苦痛くつう)” の例文
とその家庭かてい苦痛くつう白状はくじやうし、ついにこのしよ主人公しゆじんこうのち殺人さつじん罪人ざいにんなるカ……イ……をともなひてその僑居けうきよかへるにいた一節いつせつきはめて面白おもしろし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
ことに、やまなかは、もうさむかったのであります。こんなときも、地主じぬしは、ダイヤモンドのひかりえがいて、苦痛くつうわすれたのであります。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
以て役人の手をかり無理無體むりむたいに我を殺さんとなす成ん然すれば何程苦痛くつうたへるともつひには命を失はずには置れまじ此上は一日も早く苦痛くつう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたし自分じぶん不安ふあん苦痛くつううつたへたが、それかひはなく、このまゝ秘密ひみつにしてくれとつま哀願あいぐわんれて、此事このことは一そのまゝにはふむることにした。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼女かのじよはその苦痛くつうたへられさうもない。けれどもくろかげかざしてたゞよつて不安ふあんは、それにもして彼女かのぢよくるしめるであらう。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
たちがたき因縁いんねんにつながる老人は、それがためまたあきらめてもあきらめられぬ羞恥しゅうち苦痛くつうをおいつつあったのである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と、これつたことばです、智者ちしや哲人てつじんしくは思想家しさうかたるものゝ、他人たにんことなところてんは、すなはこゝるのでせう、苦痛くつうかろんずるとことに。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こらへよ、暫時しばし製作せいさくほねけづり、そゝいで、…苦痛くつうつくなはう、とじやうぬまたいして、瞑目めいもくし、振返ふりかへつて、天守てんしゆそらたか両手りやうてかざしてちかつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女房にようばう横臥わうぐわすることも苦痛くつうへないで、んだ蒲團ふとんかゝつてわづかせつない呼吸いきをついてた。胎兒たいじかしめたみづ餘計よけいたまつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だから其所そこふにしのびない苦痛くつうがあつた。彼等かれら殘酷ざんこく運命うんめい氣紛きまぐれつみもない二人ふたり不意ふいつて、面白おもしろ半分はんぶんおとしあななかおとしたのを無念むねんおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
罹災者りさいしやたゞちにまたみづか自然林しぜんりんからつて咄嗟とつさにバラツクをつくるので、がう生活上せいくわつじやう苦痛くつうかんじない。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
「この事件は、ぼくら四人の胸にひめておこう、ほかの者にいらぬ心配をさせるのは苦痛くつうだから……」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
生れて人間にんげんの價値をも知らず、宇宙の意味をも考へないで、一生を衣食いしよくため營々えい/\として浪費らうひして了ツたら、其は随分つらいだらうが、たか些々さゝたる肉躰上にくたいじよう苦痛くつうのみなのだから
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
人が喰合くいあう都会では、人口の増加は苦痛くつうの問題だが、自然を相手に人間のたたかう田舎の村では、味方の人数が多い事は何よりも力で強味つよみである。小人数こにんずの家は、田舎ではみじめなものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かれらはただいま追跡ついせき中であると検事けんじが言った。そうすると、わたしはその男とならんで、囚人席しゅうじんせきに入れられて、巡回裁判官じゅんかいさいばんかんの前に出る恥辱ちじょく苦痛くつうをしのばなければならないのであろう。
不愉快ふゆくわい人車じんしやられてびしい溪間たにまおくとゞけられることは、すこぶ苦痛くつうであつたが、今更いまさら引返ひきかへすこと出來できず、其日そのひ午後ごゝ時頃じごろ此宿このやどいた。突然とつぜんのことであるから宿やど主人あるじおどろかした。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
犬芥いぬがらし苦痛くつうにほほゑむ尼僧にそう、隱れたる殉教者じゆんけうしやの光。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ふつふつと苦痛くつうをかもす蜜の息。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なかにはあおかおをして、うめいて、ねむられずにいるのもあります。また、なかには苦痛くつうにたえられないで、いているのもあります。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
するぞて藤兵衞が所持しよぢの脇差を如何の譯で汝ぢが手にいりたるぞサア/\其譯そのわけ白状すべしと問詰とひつめられて彌十は苦痛くつう堪兼たへかねとても免れぬ處と覺悟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とうとう二、三ばんつことにした。人間も糟谷かすやのような境遇きょうぐうつるとどっちへむいても苦痛くつうにばかり出会であうのである。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
いやわたくしらうとおもふのは、なんため貴方あなた解悟かいごだの、苦痛くつうだの、れにたいする輕蔑けいべつだの、其他そのたこといてみづか精通家せいつうかみとめておいでなのですか。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
本気ほんき沙汰さたではない、にあるまじき呵責かしやく苦痛くつうけてる、女房にようばう音信おとづれいて、くわつつてちがつたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
曝露ばくろがまともに彼等かれら眉間みけんたとき、彼等かれらすで徳義的とくぎてき痙攣けいれん苦痛くつうつてゐた。彼等かれら蒼白あをしろひたひ素直すなほまへして、其所そこほのお烙印やきいんけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
