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無心
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むしん
ふりがな文庫
“
無心
(
むしん
)” の例文
こうして、しごとをする
間
(
あいだ
)
は、たがいに
口
(
くち
)
をきかなかったけれど、
自分
(
じぶん
)
をなぐさめるために、
無心
(
むしん
)
で
歌
(
うた
)
をうたうものもありました。
はたらく二少年
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
説
(
と
)
く
所
(
ところ
)
、
厚利
(
こうり
)
に
出
(
い
)
づる
者
(
もの
)
なるに、
之
(
これ
)
に
説
(
と
)
くに
名高
(
めいかう
)
を
以
(
もつ
)
てせば、
則
(
すなは
)
ち
無心
(
むしん
)
にして
事情
(
じじやう
)
に
遠
(
とほ
)
しとせられ、
必
(
かなら
)
ず
(六三)
收
(
をさ
)
められざらん。
国訳史記列伝:03 老荘申韓列伝第三
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
器に見られる美は
無心
(
むしん
)
の美である。美とは何か、何が美を産むか。どうして無学な工人たちに、かかる思索があったであろう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
無心
(
むしん
)
が
有心
(
ゆうしん
)
に変るまでにはある時がかかった。驚ろきの時、不可思議の時、疑いの時、それらを経過した
後
(
あと
)
で、彼女は始めて棒立になった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
明治十七八年
比
(
ごろ
)
のことであった。改進党の壮士
藤原登
(
ふじわらのぼる
)
は
芝
(
しば
)
の
愛宕下
(
あたごした
)
の下宿から早稲田の奥に住んでいる党の
領袖
(
りょうしゅう
)
の処へ金の
無心
(
むしん
)
に往っていた。
雑木林の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
糟谷
(
かすや
)
はこのあいだにも細君の目をそらして、これら
無心
(
むしん
)
の母子をぬすみ見たのである。そうしてさびしいはかない
苦痛
(
くつう
)
が、
胸
(
むね
)
にこみあげてくるのである。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
無意
(
むい
)
無心
(
むしん
)
なる
幼童
(
えうどう
)
は
天使
(
てんし
)
なりとかや。げにもさきに
童謠
(
どうえう
)
ありてより(
應
(
おう
)
)の
來
(
きた
)
るに
一月
(
ひとつき
)
を
措
(
お
)
かざりし。
然
(
しか
)
るに
今
(
いま
)
は
此歌
(
このうた
)
稀々
(
まれ/\
)
になりて、
更
(
さら
)
にまた
奇異
(
きい
)
なる
謠
(
うた
)
は
蛇くひ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
たゞ
多
(
おほ
)
く
子
(
こ
)
どもたちが、さういふ
歌
(
うた
)
を、
無心
(
むしん
)
で
謠
(
うた
)
ひ
擴
(
ひろ
)
げて
行
(
ゆ
)
くところから、あて
字
(
じ
)
をしたのでありませう。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
一生
(
いつしやう
)
を
箱入
(
はこい
)
りらしく
暮
(
く
)
らさせんとにや、さすれば
此歌
(
このうた
)
は
無心
(
むしん
)
に
書
(
か
)
きたるものにて
半文
(
はんもん
)
の
價値
(
ねうち
)
もあらず、
否
(
いな
)
この
優美
(
いうび
)
の
筆
(
ふで
)
のあとは
何
(
なん
)
としても
破廉耻
(
はれんち
)
の
人
(
ひと
)
にはあらじ
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
思ひ付
獨
(
ひと
)
り心の
中
(
うち
)
に
喜悦
(
よろこび
)
つゝ彼の畔倉重四郎は今藤澤宿にて
大津屋
(
おほつや
)
と云ふ
旅籠屋
(
はたごや
)
へ
入夫
(
にふふ
)
に
成
(
なり
)
改名して段右衞門と申す由を
聞
(
きゝ
)
し事あれば
先
(
まづ
)
彼の方へ
行
(
ゆき
)
て金を
無心
(
むしん
)
する時は
舊惡
(
きうあく
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
まだ
剖
(
わか
)
れない
巨
(
おお
)
きな
愛
(
あい
)
の
感情
(
かんじょう
)
です。すすきの花の
向
(
むか
)
い火や、きらめく
赤褐
(
せっかつ
)
の
樹立
(
こだち
)
