存在そんざい)” の例文
「何も驚くことはありやしない。此の臭をれて平氣へいきになツて了はなけア、自分で自分の存在そんざい保證ほようすることが出來ないんだ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
は既に頭巾と覆面ふくめんとの事に付きて言ひしが如く遮光器の存在そんざいに關しても當時たうじ氣候きかう寒冷かんれいなりしならんとの事を想像さうざうするなり。(續出)
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
是等が真面目しんめんもくならざる宗教家しふけうかなり、彼等の存在そんざい教会けうくわいがいあり、社界しやかいに害あり、国家こくかがいあり、今日は彼等を排除はいぢよすべき時なり。
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
なにがそうさせるのか、とにかく、この苦痛くつうおおなかで、こうした人々ひとびと存在そんざいは、どんなになぐさめとなることでしょう。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかすで監獄かんごくだとか、瘋癲病院ふうてんびやうゐんだとかの存在そんざいする以上いじやうは、たれ其中そのうちはひつてゐねばなりません、貴方あなたでなければ、わたくし、でなければ、ほかものが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わがくにおい此現象このげんしようだかつて大規模だいきぼおこしたことのないのは、たん此現象このげんしようおこすに適當てきとう構造こうぞう場所ばしよ存在そんざいしないのにるものであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
狐疑こぎしてるやうなその容貌ようばうとは其處そこあへ憎惡ぞうをすべき何物なにもの存在そんざいしてないにしても到底たうてい彼等かれら伴侶なかますべてと融和ゆうわさるべき所以ゆゑんのものではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
やく〇、〇〇〇〇〇五ミリ くらいまでのものならばぼんやり光る点になって視野しやにあらわれその存在そんざいだけをしめします。これを超絶顕微鏡ちょうぜつけんびきょういます。
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
だから卷煙草まきたばこをつけたわたくしは、ひとつにはこの小娘こむすめ存在そんざいわすれたいとこころもちもあつて、今度こんどはポケットの夕刊ゆふかん漫然まんぜんひざうへへひろげてた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
宗助そうすけこの臆斷おくだんゆるすべき餘地よちが、安井やすゐ御米およねあひだ充分じゆうぶん存在そんざいるだらうぐらゐかんがへて、ながら可笑をかしくおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
日本人にほんじんのあの花合はなあはせにさへじつ多岐多樣たきたやう詐欺さぎ、いんちきの仕方しかたがあるといふのだから、勝負事しようぶごとといふものが存在そんざいするかぎむをないことかもれない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ひさしぶりで孤獨こどく生活せいくわつつてる、これも病氣びやうきのおかげかもれない。色々いろ/\なことをかんがへてひさしぶりで自己じこ存在そんざい自覺じかくしたやうながする。これはまつた孤獨こどくのおかげだらうとおもふ。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
で、竜宮界りゅうぐうかいのみを竜神りゅうじん世界せかいおもうのはおおきな間違まちがいで、竜神りゅうじんはたら世界せかいは、かぎりもなく存在そんざいするのである。が、しかし神々かみがみにとりてなによりもうれしいのは矢張やはりあの竜宮界りゅうぐうかいである。
建築けんちく本義ほんぎそれ永久えいきう懸案けんあんである。我輩わがはいいまにわかにこれ解決かいけつのぞまない、ただいつまでも研究けんきうをつゞけてい、建築けんちくてふもの存在そんざいするかぎり、いつまでも論議ろんぎをつゞけてい。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
この無頓著むとんちやくひとと、みちもとめるひととの中間ちゆうかんに、みちふものゝ存在そんざい客觀的かくくわんてきみとめてゐて、それにたいしてまつた無頓著むとんちやくだとふわけでもなく、さればとつてみづかすゝんでみちもとめるでもなく
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
存在そんざいするもありとかや。
然らば其時そのとき汝は宇宙うちう存在そんざいするすべての誠実せいじつなる人と一致いつちせしなり、一致のかたきは外が来て汝と一致せざるに非ずして汝の誠実せいじつならざるにあり。
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
ひとり自然しぜんうつくしいばかりでなかった。こうして、かんがえ、よろこび、希望きぼうをもつ、人間にんげんがまた偉大いだいであり、とうと存在そんざいであるのをりました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかしすでに監獄かんごくだとか、瘋癲病院ふうてんびょういんだとかの存在そんざいする以上いじょうは、たれかそのうちはいっていねばなりません、貴方あなたでなければ、わたくし、でなければ、ほかものが。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
敵をころしたる時復讐ふくしうの意を以て其肉を食ふとか、親戚しんせきの死したる時敬慕けいぼじやうを表す爲其肉を食ふとか、幾分いくぶんかの制限せいげんは何れの塲合にも存在そんざいするものなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
そして、そのあひだにもえず三にん樣子やうす警戒けいかいし、なほも二三蜘蛛くも死骸しがい存在そんざいをたしかめにつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そのうち樽前たるまへ明治四十二年めいじしじゆうにねん噴火ふんかおいて、火口かこうからプレーしき鎔岩丘ようがんきゆうし、それがいまなほ存在そんざいして時々とき/″\その彼方此方かなたこなたばすほど小爆發しようばくはつをつゞけてゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
彼等かれらは、日常にちじやう必要品ひつえうひん供給きようきふする以上いじやう意味いみおいて、社會しやくわい存在そんざいほとんどみとめてゐなかつた。彼等かれらつて絶對ぜつたい必要ひつえうなものは御互おたがひだけで、その御互おたがひだけが、彼等かれらにはまた充分じゆうぶんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
計算されていますから私共は分子の形や構造こうぞう勿論もちろんその存在そんざいさえも見得みえないのです。
