
友染いうぜんきれに、白羽二重しろはぶたへうらをかさねて、むらさきひもくちかゞつた、衣絵きぬゑさんが手縫てぬい服紗袋ふくさぶくろつゝんで、そのおくつた、しろかゞや小鍋こなべである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お婆さんがこの部屋までくるのには、なんどもなんども、ちょっとしたおくものをしたり、言葉をつくしてたのみこんだりしたのでした。
印刷いんさつ出板しゅっぱんの手続きより一切いっさい費用ひようの事まで引受ひきうけられ、日ならずして予がのぞみのごとくなる冊子さっし数百部を調製ちょうせいせしめて予におくられたり。
これらの真景しんけいをも其座そのざにうつしとりたるをそへおくりしに、玉山翁が返書へんしよに、北越ほくゑつの雪机上きしやうにふりかゝるがごとく目をおどろかし候
退けばすなわ緇衣しい香烟茶味こうえんちゃみ、淡然として生を終り、栄国公えいこくこうおくられ、そうを賜わり、天子をしてずから神道碑しんどうひを製するに至らしむ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし、やがておくぬしかなしきかた見になつたその寫眞器しやしんきは、支那しなの旅からかへるともなく、或るぶん學青年の詐欺さぎにかゝつてうしなはれた。
船室に置いておいたら、いつの間にかだれか食ってしまい、ぼくには、そんなむなしいおくり物をする、だぼはぜ嬢さんがあわれだった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そのうちに、皇子おうじのほうからは、たびたび催促さいそくがあって、そのうえに、たくさんの金銀きんぎん宝石ほうせきるいくるまんで、おひめさまにおくられました。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そへ種々いろ/\禮物れいものおくりけるゆゑ五八はにはか分限ぶげんとなり何れも其家々そのいへ/\繁昌はんじやうなせし事實に心實しんじつほど大切たいせつなるものはなしと皆々感じけるとなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
苦心の結果、誠にいかにも古代支那しな式な苦肉の策が採られた。すなわち、斉から魯へおくるに、歌舞かぶに長じた美女の一団をもってしたのである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
じつ先日せんじつ倫敦ろんどん友人いうじんから『世界せかい名畫めいぐわ』とだいして、隨分ずゐぶん巧妙かうめうすつてあるのを二十まいばかりおくつてれたがね、それは如何どうだらうかとおもふのだ。』
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「されば、それがしの主君勝家より密命があって、ご不運なる武田家たけだけ御曹司おんぞうしへ、ひとつのおくり物をいたそうがため」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに一つ合作を武見国手たけみこくしゅおくろうじゃないかという話が持ち上った。それでずあいかわらずの雪を描いた。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
どうぞ、あなたにおく手紙てがみにことよせて、私がくづれやすい自分の努力どりよくいましめているものと、失禮しつれいをおゆるし下さい。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
〔評〕榎本武揚えのもとぶやう等五稜郭りようかくの兵已に敗る。海律全書かいりつぜんしよ二卷を以て我が海軍におくつて云ふ、是れ嘗て荷蘭おらんだに學んでたる所なり、身と倶にほろぶることを惜しむと。
あっちこっちからおくったビラがいっぱいに下げてあって、ていさんへという大きな字がそこにもここにも見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
したがって、人気役者にんきやくしゃきまとう様々さまざまうわさは、それからそれえと、日毎ひごとにおせんのみみつたえられた。——どこそこのお大名だいみょうのおめかけが、小袖こそでおくったとか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その二品ふたしなだけでも三にんのおよめさんのおくものにくらべて、けっしてひけをとるようなことはありませんでした。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたしはいまほんを、ちひさい兄弟姉妹けうだいしまいたちである日本にほんどもたちおくります。また。そのどもたちおやであり、先生せんせいである方々かた/″\にも是非ぜひんでいたゞきたいのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
るよく晴れた日、須利耶さまはみやこに出られ、童子の師匠ししょうたずねて色々れいべ、また三巻みまき粗布あらぬのおくり、それから半日、童子をれて歩きたいともうされました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
石鹸しやぼん氣取きどりたるもふめり、おぬひは桂次けいじ未來みらいつまにとおくりもの〻中なか薄藤色うすふぢいろ繻袢じゆばんゑりしろぬきの牡丹花ぼたんくわかたあるをやりけるに、これをながめしとき桂次けいじかほ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そんな柳吉のところへ蝶子から男履おとこばきの草履をおくって来た。えた手紙には、大分永いこと来て下さらぬゆえ、しん配しています。一同舌をしたいゆえ……とあった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
濱島はまじまおくつてれたかずある贈物おくりものうち、四かく新聞しんぶんつゝみは、しや煙草たばこはこではあるまいかとかんがへたので、いそひらいてると果然くわぜん最上さいじやう葉卷はまき! 『しめたり。』とてんじて
ベルリオーズの貧窮を見かねて、ヴァイオリンの鬼才パガニーニが、いきなり二万フランの大金を、予告もなんにもなしに、無条件でおくって来たのはそのころのことである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
ゆきうへれる月夜つくようめはなりておくらむしきもがも 〔巻十八・四一三四〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