のなかに、
鹿
(
しか
)
が
無心
(
むしん
)
に
遊
(
あそ
)
んでいます。ひとは自分と鹿との
区別
(
くべつ
)
を
忘
(
わす
)
れ、いっしょに
踊
(
おど
)
ろうとさえします。
『注文の多い料理店』新刊案内
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
翌朝連名の手紙を女中に持たせて
矢来
(
やらい
)
の新潮社に
無心
(
むしん
)
を申込んだことがあった。
文壇昔ばなし
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
片言交
(
かたことまじ
)
りに彼等の云いそうな事を並べ立て、何でも
彼
(
あ
)
の男は
無心
(
むしん
)
を云われて居るに相違ないその無心は、
屹度
(
きっと
)
麝香
(
じゃこう
)
を
呉
(
く
)
れろとか何とか云われた事があるに違いないと推察して、文句の中に
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
このごろでは
流石
(
さすが
)
の同胞たちも、梅子から持ちこまれる
尻拭
(
しりぬぐ
)
いに
耐
(
た
)
えきれなくなって、何でもかんでも断ることにしていたのです。轢死をする前の晩も私のところへ来ましたが、
又
(
また
)
金の
無心
(
むしん
)
です。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
無心
(
むしん
)
な
禽獣
(
きんじゅう
)
をおどろかす人間の
口笛
(
くちぶえ
)
が、下のほうからきこえてきた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さうなんだわ」
無心
(
むしん
)
な
與吉
(
よきち
)
は
誘
(
さそ
)
ひ
出
(
だ
)
されるまゝにいつて
畢
(
しま
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
春鳥無心喚友啼 〔
春鳥
(
しゅんちょう
)
は
無心
(
むしん
)
に友を喚びて
啼
(
な
)
き
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
かしらのそばに
無心
(
むしん
)
に
立
(
た
)
っているのでした。
花のき村と盗人たち
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
稚
(
いと
)
けなけれどなまめかしく、而も
無心
(
むしん
)
に
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
だが知は
無心
(
むしん
)
より勝ると誰も言い切ることはできぬ。
南泉禅師
(
なんせんぜんじ
)
の句に云う、「道は知に属せず、不知に属せず、知はこれ妄覚、不知は
無記
(
むき
)
」
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
どこかで、
無心
(
むしん
)
にせみが
唄
(
うた
)
をうたっている
声
(
こえ
)
がしています。たぶん、あちらの
嶺
(
みね
)
の
上
(
うえ
)
に
生
(
は
)
えている
赤松
(
あかまつ
)
のこずえのあたりであると
思
(
おも
)
われました。
老工夫と電灯:――大人の童話――
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
佐伯
(
さへき
)
の
事
(
こと
)
をそれなり
放
(
はふ
)
つて
仕舞
(
しま
)
つた。
單
(
たん
)
なる
無心
(
むしん
)
は、
自分
(
じぶん
)
の
過去
(
くわこ
)
に
對
(
たい
)
しても、
叔父
(
をぢ
)
に
向
(
むか
)
つて
云
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
せるものでないと、
宗助
(
そうすけ
)
は
考
(
かんが
)
へてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
頭腦
(
あたま
)
の
中
(
なか
)
を
此樣
(
こん
)
な
事
(
こと
)
にこしらへて一
軒
(
けん
)
ごとの
格子
(
かうし
)
に
烟草
(
たばこ
)
の
無理
(
むり
)
どり
鼻紙
(
はながみ
)
の
無心
(
むしん
)
、
打
(
う
)
ちつ
打
(
う
)
たれつ
是
(
こ
)
れを一
世
(
せ
)
の
譽
(
ほまれ
)
と
心得
(
こゝろゑ
)
れば、
堅氣
(
かたぎ
)
の
家
(
いゑ
)
の
相續息子
(
そうぞくむすこ
)
地廻
(
ぢまわ
)
りと
改名
(
かいめい
)
して
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
無心
(
むしん
)
な子どもは
例
(
れい
)
