)” の例文
自体じたい蛾次郎がじろうの腕なり頭なりではの勝ちすぎたこの大鷲おおわしが、はたしてかれの自由になるかどうか、ここ、おもしろい見ものである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しなはやしいくつもぎて自分じぶんむらいそいだが、つかれもしたけれどものういやうな心持こゝろもちがして幾度いくたび路傍みちばたおろしてはやすみつゝたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのとき、ふと、かれは、いましもおもくるまけて、みせまえとおって停車場ていしゃじょうへゆきつつある、おとうと姿すがたみとめたのでありました。
くわの怒った話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けてたびをしてある飴屋あめやさんは、何處どことほいところからかついでかたけて、ふえき/\出掛でかけました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
とゞめの一刀を刺貫さしとほもろい奴だと重四郎は彼の荷物にもつ斷落きりおとしてうちより四五百兩の金子を奪ひ取つゝ其儘そのまゝ此所を悠然いう/\と立去りやが旅支度たびじたく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
織屋おりや御前おまへさうして脊負しよつて、そとて、時分じぶんどきになつたら、矢張やつぱ御膳ごぜんべるんだらうね」と細君さいくんいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
藏庫くら河岸かしそろつて、揚下あげおろしはふねぐに取引とりひきがむから、店口みせぐちはしもたおなこと煙草盆たばこぼんにほこりもかぬ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼らは幾世紀の批評を経て、無傷のままわれわれの時代に至り、今もなお光栄をのうているというだけで、われわれは彼らに敬意を表している。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
を背負って、江戸中の良家をあきなって廻るので、名残りなくにも焼け、弁口べんも爽かで、お琴と因縁をつけるにしては、その年齢からして違います。
轎夫きょうふが分からぬことをいって賃銭ちんせん強請ねだったり、この旦那だんなは重いとか、が多いとか、かごの中で動いて困るとか、雨が降るとか、橋がないから御免ごめんとか
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
その光栄をなった人々の中には、政治家や軍人ばかりでなく、文学者や科学者などもたくさんにあります。
ニュートン (新字新仮名) / 石原純(著)
そこへ小鳥ことりがかえってきて、おもたいをおろすのです。そこで、みんなはおぜんについて、やがてごはんがすみますと、あしたの朝までぐっすりねむります。
奴らの信頼をのうて、数百の頭に立っているのだ……あンな恩知らずの、義理知らずの、奴らに恐れて、うちをたたんで逃げ出すなンて、そんな侮辱された話があるものか。
(新字新仮名) / 徳永直(著)
何程なんぼでも可えだ。明日アけえだで、行ぐどきア空馬車つぱつて行ぐのだもの。』
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あきつらし九ぐわつすゑにはかにかぜにしむといふあさ神田かんだ買出かひだしのまでかつぎれるとそのまゝ、發熱ほつねつにつゞいて骨病ほねやみのいでしやら、三つきごしの今日けふまであきなひはさらなること
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あんたの阿母おかんの來やはつた時は、えらいこツちやツた。七でなア。……今でも納戸なんどにおまツしやろ、あの箪笥や長持は皆阿母おかんが持つて來やはつたんや。あの長押なげしに掛けたある薙刀なぎなたも。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
もうあまの心に成つて居ますと云つて泣き伏したが、もう朗然和上と夫婦との間に縁談がきまつて居つたあとだから、親の心に従つてつひに其年の十一月、娘は十五荷ので岡崎御坊へ嫁入よめいつて来た。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
それなら一ことんなでかへらうとて、發掘はつくつ中止ちうしし、天幕てんとたゝみ、飮餘のみあましたる麥酒ビールびんたづさへて、うら池邊ちへんき、其所そこにてまた小宴せうえんり、食物しよくもつのこりをいけうを投與とうよして、かるくし
蟠「なにを書入れる、馬鹿な、そんなことをしなくってもいのう蟠作」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うんと足を踏みしめると、天秤棒が遠慮会釈もなく肩を圧しつけ、五尺何寸其まゝ大地に釘づけの姿だ。思い切って蹌踉ひょろひょろとよろけ出す。十五六歩よろけると、息が詰まる様で、たまりかねてろす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
甘酒屋あまざけやぢゝがいつか木蔭こかげに赤くつたおろしてゐた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
されども、此の世の重きはいよいよ増さん
婢女はしためをとゝのふれば
おもひで (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
「おい! もう大がいにしておけ。あまりかせぎすぎると、こんどは道中のやッかいになって、かまをかぶって歩くようなことになるぞ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
運転手うんてんしゅくるまからりて、荷物にもつろすてつだいをしました。このとき、しろあかのまじった羽根はねが、あいだからてきました。
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
前庭まへには植込うゑこみには、きりしまがほんのりとのこつて、をりから人通ひとどほりもなしに、眞日中まつぴなか忍返しのびがへしのしたに、金魚賣きんぎようりおろして、煙草たばこかしてやすんでゐた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
