とゞ)” の例文
磐梯山破裂ばんだいざんはれつあとにはおほきな蒸氣孔じようきこうのこし、火山作用かざんさよういまもなほさかんであるが、眉山まゆやま場合ばあひにはごう右樣みぎよう痕跡こんせきとゞめなかつたのである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なんゆゑともらねども正太しようたあきれてひすがりそでとゞめてはあやしがるに、美登利みどりかほのみ打赤うちあかめて、なんでもい、とこゑ理由わけあり。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
山三郎は石塔の際へ馬をとゞめて居る。圖書は山三郎はまだきたらんと心得てぱっ/\と土煙を立って参りますと、わきから声を掛けまして
わが伏姫を論ぜんと企てしは、その純潔を観察するにとゞめんとせしなるに、図らずも馬琴の哲学に入りて因果論などをほのめかすに至りぬ。
とゞめの一刀を刺貫さしとほもろい奴だと重四郎は彼の荷物にもつ斷落きりおとしてうちより四五百兩の金子を奪ひ取つゝ其儘そのまゝ此所を悠然いう/\と立去りやが旅支度たびじたく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
更にとゞめまで刺されてをり、尚ほ變つて居るのは、その死骸の側に、大鋸おほのこぎりが一梃、血まで塗つて置いてあることだつたのです。
『あゝ、ゆめではありますまいか、これゆめでなかつたら、どんなにうれしいんでせう。』と、とゞかねたる喜悦よろこびなみだをソツと紅絹くれない手巾ハンカチーフ押拭おしぬぐふ。
色も褪せボロボロになって原形をとゞめない着衣の一部の切れ地から、立派に元の状態が推測出来る科学の力は驚く外はない。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
されど汝の睡りの時く過ぐるがゆゑに、あたかも縫物師ぬひものしのその織物きれあはせて衣を造る如く、我等こゝにことばとゞめて 一三九—一四一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
若し我が講壇をして単に教師が其理想、其議論を語るの所たるにとゞまらしめば、教会は空論の教会となり、而して信徒は空論の人となるべき也。
信仰個条なかるべからず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
いろ/\な大人のることを見たり聞いたりしても、其頃の私はすぐにそれを見倣みならはうとはしないで、唯自分で自分に知れる程度にとゞめて置いた。
(新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
両岸に触れたり、泗流しりうとゞむる所となつたりしてはいけない。又、停滞して腐敗してはいけない。我々は中流を静に流るゝ木片でなければならない。
谷合の碧い空 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
実際じつさい真面目しんめんもく生涯せうがい真味しんみあぢはひし人のみがたがひともはたらき得る人なり 宗教しふけうを以て茶話席ちやわせき活題くわつだいとなすにとゞまるものは言語的げんごてき捺印的なついんてき一致いつちはかれよ
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
流れ入る客はしばらくもとゞまらず。夫妻連れの洋人、赤套レツドコートの英国士官、丸髷まるまげ束髪そくはつ御同伴の燕尾服、勲章まばゆき陸海軍武官、商人顔あり、議員づらあり。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
かのうづたかめるくちなはしかばねも、彼等かれらまさらむとするにさいしては、あな穿うがちてこと/″\うづむるなり。さても清風せいふうきて不淨ふじやうはらへば、山野さんや一點いつてん妖氛えうふんをもとゞめず。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
指頭画は下らぬ芸で、大雅堂なども一しきりこれに凝つた時代があつたが、友達に戒められて思ひとゞまつてしまつた。
しかきうごとあとをぽつ/\ととゞめたのみで衣物きもの心部しんぶふかまなかつた。ほこりかれえてはしつた。與吉よきち火傷やけど疼痛とうつううつたへてひとりかなしくいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
んだそらつきながらながめる、ひといきれからのがれた郊外こうがいたのしみは、こゝにとゞめをす……それがられない。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
又た事実に於ても此侠客気質の幾部分は、形骸を土木の労働者、鉱山の人夫などにとゞめて暫らくは存在しやう。
侠客の種類 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
皆さん、ちよつと静かな窓の外を御覧なさい、何と麗しく天心にとゞまつた秋の月は輝いて居るではありませんか。私は今ペンを置いてその通りにしてゐます。
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
瑠璃子の言葉に、闘牛が、とゞめの一撃を受けたやうに、青年の細長い身体が、タヂ/\と後へよろめいた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
かん金解禁きんかいきん計畫けいくわくをしたのは一さいとゞまらなかつたが、種々しゆ/″\事情じじやうめに實現じつげん出來できなかつた。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
舟は暫時しばらく大船小船六七さうの間を縫ふて進んで居たが間もなく廣々とした沖合に出た。月は益々冴えて秋の夜かと思はれるばかり、女は漕手こぐてとゞめて僕の傍に坐つた。
少年の悲哀 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
行列ぎやうれつあいちやんと相對峙あひたいぢするまですゝんでときに、彼等かれらは一せいとゞまつてあいちやんを打眺うちながめました、女王樣ぢよわうさま嚴肅げんしゆくに、『こは何者なにものぞ?』と心臟ハート軍人ネーブにまでまをされました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ロミオ あの石垣いしがきは、こひかるつばさえた。如何いか鐵壁てっぺきこひさへぎることは出來できぬ。こひほっすれば如何樣どのやうことをもあへてするもの。そもじうち人達ひとたちとてもわしとゞむるちからたぬ。