のごとく父にかわいがられようとするのを、どうもしかりとばすこともできない。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
以て大津屋方へ
無心
(
むしん
)
に參り候所より段右衞門も又
夫
(
をつと
)
三五郎は
渠
(
かれ
)
が
舊惡
(
きうあく
)
を存じ候故後日に
露顯
(
あらはれ
)
ん事を恐れ殺し候儀と思はれ候
然
(
され
)
ば甚だ
憎
(
につく
)
き
仕方
(
しかた
)
なりと重四郎の段右衞門が惡事を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ぢやが、
海苔
(
のり
)
一
帖
(
じょう
)
、
煎餅
(
せんべい
)
の袋にも、
贈物
(
おくりもの
)
は心すべきぢや。すぐに其は
対手
(
あいて
)
に向ふ、当方の
心持
(
こころもち
)
の
表
(
しるし
)
に
相成
(
あいな
)
る。……将軍家へ
無心
(
むしん
)
とあれば、都鳥一羽も、城一つも同じ道理ぢや。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
徹夜勝負
(
よあかししょうぶ
)
のそれが、十二時を過ぎたばかりに、スッカラカンでヨ、場に貸してやろうてえ親切者もなしサ、やむなく、工場の
宿直
(
しゅくちょく
)
、たあさんのところへ、真夜中というのに、
無心
(
むしん
)
に来たというわけ。
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そをいまし見あげたる
無心
(
むしん
)
の
瞳
(
ひとみ
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
このことは、その
日
(
ひ
)
その
日
(
ひ
)
を
働
(
はたら
)
いて
暮
(
く
)
らさなければならぬものには、どういう
事情
(
じじょう
)
があっても、
万
(
まん
)
は、
無心
(
むしん
)
をたのむ
気
(
き
)
になれなかったのでしょう。
万の死
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
教えは「
無心
(
むしん
)
」とか「
無想
(
むそう
)
」とかの深さを説くが、美においてもまた同じである。無想の美に優る美はあり得ない。高き工藝の美は無心の美である。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
大路
(
おほぢ
)
を
見渡
(
みわた
)
せば
罪
(
つみ
)
なき
子供
(
こども
)
の三五
人
(
にん
)
手
(
て
)
を
引
(
ひき
)
つれて
開
(
ひ
)
いらいた
開
(
ひ
)
らいた
何
(
なん
)
の
花
(
はな
)
ひらいたと、
無心
(
むしん
)
の
遊
(
あそ
)
びも
自然
(
しぜん
)
と
靜
(
しづ
)
かにて、
廓
(
くるわ
)
に
通
(
かよ
)
ふ
車
(
くるま
)
の
音
(
おと
)
のみ
何時
(
いつ
)
に
變
(
かわ
)
らず
勇
(
いさ
)
ましく
聞
(
きこ
)
えぬ。
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
物語
(
ものがた
)
りて無心を
言
(
いひ
)
けるに仁左衞門は大いに
難澁
(
なんじふ
)
に思ふと雖も詮方なく又々金子を
遣
(
つかは
)
しけるが是をも又遣ひ
切
(
きり
)
て本町の小猿の方へ
無心
(
むしん
)
をいひ又本郷の仁左衞門と兩家へ打て
違
(
ちが
)
ひに無心を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
何人
(
なんぴと
)
であるかを知られて、土に手をついて太夫様と言はれたのでは、其の
所謂
(
いわゆる
)
禁厭
(
まじない
)
の断り
悪
(
にく
)
さは、金銭の
無心
(
むしん
)
をされたのと同じ事——
但
(
ただ
)
し手から手へ渡すも恐れる……落して
釵
(
かんざし
)
を貸さうとすると
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
なにも
知
(
し
)
らぬ
子供
(
こども
)
らはめずらしそうに、あちらを
向
(
む
)
いて、
自動車
(
じどうしゃ
)
の
遠
(
とお
)
ざかりゆく
影
(
かげ
)
を
無心
(
むしん
)
にながめていたのであります。
なつかしまれた人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
親
(
おや
)
とも
兄
(
あに
)
ともなく
大切
(
たいせつ
)
に
思
(
おも
)
ふものをと、
無心
(
むしん
)
に
言
(
い
)
へば
忝
(
かたじけ
)
なしと一
ト
言
(
こと
)
語尾
(
ごび
)
ふるへて
消
(
き
)
えぬ
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
どんなことを
頭
(
あたま
)
の
中
(
なか
)
に
考
(
かんが
)
えていたでしょう?