手紙 三 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
相当そうとうながあいだこちらの世界せかいんで私達わたくしたちですらそうかんずるのでございますから、現世げんせ方々かたがたとしては尚更なおさらのことで、容易ようい竜神りゅうじん存在そんざいしんじられないはずだとおさっしすることができます。
しかし、いまつたとほり、どういふ書物しよもつつたところが、たれでもれをみさへすれば、かならめになるといふ書物しよもつは、出版書肆しゆつぱんしよし廣告以外くわうこくいぐわい存在そんざいするはずはないのだから、はなはたよりのないものである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
存在そんざいするもありとかや。
ここにえているや、くさたちは、ほんとうに雷鳴らいめいと、暴風雨ぼうふううよりほかにおそろしいものが、この宇宙うちゅう存在そんざいすることをらなかったのでした。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
植物質ちよくぶつしつのものにして今日迄に石器時代遺跡せききじだいいせきより發見されたるはひし、胡桃の、及び一種の水草すいさうの類にして、是等はただ有りのままの形にて存在そんざいしたるのみ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
で、その存在そんざいをたしかめると、安心あんしんしたやうにまたすぐあなところりてた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
入神中にゅうしんちゅうのTじょ意識いしきおくほうかすかにのこってはいるが、それは全然ぜんぜん受身うけみ状態じょうたいかれ、そして彼女かのじょとは全然ぜんぜん別個べっこ存在そんざい——小櫻姫こざくらひめ名告なの人格じんかく彼女かのじょ体躯たいく司配しはいして、任意にんいくちうごかし
まる存在そんざいしてゐなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
このこころざしがあればこそ、骨董屋こっとうやにもなったであろうが、この老人ろうじんのいうごとく、というものは、まったくかねには関係かんけいのない存在そんざいであるとおもいます。
らんの花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はちえず三にん存在そんざい警戒けいかいしながらも、一しんに、敏活びんくわつはたらいた。あたまつち突進とつしんする。あしさかんつちをはねのける。それはしづかしたあかるいあき日差ひざしなかなみだあつくなるやうな努力どりよくえた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
いつのまにか、菓子屋かしや看板かんばん美人びじんは、このまちひとたちの仲間入なかまいりをして、りっぱな存在そんざいになったのであります。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
不幸ふこう山吹やまぶきなえが、存在そんざいしているということは、みつばちをはじめ、毎日まいにち、そこらへきて、くちやかましくおしゃべりをするすずめたちにも、がつかなければ
親木と若木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その、その存在そんざいすらわすれられていたのでした。きゃくは、どういうつもりか、その人形にんぎょうってゆきました。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そんなに堅固けんごな、のほどのらない、てつというものが、この宇宙うちゅう存在そんざいするのか? おれは、そのことをすこしもらなかった。」と、盲目めくらほしはいいました。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間にんげんが、まったくあいしなくなったら、そのくにほろびてしまうだろう。人間にんげんあいする本能ほんのうがなかったら、芸術げいじゅつというものは、はじめから存在そんざいしないのだから。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それが、さかずきにとって、芸術げいじゅつちからでなくて、偶然ぐうぜん存在そんざいだと、なんでいうことができましょう。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、この黄昏方たそがれがたに、じっとさかずきをって、見入みいりながら、利助りすけというような名人めいじんが百年前ねんまえむかし、このなか存在そんざいしていたことについて、とりとめのない空想くうそうから
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「しかし、おまえたちは、おれ存在そんざいわすれないだけ感心かんしんだ。こんどだけは、はいるまい。」
死と話した人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある家来けらいたてまつったたまおうさまは、ってながめられ、なるほど、うつくしいいろをしている。どうして、このようなみごとなものがこのなか存在そんざいするだろうかといわれました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
真夜中まよなかごろ、は、あたまうえを、あおほのおをひいてながれるほしました。なんとなく、宇宙うちゅう存在そんざいするいっさいのものが、運命うんめい支配しはいされ、流転るてんすることをかたるごとくにかんじたのです。
しんぱくの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まつは、旅人たびびとのひとりごとをきいて、自分じぶんとよくが、この地上ちじょうのどこかに存在そんざいしていることをったのです。それは、たがいに相見あいみることはなくとも兄弟きょうだいでなければならない。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
よくその意味いみはわからぬが、ぼく存在そんざい無視むしするということでないだろうか。
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
てつという、堅固けんごなものが存在そんざいして、自分じぶん反抗はんこうするようにかんがえたからです。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
は、ためいきをついてさけんだほど、その存在そんざいみとめられなかったのです。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、このまつが、すこしばかりもとのうえに、自分じぶん小枝こえだかげつくられるほどになったとき、その存在そんざいみとめてくれたのは、そらをゆくくもでもなければまた小鳥ことりたちでもありませんでした。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、また、それは、どこかに存在そんざいしなければならぬものでした。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)