大木たいぼく)” の例文
最早もはや最後さいごかとおもときに、鎭守ちんじゆやしろまへにあることに心着こゝろづいたのであります。同時どうじみねとがつたやうな眞白まつしろすぎ大木たいぼくました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
お気の毒様なこつたが独活うど大木たいぼくは役にたたない、山椒さんしよは小粒で珍重されると高い事をいふに、この野郎めと脊をひどく打たれて
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すぎ大木たいぼく西にしたふしたのでづしんとそこらをおそろしくゆるがしておしなにはよこたはつた。えだくぢけてそのさきにはつちをさくつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一ぽうを見ると、そこにすばらしく大きいむく大木たいぼくがある。その高いこずえの一たんがちょうど、鳥居とりい横木よこぎにかかっているので
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
言上に及ぶに光貞卿ふかよろこび然らばしばらくの内其方へあづおくべしとて城内二の丸の堀端ほりばた大木たいぼくの松の木あり其下へ葵紋あふひもんぢらしの蒔繪まきゑ廣葢ひろぶたに若君を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うよりはや天狗てんぐさんは電光いなづまのように道場どうじょうからしたとおももなく、たちまちするすると庭前ていぜんそびえている、一ぽんすぎ大木たいぼくあがりました。
そこにはいくにん土方どかた工夫こうふはいっていて、むかしからの大木たいぼくをきりたおし、みごとないしをダイナマイトでくだいて、そのあとから鉄道てつどういておりました。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夜業やげうの筆をさしおき、枝折戸しをりどけて、十五六邸内ていないを行けば、栗の大木たいぼく真黒まつくろに茂るほとりでぬ。そのかげひそめる井戸あり。涼気れうきみづの如く闇中あんちう浮動ふどうす。虫声ちうせい※々じゞ
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
にわか雨をさけて、のきの下や大木たいぼくかげに、立ちよって晴間はれまを待つことを、昔の人たちはヤメルといっていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ひょいと方向が違ってしまったと見えて大木たいぼくの根をグルリと廻って見ても、そこに父の姿は見出せなかった。
かた地伏ぢふくの上に立てられた、がっしりした大きなお宮である。お宮のそとには大きなけやきの木がそびえたっている。その大木たいぼくの上のえだは天をおおっている。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
一、月並風つきなみふうに学ぶ人は多く初めより巧者を求め婉曲えんきょくを主とす。宗匠また此方より導く故についに小細工に落ちて活眼を開く時なし。初心の句は独活うど大木たいぼくの如きをとうとぶ。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いまから一千八百年いつせんはつぴやくねんばかりむかし筑紫つくしいま九州きゆうしゆう)に扶桑木ふそうぼくつて、なかまれ大木たいぼくがありました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
だんだんおやしろちかづくにしたがってもりふかくなって、まだ日がれたというでもないのに、すぎやひのきの大木たいぼくかさなりってしげった中からは、まるで日の目がもれません。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
生死のほども如何いかが相なり候と、恐る/\のぞき申候に、崖はなか/\険岨けんそにて、大木たいぼくよこざまに茂り立ち候間より広々としたる墓場見え候のみにて、一向に人影も無御座ござなく候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
日本は段々大木たいぼくとなった。小さいうちかったが、大きくなったら大きな風が吹く。この風に抗抵する力を養わなければならぬ。この力を培養するのが文明的運動である。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
僕は、若いときに宗教にひき入れられたので、宗教が僕の素質をこんな風に教化けうくわしました。——つまり、宗教は、自然的な愛情と云ふ小さな芽から、博愛といふ大木たいぼくを成長させました。
およ後方こうほうまうけられたる遞進機ていしんきとを使用しようして、のぼ山道やまみち大木たいぼく巨巖等きよがんとうちからに、螺旋形らせんけい尖端せんたん螺釘らていごと前方ぜんぽう大木たいぼくねぢみ、車内しやない揚上機やうじやうき運轉うんてんともに、その螺旋らせん自然しぜん收縮しゆうしゆくして
人家がつきると、昔の城址しろあとでもあったかと思われるような土手とほりとがあって、土手にはささや草が一面に繁り、濠には汚ないびた水がかししい大木たいぼくの影をおびて、さらに暗い寒い色をしていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
大木たいぼくにたえず花さくわが森をともに歩むにふさふと云ひぬ
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
弱けれどたゞさちありて大木たいぼくの倒るゝ蔭にわれ生き残る
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
旅人を風が臼にて摺るごとく思ふ峠の大木たいぼくのもと
大木たいぼくを うらやみて おりてきたれる
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
大木たいぼくの霧の石階いしきだほの青み
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大木たいぼくのやうに倒れろ
大木たいぼくみきに耳あて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
