むし)” の例文
旧字:
ひかりは、ほのかにあしもとをあたためて、くさのうちには、まだのこったむしが、ほそこえで、しかし、ほがらかにうたをうたっていました。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いままでながもとしきりにいていたむしが、えがちにほそったのは、雨戸あまどからひかりに、おのずとおびえてしまったに相違そういない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この壁柱かべはしら星座せいざそびえ、白雲はくうんまたがり、藍水らんすゐひたつて、つゆしづくちりばめ、下草したくさむぐらおのづから、はなきんとりむし浮彫うきぼりしたるせんく。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ると石のまわりには、二三ちょうあいだろくろくくさえてはいませんでした。そして小鳥ことりむしなん千となくかさなりってんでいました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
『おまへ亞尼アンニーとかつたねえ、なんようかね。』とわたくししづかにふた。老女らうぢよむしのやうなこゑで『賓人まれびとよ。』と暫時しばしわたくしかほながめてつたが
行ってみると、病人はむしいきで、死神は、あたますれすれに立っており、いまわりでは、ごけらいたちが声をあげて泣き悲しんでいます。
自分がいやしい罪人つみびとだったからといって、まるでむしけらみたいなものだったからといって、自分じぶんの身がつくづくいやになった時のもある。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
またようむしの事語りていわく、博士なにがしは或るとき見に来しが何のしいだしたることもなかりき、かかることはところの医こそく知りたれ。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
乾酪ちいずなかで、いくらむしうごいても、乾酪ちいずもとの位置にあるあひだは、気が付かないと同じ事で、代助も此微震びしんには殆んど自覚を有してゐなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
生意気なまいき鉦叩かねたたむしめ! ぞうさはねえ、その女も一しょにつまみだして、二本松の枝へさかづるしにつるしてぶんなぐれ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれども、諭吉ゆきち勉強べんきょうむしになったわけではありません。おおいに勉強べんきょうするとともに、かなりないたずらもやってのけ、おおいにあそんだのです。
さて、ひとりっ子というものは、わがままっ子のきかんぼうがそだつものですが、林太郎はどっちかといえば、いくじなしのむし子にそだちました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
それだけじゃありません、いろんなかぶとむしにもわたしは気をとられていました。わたしは採集さいしゅうにかかりましたが、なかなかきれいなのがいました。
船長ノルマンは、むしをかみつぶしたようなかおをして、聞いていた。そして竹見の言葉がおわっても、そのまま無言で、竹見をにらみつけていた。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
百舌もずにはわらはれる、ひはにもわらはれる、そのうちに雄鷄おんどりしくなりましたが、はやしなかにあるむしはみんなほかとりはやひろはれてしまひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さやけきつきかぜのおとひて、むしたえ/″\にものがなしき上野うへのりてよりまだ一てうもやう/\とおもふに、いかにしたるか車夫しやふはぴつたりとかぢめて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれはそのきゃくがきらいだった。廊下ろうかでばったり顔をあわせるようなことがあっても、わざとよこをむいて、むしかないことをあからさまにしめしたりした。
世話になろうなどという図々しいむしのよい下心は、まったく持ち合わせてはいないけれども、この親は、その家庭において、常に子供たちのご機嫌きげんばかり伺っている。
桜桃 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ややともすれば強請ゆすりがましい凄味すごみな態度を示すに引き比べて昔ながらの脚半きゃはん草鞋わらじ菅笠すげがさをかぶり孫太郎虫まごたろうむし水蝋いぼたむし箱根山はこねやま山椒さんしょうお、または越中富山えっちゅうとやま千金丹せんきんたんと呼ぶ声。
同時に、磯五のことが、あたまにきた。そして、若松屋惣七や、この、刀をひいている変わったおさむらいにくらべて、磯五は、むしけらのなかの虫けらであると思った。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
元気の無ささう顔色かほいろをして草履を引きずり乍ら帰つて来た貢さんは、裏口うらぐちはいつて、むしつた、踏むとみしみしと云ふ板ので、雑巾ざふきんしぼつて土埃つちぼこりの着いた足を拭いた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
てんびんぼうかなんかで、なぐころしにでもしなきや、はらむしがいえねえんですからね——。が、まア、ころされやがつて、天罰てんばつというところでしよう。ありがてえとおもいます。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
卑しいへつらむしの仲間が温い寝床と食うものを与えられて、彼のような奴が棄てられたということは人間の不名誉でさえある。しかも彼は落ちぶれても決して卑屈にならない。
黒猫 (新字新仮名) / 島木健作(著)
爺さんの曰く、うっちゃっておけやい、若ェ者だもの、ちったむしもつくべいや。此は此爺さんのズボラ哲学である。差別派からは感心は出来ぬが、中に大なる信仰と真理がある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
