清水しみづ)” の例文
静かな山のかげの、こけのついた石を伝つて流れる清水しみづのやうに、わたしは澄んで音も立てずに暮してゐます、といふ意味である。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
そこでたうげはうから清水しみづいて、それをめる塲所ばしよつくつてあつたのです。なんといふ清水しみづながとひとほつて、どん/\ながれてましたらう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
清水しみづ清水しやうづ。——かつら清水しやうづ手拭てぬぐひひろた、とうたふ。山中やまなか湯女ゆな後朝きぬ/″\なまめかし。清水しやうづまできやくおくりたるもののよし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
魚沼郡うをぬまこほり清水しみづ村のおくに山あり、高さ一里あまり、周囲めぐりも一里あまり也。山中すべて大小の破隙われめあるを以て山の名とす。
四人よつたりは此関係で約二年やくにねん足らずごした。すると菅沼すがぬまの卒業するとしはる菅沼すがぬまはゝと云ふのが、田舎いなかからあそびにて、しばらく清水しみづ町にとまつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「特にことわつて置くが、自分は清水しみづお鳥とは手が切れたつもりだ。その點は、もう、心配するに及ばない。」
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
たん以上いじやうかひつてはこしてある。其跡そのあとからは清水しみづ湧出ゆうしゆつして、たゞちにほどひくくなつてる。此所こゝ貝塚かひづかがあらうとは、今日けふまでらなかつた。
弓弭ゆはづ清水しみづむすんで、弓かけ松の下に立つて眺める。西は重疊ちようでふたる磐城いはきの山に雲霧白く渦まいて流れて居る。東は太平洋、雲間漏る夕日の鈍い光を浮べて唯とろりとして居る。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
縫止ぬひとめのはせ返りし菅笠すげがさと錢はわづか百廿四文ばかりの身上にて不※ふと立出たちいで江戸へ行んとせしが又甲斐國へ赴かんと籠坂峠かごさかたうげまで到りしが頃は六月の大暑ゆゑえのきかげ立寄たちより清水しみづむすびて顏のあせを流し足を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
少年せうねんにまで寢太郎ねたらうられたかと、わたくしいそ清水しみづかほきよめ、兵曹へいそう案内あんないしたがつて用意ようゐ一室ひとまると、食卓しよくたく一端いつたんには、櫻木大佐さくらぎたいさは二三の重立おもだつた水兵すいへい相手あひてに、談話はなしふけつてつたが
おほよそ此の国の古語ふることに、一一二かづら一一三だれ一一四珠衣たまぎぬたぐひは、かたちをほめ清きをむることばなるから、清水しみづをも玉水玉の井玉河ともほむるなり。毒ある流れをなど一一五玉てふことばかうむらしめん。
露伴は浅間山麓、小諸市外の清水しみづといふところに山荘を持つてゐて、清水の里の泉を天下第一の名水と云ひこれを味ふために毎夏この山荘に来ることを楽しみにしてゐると云つてゐたと聞いてゐる。
飲料のはなし (新字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
より池に落つる清水しみづの音にしてひとところただにうち凹めつつ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
行くととせきとめがたき涙をや絶えぬ清水しみづと人は見るらん
源氏物語:16 関屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
深く人類に根ざしてゐるこの地下層の清水しみづ
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
かぐ清水しみづ』は水錆みさびてしふる御寺みてら
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
山蔭の清水しみづのやうに忍耐ぶかく
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
そこを流るゝ清水しみづさへ
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
ちしもの此文このふみにはなん文言もんごんどういふふうきてるにや表書おもてがきの常盤木ときわぎのきみまゐるとは無情つれなきひとへといふこと岩間いはま清水しみづ心細こゝろぼそげにはたまへどさても/\御手おてのうるはしさお姿すがたは申すもさらなり御心おこゝろだてとひお學問がくもんどころなき御方おかたさまにおもはれてやとはよもやおほせられまじ深山育みやまそだちのとしてくらものになるこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にいさんと貴方あなた清水しみづ町にゐた時分の事を思ひさうと思つて、成るべく沢山買つてました」と代助が云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ともすると、ちよろ/\、ちよろ/\とくさ清水しみづくやうだから、豆府とうふしたへ、あたまから昆布こんぶかぶせる。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天秤棒てんびんぼう兩方りやうはうかた手桶てをけをかついだ近所きんじよ女達をんなたちがそこへ水汲みづくみあつまつてます。みづ不自由ふじいうなところにうまれたとうさんは特別とくべつにその清水しみづのあるところをたのしおもひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
