運命うんめい)” の例文
「なんというおそろしいところだ。どうしてこんなところにまれてきたろう。」と、ちいさなあかはなは、自分じぶん運命うんめいをのろいました。
小さな赤い花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あゝ孤獨こどく落魄らくばくこれが僕の運命うんめいだ。僕見たいなものが家庭を組織そしきしたら何うだらう。つまにはなげきをには悲しみをあたへるばかりだ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
自分じぶん大学だいがくにいた時分じぶんは、医学いがくもやはり、錬金術れんきんじゅつや、形而上学けいじじょうがくなどとおな運命うんめいいたるものとおもうていたが、じつおどろ進歩しんぽである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あゝ、海賊船かいぞくせんか、海賊船かいぞくせんか、しもあのふね世界せかい名高なだか印度洋インドやう海賊船かいぞくせんならば、そのふねにらまれたるわが弦月丸げんげつまる運命うんめい最早もはや是迄これまでである。
いわば一党の人の然諾ぜんだくと咲耶子の運命うんめいとは二つながら、かかって自分の双肩そうけんにあるのだ。敗れてなるものか、おくれてなるものか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たゞ同棲後どうせいご彼女かのぢよは、けつして幸福かうふくではなかつた。おそらく彼女かのぢよもさう運命うんめいつかまうとおもつて、かれのところへたのではなかつたであらう。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
彼等かれら最初さいしよんだつち強大きやうだい牽引力けんいんりよく永久えいきう彼等かれらとほはなたない。彼等かれら到底たうていつちくるしみとほさねばならぬ運命うんめいつてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
御米およね廣島ひろしま福岡ふくをか東京とうきやうのこひとづゝ記憶きおくそこに、うごかしがたい運命うんめいおごそかな支配しはいみとめて、そのおごそかな支配しはいもとつ、幾月日いくつきひ自分じぶん
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なにしろ、王さまが門という門を番兵ばんぺいですっかりかためさせてしまったのですから、この運命うんめいからのがれることはとてもできなかったのです。
もう一つ、この物語の「少年の卷」にも出て來ますが、ぐわんこで意地のわるい「運命うんめい」といふものが、人間の一生につきまとつてはなれません。
ああ思ひきや、西土せいどはるかにくべかりし身の、こゝに病躯びやうくを故山にとゞめて山河の契りをはたさむとは。しくもあざなはれたるわが運命うんめいかな。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
本當ほんたうかんがへてれば、一寸ちよつとした機會チヤンス、また一秒間びやうかんときめに、未來みらいのどんな運命うんめいないともかぎらないのだ。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
わたしは、それきたいの、きたいの、きたいの、……たとへばだよ……おまへさんの一言ひとことで、運命うんめいきまるとつたら
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
舞台ぶたいはいふまでもなくさくらそのの女しゆ人ラアネフスカヤの邸宅ていたく廣間ひろまで、時ははる、その方の名家もやがて沒落ぼつらくといふかなしい運命うんめいの前にあるのだが
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それが私たちを不安にさせ、口に出してこそいわなかったが、私たちは見えざる運命うんめいに対して、どんなに神経質になっていたか知れないくらいである。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
けれど何程なにほどのことがあらうと運命うんめいてんにゆだね、夢中むちうになつてけだしました。それからのことは一さいわかりません
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
てん恩惠めぐみかさね/″\くだり、幸福かうふく餘所行姿よそゆきすがた言寄いひよりをる。それになんぢゃ、意地いぢくねのまがった少女こめらうのやうに、口先くちさきとがらせて運命うんめいのろひ、こひのろふ。
平家へいけもん運命うんめいも、いよいよきわまり、安徳天皇あんとくてんのうをいただいた二位尼にいのあま水底すいていふかくしずむだんになると、いままで水をうつたようにしんとしていた広間ひろまには
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
牡羊のまえでは、じぶんの気もちをあらわしはしませんでしたが、ニールスは、心の中では羊たちの悲しい運命うんめいを、たいへん気のどくに思っていたのです。
彦兵衞へ渡して頼み給へ御番所へ度々たび/\いでもし舊惡きうあくが知れなば爲に成るまじと云へども運命うんめいつきたる勘兵衞故其事は少しも氣遣ひなしどうして/\身代が大切大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きぬはなして、おきぬ愈々いよ/\小田原をだはらよめにゆくことにまつた一でうかされたときぼく心持こゝろもちぼく運命うんめいさだまつたやうで、今更いまさらなんともへぬ不快ふくわいでならなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かわいそうな犬どもを、その運命うんめいのままにまかせるということは、どんなになさけないことであったろう。
運命うんめい人間にんげんかたちきざめり、境遇けふぐう人間にんげん姿すがたつくれり、不可見の苦繩人間の手足を縛せり、不可聞の魔語人間の耳朶を穿てり、信仰しんこうなきのひと自立じりつなきのひと寛裕かんゆうなきのひと
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
りかけたふねとやら、これも現世げんせ通信つうしんこころみるものまぬががた運命うんめい——ごうかもれませぬ……。
人世問題じんせいもんだいになんらかの考えがあって、いまの境遇きょうぐうにありとせば、いよいよ悲惨ひさん運命うんめいである。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