泰西の文明の圧迫あつぱくけて、其重したうなる、劇烈な生存競争場裏に立つひとで、しんによくひとために泣き得るものに、代助はいまかつ出逢であはなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とうさんのむらへも、たまには飴屋あめやさんがとほりました。たび飴屋あめやさんは、天平棒てんびんぼうでかついてむら石垣いしがきわきにおろして、面白おもしろをかしくふえきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
城彈三郎は惡い商人と結託けつたくし、手廣く(密貿易)の取引を始め、暴利をむさぼつて居ることが判りました。
あきなひ未だ東西も知らぬ土地なれども櫛笄簪くしかうがひ脊負せおひ歩行あるくに名におふ大都會なれば日本一のまづしき人もあればまたならびなき金滿家かねもちもありて大名も棒手振ぼうてぶり押並おしならんで歩行あるく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ここへあがってきてくれよ、おかみさん、そのがからになるぜ。」
片手かたてらぬをからげて、おなまちすみへとひそみぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
薬売くすりうりの少年しょうねんは、ろして、くすりにも、自分じぶんにもこんなやさしいおじいさんがあったらば、とおもわれるのでした。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まんちやんのはう振分ふりわけかたに、わらぢ穿ばきで、あめのやうななか上野うへのをさしてちてくと、揉返もみかへ群集ぐんしふ
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それなら大安心、これでわたくしのりたというわけ。ではみなさんごめんなさいまし、さようなら」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この過去くわこはされた二人ふたりは、廣島ひろしまつてもくるしんだ。福岡ふくをかつてもくるしんだ。東京とうきやうても、依然いぜんとしておもおさえつけられてゐた。佐伯さへきいへとはしたしい關係くわんけいむすべなくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
(密輸入)をあつかつた釜屋は、主人のとむらひが濟む間もなく、跡取の初太郎は番頭伊八と共にお奉行所に呼び出され、通三丁目の店と北新堀の住家は言ふ迄もなく、おびたゞしい家財を沒收の上
おじいさんが、ひとまとめにして、うえせておいたのが、そのままはしして、ついにとされたのであります。
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それともとむらはれずかばぬれいが、無言むごんうち供養くやうのぞむのであらうもれぬ。ひとりではなにしろおもい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「釜屋が(密輸入)を扱ふといふ噂が滿更嘘ぢやなかつたんだね」
織屋おりや何處どこつてもういふひなびた言葉ことば使つかつてとほしてゐるらしかつた。毎日まいにち馴染なじみのいへをぐる/\まはつてあるいてゐるうちには、脊中せなか段々だん/\かろくなつて、仕舞しまひこん風呂敷ふろしき眞田紐さなだひもだけのこる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「きょうのは、ちとうし無理むりかもしれないが、まあけるか、かせてみよう。」と、おとこは、こころなかおもったのでした。
ある男と牛の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二三尺にさんじやく今度こんどは——荒庭あらには飛石とびいしのやうに、つゝんだまゝのがごろ/\してる。奧座敷おくざしき侵入しんにふした。——これおもふと、いつもの天井てんじやう荒𢌞あれまはるのなどは、もののかずではない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
若者わかものたちは、たくさんなふねあいだをこぎまわっていますと、このみなとげるために小舟こぶねをおろしているふねもありました。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
尾籠びろうながら、わたしはハタと小用こようこまつた。辻便所つじべんじよなんにもない。家内かない才覺さいかくして、避難場ひなんばちかい、四谷よつや髮結かみゆひさんのもとをたよつて、ひとけ、けつゝ辿たどつてく。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
毎日まいにちって、まちたりはいったりするものが、そんなものにれっこない。それに、ゆきれば、くるまなど、とおりたくても、とおれっこない。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
眞夏まなつ日盛ひざかりの炎天えんてんを、門天心太もんてんこゝろぷとこゑきはめてよし。しづかにして、あはれに、可懷なつかし。すゞしく、まつ青葉あをば天秤てんびんにかけてになふ。いゝこゑにて、ながいてしづかきたる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あにはいつもならわけのないことだとおもいました。しかし、今日きょう特別とくべつおもをつけてきたので、このうえ人間にんげんせるということは難儀なんぎでした。
村の兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
横町よこちやうみち兩側りやうがはは、ひとと、兩側りやうがは二列ふたならびひとのたゝずまひである。わたしたちより、もつとちかいのがさきんじて町内ちやうない避難ひなんしたので、……みな茫然ばうぜんとしてる。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おじいさんは、よくはたらきました。みんなのあいだにまじって、いっしょになっておもはこべば、またかついだりしました。
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)