もん)” の例文
「やあ、きれいだな。あおあかやでぬったごもんがあって、龍宮りゅうぐうってこんなきれいなところかなあ。」と、次郎じろうさんは感心かんしんしていました。
きれいなきれいな町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
元気げんきこえをのこして、ていきました。おじいさんとおばあさんは、もんそとって、いつまでも、いつまでも見送みおくっていました。
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
つい、そのころもんて——あき夕暮ゆふぐれである……何心なにごころもなく町通まちどほりをながめてつと、箒目はゝきめつたまちに、ふと前後あとさき人足ひとあし途絶とだえた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし、よるになると、こっそりとはじめて、あさしろもんがあくまでうつしました。かおははれぼったくなり、病人びょうにんのようにみえました。
が、うちもんをはひらないまへに、かれはからつぽになつた財布さいふなかつま視線しせんおもうかべながら、その出來心できごころすこ後悔こうくわいしかけてゐた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しかし、之をいてゐる中に、下人の心には、ある勇氣ゆうきが生まれて來た。それは、さつき、もんしたでこの男に缺けてゐた勇氣である。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
で、わたくしおもってそのもんをくぐってきましたが、門内もんない見事みごと石畳いしだたみの舗道ほどうになってり、あたりにちりひとちてりませぬ。
おしんの父親は、茂右衞門のもんの扉を、足で力任せに蹴る。ドーン、ドーンといふ重い音が、森の中に反響する。そして怒鳴る。
旱天実景 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
足の向くがまゝ芝口しばぐちいで候に付き、堀端ほりばたづたひにとらもんより溜池ためいけへさし掛り候時は、秋の日もたっぷりと暮れ果て、唯さへ寂しき片側道。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「健康診断を致しますから、八日正午、左記の病院にの状持参にておいで下さい。」とあって、とらもんの或る病院の名が書かれていた。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
『なるほど、これはひどいもんだ。わが家のほうが、まだ貧乏も小ぢんまりしている。……これでも、中に、人が住んでいるのかしら』
ぼくたちの学校がっこうもん鉄柵てつさくも、もうとっくに献納けんのうしたのだから、尼寺あまでらのごんごろがねだって、おくにのために献納けんのうしたっていいのだとおもっていた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
和蘭陀おらんだのかんてるくというところで建造された軍艦で、木造蒸気内車もくぞうじょうきうちぐるま、砲十二もん馬力ばりき百、二百十とんというすばらしいやつだ。
いへもん這入はいると、今度は門野かどのが、主人の留守を幸ひと、大きな声で琵琶歌をうたつてゐた。それでも代助の足音あしおといて、ぴたりとめた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
家財道具かざいだうぐもんそとはこばれたとき火勢くわせいすですべてのものちかづくことを許容ゆるさなかつた。いへかこんでひがしにもすぎ喬木けうぼくつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「なんだ。おれは這入らないぞ。己のもんの石段に位は己だつてゐても好い筈だ。」主人は頗る威厳を保つて言つた積りである。
薔薇 (新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
ふれぬ此度は相摸守殿には玄關げんくわん式臺迄しきだいまで御見送おんみおくり町奉行は下座敷へ罷出まかりい表門おもてもんを一文字に推開おしひらけば天一坊は悠然いうぜんと乘物のまゝもん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二人ふたり少年せうねんとまつたいへは、隣村りんそんにもだたる豪家がうかであつた。もんのわきにはおほきなひいらぎが、あをそらにそヽりたつてゐた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
もん震撼しんかん、九族は根絶やし。——果然、道中何かの計画があったとみえて、見る見るうちに豊後守の顔が青ざめました。
もんれいとほあけぱなしだからたゝ世話せわいらず、二人ふたりはずん/\とうちはひつてたが草木くさき縱横じゆうわうしげつてるのでラクダルの居所ゐどころ一寸ちよつとれなかつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
とうさんがおうちもんそとますとうま近所きんじよ馬方うまかたかれてとうさんのまへとほります。このうま夕方ゆふがたになると、きつとかへつてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かねが涙ながら來し頃は早暮て、七間間口に並びしてふちんもん並の附合つきあひも廣く、此處一町はやみの夜ならず金屏きんびやうの松盛ふる色を示前に支配人のたちつ居つ
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
此年このとし三のとりまでりてなかにちはつぶれしかど前後ぜんご上天氣じやうてんき大鳥神社おほとりじんじやにぎわひすさまじく、此處こゝかこつけに檢査塲けんさばもんよりみだ若人達わかうどたちいきほひとては
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もんの前にはの七兵衛老爺じじいが、銀杏いちょうの黄なる落葉をいていた。横手の材木置場には、焚火の煙が白く渦巻いて、のこぎりの音にまじる職人の笑い声も聞えた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたし今朝けさ急患きゅうかんがあつて往診おうしんかけました。ところがきにもかえりにも、老人ろうじんうちもんが五すんほどひらきかかつていたから、へんなことだとおもつたのです。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