たけなるかみをうしろにむすびて、ふりたるきぬになえたるおびやつれたりとも美貌びばうとはにもゆるすべし、あはれ果敢はかなき塵塚ちりづかなか運命うんめいてりとも、きたなよごれはかうむらじとおもへる
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
辞表を書いて懐中かいちゅうに持ちながら諸般の事情によりその提出も出来ず待機たいきしているという不思議な運命うんめいの下にくらすこと一年で、昭和十一年の新春に、やっと辞表を平穏へいおんに出すことが出来た。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
その乗客じょうきゃくたちの運命うんめいは、まったく、自分ひとりのうでにあるといっていい。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
しかし、私はたゞなにらずに煙草たばこを吹かせてぼんやりとしてゐただけである。このぼんやりとしたゆるんだ心理しんりつゞいてゐる空虚くうきよ時間じかんに、もく々として私達わたしたち運命うんめいうごかせてゐた何物なにものかがあつた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
みじかいのちではあつた。それはふゆさだめられた運命うんめいである。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
李蹊りけい母堂ぼどう運命うんめいともにしたのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
運命うんめい運命うんめい
如是 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
星なり、運命うんめい
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ふしぎな運命うんめい
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かれらは、こうして、つねにともだちといっしょであったけれど、たがいの支配しはいする運命うんめいは、かならずしもおなじではなかったのです。
からす (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども其の埒外らちぐわいゐつすることの出來ないのが運命うんめいなのだから爲方しかたがない、性格悲劇せいかくひげきといふ戯曲ぎきよく一種いつしゆがあるが、僕等が丁度てうど其だ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
自分じぶん大學だいがくにゐた時分じぶんは、醫學いがく猶且やはり錬金術れんきんじゆつや、形而上學けいじゝやうがくなどとおな運命うんめいいたるものとおもふてゐたが、じつおどろ進歩しんぽである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
人の力でどうにもならないのは、皮肉ひにく運命うんめいで、その運命をえて案外あんがいにくるわすものは、これまた人力の自由にならぬ時間というものである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うして人々ひと/″\刻々こく/\運命うんめいせまられてくおしな病體びやうたい壓迫あつぱくした。おしな發作ほつさんだときかすかな呼吸こきふとまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
弦月丸げんげつまる運命うんめい最早もはやぷん、二ふん甲板かんぱんにはのこ一艘いつそう端艇たんていい、くなりては今更いまさらなにをかおもはん、せめては殊勝けなげなる最後さいごこそ吾等われらのぞみである。
宗助そうすけこの派出好はでずきおとうとが、其後そのごんな徑路けいろつて、發展はつてんしたかを、氣味きみわる運命うんめい意思いしうかゞ一端いつたんとして、主人しゆじんいてた。主人しゆじん卒然そつぜん
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おゝ、かぎりないうつくしさにはみながら、そのうつくしさはたゞ代限だいかぎり、ねばたねまでもくるとは、貧乏しがない/\運命うんめい
馬鹿ばかやつらだ。もう秋風あきかぜつたじやないか、ゑるもくも、それがどうした。運命うんめいはみんな一つだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
願ふ所存しよぞんなり萬一小石川御屋形おやかたに於ても御取用おとりもちひなき時は越前が運命うんめいつくときなり其時予は含状ふくみじやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ニールスは、いよいよじぶんの運命うんめいがどうきまるのか聞かされるにちがいない、と思いました。
まだわかい十八のとしに、彼女かれは、さびしい昔戀むかしこひしいやうな心持こゝろもちになつて、もしも自分じぶん松葉杖まつばづゑをつかない壯健そうけんをんなであつたならば、自分じぶん運命うんめいはどうなつたであらうかとかんがへた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
可悲かなしい、可恐おそろしい、滅亡めつばう運命うんめいが、ひとたちのに、暴風雨あらしつて、天地てんちとともに崩掛くづれかゝらうとするまへよる、……かぜはよし、なぎはよし……船出ふなでいはひに酒盛さかもりしたあと、船中せんちうのこらず
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし委細いさい事情じじょうってわたくしには、あのうつくしいおかお何所どこやらにひそむ、一しゅさびしさ……新婚しんこんよろこぶというよりか、しろつらい運命うんめいに、仕方しかたなしに服従ふくじゅうしているとったような
しかれどもこの癖漢へきかん冷々れい/\たる苦笑くせうおこすのみなることしめし、實際家じつさいかいやしむのねんをあらはし、「でなくば生命いのちてんのみ。運命うんめい服從ふくじゆうし、百事ひやくじ放擲はうてきし」、云々しか/″\はつせしむるにいたる。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
「さあ、そりや分らない。すべては運命うんめい神様かみさま御意ぎよいのまゝなんだからな。」
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)