意地いぢ)” の例文
世間ではあなたを善良な婦人だと思ふでせう。だけどあなたは本當は意地いぢの惡い無情な人です。あなたこそ人をだましてゐらつしやるのです。
てん恩惠めぐみかさね/″\くだり、幸福かうふく餘所行姿よそゆきすがた言寄いひよりをる。それになんぢゃ、意地いぢくねのまがった少女こめらうのやうに、口先くちさきとがらせて運命うんめいのろひ、こひのろふ。
片親かたおやるかとおもひますると意地いぢもなく我慢がまんもなく、わび機嫌きげんつて、なんでもことおそつて、今日けふまでも物言ものいはず辛棒しんぼうしてりました、御父樣おとつさん御母樣おつかさん
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貸與かしあたへたれば左京は欣然きんぜんと支度を調とゝのふもとさして出で行きし跡に大膳は一人つぶやき左京めが己れが意地いぢ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんとふことだ。天氣てんき上等じやうとうのとほりの青空あをぞらだ。かうして自分じぶん荷車にぐるまにのせられ、そのうへにこれはまたほか獸等けものら意地いぢめられないやうに、用意周到よういしうとうなこの駕籠かご
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
其上そのうへすこしのひまぬすんですわりでもすると、うしろから意地いぢわる邪魔じやまをされる、毒吐どくづかれる、あたまてにはなん因果いんぐわ坊主ばうずになつたかとくやことおほかつたとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かはばかりの死骸しがいもりなかくらところ、おまけに意地いぢきたな下司げす動物どうぶつほねまでしやぶらうと何百なんびやくといふすうでのしかゝつてには、をぶちまけてもわか気遣きづかひはあるまい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くら意地いぢつてるな、鑑定めきゝむとこれからお茶を立てるんで御広間おひろまかまかゝつてる、おめえにも二三教へた事もつたが、何時いつむやうにして茶碗ちやわんなぞはわかりません
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さう意張いばつてりやア、ここで意地いぢめてやるぞ」と、義雄は敵のすきへ石を一つ打ち込んだ。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
わたくし拳鬪けんとう仕合しあひはことはあるが、まだやつたことは一もない、しか申込まうしこまれてはをとこ意地いぢ、どうなるものかと一ばん立合たちあつてたがれぬわざ仕方しかたがない、散々さん/″\つて
「さういつちやなんだがおしな隨分ずゐぶんまへぢや意地いぢいて苦勞くらうしたこともるからね」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いよ/\忌々いま/\しくて仕樣しやうがないので、またばかりつゞけた。矢張やはなんごたへもない。もううなつてると此方こつち意地いぢだ。畜生ちくしやう、いつまでゝもめるものかと根氣こんきよくきつゞけた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
アダムの二本棒にほんぼう意地いぢきたなさのつまぐひさへずば開闢かいびやく以来いらい五千ねん今日こんにちまで人間にんげん楽園パラダイス居候ゐさふらふをしてゐられべきにとンだとばちりはたらいてふといふ面倒めんだうしやうじ〻はさて迷惑めいわく千万せんばんの事ならずや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
したがつてこはい時はあひ手からひどくこはがられるが、あまい時はまただらしがないほどあまくなつてしまふ。そのくせ負けずきらひだものだから、負けると口惜しさのあまりに意地いぢになつてやるといふ風になる。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
だが、この人の顏の意地いぢの強さうな線から見ると、どうも餘り從順すなほな人ぢやなさゝうに思はれるんだ。
ロミオ いや/\、あさらする雲雀ひばりぢゃ、ナイチンゲールのこゑではない。戀人こひびとよ、あれ、おやれ、意地いぢわる横縞よこじまめがひがしそらくも裂目さけめにあのやうなへりけをる。
龍華寺りようげじ信如しんによしゆう修業しゆげうには立出たちいづ風説うわさをも美登利みどりえてかざりき、あり意地いぢをばそのまゝにふうめて、此處こゝしばらくのあやしの現象さまれをれともおもはれず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二日ふつか午後ごごけむり三方さんぱうながら、あきあつさは炎天えんてんより意地いぢわるく、くはふるに砂煙さえん濛々もう/\とした大地だいち茣蓙ござ一枚いちまい立退所たちのきじよから、いくさのやうなひとごみを、けつ、くゞりつ