天狗てんぐまないたといひますやうな 大木たいぼくつたのが据置すゑおいてあるんです。うへへ、わたし内外うちときぬられて、そしてかされました。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
毒樣どくさまなこつたが獨活うど大木たいぼくやくにたゝない、山椒さんしよ小粒こつぶ珍重ちんちようされるとたかことをいふに、此野郎このやらうめとひどたれて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かぜをよけて、自分じぶんをかばってくれた、あのやさしいおじさんの大木たいぼくも、あるとしなつ晩方ばんがたのこと、もくらむばかりの、いなずまといっしょにちた、かみなりのために
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこには、たちまち矢叫やさけび、吶喊とっかんこえ大木たいぼく大石たいせきを投げおとす音などが、ものすさまじく震撼しんかんしだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『ではあぶらつぼのすぐ南側みなみがわあたる、たかがけのあるところでございましょう、大木たいぼくのこんもりとしげった……。』
それだからすでたきぎるべき時期じきすごして、大木たいぼくさうそなへて團栗どんぐりあささらせられるやうにれば、枯葉かれはいさぎよいてからりとさわやかに樹相じゆさうせるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
聖廟の周囲から神田明神前の塀際には年経た椎の木に交って木犀の古樹が林をなしていた。これほど多く木犀の大木たいぼくを仰見るところは、東京市中上野や芝の公園にもなかったであろう。
木犀の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
するとくらやみの中から、うう、うう、とうなるようなものすごいこえこえました。やがてばっさりと、まるで大木たいぼくでもたおれたようなおとがして、なにか上から大きなものがちてきました。
忠義な犬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ぎに日本につぽんにある長生ながいきをしてゐる大木たいぼく有名ゆうめいなものをすこげてませう。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
大木たいぼく を たたく
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
大木たいぼくをみろ
雪難之碑せつなんのひ。——みねとがつたやうな、其處そこ大木たいぼくすぎこずゑを、睫毛まつげにのせてたふれました。わたしゆきうもれてく………身動みうごきも出來できません。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御岳の神領しんりょうであるから、おのをいれるそまもなかった。そこに、ご神刑の千ねん山毛欅ぶなとよぶ大木たいぼくがあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは、 屋根やねると、眼下がんか大木たいぼくがけて、それにしがみつこうとしてんだ。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして四辺あたりにはとてもえだぶりのよい、見上みあげるようなすぎ大木たいぼくがぎッしりとならんでりましたが、そのなかの一ばんおおきい老木ろうぼくには注連縄しめなわってあり、そしてそのかたわら白木造しらきづくりの
勘次かんじやうや整骨醫せいこついもんたつした。整骨醫せいこついいへはがらたけ垣根かきね珊瑚樹さんごじゆ大木たいぼくおほひかぶさつて陰氣いんきえてた。戸板といたを三角形かくけいあはせて駕籠かごのやうにこしらへたのが垣根かきねうちかれてあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
歩いて行くうちいつか浅草あさくさ公園の裏手へ出た。細い通りの片側には深いどぶがあって、それを越した鉄柵てつさくの向うには、処々ところどころの冬枯れして立つ大木たいぼくの下に、五区ごく揚弓店ようきゅうてんきたならしい裏手がつづいて見える。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さいはひにもあとでつひにその大木たいぼくたふれてしまひました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
しづく餘波あまりつるにかゝりて、たますだれなびくがごとく、やがてぞ大木たいぼく樹上きのぼつて、こずゑねやさぐしが、つる齊眉かしづ美女たをやめくもなかなるちぎりむすびぬ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、おまえは、大木たいぼくになるばえだとはいうものの、それまでには、おおかみにまれたり、きつねにまれたりしたときには、れてしまおう。そうすれば、それまでのことだ。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
歩いてうちいつか浅草公園の裏手うらてへ出た。細いとほりの片側かたがはには深いどぶがあつて、それを越した鉄柵てつさくむかうには、処々ところ/″\冬枯ふゆがれして立つ大木たいぼくしたに、五区ごく揚弓店やうきゆうてんきたならしい裏手うらてがつゞいて見える。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
こけかとゆる薄毛うすげ天窓あたまに、かさかぶらず、大木たいぼくちたのが月夜つきよかげすやうな、ぼけやたいろ黒染すみぞめ扮装でたちで、かほあを大入道おほにうだう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おお、ほんとうにいいだ。おまえは、すえには大木たいぼくとなるばえなんだ。おまえのれた年老としとったおやは、よくこの野原のはらなかおれたちと相撲すもうったもんだ。なかなか勇敢ゆうかんたたかったもんだ。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そん大木たいぼくのあるのはけだ深山しんざんであらう、幽谷いうこくでなければならぬ。ことにこれは飛騨山ひだやまから𢌞まはしてたのであることをいてた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)