みね)” の例文
これも言葉通り山のならび、つづいているみねを言うので、山脈に当る言葉ではなかった。これは成程勘違いをしそうな言葉である。
詩語としての日本語 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
雲のみねは、いろいろにすがたをかえた。妙義山となり、金剛山となった。それがたちまち、だるまさんとなり、大仏さんとなった。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
あんずるに、蛾眉山は唐土の北に峻岳じゆんがくにて、富士にもくらぶべき高山なり。絶頂ぜつてうみね双立ならびたちて八字をなすゆゑ、蛾眉山がびさんといふなり。
やまくづして、みねあましたさまに、むかし城趾しろあと天守てんしゆだけのこつたのが、つばさひろげて、わし中空なかぞらかけるか、とくもやぶつて胸毛むなげしろい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今日けふごと浪路なみぢおだやかに、やがあひとも※去くわこ平安へいあんいはひつゝ芙蓉ふようみねあふこと出來できるやうにと只管ひたすらてんいのるのほかはないのである。
四五みね温泉にや出で立ち給ふらん。かう四六すざましき荒礒ありそを何の見所ありて四七りくらし給ふ。ここなんいにしへの人の
「これが出来たのでたかみねわしみねとが続いてゐる所が見えなくなりました。茶席など造るより、あの辺の雑木ざふきでも払へばよろしいにな。」
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
冬にはいった空は、目に痛いほど碧色に澄みあがり、雲のわたる遠い山なみのなかには早くも雪をかぶったみねがながめられた。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あんずやすももの白い花がき、ついでは木立こだちも草地もまっさおになり、もはや玉髄ぎょくずいの雲のみねが、四方の空をめぐころとなりました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
御城の北一里にあるつるぎみね天頂てっぺんまで登って、其所の辻堂つじどう夜明よあかしをして、日の出を拝んで帰ってくる習慣であったそうだ。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
桜井から多武とうみねへの路を十数町行ってちょっと右へはいったところである。百済観音もまた近年は法隆寺へ帰って、宝物殿ほうもつでんの王様になっている。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
まして、日の短い秋であるから、まだ三時というのに、もう黄昏たそがれのようだ。部落の名は、広島県ひろしまけん比婆郡ひばぐん峯田村みねたむらあざみね
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
もういくら待つても人通ひとゞほりはない。長吉ちやうきち詮方せんかたなく疲れた眼をかははうに移した。河面かはづら先刻さつきよりも一体にあかるくなり気味悪きみわるい雲のみねは影もなく消えてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
手に取つて見ると、とうを卷いた古い剃刀で、みねが殆んどなくなるほどらしてありますが、その代り使ひ込んだ品で、きれ味は非凡らしく見えます。
よもうつろなる世ではないであろう。この世を心の浄土と想い得ないであろうか。この地を天への扉といい得ないであろうか。低き谿たになくば高きみねも失せるであろう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
みね此出來事このできごとなんとしてみゝるべき、おかしたるつみおそろしさに、れか、ひとか、先刻さつき仕業しわざはと今更いまさら夢路ゆめぢ辿たどりて、おもへば此事このことあらはれずしてむべきや
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あだか相撲すまふのとき、土俵どひよう中央ちゆうおうからずる/\とされた力士りきしが、つるぎみねこらへる場合ばあひのようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
湯流山は氷のかけらが溶けかけているような形で、みねには三つのなだらかな起伏があり西端は流れたようにゆるやかな傾斜をなしていた。百メートルくらいの高さであった。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
みね茶屋ちゃやの主人が助けて思い止まらせ、そうして臨時の切符係に採用したのだということであった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
れいなるかなこの石、てんあめふらんとするや、白雲はくうん油然ゆぜんとして孔々こう/\より湧出わきいたにみねする其おもむきは、恰度ちやうどまどつてはるかに自然しぜん大景たいけいながむるとすこしことならないのである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
見上ぐれば、蝦夷松椴松みねみねへといやが上に立ち重なって、日の目もれぬ。此辺はもうせき牧場ぼくじょうの西端になっていて、りんは直ちに針葉樹の大官林につゞいて居るそうだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
博勞等ばくらうらぞろ/\つながつてんだから、みねはうでも谷底たにそこはうでも一大變たいへんだあ、さうすつとこま子奴等こめらひゝんなんてあばさけてぱか/\ぱか/\とはこびがちがつてらな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
崖の下は月輪川で、谷の奥所おくが月輪関白つきのわかんぱく兼実かねざねの墓があるという。墓といえば、ついそこの眉にせまる阿弥陀あみだみねの下あたりは墓や御陵ごりょうだらけだった。鳥部野が近いのである。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しのの細道け行けば、虫のこえごえ面白や降りそむる、やれ降りそむる、けさだにもけさだにも所はあともなかりけり西は田のあぜあぶないさ、谷みねしどろに越え行け
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
して立出漸々やう/\其夜の子刻過ねのこくすぎ長谷川町の我が家へ歸り養母并に實母のおみねも此節在所より來り逗留とうりうして居ける故右の樣子をはなせしにぞ兩人も涙を流してかなしみけるがうれひの中にも城富の孝心かうしん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
