)” の例文
こんなきんぼうでも、おばあさんだけは、るほど、かわいいとみえて、きんぼうのあとから、どこへでもついてあるきました。
泣きんぼうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨夜ゆうべもすがらしづかねぶりて、今朝けされよりいちはなけにさまし、かほあらかみでつけて着物きものもみづからりしを取出とりいだ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
をとこ女蕩をんなたらしの浮氣うはきもの、近頃ちかごろあによめ年増振としまぶりけて、多日しばらく遠々とほ/″\しくなつてたが、一二年いちにねんふか馴染なじんでたのであつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのうつくしいそらうばはれてゐたを、ふと一ぽん小松こまつうへすと、わたし不思議ふしぎなものでも見付みつけたやうに、しばらくそれにらした。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
こいつが、なかなかがあって、それからというものは敵の陣地や砲台が、どんどん落ちるようになった。わが工兵隊のお手柄だ
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
見送ってぼんやりと佇んでいると足立駅長が洋服にじゃの傘をさして社宅から来かけたが、廊下に立ってじっと私の方を見ていた。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
しなには與吉よきち惡戯いたづらをしたり、おつぎがいたいといつてゆびくはへてせれば與吉よきち自分じぶんくちあてるのがえるやうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
こうして、一休いっきゅうさんは かそうさんの もとで、いろいろだいじな べんきょうを しましたが、五ねんの あるよの ことです。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
まなこはなたず睥睨へいげいしてる、猛狒ゴリラ益々ます/\たけ此方こなたうかゞつてる、この九死一生きうしいつしやうわか不意ふいに、じつ不意ふいに、何處どこともなく一發いつぱつ銃聲じうせい
『それは様々さまざまでございます。なかには随分ずいぶんひねくれた、むつかしい性質たちのものがあり、どうかすると人間にんげんかたきいたします……。』
ひっきりなし、川のみずはくるくるまわるようなはやさで、うずをまいて、ふくれがり、ものすごいおとててわきかえっていました。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おまえは、がみえぬのか。これをみなさい。なんとかいてある。奥平大膳大夫おくだいらだいぜんのだいぶと、とのさまのおまえがかいてあるではないか。」
人間は目的のない仕事、を仰ぐ筈がないと分りきった仕事をすることが如何に不可能なものであるか、厭というほど思い知った。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
大久保おほくぼ出発しゆつぱつしてからもなく、彼女かのぢよがまたやつてた。そのかほつてあかるくなつてゐた。はなしまへよりははき/\してゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そりやわたしは、ひどいにあつているんですから——あのおやじくらい、ごうつくばりでケチンボで、人情にんじょうなしの野郎やろうはないですよ。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
此頃のひでり亀甲形きつかふがた亀裂ひヾつた焼土やけつちを踏んで、空池からいけの、日がつぶす計りに反射はんしやする、白い大きな白河石しらかはいしの橋の上に腰をおろした。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
そこへて、くらまぬで、わしするあるかほとローザラインのとをお見比みくらべあったら、白鳥はくてうおもうてござったのがからすのやうにもえうぞ。
「まあにいさん、なにをするんです。そんなひどにあはせるなんて、われもひとも生きもんだ 、つてこともあるじやありませんか」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
したがつて出來上できあがつたものには、所々ところ/″\のぶく/\が大分だいぶいた。御米およねなさけなささうに、戸袋とぶくろけたての障子しやうじながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いとはず出歩行であるくのみかむすめくまにも衣類いるゐの流行物櫛笄くしかうがひ贅澤ぜいたくづくめに着餝きかざらせ上野うへの淺草あさくさ隅田すみだはな兩國川りやうこくがは夕涼ゆふすゞみ或は芝居しばゐかはと上なきおごり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たとえばたれでも一度か二度は経験しない人はあるまいが、寝ておって、高い所から落ちる夢を見て、冷汗ひやあせをかいてざめることがある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
すなわち、伊勢いせ滝川一益たきがわかずますをうった秀吉ひでよしが、さらにその余勢よせいをもって、北国の柴田軍しばたぐんと、天下てんか迎戦げいせんをこころみたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
アヽおかゝつて少々せう/\だんまうしてえ事があつて出ましたんで。書生「おだんまうしたい……エヽ先生八百屋やほや甚兵衛じんべゑさんがお入来いでで。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
するとくまさんが、『發句ほつくツてそんなもんですかい、ぢやわけアねえ』とふので、『たまのでんぐりかへるあしたかな』とやりだす。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
はあと嘉十かじふもこつちでその立派りつぱ太陽たいやうとはんのきをおがみました。みぎから三ばん鹿しかくびをせはしくあげたりげたりしてうたひました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