五百いおは矢島優善やすよしに起請文を書かせた。そしてそれを持ってとらもんの金毘羅へ納めに往った。しかし起請文は納めずに、優善が行末ゆくすえの事を祈念して帰った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
この妻ある日かどまえを流るる小さき川に沿いてふきりに入りしに、よき物少なければ次第に谷奥深く登りたり。さてふと見れば立派なる黒きもんの家あり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もんいたと思ふとちひさな足音あしおとがして、いきなりお縁側えんがはのところで「さいなら!」などゝ言つてゐます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
その牛乳屋ぎゅうにゅうやの黒いもんをはいり、牛のにおいのするうすくらい台所だいどころの前に立って、ジョバンニは帽子ぼうしをぬいで
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
家主いへぬし女主人をんなあるじところ見知みしらぬひとさへすればれもになる。もん呼鈴よびりんたび惴々びく/\しては顫上ふるへあがる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひがしもんからはひつて、露店ろてん參詣人さんけいにんとの雜沓ざつたふするなかを、あふひもんまく威勢ゐせいせた八足門はつそくもんまへまでくと、むかうから群衆ぐんしうけて、たか武士ぶしがやつてた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
どこを、どうはしったか、自分でもわからないが、やがて、だれだか知らない人のもんのすきからもぐりこんで、そこにつんであったまきのかげに、そっとしゃがんだ。
叛乱はんらんに参加したのは、近衛歩兵このえほへい第三連隊・歩兵第一、第三連隊・市川野戦砲やせんほう第七連隊などの将兵の一部で、三宅坂みやけざか桜田門さくらだもんとらもん赤坂見附あかさかみつけの線の内側を占拠せんきょ
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
たとへば、平安京へいあんけう大内裡だいないりの十二もんごときで、その二三をぐればミブもん、ヤマもん、タケもんは、美福門みぶもん陽明門やまもん待賢門たけもんかれて、つひにビフクもん、ヨーメイもん
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
勿論もちろん此樣こん絶島ぜつたうことだから、けつして立派りつぱ建築たてものではない、けれどなり巨大おほき板家いたやで、もんには海軍かいぐんいへ筆太ふでぶとしるされ、ながき、不恰好ぶかくかうへや何個いくつならんでへるのは
それからざっと四半刻しはんとき(三十分)ばかり、いいかげんしびれのきれた頃くぐもんをギーと開けて
私の父は中島兼松なかじまかねまつといいました。その三代前は因州侯の藩中で中島重左じゅうざもんと名乗った男。
ナントおつ出来でかしたではござらぬか、此詩このし懐中くわいちうしたれば、もんたゝいておどろかしまをさんかとは思ひしが、夢中むちう感得かんとくなれば、何時いつ何処どこにても、またやらかすとわけにはかず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
博士は、テレビジョンの映幕スクリーンを見ながら、八もんの四十センチ砲の射撃を命じたのであった。
又同じ桜花の光景が 断崖きりぎしもんあり桜を霞這ひ天上天下てんじやうてんげ知り難きかな とも歌はれてゐる。
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
私はかぜを引きつゞけた。母が、「アツ」といつたまゝんでしまつた。すると、つまが母に代つてとこについた。私のほこつてゐたもんから登るはなの小路は、氷を買ひにはしみちとなつた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
山雀やまがらの曲芸やダークのあやつりが客を呼んでゐた奥山花屋敷の古風な木づくりのもん
異版 浅草灯籠 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
とらもんそとから電車に乗ったのだが、半ば無意識的に浅草公園へ来た。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
手間てましさに見舞みまいにもかねえしみッたれ野郎やろうだ、とそれこそくちをそろえてわるくいわれるなァ、加賀様かがさまもんよりもよくわかってるぜ。——つまらねえ理屈りくつァいわねえで、はや羽織はおりせねえかい。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
とらもん第一の美人として、うたわれたことのある勧業銀行の総裁吉村氏の令嬢が、その父に伴われて、その美しい姿を現わしたとき、勝平はまた思わず、自分の新妻と比べて見ずにはいられなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
其江戸の元日をきけ縉紳朱門しんしんしゆもんことはしらず、市中しちゆうは千もん千歳ちとせの松をかざり、すぐなる 御代みよの竹をたて、太平の七五三しめを引たるに、新年しんねん賀客れいしや麻上下のかたをつらねて往来ゆきゝするに万歳もうちまじりつ。
播磨はりまの国加古かこうまや丈部はせべもんといふ博士はかせあり。清貧せいひんあまなひて、友とするふみの外は、すべて調度の絮煩わづらはしきいとふ。老母あり。孟氏まうしみさをにゆづらず。常に紡績うみつむぎを事として左門がこころざしを助く。
たかむらにくらくこもれるふるでらのもんにうづくまり山時雨よく
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
ここのみ寺よりしたに見ゆる唐寺たうでらもんいらかも暮れゆかむとす
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
城のもん沙のあらしの吹くなかに目のみ光れる支那の哨兵せうへい