)” の例文
温泉をんせんかうとして、菊屋きくや廣袖どてら着換きかへるにけても、途中とちう胴震どうぶるひのまらなかつたまで、かれすくなからずおびやかされたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ふん、坊主ばうずか」とつてりよしばらかんがへたが、「かくつてるから、こゝへとほせ」とけた。そして女房にようばうおくませた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
うずを巻いている処、波状はじょうになった処、ねた処、ぴったりと引っいた処と、その毛並みの趣が、一々実物の趣が現わされている。
(七九)閭巷りよかうひとおこなひてんとほつするものは、(八〇)青雲せいうんくにあらずんば、いづくんぞく(名ヲ)後世こうせいかん
どうもあぶないので、おもふやうにうごかせませなんだが、それでもだいぶきずきましたやうで、かゞみませんが、浸染にじんでりますか。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ええ今度はうさぎの形などと、ばけものをしんこ細工のように延ばしたり円めたり、耳をけたり又とったりいたすのをよく見受けます。
あるひは娘共むすめども仰向あふむけてゐる時分じぶんに、うへから無上むしゃう壓迫おさへつけて、つい忍耐がまんするくせけ、なんなく強者つはものにしてのくるも彼奴きゃつわざ乃至ないしは……
意外にも半兵衛儀は、まだ御申おんもうけの事を、実行しておりません。使者たるそれがし落度とも相成る事、きびしく督促とくそくいたしおきました。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
A いよ/\馬鹿ばかだなア此奴こいつは。およそ、洒落しやれ皮肉ひにく諷刺ふうしるゐ説明せつめいしてなんになる。刺身さしみにワサビをけてやうなもんぢやないか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
此次このつぎ座敷ざしきはきたなくつてせまうございますが、蒲団ふとんかはへたばかりでまだあかもたんときませんから、ゆつくりお休みなさいまし
その道にかけては彼等の方が私より巧者にきまっているから私などそれにけ足す何もない、私がそう言うと女は満足した様子に見えた。
いずこへ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
やがてとうさんは伯父をぢさんのあといて、めづらしい初旅はつたびのぼりました。とうさんがあるいてみち木曽路きそぢとも、木曾街道きそかいだうともいふみちでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ただし、いかにすぐれた人霊じんれい御本体ごほんたいでありましても、そのひかえとしては、かならず有力ゆうりょく竜神様りゅうじんさまがおあそばしてられますようで……。
睦子のおとうさんは、市バスの運転手でしたが、やはり出征中で、おかあさんは川向かふの罐詰工場で、ちやうけか何かをしてゐるのでした。
母子ホームの子供たち (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
今更中間のブローカー問屋や素人しろうとの父の型のきまった意匠など必要はなくなった。父の住居きのオフィスは年々寂寥せきりょうを増した。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
見かけることがめずらしくなかった彼女のかたわらにはいつも佐助がはべほかに鳥籠の世話をする女中が一人いていた女師匠が命ずると女中が籠の戸を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おつぎは二ちやうばかり上流じやうりう板橋いたばしわたつてつて、やうやくのことでえだげてそのはりをとつた。さうしてまた與吉よきちぼうけてやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
十六になったら、僕という人間は、カタリという音をたてて変ってしまった。ほかの人には、気がくまい。わば、形而上けいじじょうの変化なのだから。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
女房はしかたなしに人を頼んで、荒川へ持って往って流してもらったが、箱は投げこんだ処へおもりけたように浮かんだままで流れなかった。
偶人物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
雨降りだと、日本人がうるさくまとはないから、くつした一つ買ふにも町中歩きまはつて、ゆつくり値段の廉いのを捜す事が出来るからださうだ。
矢田平のたて、長いのでは有名な方なるを、訥子とつしの勤むることなれば、見ぬ方大だすかりなり。宋蘇卿の最期にくる所も騒がしきだけなり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
もなく三四郎は八畳敷の書斎の真中まんなかで小さい膳を控へて、晩食ばんめしを食つた。膳の上を見ると、主人の言葉にたがはず、かのひめいちがいてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其以後そのいごたれけぬ。やうや此前このまへ素通すどほりするくらゐであつたが、四十ねんぐわつ十二にちに、は、織田おだ高木たかぎ松見まつみ表面採集へうめんさいしふ此邊このへんた。
ねむつては危險きけんだぞ。左手ひだりてかはけろ‥‥」と、しばらくすると突然とつぜんまへはう小隊長せうたいちやう大島少尉おほしませうゐ呶鳴どなこゑきこえた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
温厚玉のような君子がれっきとした官職の肩書かたがききの名刺を示しても聞かれないで警察へ拘留されたという話も聞いている。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
それでもまだ日の内のあたたまりが残っている。女が夕食の支度をするあいだ、男は腕きの椅子いすに腰を掛けてじっとしている。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