弟
(
おとうと
)
のほうは、
母親
(
ははおや
)
の
体
(
からだ
)
によりかかって、これとて
無心
(
むしん
)
でいました。
石段に鉄管
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
おあとから
行
(
ゆき
)
まする、
戀
(
こひ
)
しき
君
(
きみ
)
、さる
詞
(
ことば
)
をば
次第
(
しだい
)
なく
並
(
なら
)
べて、
身
(
み
)
は
此處
(
こゝ
)
に
心
(
こゝろ
)
はもぬけの
殼
(
から
)
になりたれば、
人
(
ひと
)
の
言
(
い
)
へるは
聞分
(
きゝわ
)
くるよしも
無
(
な
)
く、
樂
(
たの
)
しげに
笑
(
わら
)
ふは
無心
(
むしん
)
の
昔
(
むかし
)
を
夢
(
ゆめ
)
みてなるべく
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そして、いままでのように、
自由
(
じゆう
)
に、
無心
(
むしん
)
に、
木琴
(
もっきん
)
を
鳴
(
な
)
らして、
恍惚
(
こうこつ
)
となることができなくなったのであります。
しいたげられた天才
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私
(
わたし
)
の
此子
(
このこ
)
は
言
(
い
)
はゞ
私
(
わたし
)
の
爲
(
ため
)
の
守
(
まも
)
り
神
(
がみ
)
で、
此樣
(
こん
)
な
可愛
(
かあい
)
い
笑顏
(
ゑがほ
)
をして、
無心
(
むしん
)
な
遊
(
あそび
)
をして
居
(
ゐ
)
ますけれど、
此無心
(
このむしん
)
の
笑顏
(
ゑがほ
)
が
私
(
わたし
)
に
教
(
をし
)
へて
呉
(
く
)
れました
事
(
こと
)
の
大層
(
たいそう
)
なは、
殘
(
のこ
)
りなく
口
(
くち
)
には
言
(
い
)
ひ
盡
(
つ
)
くされませぬ
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
人々
(
ひとびと
)
や、
馬車
(
ばしゃ
)
や、また
自動車
(
じどうしゃ
)
は、
無心
(
むしん
)
にガードの
下
(
した
)
を
通
(
とお
)
っていましたが、
幸三
(
こうぞう
)
は、一つのガードの
下
(
した
)
にくると、もう
古
(
ふる
)
くなって
割
(
わ
)
れめのはいったれんがや
新しい町
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ましてや
土方
(
どかた
)
の
手傳
(
てづた
)
ひして
車
(
くるま
)
の
跡押
(
あとおし
)
にと
親
(
おや
)
は
生
(
うみ
)
つけても
下
(
くだ
)
さるまじ、あゝ
詰
(
つま
)
らぬ
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たばかりにと、ぢつと
身
(
み
)
にしみて
湯
(
ゆ
)
もつかはねば、
父
(
とつ
)
ちやん
脊中
(
せなか
)
洗
(
あら
)
つてお
呉
(
く
)
れと
太吉
(
たきち
)
は
無心
(
むしん
)
に
催促
(
さいそく
)
する
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
無心
(
むしん
)
で
吹
(
ふ
)
くこともあったし、また、はてしない
遠
(
とお
)
くをあこがれたこともあったでしょう。それは、
夕日
(
ゆうひ
)
が
花
(
はな
)
のごとく、
美
(
うつく
)
しくもえるときばかりでありません。
たましいは生きている
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
口惜
(
くちを
)
しげに
相手
(
あひて
)
を
睨
(
にら
)
みしこともありしがそれは
無心
(
むしん
)
の
昔
(
むかし
)
なり
我
(
わ
)
れ
性來
(
せいらい
)
の
虚弱
(
きよじやく
)
とて
假初
(
かりそめ
)
の
風邪
(
ふうじや
)
にも
十日
(
とをか
)
廿日
(
はつか
)
新田
(
につた
)
の
訪問
(
はうもん
)
懈
(
おこた
)
れば
彼處
(
かしこ
)
にも
亦
(
また
)
一人
(
ひとり
)
の
病人
(
びやうにん
)
心配
(
しんぱい
)
に
食事
(
しよくじ
)
も
進
(
すゝ
)
まず
稽古
(
けいこ
)
ごとに
行
(
ゆ
)
きもせぬとか
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