醫者いしやはモルヒネの注射ちうしやをしてわづか睡眠すゐみん状態じやうたいたもたせて苦痛くつうからのがれさせようとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
腰の腫物はれもので座蒲団も無い板敷の長座は苦痛くつうの石山氏の注意で、雑談会ざつだんかいはやおら相談会に移った。慰兵会の出金問題しゅっきんもんだい、此は隣字から徴兵ちょうへいに出る時、此字から寸志を出す可きや否の問題である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
病人にすすめてよくその苦痛くつうやわらぐる下剤げざいを服用させることができましょうや。
雖然お房のみたす爲にあへて此の苦痛くつうしのんだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
生贄いけにへ苦痛くつうか、あなや
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なにがそうさせるのか、とにかく、この苦痛くつうおおなかで、こうした人々ひとびと存在そんざいは、どんなになぐさめとなることでしょう。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
えゝ、生甲斐いきがひ生活せいくわつだ、如何いかにも殘念ざんねんことだ、苦痛くつう生活せいくわつがオペラにあるやうな、アポテオズでをはるのではなく、これがあゝをはるのだ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
このごろ老人もようやくわすれんとしつつありしをきょうは耳新しく、その狂婦きょうふもなくなったとげられ、苦痛くつう記憶きおくをことごとく胸先むなさきびおこして
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
合せ幾度いくたびか助てたべと歎くにぞ三次もこゝろおくれてかおににさへ涙とやら不便の者やと思ひしゆゑ彼の長庵が惡事の段々だん/\苦痛くつうなしゐるお安に聞せ夫故お前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのうち電車でんしや神田かんだた。宗助そうすけ何時いつものとほ其所そこえてうちはういてくのが苦痛くつうになつた。かれ神經しんけいは一でも安井やすゐ方角はうがくちかづくにえなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いましもなんぢこゝろみつる、苦痛くつうもつすゐしてなり。渠等かれらとてもひとこゝろなにわかちのあるべきぞ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かぎりなき生命いのち苦痛くつう
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
また、母親ははおやは、こえ真心まごころつうじて、子供こども苦痛くつうがやわらげられるものなら、どんなにでもして、うたってやろうとおもいました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかしこころ苦痛くつうにてかれかおいんせられた緻密ちみつ徴候ちょうこうは、一けんして智慧ちえありそうな、教育きょういくありそうなふうおもわしめた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
糟谷かすやはこのあいだにも細君の目をそらして、これら無心むしんの母子をぬすみ見たのである。そうしてさびしいはかない苦痛くつうが、むねにこみあげてくるのである。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
苦痛くつうかほの、みにくさをかくさうと、うらおもておなゆきの、あつく、おもい、外套ぐわいたうそでかぶると、またあをかげに、紫陽花あぢさゐはなつゝまれますやうで、白羽二重しろはぶたへうら薄萌黄うすもえぎがすツととほるやうでした。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おとうとのほうは、母親ははおやのたもとにすがったり、そのからだをまわったりして、ときどき、だまってあるいている母親ははおやかおあおいで、苦痛くつううったえるのでした。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いやわたくしろうとおもうのは、なんため貴方あなた解悟かいごだの、苦痛くつうだの、それにたいする軽蔑けいべつだの、そののことにいてみずか精通家せいつうかみとめておいでなのですか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
自分はなんらおかしたつみはないと考えても、それがために苦痛くつう事実じじつかるくなるとは思えないのだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
一時ひとときばかり、あひだ苦痛くつうつてはありません。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぼくは、またきみこそ、過去かこ苦痛くつう連続れんぞくであって、こうしてのんきにしていられるのが、どんなにきみにとって幸福しあわせのことかしれないとおもったが、やはり
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ええ、生甲斐いきがい生活せいかつだ、如何いかにも残念ざんねんなことだ、この苦痛くつう生活せいかつがオペラにあるような、アポテオズでおわるのではなく、これがああおわるのだ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかしながら、波瀾はらん表面ひょうめんに見せないだけ、お政が内心の苦痛くつう容易よういなわけのものでなかった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「いやそうでない。家来けらいどもが、毎日まいにちおれ苦痛くつうわすれてはならないという、忠義ちゅうぎこころからあつさをこらえさせるのであろう。」とおもわれたこともあります
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
馬引うまひきは、つなで、ピシリ、ピシリとうまのしりをたたきつけました。うまは、苦痛くつうにたえかねてがりました。
あらしの前の木と鳥の会話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もはや、かれは、空腹くうふくかんずるどころでありません。ただ、うとうととして、苦痛くつうをこらえて、けたりじたりして、えだにしがみついているばかりでした。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)