うまけるのに手間てまれるとかとりきんで、上句あげくには、いつだまれとか、れこれうな、とかと真赤まっかになってさわぎかえす。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一緒に新宿へ遊びに行つては、足がおそれがあると思つたからである。金箱は本堂の縁の下へほうり込んで立去つた。
赤膏薬 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
もう一人前に近くなっていても、これにしたがう面々は村の少女の全部で、それが組織ある行動にづることは、左義長さぎちょうの子ども組も同じであった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小門、外より押されて数名の黒影は庭内にあらはれぬ、きなるは母のお加女なり、中にようされたるは姉の梅子なり、他は大洞よりのびとにやあらん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
トロリとした鶴見つるみ神奈川かながはぎて平沼ひらぬまめた。わづかの假寢うたゝねではあるが、それでも氣分きぶんがサツパリして多少いくら元氣げんきいたのでこりずまに義母おつかさん
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
寝られないなあと思っているうちに、ふっと気がいたらもう朝になっていた。いつの間に寝てしまったんだろう。
碁石を呑んだ八っちゃん (新字新仮名) / 有島武郎(著)
南国の孤島において、しょう委員長は、あいかわらずの裸身はだかで、事務をっていた。例の太いひげはもう見えない。
つてるぞ夕方ゆふがたべつしてかぜさむそのうへにかぜでもかば芳之助よしのすけたいしてもむまいぞやといふことばいておたかおそる/\かほをあげ御病氣ごびやうきといふことを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「わたしがいそいでるのを知ってるくせに、やっぱりうるさくきまとうんだね。ほんとになさけない子だよ!」
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
蚯蚓みヽずが土を出て炎天の砂の上をのさばる様に、かんかんと日の照るなかあるいてづぶ濡れに冷え切つた身体からだなり心なりをかせ度く成つたので、書院の庭の
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
たゞそれだけで滿足まんぞくせずに、新月しんげつころから注意ちゆういしてゐたのが、こんなにおほきく立派りつぱいたといふようなおもしろみをけたのは、ほんとうはよくないのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
また作文さくぶんにしても間違まちがつたところがあればしるしけてだけで、滅多めつた間違まちがひてん説明せつめいしてかさない。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
こんなおほきい石棺せきかんになりますと、そのいし運搬うんぱんするのに不便ふべんでありますから、いしのまはりにいぼのような突起とつき數箇所すうかしよけて、はこぶのにつごうよくしてをりますが
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
思慮しりよふか大佐たいさすら小首こくびかたむけたほどで、わたくしむねには、始終しじういてはなれぬ疑問ぎもんであつたので、いま機會きくわい
さういふ懸賞のいた課題が出てゐましたから、みんなが勇んだのですがじつさいそれに応ずる力のあるのは、キクッタとチャラピタとだけよりなかつたので、自然
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
書物やら土地の人々の話で多少目当めあてけることは出来たが、吾々の目的を説くことには難儀を感じた。どの地方の人々も吾々のような客をったことがないと見える。
地方の民芸 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かうの家は石津村いしづむらで一番の旧家でそして昔は大地主であつために、明治の維新後に百姓が名字みやうじこしらへる時にも、沢山の田とふ意味で太田おほたけたと云はれて居ました。
月夜 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しっかりとっいて居て安心な人を望む心が、お君の胸に湧き上って、目の前には、父親だの母、弟又は、家に居た時分仕事を一緒にならって居た友達の誰れ彼れの顔や
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
これ著者ちよしやがこのごろ本文ほんもんおいて、『たゞもと用心ようじんわすれざること』とくはへた所以ゆえんである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あるい畳針たたみばりかって来て畳のおもてえ、又或は竹を割っておけたがを入れるような事から、そのほかの破れ屋根のりを繕うまで当前あたりまえの仕事で、皆私が一人ひとりでして居ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
『ハハハハハ。それくらいのことで何も驚くことはないじゃないか……ぶみだな、きっと』
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
すると、石切橋と小桜橋との中間に、せられている橋を中心として、そこに、常には見馴みなれない異常な情景が、展開されているのに気がいた。橋の上にも人が一杯いっぱいである。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
父は私のそばきッきりで、生え際やまゆり方について何かと世話をやいていたが、それでもなお気に入らぬと本職の手から剃刀かみそりを取って自分で剃ってくれたりなんかした。
が無いという返辞の仕方だ。何とも無いと云われても、どうも何か有るにちがい無い。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)