近く封建時代の例を引きますと、武士というものは大そうに威張っておりまして、町人・百姓をむしけら同様に取扱っておりましたが、その武士はもと何かと申すと、所謂さむらいである。
我国の俚言りげんてふをべつたうといふ、渋海川のほとりにてはさかべつたうといふ。蝶はもろ/\むし羽化うくわする所也、大なるを蝶といひ、小なるをといふ。(本艸)其種類そのしゆるゐはなはだおほし。
セーヌの河波かわなみの上かわが、しらちゃけて来る。風が、うすら冷たくそのうえを上走り始める。中の島の岸杭がちょっとむしばんだようにくさったところへ渡り鳥のふんらしいまだらがぽっつり光る。
巴里の秋 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
見せられけるに長庵は一みるより死骸に取付扨は十兵衞にてありけるかかゝる事の有るべきとむしが知らせし物にやしきりに夜明よあけて出立致させたく我が止めしをも聞入きゝいれず出立なしたる夫故それゆゑに斯る憂目うきめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
このにしたぬしくあらばにはむしとりにもわれはなりなむ (同・三四八)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
学校がつこう卒業そつげふ証書しようしよが二まいや三まいつたとてはなたしにもならねばたかかべ腰張こしばり屏風びやうぶ下張したばりせきやまにて、偶々たま/\荷厄介にやつかいにして箪笥たんすしまへば縦令たとへばむしはるゝともたねにはすこしもならず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
随分ずいぶんふるむかしのこと、ヱヴェレストのはるかふもとに、ラランとよぶ一からすんでゐた。ものすごいほどくらい、こんもりとしげつた密林みつりんおくで、毎日まいにちうたつてる小鳥ことりなかのいゝむしなどをころしてべてゐた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
あれ、あんなむしひまわつてゐます。
はたとむしいきをひそめぬ。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つちむし
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
一人ひとりが、くるみのへのぼって、ハーモニカをふきました。一人ひとりは、くりのしたで、たけざおをもって、かぶとむしをとっていました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これぞくむしらせとでもいふものであらうかと、のちおもあたつたが、此時このときはたゞ離別りべつじやうさこそとおもるばかりで、わたくし打點頭うちうなづ
しか今度こんどのは半分はんぶん引切ひききつてあるどうからばかりのむしぢや、切口きりくちあをみびてそれ黄色きいろしるながれてぴくぴくとうごいたわ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とおもうわたしになりました。それできつつきはいつも木のえだからえだわたあるいて、ひもじそうにむしをさがしているのです。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
途端にその背後で例のエヘンという咳払いが聞えたので、署長は急にむしを噛みつぶしたような顔になった。
人間灰 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むしけらのように背を屈めた。その肩を打って、達者で暮し給えと云うと、郡兵衛はその顔を上げ得ないように
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
れともそのやうな奧樣おくさまあつかひむしかで矢張やは傳法肌でんぽうはだの三じやくおびるかなとへば、どうで其處そこらがおちでござりましよ、此方こちらおもふやうなは先樣さきさまいやなり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かつえた雄鷄おんどり一生懸命いつしやうけんめいさがしはじめました。ほかとりひろはれないうちに、自分じぶんむしつけるためには、いやでもおうでもばなければりませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
次第しだいえる三日月みかづきひかりに、あたりはようや朽葉色くちばいろやみさそって、くさむしのみがしげかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ただむしがすかないからって、あんなにかねばなれのいいおきゃくさんをことわる人があるものですか。
けれども、これ不安ふあんこれからさき何度なんどでも、色々いろ/\程度ていどおいて、かへさなければまないやうむしらせが何處どこかにあつた。それをかへさせるのはてんことであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だつたいるゐ、人をさすとあればはちるゐ也、雪中のむしじよしたがふべし、しかれば雪蛆せつじよは雪中の蛆蠅うじばへ也。木火土金水もくくわどごんすゐの五行中皆虫をしやうず、木の虫土の虫水の虫はつねに見る所めづらしからず。
命をしても此帷幕の隙見すきみをす可く努力せずに居られぬ人をわらうは吾儕われらどん高慢こうまんであろうが、同じ生類しょうるいの進むにも、鳥の道、魚の道、むしの道、またけものの道もあることを忘れてはならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかるにお三ばゝ母子おやこ若君わかぎみ誕生ありしにはじめて安堵あんどの思ひをなせしが老少らうせう不定ふぢやうの世のならひ喜こぶ甲斐かひもあらかなしや誕生たんじやうの若君は其夜そのよの七ツ時頃むしの氣にてつひむなしくなり給ひぬはゝ澤の井斯と聞より力を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
異形いぎやうむしのわざはひか。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
さびしいむし
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)