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
意地いぢ入聟いりむこ同樣にやかましく朝夕てうせき云ける故九助も何卒なき母が遺言ゆゐごんの如く田地を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小松こまつくぬぎはやしまじつて、これれゝばひと肌膚はだへせるほどこは意地いぢわるつたすゝきまでが、さうしなければにもたないのに態々わざ/\薄赤うすあかやはらかな穗先ほさきたかくさしげて、ひとばいさわいだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そこへ、するすると意地いぢわる蚯蚓みゝずひだしてきました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
もんをしめてうちれずにかしてやらん、とふをめて、其樣そのやう意地いぢわるはおつしやるな、母樣かあさまがおきヽにならばるし、れでも姉樣ねえさまたちは自分じぶんばかり演藝會えんげいくわい花見はなみきて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本來ほんらいなら、別行べつぎやうしたゝめて、おほい俳面はいめんたもつべきだが、惡口わるくち意地いぢわるいのがぢき近所きんじよるから、謙遜けんそんして、二十字にじふじづめのなかへ、十七字じふしちじ割込わりこませる。いはく、千兩せんりやう大禮服たいれいふく土用干どようぼし
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『出來るものならいて見せろ!』『意地いぢをはりたけりやいて見せろ!』
かくさんが爲にとぼけらるゝか其所らは貴殿より此方が苦勞人くらうにん最早何も斯も御上へ知れて居る己が白状しねへとておたがひに助からぬ命なり意地いぢ不潔きたな愚※々々ぐづ/\せずと奇麗きれいに白状して惡徒あくたうは又惡徒だけ男らしく云て仕舞と云へば長庵は彌々空嘯そらうそぶき三次とやらん何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むしづのはしるほどやがることうたがひなしと苦笑にがわらひしておほせられしが『あるときはありのすさびにくかりき、くてぞひとこひしかりける』とにもかくにも意地いぢわるの意地惡いぢわるのや。
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
極楽ごくらくから剰銭つりせんとしで、じやうぬまをんなかげ憂身うきみやつすおかげには、うごく、はたらく、彫刻物ほりものきて歩行あるく……ひとりですら/\と天守てんしゆあがつて、魔物まものねや推参すゐさんする、が、はり意地いぢいてるぞ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丸窓まるまどにうつるまつのかげ、幾夜いくよながめてつきやみになるまゝにいとこゝろそのとほり、うちあけてはひもならぬ、となりひと素性すじやうきゝたしとおもふほど、意地いぢわろくれもげぬのかそれともにらぬのか
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なんとしてもうまくはすげることらぬ口惜くやしさ、ぢれて、ぢれて、たもとなかから記事文きじぶん下書したかきしていた大半紙おほばんしつかし、ずん/\ときて紙縷こよりをよるに、意地いぢわるのあらしまたもやおと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母御前はゝごぜ意地いぢわるにさからふやうのこときみとしてきに相違さういなけれどもこれだい一にこゝろがけたまへ、ふことはおほし、おもふことはおほし、れはおわるまできみのもとへふみ便たよりをたゝざるべければ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そばへゆけばげる、はなしをればおこる、陰氣いんきらしいのつまる、どうしていやら機嫌きげんりやうもい、のやうなこ六づかしやはおもひのまゝにひねれておこつて意地いぢはるがたいならんに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
火事かじところもありいくさところもあり、ぼく大變たいへんきなれば、姉樣ねえさま御覽ごらんにならば吃度きつときならん、大姉樣おほねえさま上野うへののも淺草あさくさのも方々はう/″\のを幾度いくどしに、中姉樣ちうねえさま一度いちどれてかぬは意地いぢわるではきか
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)