此ひゞきにやありけん(里言につらゝをかなこほりといふ、たるひとは古言にもいふ)本堂につもりたる雪の片屋根磊々ぐら/\となだれおち、土蔵どざうのほとりに清水しみづがゝりの池ありしに
品川しながは住居じうきよからとほくもあらぬきりむら其所そこ氷川神社ひがはじんじや境内けいだいに、たきぶも如何いかゞであるが、一にちしよけるにてきして靜地せいちに、清水しみづ人造瀧じんざうたきかゝつてるので
住みれし人はかへりてたどれども清水しみづぞ宿の主人あるじがほなる
源氏物語:18 松風 (新字新仮名) / 紫式部(著)
咽頭のどが乾くと、岩の下の清水しみづすくつて飲んだ。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
それだけ愛の清水しみづが涌かねばならない
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
清水しみづさす石油せきゆむせび
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
此瀧このたきぎて小一町こいつちやうみちのほとり、やまいは清水しみづしたゝり、三たい地藏尊ぢざうそん安置あんちして、幽徑いうけい磽确げうかくたり。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たのしい御休處おんやすみどころとうさんが祖母おばあさんからもらつて金米糖こんぺいたうなぞをちひさなかばんから取出とりだすのも、その御休處おんやすみどころでした。塲處ばしよによりましては、つめた清水しみづとひをつたつて休茶屋やすみぢややのすぐわきながれてます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
涙のみせきとめがたき清水しみづにて行き逢ふ道は早く絶えにき
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
所々しよしよにきらきらと清水しみづが涌く
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
みどりいよ/\こまやかにして、夏木立なつこだちふかところやまいうさとしづかに、しかいまさかりをんな白百合しらゆりはなはだへみつあらへば、清水しみづかみたけながく、眞珠しんじゆながれしづくして、小鮎こあゆかんざし宵月よひづきかげはしる。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
逢坂あふさかは関の清水しみづも恋人のあつき涙もな
源氏物語:16 関屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
やさしさよ、松蔭まつかげ清水しみづやなぎおとしづくこゑありて、旅人たびびとつゆわかてば、細瀧ほそだき心太ところてんたちまかれて、饂飩うどん蒟蒻こんにやくあざけるとき冷奴豆腐ひややつこたではじめてすゞしく、爪紅つまくれなゐなるかにむれ
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
就中なかんづく河間かかん王深わうしん居邸きよてい結構けつこう華麗くわれいしゆたるものにして、しか高陽王かうやうわうくわきそひ、文柏堂ぶんはくだう造營ざうえいす、さかんなること帝居ていきよ徽音殿きおんでん相齊あひひとし、清水しみづ玉轆轤ぎよくろくろき、黄金わうごんつるべるに
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
斷崖がけ清水しみづ龍女りうぢよべうあり。われは浦島うらしまか、ひめれいぞとしが、やがてんぬ。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
茶屋ちややあとの空地あきちると、ひとたけよりもたか八重葎やへむぐらして、すゑ白露しらつゆ清水しみづながれに、ほたるは、あみ眞蒼まつさをなみびせて、はら/\とがけしたの、うるしごとかげぶのであつた。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
弓杖ゆんづゑ炎天えんてんいはほいて、たまなす清水しみづをほとばしらせて、かわきあへぐ一ぐんすくつたとふのは、けだ名将めいしやうことだから、いま所謂いはゆる軍事衛生ぐんじゑいせい心得こゝろえて、悪水あくすゐきんじた反対はんたい意味いみ相違さうゐない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
う、かど酒屋さかやへだてられて、此處こゝからはえないが、やまのぼ坂下さかしたに、がけしぼ清水しみづがあつて、手桶てをけけて、眞桑まくは西瓜すゐくわなどをひや水茶屋みづぢややが二けんばかりあつた……それも十ねん一昔ひとむかしる。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
追善つゐぜんのあつた今夜こんやだし、墓參はかまゐりするみちだらう。まあ清水しみづで、」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)