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奇石
蔵石に名の高き人近年
夥し、
余も諸家の
奇石を見しに皆一家の
蔵る処三千五千
種にいたる、五日十日の日を
尽してやう/\
眼をふる㕝を
得るにいたる
例の
奇癖は
斯いふ
場合にも
直ぐ
現はれ、若しや
珍石ではあるまいかと、
抱きかゝへて
陸に
上げて見ると、
果して! 四
面玲瓏、
峯秀で
溪幽に、
亦と類なき
奇石であつたので
空に向かって
捧げているし、
海棠の花は、悩める美女に
譬えられている、なまめかしい色を、
木蓮の、白い花の間に
鏤めているし、花木の間には、
苔のむした
奇石が、無造作に置かれてあるし