つい
無心
(
むしん
)
できかかる
人
(
ひと
)
まで、その
笑
(
わら
)
いにつりこまれるくらいだから、わんぱくざかりの
子
(
こ
)
どもらが、なんでこれを
見
(
み
)
て、なんともいわぬはずがありましょう。
戦争はぼくをおとなにした
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
と三つ四つに
折
(
を
)
りて
甚之助
(
じんのすけ
)
の
懷中
(
ふところ
)
に
押
(
おし
)
いれしが、
無心
(
むしん
)
の
處
(
ところ
)
何
(
なん
)
とも
氣
(
き
)
づかはしく、
落
(
おと
)
さぬやうに
人
(
ひと
)
に
見
(
み
)
せぬ
樣
(
やう
)
にと
呉々
(
くれ/\
)
をしへ、
早
(
はや
)
くお
出
(
い
)
でなされと
言
(
い
)
へば、
兩手
(
りやうて
)
に
胸
(
むね
)
を
抱
(
いだ
)
きて一
心
(
しん
)
に
駈
(
か
)
け
出
(
だ
)
す
甚之助
(
じんのすけ
)
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
こちらを
見
(
み
)
ながら、
一人
(
ひとり
)
の
少女
(
しょうじょ
)
が、うしろの
妹
(
いもうと
)
にいったのです。
無心
(
むしん
)
でいるのを、おびやかしてはならぬと、
二人
(
ふたり
)
は、
姿
(
すがた
)
をねこに
見
(
み
)
られぬようにしていました。
どこかに生きながら
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その
主人
(
しゆじん
)
に一
年
(
ねん
)
の
馴染
(
なじみ
)
、
氣
(
き
)
に
入
(
い
)
りの
奉公人
(
ほうこうにん
)
が
少々
(
せう/\
)
の
無心
(
むしん
)
を
聞
(
き
)
かぬとは申されまじ、
此月末
(
このつきずゑ
)
に
書
(
かき
)
かへを
泣
(
な
)
きつきて、をどりの一
兩
(
りやう
)
二
分
(
ぶ
)
を
此處
(
こゝ
)
に
拂
(
はら
)
へば
又
(
また
)
三
月
(
つき
)
の
延期
(
のべ
)
にはなる、
斯
(
か
)
くいはゞ
欲
(
よく
)
に
似
(
に
)
たれど
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そのとき、ちょうど
門口
(
かどぐち
)
へ
乳飲
(
ちの
)
み
子
(
ご
)
をおぶった
女
(
おんな
)
こじきが
立
(
た
)
って、
無心
(
むしん
)
をねがったのでした。
空にわく金色の雲
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
未練
(
みれん
)
に
惜
(
をし
)
みてとも
思召
(
おぼしめ
)
さん
苦
(
くる
)
しさよと
思
(
おも
)
ひやりては
伏
(
ふ
)
し
沈
(
しづ
)
み
思
(
おも
)
ひ
出
(
いだ
)
してはむせ
返
(
かへ
)
り
笑
(
ゑ
)
みとは
何
(
なん
)
ぞ
夢
(
ゆめ
)
にも
忘
(
わす
)
れて
知
(
し
)
るものは
人生
(
じんせい
)
の
憂
(
う
)
きといふ
憂
(
う
)
きの
數々
(
かず/\
)
來
(
く
)
るものは
無意
(
むい
)
無心
(
むしん
)
の
春夏秋冬
(
しゆんかしうとう
)
落花
(
らくくわ
)
流水
(
りうすゐ
)
ちりて
流
(
なが
)
れて
寄
(
よ
)
せ
返
(
かへ
)
る
波
(
なみ
)
の
年
(
とし
)
又
(
また
)
年
(
とし
)
今日
(
けふ
)
は
心
(
こゝろ
)
の
解
(
と
)
けやする
明日
(
あす
)
は
思
(
おも
)
ひの
離
(
はな
)
れやするあは
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
白
(
しろ
)
い
雲
(
くも
)
は、
無心
(
むしん
)
に
空
(
そら
)
を
流
(
なが
)
れてゆきました。いろいろの
虫
(
むし
)
が
草原
(
くさはら
)
から
飛
(
と
)
び
立
(
た
)
ちました。キチキチと
翅
(
はね
)
を
鳴
(
な
)
らして、ばったが
飛
(
と
)
ぶかと
思
(
おも
)
うと、
大
(
おお
)
きなかまきりが、
頭
(
あたま
)
をもたげました。
草原の夢
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
心
常用漢字
小2
部首:⼼
4画
“無心”で始まる語句
無心所着的