直行は今年五十を一つ越えて、妻なるおみねは四十六なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
梵天宮ぼんてんきういたたまひし富士ふじみね
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
あんずるに、蛾眉山は唐土の北に峻岳じゆんがくにて、富士にもくらぶべき高山なり。絶頂ぜつてうみね双立ならびたちて八字をなすゆゑ、蛾眉山がびさんといふなり。
……次第しだいちか此処こゝせまやまやまみねみねとのなかつないで蒼空あをぞらしろいとの、とほきはくも、やがてかすみ目前まのあたりなるは陽炎かげらふである。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それこそはたびたび聞いた西蔵チベット魔除まよけのはたなのでした。ネネムはげ出しました。まっ黒なけわしい岩のみねの上をどこまでもどこまでも逃げました。
上野かんづけの国五八迦葉山かせうざん下野しもづけの国五九二荒ふたら山、山城の六〇醍醐だいごみね、河内の六一杵長しなが山、就中なかんづく此の山にすむ事、大師の六二詩偈しげありて世の人よくしれり。
無論むろんつま大佐たいさ病氣びやうき次第しだいはやかれおそかれかへつてますが、ながく/\——日本帝國につぽんていこく天晴あつぱ軍人ぐんじんとしてつまでは、芙蓉ふようみねふもとらせぬつもりです。
店の内外はゴッタ返す騒ぎ、それをかきわけて入ると、奥は思いの外しんとして、主人七兵衛の死体には、若い女房のおみねと奉公人の釜吉かまきちが付いているだけ——。
みねは三すけきしめて、さてもさても世間せけん無類むるい孝行かう/\おほがらとても八歳やつ八歳やつ天秤てんびんかたにしていたみはせぬか、あし草鞋わらじくひは出來できぬかや、堪忍かんにんしてくだされ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
例の奇癖きへきかういふ場合ばあひにもあらはれ、若しや珍石ちんせきではあるまいかと、きかゝへてをかげて見ると、はたして! 四めん玲瓏れいろうみねひいたにかすかに、またと類なき奇石きせきであつたので
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ただその告白が雲のみねのようであった。私の頭の上に正体の知れない恐ろしいものをおおかぶせた。そうしてなぜそれが恐ろしいか私にもわからなかった。告白はぼうとしていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
多武とうみねの陰欝な姿を右にながめながら、やがて汽車は方向を変えて、三輪山みわやまふもとへ近づいて行く。古代神話に重大な役目をつとめているこの三輪山はまた特に大和の山らしい。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
霧島火山群きりしまかざんぐん東西とうざい五里ごりわたふたつの活火口かつかこうおほくの死火山しかざんとをゆうしてゐる。そのふたつの活火口かつかこうとはほこみねたか千七百米せんしちひやくめーとる)の西腹せいふくにある御鉢おはちと、その一里いちりほど西にしにある新燃鉢しんもえばちとである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
わたしは現に時とすると、じ難いみねの頂を窮め、越え難い海のなみを渡り——云わば不可能を可能にする夢を見ることがございます。そう云う夢を見ている時程、空恐しいことはございません。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
みねが三つ。まんなかの円い峯は、高さが三四丈もあるであろうか。
猿ヶ島 (新字新仮名) / 太宰治(著)
くもみねなつ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
こめたりける此所は名におふ周智郡すちごほり大日山のつゞき秋葉山の絶頂ぜつちやうなれば大樹だいじゆ高木かうぼく生茂おひしげり晝さへくら木下闇このしたやみ夜は猶さらに月くら森々しん/\として更行ふけゆく樣に如何にも天魔てんま邪神じやしん棲巣すみかとも云べきみねには猿猴ましらの木傳ふ聲谷には流水滔々たう/\して木魂こだまひゞき遠寺ゑんじかねいとすごく遙に聞ば野路のぢおほかみほえて青嵐颯々さつ/\こずゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なだれはあへて山にもかぎらず、形状かたちみねをなしたる処は時としてなだるゝ事あり。文化のはじめ思川村おもひがはむら天昌寺てんしやうじ住職じゆうしよく執中和尚しつちゆうをせう牧之ぼくし伯父をぢ也。
奥様おくさま』とぶのがみねからつたはる。こだまかへしてたにへカーンとひゞく、——くもしろく、やまあをく、かぜいてみづながれる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
上を見ると、まるで小さな円い空が見えるだけ、かがやく雲のみね一寸ちょっとのぞいて居りますが、蛙たちはもういくらもがいてもとりつくものもありませんでした。
蛙のゴム靴 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
時にみねたにゆすり動きて、風叢林はやしたふすがごとく、沙石まさごそら巻上まきあぐる。見る見る一二七一段の陰火いんくわ、君がひざもとより燃上もえあがりて、山も谷も昼のごとくあきらかなり。
上州の平野で育てられた雲のみねが、氣流の關係で大部分は江戸の眞上に流れ、此處で空中放電の大亂舞となつて、三日に一度は夏の江戸つ子のきもを冷やさしたのです。
れのみ一人ひとりあしびきやま甲斐かひみねのしらくもあとをすことりとは是非ぜひもなけれど、今歳ことしこのたびみやこをはなれて八王子わうじあしをむけることこれまでにおぼえなきらさなり。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
不時ふじ天變てんぺんが無ければ、いまより二年にねん月目げつめすなはこれから三度目さんどめ記元節きげんせつむかふるころには、試運轉式しうんてんしき擧行きよかうし、引續ひきつゞいて本島ほんとう出發しゆつぱつして、なつかしき芙蓉ふえうみねのぞこと出來できませう。
奈良と郡山の間の佐保川の流域(昔の都)を幾分下に見渡せる小高い畑地である。遠く南の方には三輪山、多武とうみね、吉野連山から金剛山へと続き、薄いかすみのなかに畝傍山うねびやま香久山かぐやまも浮いて見える。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)