蒔絵まきゑを造り、陶器を作り、又刀剣をもきたへた。私は此人が政治の上に発揮することの出来なかつた精力を、芸術の方面に傾注したのを面白く思ふ。面白いのはこゝにとゞまらない。
椙原品 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
雨水うすいとゞめためておく餘裕よゆうがなくなり、つただけの雨水うすいいちどにながくだつて、やまにあるつちすな河底かはぞこながうづめるために、みづながれかたがきゆうかはつて、あふれひろがるからです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
此日このひ此地このち此有様このありさまなが描写べうしやとゞまりて、後年こうねんいかなる大業たいげふ種子たねとやならん、つどへる人を見て一種いつしゆたのもしき心地こゝちおこりたり、此一行このいつかう此後こののち消息せうそく社員しやゐん横川氏よこかはしが通信にくはしければ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
そのうち主人が目的地に達したやうに足をとゞめたので、老人が決心して問うた。
こんな天気のいゝ時だとおもおこそろは、小生せうせいのいさゝかたぬことあれば、いつも綾瀬あやせ土手どてまゐりて、ける草の上にはて寝転ねころびながら、青きは動かず白きはとゞまらぬ雲をながめて
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
相手の青年畫家は、フランスからこの町へ來て、こゝの女のしめりつぽい碧い目と、琥珀色の絹のやうなふさ/\しい髮と、純白な裾長い着物を着た、典雅な姿を寫し取るためにとゞまつてゐた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
みづからの解放かいほうに正しいみちえらび、ける銃架じうかたることとゞめるであらう
乃ち令を諸軍に傳へて、攻撃をとゞむ。
からははひにあともとゞめずけぶりはそら棚引たなびゆるを、うれしやわが執着しふちやくのこらざりけるよと打眺うちながむれば、つきやもりくるのきばにかぜのおときよし。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
阿蘇あそ火山灰かざんばひはこの地方ちほうで『よな』ととなへられてゐるが、被害ひがいたん阿蘇あそのみにとゞまらずして、大分縣おほいたけんにまでもおよぶことがある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
後藤はとゞ否々いや/\打擲ちやうちやくなしてもし打處が惡く殺しもなさば死人に口無却つて面倒めんだうなり先々拙者の連こそ幸ひ某しにまかすべし面白き計らひあり命を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「佛樣はまだ母屋にあるから、あとで見てくれ。前から三太刀たちも斬り付けて、喉笛を刺したのがとゞめになつて居る。いやもうひどいやり方で」
年をったお祖父じいさんが先に立って仇討などという事を勧めちゃアいかん、それは時節が違うから、まア私の云う事をいて思いとゞまんなさい
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鑑定書はいずれも微に入り細を穿ち、頗る浩瀚こうかんなものであるが、こゝには結論を挙げるだけにとゞめて置こう。布地に関する鑑定は次の如くである。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
さりながらおうかげをもとゞめざるときだに、いとふべき蛇喰へびくひおもいださしめて、折角せつかく愉快ゆくわい打消うちけされ、掃愁さうしうさけむるは、各自かくじともなをさなもの唱歌しやうかなり。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ベアトリーチェは上方うへを、我は彼を見き、しかして矢のつるを離れ、飛び、とゞまるばかりの間に 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
何處どここずゑしろものとゞめないでつかれたやうにぬれた。ゆきこと/″\つちおちついてしまつた。そのおちついたゆきげて何處どこ屋根やねでもしろおほきなかたまりのやうにえた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
社会は時辰機とけいの如し、一部分の破損は以て全躰の破損となり、遂には運行をとゞむるに至るべし。之を以ていづれの邦国にも孰れの社会にも必らず何等かの倫理あるなり。
実行的道徳 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
怖ろしい注意力に怯えながら、吐き、逼ひ、蠢き、転げなければならなかつた。全ての神経を一本の槍に化して、吾が手で吾が胸にとゞめを射さなければならなかつた。
西瓜喰ふ人 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
それがある事情じじやうめに明言めいげんすること出來できず、さりとて主家しゆか大難だいなんらぬかほ打※うちすぎるにもしのびで、かくは縁起話えんぎばなし托言かこつけて、その出發しゆつぱつとゞめたのかもれぬ。とかたつた。
あのやうな喞筒の練習! 自分は何だか不思議なやうな気がて仕方が無かつたが、これはたゞ何の意味も無い練習にとゞまるのであらうと解釈して、其儘其村へと入つて行つた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
彼女はとゞまつて、さうして忍ぶべく決心した。彼女の苦しい辛い境遇に堪へようと決心した。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
カピューレット長者ちゃうじゃ寢衣ねまきのまゝにて、そのつまカピューレット夫人ふじんはそれをとゞめつゝ、る。
あいちやんはまつた其動物そのどうぶつ容子ようすこのみませんでしたが、それでもだあの野蠻やばん女王樣ぢよわうさまあといてくよりは、それとともとゞまつてはういく安全あんぜんだかれないとおもひました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
いつそ幸子女史が音楽の先生なぞめてしまつて、京都へ来て世話女房になるか、それとも安藤氏が語学の教師を思ひとゞまつて、東京へ帰つて、嬰児あかんぼもりでもするか、二つに一つ