主人あるじの体量、万年湯ではかったら、十四貫三百五十あったといって、よろこんでいらっしゃったと、日記につけたりしている。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
景樹かげきなどがさわがれてゐたかげに、評判ひようばんにならずにゐたひとが、まだ/\ありました。その一等いつとうにつくひとは、越中えつちゆう富山とやま橘曙覽たちばなのあけみであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
暁雨が渋蛇しぶじゃかさをさして出たというので、その当座はしばらく渋蛇の目の傘が市中に流行したのを見ても、その人気が思いやられた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
中庭のがきのばらにからみ、それからさらにつるを延ばして手近なさんごの木を侵略し、いつのまにかとうとう樹冠の全部を占領した。
からすうりの花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして斯う事が面倒になっては又什麽どんなに遇わされるかも知れないと思って、手早く振切ふりもぎって、一目散に自分のへやに逃込んだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
わしはも寝ないで、細かい数字と取り組んだ。あらゆる細部を再検討した。あとは、もう試作に着手するばかりとなった
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
水層はいよいよ高く、より太平町たいへいちょうに至る十五間幅の道路は、深さ五尺に近く、濁流奔放舟をもって渡るも困難を感ずるくらいである。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
したが、これも時代ときよとあきらめるがいぞよ。これさ、うのたかのつて世間せけんくちにか〻るではないか、そんなこははせぬものぢや
箇月かげつらずの短時日たんじじつおいかくごとまへ好結果かうけつくわあらはしたとふことをかんがへると、國民自體こくみんじたい非常ひじやうよろこんでいことであらうとかんがへる。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
なに面白おもしろくねえことがあるもんか。二十五りょうといやァ、おいらのような貧乏人びんぼうにんは、まごまごすると、生涯しょうがいにゃぶらがれない大金たいきんだぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
つまりは百韻三十六ぎんの連続の中に、一句も俳諧の無い句があってはならぬという松永貞徳まつながていとくなどの意見を、認めるか否かがわかであった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
シラチブチはもとの小貝川がSの字形じけいに流れたまがの名で、渦を卷いて澱んでゐる頃は一の繩が下までとゞかぬと言はれた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
宜しゅう御座います、証拠と申す程のものでも御座いませんが、私の申すことは、決してたらでないという所だけをお目にかけましょう。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
まちは、まへに、すべての景色けしきえでもするかのやうに、一しんになつてなみだぐみながらふのであつた。すると、末男すゑをも、おなじやうに
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
自分は子供心にも、破れた古太鼓の皮などのを信じる事が出来ず、その丸薬を求めに五里の路を往復するのが、ひとしお苦痛であった。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
其他そのたあらたに温泉おんせん冷泉れいせんはじめることもあり、また炭酸瓦斯たんさんがす其他そのた瓦斯がす土地とちからして、とり地獄じごくむし地獄じごくつくることもある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
料理人は左の手にフークをり右の手に料理用のナイフを持ち先ずフークを以てにわとりの体を抑えナイフを腰にてて軽く腰のつが截放きりはなしぬ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ホラ大変!、母も武も驚ろいたことといつたら、ねるやら、るやら、もがくやらで、四百もある魚のことですから、舟もゆるばかりでした。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
そうしてその葉が、峰と峰とのから渓合たにあいへあふれ込む光線の中を、ときどき金粉きんぷんのようにきらめきつつ水に落ちる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
うま」と呼ばれる皿を見よ、如何なる画家も、あの簡単な渦巻を、かくも易々と自由に画くことは出来ないであらう。それは真に驚異である。
雑器の美 (新字旧仮名) / 柳宗悦(著)
れいの石がちやんとしたよこたはつて居たので其まゝみ、石をだい濡鼠ぬれねずみのやうになつてにぐるがごとうちかへつて來た。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あるの幼虫には背の前部に左右二つの大きないちじるしいじゃの斑紋があるが、この虫は敵に遇うと、たちまち体の前部をちぢめて太くする。
自然界の虚偽 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
えゝ、いしせてあるおうち屋根やねから、竹藪たけやぶまでえます。馬籠うまかごむらが一えます。荒町あらまち鎭守ちんじゆもりまでえます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『あァ、公爵夫人こうしやくふじん公爵夫人こうしやくふじん!あァ、辛抱しんばうしてつてたら此麽こんななさけないやしなかつたらうに!』とつぶやきながら、大急おほいそぎでけてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
只今たゞいま御門ごもんまへ乞食坊主こじきばうずがまゐりまして、御主人ごしゆじんにおかりたいとまをしますがいかがいたしませう」とつた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)