コレハ/\よく作られたと賞揚しやうやうばん、そのあと新詩しんし一律いちりつまたおくられては、ふたゝび胸に山をきづく、こゝはおほきかんがへもの、まのあたさゝげずに遠く紙上しじやう吹聴ふいちやうせば、先生ひげにぎりながら
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
彼等は彼等がまだほんの子供の時分に云つたりたりした事を彼女が話し彼等が家の部屋に持つてゐる本だの飾りだの——あちこちの親類の者が彼女等におくつた記念品だのゝ事を
人が我におくるに、つまらぬ物をもってするなら、我は彼に与うるに貴重なるしなをもってすべしとの意で、かえって出来がたきことながら、この句は世を渡るに常に心得こころうべきことである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
きみはあれから奥州あうしう塩竈しほがままでつたか、相変あひかはらず心にけられて書面しよめんおくられて誠にかたじけない、丁度ちやうど宴会えんくわいをりきみ書状しよじやうとゞいたから、ひらおそしと開封かいふうして読上よみあげた所が、みんな感服かんぷくをしたよ
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
上官二十六人に白銀二百枚、中官以下に鳥目ちょうもく五百貫を引物ひきものとしておくった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
先方せんぱうではおほい恐縮きようしゆくして、いろ/\相談さうだんすゑ名高なだか針醫はりいなくなつて、藥箱くすりばこ不用ふようになつてゐたのをり、それを療法れうはふれいとしておくつてたのが、この藥箱くすりばこで、見事みごと彫刻てうこくがしてあつて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
口碑こうひに從へばコロボツクルは漁業ぎよげふたくみにして屡ばアイヌに魚類をおくれりと云へり。今諸地方貝塚よりの發見物はつけんぶつけんするに、實に魚骨魚鱗等有り。しかれども彼等の食物しよくもつけつして魚類にかぎりしには非ず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ゆびには代助のおくつた指環ゆびわも、ほか指環ゆびわ穿めてゐなかつた。自分の記念を何時いつでも胸にゑがいてゐた代助には、三千代みちよの意味がよくわかつた。三千代は手を引きめると同時に、ぽつと赤い顔をした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
でも、やっと思いとどまって、おくものよろこんでもらいました。
五四 ふゆおくもの
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おくられ今日の第一番客なりさてゆふ申刻なゝつ頃よりして立代たちかはり入代り語りそめをなす淨瑠璃じやうるり數々かず/\門弟は今日をはれと見臺に向ひて大汗おほあせ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
幸福こうふく下界げかいおくろうとおもって、いっしょうけんめいに黄金色こがねいろかがやすなかわなかげていましたいもうとは、もうこれほどまでに幸福こうふくおくったことだから
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
これをかゆとしまた鰹節かつぶし煮出にだしてもちうれば大に裨益ひえきあればとて、即時そくじしもべせておくられたるなど、余は感泣かんきゅうくことあたわず、涕涙ているいしばしばうるおしたり。
同町内どうちやうない瀧君たきくんに、ひとたはらおくらうかな、……水上みなかみさんはおほきをして、二七にしち縁日えんにち金魚藻きんぎよもさがしてく。……
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
別に臨みて、フラア・マルチノは手を我頭上に加へ、晩餐式施行法(モオドオ、ヂ、セルヰレ、ラ、サンクタ、メツサア)と題したる、繪入の小册子をおくりぬ。
そしてもういつけなくなったときひばりはあのみじかいわかれの歌をおくったのだろうと思います。
おきなぐさ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
○一条院の御時正暦四年五月廿一日 菅神に正一位左□臣をおくらる。(菅神百年御忌にあたる。)
こうなると、ひそかに虎視眈々こしたんたんとしていた徳川家康とくがわいえやすも、いきおいかれのまえに意地いじッぱってはいられないので、石川数正いしかわかずまさ戦捷せんしょうの使者に立てておくりものをしてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
良兼は筑波山につたから羽鳥を焼払ひ、戦書をおくつて是非の一戦をげようとしたが、良兼は陣を堅くして戦は無かつたので、将門は復讐的に散〻さん/″\敵地を荒して帰つた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
やがて長藤君が秋山君名義でたくわえた貯金通帳をおくれば、秋山君は救ったものが救われるとはこのことだと感激の涙にむせびながら、その通帳を更生記念として発奮を誓ったが
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
きんさかずききんのたちばな、にしきたんきぬ五十ぴき、これはおとうさんへのおくものでした。それからぎん長柄ながえぎんのなし、綾織物あやおりものそでが三十かさね、これはおかあさんへのおくものでした。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
中學時分につた寫眞器しやしんきも、そのすこし以前或る寫眞好しやしんずきの友たちおくつてしまつたので、それ以來しばらわたしの手もとには寫眞器しやしんきかげがなくなつてしまつたがそのよく年のこと、わたし偶然ぐうぜんある人から
そして二人は交る/″\鉛筆の下書きをするのに坐つた。やがてヂョウジアァナは自分のアルバムを持ち出した。私は水彩畫を一枚おくらうと彼女に約束した。それが忽ち彼女を上機嫌にした。
この間に、メンデルスゾーンと交遊をあらたにし、ショパンのためには、生涯の大知己とも言うべきシューマンに逢い、「諸君、帽子をとり給え、天才ですぞ」という有名な言葉をおくられたりした。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
たつしける萬事利發りはつ取廻とりまはしゆゑ重役衆ぢうやくしうには其樣にはからひ下役人へは賄賂わいろおく萬事ばんじ拔目ぬけめなきゆゑ上下こぞつて吉兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)